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2024・09・23更新
今年の新米の収穫風景=水戸市
なぜ“コメ不足”? 新潟や秋田など日本海側の主要な産地で、2023年産のコメの収穫量が夏の猛暑などの影響によって減少したとか。すると今年の猛暑はさらに不作となるのか。
気候変動への抜本的対策を急ごう!
― 今夏の記録的な猛暑日は生存・生活の明白な危機現象 ―
野党各党と市民連合が合意した「2022年参議院選挙における野党に対する市民連合の政策要望書」では、「人びとの暮らしを脅かす異常気象の頻発にかんがみ、また将来世代や未来の人々、生きものに対する責任を果たすために、気候変動と環境保全の対策を加速し、国際社会による温暖化対策の強化に向けて働きかけを強める」としている。
エネルギー転換は、エネルギー自給率向上の観点からも急務である。日本のエネルギー自給率は10%程度と先進国で最低クラス(OECD加盟国のうち比較可能な36カ国中35位)。原油価格の高騰、ロシアのウクライナ侵略、急激な円安の放置など、エネルギーを外国に依存している経済の危うさが浮き彫りになっている。
環境省の調査によれば、わが国の再生可能エネルギーの潜在量は、現在の電力使用量の5~7倍にもなる。しかし、政府のエネルギー基本計画では、2030年度の再生可能エネルギー電源の比率は36~38%にすぎない。これはドイツ、イギリス、イタリア、スペインなどでは達成ずみであり、これらの国々は2030年までに6~7割をめざしている。石炭火力、原発にしがみつき、再生可能エネルギーを後景に押しやっていることが、遅れの最大の要因である。緊急に、以下2点の方策を実施させる必要がある。
1,再生可能エネルギーの優先利用の原則を確立し、大手電力会社が原発や石炭火力を優先し、太陽光の出力抑制を行っている現状をあらためる。再エネを最大限活用できる電力網などのインフラを整備する。
2,二酸化炭素排出量が大きい業界、大規模事業所に、二酸化炭素削減目標と計画、実施状況の公表などを「協定」にして政府と締結することを義務づける。
今月の俳句
新涼や喪服にのこる畳皺(たたみじわ)
肉焼けて縮む食卓秋暑し
ふるさとは小路が多し虫時雨
読むさねば友の名忘る流れ星
風音に水音逸(はや)る薄原(すすきはら)
高 島 つよし
本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問
寄 稿
米を守れ! 政府は主食の米に責任をもて
奥貫 定男(農民運動茨城県連合会書記次長)
今年の稲刈りは天候などの影響もあり例年よりも1週間程度早かったようです。
店頭から米がなくなり、あっても高くなった状態は、新米が出始めても変わっていません。最も困っているのは子ども食堂やフードバンク等で、「食べたくても食べられない人々」など生活困窮者にとっては死活にかかわります。それだけでなく物価上昇に届かない賃上げにとどまる労働者や子育て世代、年金生活者にとっても大変で、現状の高値では米離れが生じるのではないかと危惧しています。
今回の米不足の原因として、昨年産が高温障害による品質低下などで玄米から精米になる割合が低下し、使用する玄米量が多くなったこと、食料品の値上がりに比べて米価格の上昇が小さかったことから米消費が伸びたこと、インバウンドで需要量が伸びたこと、こうして全体として需要量が増えていたところに、8月に入って南海トラフ地震臨時情報で買いだめが起きたことでさらに加速したといわれています。
本当にそれが原因でしょうか。
そもそも昨年産の主食用米の生産量は661万㌧で、政府が当初見込んでいた需要量681~691万㌧よりも30~20万㌧少ない量でした。今年6月末の民間在庫量177万㌧の見込みが、実際の需要量は上記にもあるように21~11万㌧増えて702万㌧になり、6月末在庫は過去最低の156万㌧となりました。1日約2万㌧の消費量なので、9月上旬には昨年産がなくなる計算です。
