第170号
第170号
第170号
2023・02・28更新
小山寺=桜川市富谷
小山寺は、桜川市の富谷山中腹にある天台宗の寺院。別名富谷観音。十一面観世音菩薩坐像は県指定有形文化財。小山寺は天平七年(735)聖武天皇の勅願により、行基を開基として創建。国重文の三重塔は、寛正六年(1465)に建立された。修理のための寄付を呼びかけている。問い合わせ同寺、0296-75-4440
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茨城の自治体 非正規公務員「最低賃金割れ」
新聞報道で、市町村で働く非正規職員のなかに最低賃金を下回る賃金で雇用されていることを知った。
最低賃金は法律上、自治体職員には適用されないことから生じている事態である。もちろん、生活費の根幹であるから、公務員にも「適用すべきだ」の意見も根強い。自治体職員の賃金を所管する総務省は対策に乗り出すという。
報道によると、「桜川市が広報誌で『最低賃金割れ』の賃金で職員を募っている」との情報が自治労連に寄せられた。市は11月から5カ月間にわたり農林課で働く「会計年度任用職員」を時給897円で募集していた。
会計年度任用職員は、公務員のうち年度ごとに雇用契約を結ぶ非正規雇用の人たちで、賃金は公務員として最も低い水準。最低賃金制度の適用除外となっている。22年10月の改訂で県内の最低賃金はそれまでの時給879円から32円増の時給911円となることが決まっていた。
その他の市町村では?と、新聞社が県内44自治体について調査したところ、会計年度任用職員で最も時給の低い人について、22年度の最低賃金(時給911円)を下回るケースは24自治体に上ったという。このうち桜川市を含む17自治体は市の規則を変えるなどして、10月1日には時給911円を上回るよう事前に手を打った。常総市、竜ケ崎市、下妻市、かすみがうら市の4自治体は2カ月から半年間にわたり、最低賃金を下回る賃金で働く公務員が存在する見通しとなった。
2020年から運用が始まった会計年度任用職員。その賃金は地域の賃金水準も参考に決められるが、人件費削減のため、地域の最低賃金に5~10円ほど加えた額で低く決定されがちの実情にあるという。(1.24 毎日)
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郵政いじめ・パワハラ損害賠償請求事件
― 郵政職場とゆうちょ銀行からイジメ・パワハラをなくそう ―
柴原 充(大森雄介さんを真支援する茨城の会 事務局長)
郵政民営化直後からはじまったイジメ
大森雄介さん(城里町在住)は、1979年、旧郵政省に入省後、優秀な成績で監察官補試験に合格。事案処理件数がずば抜けて多く、1999年には郵政監察官(管理職扱)に任命されました。その後も、難関なCFSA(公認金融監査人)やCIA(公認内部監査員)の資格を取得するなど、旺盛な向上心を持ちつつ業務に専念してきました。
ところが2007年、郵政省が民営化され(株)日本郵政が誕生、大森さんが (株)ゆうちょ銀行勤務になると、謂われのないイジメやパワハラに苦しめられるようになりました。それは、上司や同僚による中傷や仕事はずし、減給・降職、退職強要、暴言や暴行、セクハラのでっち上げ、片足立ち、髪型を変える、スキップで通勤させるなど筆舌に尽くしがたいもので、大森さんが退職するまでの10年以上にわたり続けられました。大森さんは、こうした実情を何度も本社や上司に訴えましたが、何ら是正されず、ついには抑うつ状態に陥って休職。2018年3月、復職できないまま雇用可能期間を残して退職に追い込まれてしまいました。
(2月3日第3回口頭弁論および和解協議の前にアピール )
ゆうちょ銀行に限らず郵政の職場では、民営化以降ノルマ追求や激しい合理化がすすめられた結果、「かんぽ生命」の不正発覚をはじめ、イジメ・パワハラ、処遇差別など救済を求める訴えが全国で200件以上も起こされました。大森さんの訴訟もそのひとつです。
労働契約法によれば、使用者は労働者の生命、健康はもちろん、人格を侵害されることのないよう配慮する義務を負います(第5条)。それは、たとえ従業員による個人的な行為であっても、止めさせなければ損害を賠償する義務を負うことが明記されています。
それが民営化によって企業が利益を得ることが可能となりました。国民の財産を財界にくれてやったわけです。また、郵政民営化は米国財界の強い要求で始まったものであったことも、論家堤美果氏の出版で暴露されています。
2020年、第2第3の自分を出さないためにと提訴!