「新米が出回れば供給は安定する見込み」と政府は言っていますが、どうでしょうか。米穀年度は11月1日にはじまります。6月末在庫は10月までの4か月を賄う分なのですが、現実には新米を先食いしているにすぎず解決にはなりません(そもそも年間の需要量よりも少ない生産量なのですから)。しかもこれから1年間の需要見込み量は673万㌧で、需要が増えた状況は全く考慮されていない上に、生産見込み量は669万㌧にとどまっています(自然・気象災害などもありこれすら本当に確保できるかどうか)。来年6月末の民間在庫量は今年よりも少ない152万㌧。事態はさらに厳しくなるのではないかと思われます。
なぜ日本の主食・米がこんな事態になったのでしょうか。それはアメリカや財界言いなりに、米までも輸入自由化に道を開いたこと、そして米の生産量を削減してきたことです。WTO協定批准にあわせ、1995年に食糧管理法を廃止し、政府は米の生産・供給に責任を持たなくなりました。義務でもないMA米は2000年以降77万㌧減らさず輸入を続けています。2018年には米の直接支払い交付金を廃止し、生産者には「自らの経営判断、販売戦略で需要に応じた生産・販売」を求めるなど自己責任を迫り、全くの市場任せにしました。
こうして稲作農家は生産費を割り込む米価が続いたうえに、資材高騰による生産費の上昇で、時給10円の米作りを2021年と2022年の2年間強いられ、離農と耕作放棄が広がり、生産量も極端に減ってきました。主食用の作付面積は2020年136.6万haが2023年には124.2万haとわずか3年で12.4万haも減少しました。これは米生産量全国第6位の茨城県の主食用作付面積5.8万haの2倍以上にもなります。販売目的に米を作る農家は、2000年の175万戸から2023年には58万経営体に激減しています。政府が進める大規模化・法人化で10ha以上の経営体は、同時期に1万5千戸から2万2900経営体に増えていますが、作付面積の4分の1を占めるにすぎず、米作りを支えているのは中小規模の農家・家族経営です。
私たち農民連はいまの事態を打開するために「このままでは米を作り続けられません。政府が米価を下支えし、需給に責任を持つ政策を要求」する個人要望書運動に取り組んでいます。具体的な要求は、政府備蓄米を放出してフードバンクや子ども食堂等への無償提供を拡大すること、食料支援制度を作ること、米を増産し不測の事態に備えた十分な備蓄をすること、農家が安心して米を生産し国民に安定供給できる政策に転換すること、などです。
茨城県は全国有数の農業県で、今年3月の県議会では「茨城食と農を守るための条例」を採択しました。その条例では基本理念として2条1項で「食料は、主食となる米、麦等の重要性を踏まえつつ、県民がいかなる時でも健康な生活を送ることができるよう、多様化する需要に即した生産並びに安全及び安心が確保され、かつ、食料自給率の向上が図られることにより、将来にわたって安定的に供給されなければならない」とあります。この基本理念にのっとり、県独自の生産への価格保障・所得補償とともに消費者への支援が求められていると思います。
日本の主食米を守る取り組みを多くの皆さんとともに、共同する運動を作っていきたいと思います。
今月の 川柳
佐渡ケ島金があふれて酔いつぶれ
ダイジンは人より核を可愛がり
セーヌ川武器よさらばと舟遊び
学んでも学びきれない寺の鐘
わだつみの神が怒っている辺野古
シブサワにあいさつしたが無配当
東電は左うちわで汗まみれ
原爆の地下の少女は今どこに
老いぼれてバカに薬をつけてやり
夏姿アラブの女か盆の風
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)
イベント案内
寄 稿
「茨城空港を巡る流れと最近の動き」
梅澤 優(百里基地反対同盟員)
2010年3月11日に開港した百里飛行場(ターミナル部分は茨城空港)は、自衛隊が所有し、滑走路をお借りして運行されています。
当初は民間で滑走路を整備したのですが、完成した日に百里基地に無償で差し上げたのです。早速国交省に抗議しましたが、自衛隊の滑走路になったという以外の回答しか得られませんでした。
完成と同時に自衛隊が専用に1年間使い出しました。自衛隊のコンクリート滑走路は嵩上げするために使用できないからです。
新滑走路が出来たいきさつは、自衛隊の滑走路を嵩上げして共用化するよりはもう一本造ったほうが安上がりという理由でした。