大森さんは、高齢のお母さんに心配をかけまいと、この執拗なイジメ・パワハラに耐えに耐えてきました。お母さんの他界後、大森さんは、そんな苦しみを味わう第2第3の自分を生まないゆうちょ銀行になってもらうため、悩んだ末に裁判に訴えることを決意。水戸翔合同法律事務所の谷萩洋一弁護士を代理人とし、日本国民救援会茨城県本部の全面支援の下、2020年6月10日水戸地裁に提訴、同年7月31日第1回口頭弁論が開かれました。
2022年11月18日、第2回口頭弁論
提訴、第1回口頭弁論から2年半、コロナ禍を避けるためテレビ会議方式による15回の「弁論準備手続期日」をへて、2022年ようやく2回目の口頭弁論が開かれることになりました。11月18日午前10時開廷午後17時閉廷。一日で証人尋問を終了させるという強行スケジュール。開廷前は不安いっぱいの大森さんでしたが、主尋問にも会社側の反対尋問にもよどみなく回答。逆に会社側弁護士の声の小ささに「もっと大きな声で」と指摘したり、大森さんの明答に逆切れしたりと、尋問は大森さんペースに終わりました。また、いじめ・パワハラの目撃者あるいは実行者とされた会社側証人三名も、大森さんに対し行われた、あるいは行った行為自体は否認しつつも、「仕事ができなかった」とか「指導した」証拠は何一つ示せませんでした。一方、大森さんは、廃棄したと思っていた当時の日記が見つかり、訴状に記載した暴行やでっち上げ、いじめ行為の経緯がより詳明になりました。
その後, 2月3日行われた第3回期日では大森さんが最終弁論を行い閉廷。判決日が4月14日(金)13時10分からと決まりました。また2月3日裁判の閉廷後「和解の可能性」を議論する場(非公開)が設けられ、判決日に向けた議論が始まりました。
イジメ・パワハラは被害者本人を傷つけるだけでなく、社会や企業自身にとっても大きな損失です。安心して働ける職場と社会をつくるためにも皆さんのお力添えをお願いします。
なお、2月3日、原告側の弁護団によって裁判所に提出された『最終準備書面』(A4,41頁)は、口頭弁論で明らかになった事実認定、証拠も取り上げ、本件の全容を体系的に詳述しています。希望者にお渡しします。研究所までご連絡ください。
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今月の俳句
男体も加へ初富士初筑波
鐘の音の余韻短かき大旦(おおあした)
枯蓮のくの字くの字に沼日和
風の向時々変はる寒椿
春を待つ水よりも石静かなり
高 島 つよし
本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問
今月の 川柳
陽は昇りピースピースと啼くカラス
牛皮が軍靴に化ける日が怖い
戦争をしてる暇などない地震
九条の凧々上がれ春の風
生活を防衛したいと値引き品
その昔風船爆弾いま気球
軍拡の足音だけが風を切る
春立て心そぞろに小雪舞う
3文書奉安殿に飾るらか
梅娘マスクはずして笑みうかべ
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)
新刊紹介
医療・健康情報の連携が、社会保障を管理へと変質させる
『医療DXが社会保障を変える マイナンバー制度を基盤とする情報連携と人権』
―『財政状況資料集』の使い方―
稲葉―将・松出洋・神田敏史・寺日正之 著
A5判・並製カバー・96頁/定価1210円(10%税込)
「健康保険証を廃止しマイナンバーカードに一本化しよう」という政策のねらいは何か。すでに、マイナンバー制度を基盤とする国民・住民の個人情報と、医療機関がもつ電子カルテや電子処方箋などの医療情報_そして各種健診情報を連携させる「全国医療情報プラットフォーム」づくりへ動きだしている。「医療DX令和ビジョン2030」等の「医療DX」とよばれるこの改革の背景にはどのような政策があるのか。「医療DX」によって、人権としての社会保障制度と医療の現場はどう変えられようとしているのか。
序 健康保険証とマイナンバーカードの一体化………………………………稲葉―将
健康保険証の廃上方針が打ち出された経緯と背景/マイナンバーカード取得とマイナポータルとの関係/課題を発見するために(マイナポータルの法的規律、マイナンバーカード取得義務化これ自体の問題点)
I 医療情報のデジタル化とデータ連携が医療を変質させる………………… …松山洋
医療ビッグデータ構築のためのデータヘルス改革/データヘルス改革を梃子に"医療の統制"へ/データヘルス改革を梃子に公的医療保険制度の脆弱化・解体へ/医療現場とオンライン資格確認整備/国民・住民を守るために必要なデジタル化とは
Ⅱ 「健康医療データプラットフォーム」の構築と自治体………………………神田敏史
住民の健康医療情報はどう集積され、誰がどのように活用しているのか/NDBデータのオープン利用と健康医療データプラットフォーム/問われる自治体の役割/オンライン資格確認システムとマイナ保険証による「医療を受ける権利」の侵害
Ⅲ 全世代型社会保障構築政策と地域医療……………………………………… 専尾正之
自民党と経団連がめざす医療DXの特徴/政府の全世代型社会保障構築政策/健康医療データ連携による地域医療構造の再編
準新刊
デジタル化シリーズ(既刊)
デジタル改革とマイナンバー制度
―情報連携ネットワークにおける人権と自治の未来―
稲葉―将・内田聖子著 定価990円
概要;マイナンバー制度の3つの仕組みとは何か、マイナポータルを通じた情報連携で公共サービスはどう変わるかを解説する。さらに、EUなど海外の事例に学び、日本のデジタル化政策の在り方を問い直す。
自治体の財政は、こんなにも分かりやすく、おもしろくて、大切なことです
自治体財政を診断する
―『財政状況資料集』の使い方―
森 裕之 著
A5判、150頁 定価1870円 自治体研究社
『財政状況資料集_の「経常経費分析表」「歳出決算分析表」「健全化判断比率」などをページごとに解説して、データが示す多面的な情報を読み解きます.そこから浮き彫りになる自治体のさまざまな政策課題をとらえます]自治体の財政が分りやすく、大切であることを示して、市民や議員が財政にアクセスするための必携の一冊です。
生まれる前から、子育て・教育の枠を超え「子どものデータ」が収集・利活用される ‼
『保育・教育のDXが子育て、学校、地方自治を変える』
稲葉 一將, 稲葉 多喜生, 児美川 孝一郎 著
A5判 98頁 定価1100円(税込み) 2022年 11月10日発行
概 要
デジタル改革によって、子どもの個人情報が大量に収集、集積、利活用される仕組みが準備されている。
本書では、Ⅰこども家庭庁の設置を前に、複数の行政組織や自治体の部局を超えて「こどものデータ」が連携・集積される構図とその意味すること、Ⅱ保護者と保育園をつなぐ保育支援システムによってこどものビッグデータがテック企業に集積される仕組みとその意味すること、 ⅢGIGAスクール構想の先ですすむ「教育DX」政策が公教育にもたらすものを整理する。「こどものデータ」の収集と利活用は、子ども像を変えるだけでなく、子育て・教育に携わる専門職の存在や自治体行政の姿を変えることにつながる。
主な内容
Ⅰ 子どものデータ連携と行政組織における調整の強化―こども家庭庁新設の地方自治への影響……稲葉一将
国家によって形成される「デジタル社会」の特徴/子どもと行政に及ぶ「デジタル化」/転形期の子どもと行政
Ⅱ 保育業務のSaaS化とテック企業のデータ寡占―保育と一体で行われる子どもデータの収集……稲葉多喜生
SaaS で行われる保育データ収集の意味すること/企業任せとなっている個人情報収集/便利さの背後で進む、テック企業のデータ寡占化/子どものデータ連携で変わる保育
Ⅲ 教育DXが学びと学校を変える……児美川孝一郎
「Society 5.0 型教育改革」の構想―EdTech を通じた教育 DX の実現へ/GIGA スクール構想とコロナ禍の教育政策/教育 DX は学びと学校をどう変えるか
子どもを真ん中に考える!
学童保育を哲学する ―子供に必要な生活・遊び・権利保障―
増 山 均 著
A5判、150頁 定価1870円 自治体研究社
コロナパンデミックのなか、学童保育の社会的役割が増しています。そこにはさまざまな運営主体が参入し多くの人々がかかわっています。いま「学童保育とは何か」「学童保育はどうあれば良いのか」という≪理念の確認≫が必要な時です。子どもの生活と遊び、権利保障のあり方、地域との連携,子ども観など、子どもを中心に置いて問題を熟考(哲学)します。
『健康で文化的な生活をすべての人にー憲法25条の探求』
浜岡 政好, 唐鎌 直義, 河合 克義 (編著)
A5判 308頁 定価2970円(税込み) 2022年3月31日発行
概要:人間らしい生活を求めて
格差と貧困が拡大する今、私たちは「健康で文化的な生活」を送れているのでしょうか。全国生活と健康を守る会連合会と全日本民主医療機関連合会による大規模アンケート調査から庶民の肉声を掬い上げました。そこには、さまざまな生活を送る人びとの日常があります。
このデータの多角的な分析と、第2次調査としての面談による取材によって、日本の庶民の現実が見えてきます。また、「健康で文化的な生活」とは何かを、憲法25条の文言の成立からたずね、フランスとの比較も通して、「人間らしい生活」を求めて、社会保障・社会福祉の低位性を乗り越える方策を追究します。