しかし、県民を騙し討にするごとく自衛隊も嵩上げが決まっていたのです。新滑走路はアスファルト製で強度は低く、耐圧から考えれば元々嵩上げの必要はありませんでしたから県民は二重に騙されてしまったのです。
自衛隊が開港前一年間の使用中、何とアスファルトから多数の鉄片等が露出して廃材の利用が明らかになったのです。自衛隊は既にコンクリート滑走路が利用可能となっており、新滑走路は上部8cmを剥ぎ取り、新材で上乗せすることになりましたが、汚職に関係したゼネコンが処分されたという話はありませんでした。
考えてみれば剥ぎ取らずに8cm嵩上げしたほうが、工期も短縮し廃材も発生しません。尚且つ強度が上がるはずですが、それは犯人であるゼネコンが許しません。十数年後に貨物機などを導入するなどの理由で、嵩上げするのが長く生き残る戦略なのです。そうこうする内に開港日が迫って来ます。工期に間に合わないのか徹夜で何週間も工事が続けられています。不思議に思い調べ見るとアスファルトに雨水排水用のスリットを切っているのが分かりました。
そして開港日がやってきましたが、なんと開港してからも徹夜の工事は続きます。開港から10日たった21日アナシア168便がオーバーランして障害壁を壊し300㍍ある延長部に突っ込んでしましました。操縦士は「雨で滑走路が濡れ、止まらなかった」と話しましたが、アシアナ機のパイロットエラーとされました。
しかし、まだまだ工事は続きます。完了は4月に入り20日過ぎとなりました。雨が降ればスリップ必至の欠陥空港を、1ヶ月以上も前から開港させてしまう国交省と茨城県の安全に対する危機感や配慮は全くありませんでした。
また民間の予算で造った躯体(滑走路、コントロールタワー及び管制機材、弾薬庫等)を自衛隊に差し上げるのは違法行為と言えます。それらは防衛予算で賄わなければなりません。教育の場である学校などでも躯体である校舎の損壊を、業者が無償で修理するのが禁止されているのは公平性が保てないからです。
そして機は熟したと見たのか13年を経た昨年11月9日茨城県知事の大井川氏は、茨城空港の並行誘導路の併設とターミナルビル拡張を言い出しました。これには伏線があり、茨城空港の滑走路利用は1時間に1回と自衛隊から釘を刺されていたのですが、これを2回とする合意が直前の10月29日に3者(国交省・自衛隊・県)で行われていたのです。利用実績から見て全く必要のない取り決めですが、既に今年の8月には第一回の利用促進協議会が開かれ今年度末(来年3月)までに4回の会合を経て県に提言します。知事はそれを受けて実質的な検討に入るとしているのです。
さて、これは何を意味するのかとすれば、公共の福祉を掲げた実質的な土地取り上げ政策なのです。土地収容法・行政代執行などが空港の、筑波山側に適用される可能性が高いのです。その計画には憲法違反の看板のある海軍航空隊遺跡の射爆場や、私人の土地など複数箇所が含まれ、戦闘基地への反対運動の抑え込みを計るという事実が内包されています。そして、完成した暁には茨城空港滑走路と同様、自衛隊に無償で差し上げることが予想されます。
政府が目論む基地の実質拡張となり、周到に用意された防衛計画の一環とも言える事案が現在急速に進展中なのです。計画には嵩上げ理由となる貨物専用設備や、格納庫と航空機整備場、そして急遽今年5月に経歴造りの為、2日間だけ実施されたビジネスジェット乗り入れ(実現される見込みなし)なども拡張計画にしっかりと取り入れられ、流れは全てゼネコンと基地の為に準備された内容となっています。しかし、現在までに増便の申請はありません。
百里基地には着陸誘導の音声によるグランドコントロールドアプローチ(GCA)とILS(計器着陸装置)も有ります。しかし、茨城空港が借りている滑走路には有りません。国内法の相互間距離300mを「世界のどこかにあるはずだ」との理由で中心線210mに法改悪してまで造った滑走路は、誘導電波の相互干渉で設置できなかったのです。
また設置前に行われた環境調査も明らかに違法でした。元々環境調査が成り立たない所(人が住めない騒音がある)に「航空自衛隊百里基地の騒音はこれを無いものとする」との条文の入った調査は、調査費の返還を求めるべきでした。オオタカ3つがいや希少な糸トンボには影響はないと結論付けましたが、事後調査は行われていません。空港計画時はボーディングブリッジ(PBB)搭乗が予定されていましたが3階展望台と共に自衛隊側から拒否され2階立てに、そしてタラップによる乗降が強要され、2階屋上のガラスには偏光ガラスが採用されて基地側が見えなくなったのです。(不評で後に変更)全ては「軒先貸して母屋を取られる」を回避する自衛隊主導の間借り民間空港として、滑走路にも使える平行誘導路で軍拡に奉仕する茨城県の行動に繋がっています。茨城空港は地元小川町から要請を受けて設置されたと表向きはなっていますが、実態は県の提出要請をやんやと受けた町長が役場前で反対する私達を押しのけて車に乗り込み県に向かったのでした。
一坪運動にもからむ相続登記が今年4月から義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の罰金が課せられことから、相続を放棄し国に差し上げるような事も起こりかねません。早急に管理団体である(社団法人)百里の会は国に先駆けて調査に入る必要に迫られるなど、問題山積の事態を迎えるなか、ボランティアの枯渇が危ぶまれている一坪運動地や平和公園の草は伸び続けています。
土地利用規制法が施行され、将来は規制の範囲拡大も懸念されます。この様に戦争の犠牲の上に享受した私達の権利は一枚一枚と奪い取られています。百里裁判の弁護士は「国民は日一日と深い眠りにつかされている」と言いました。百里裁判では司法が逃避した統治行為論の打破を問われた大学教授は一言「選挙です、それしか道はありません。」と答えました。若い時聞いた社会科学の話に「窓は少し開けば明るい」とあったように少数派でも臆することなく、国民の権利を守る立場にいつも立っていた私達の歴史を共に確かめ合って、前を向いて生きていこうではありませんか。
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イベント紹介
第71回
(オシランシ)市町村議会議員研修会 ZOOM開催
入門 自治体デジタル化政策の実際
国・自治体をあげたデジタル化推進一辺倒という状況のなかで、立ち止まって、デジタル化政策全体を見渡してみませんか。この議員研修会では、自らの自治体のデジタル化政策を読み解くためのヒントをつかむことを目的に、デジタル化政策の理論と実際を分かりやすく紹介します。
■2024年10月17日(本)13:30~17:00
第1講義 デジタル社会重点計画と自治体の情報システム利用原則
講師 龍谷大学法学部教授 本多滝夫
2024年版の「デジタル社会実現に向けての重点計画」やデジタル行財政改革会議が提示した「国。地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」など、国のデジタル化政策のポイントはどこにあるか。「改正」地方自治法に盛り込まれた情報システム利用原則の意味することは何か。最新の動向も踏まえて、自治体をめぐるデジタル化政策全体を分かりやすく解説します。
第2講義 デジタル化予算と自治体の財政
講師 自治体問題研究所 石川健介
国のデジタル化予算のポイントは何か。準備がすすむ自治体情報システムの標準化・共有化は自治体財政に何をなげかけるか。デジタル田園都市国家構想交付金の仕組みはどうなっているかなど、自治体議会で考えておくべきポイントを紹介します。
【事例報告】「自治体DX計画」の実際
報告 埼玉自治体問題研究所 林 敏夫
埼玉県内自治体などのDX計画の紹介を通じて、自治体DXの進捗状況をつかみ、市民にどう伝えていくか。自治体議会や自治体労組での対応と課題を具体的に考えます。
■2024年10月21日(月)13:30~17:00
第3講義 公共サービスのSaaS化と自治体の役割
講師 名古屋大学法学研究科教授 稲葉―将
広がりつつあるアプリを使う公共サービスの利用(SaaS)。その仕組みはどうなっているのか。個人情報は守られるのか。自治体は、公契約としてどう規制できるかを考えます。
【事例報告】保育業務支援システムの実際と保育の現場
報告 東京自治労連 稲葉多喜生
行政サービスの手段に民間クラウドシステム(SaaS)を導入する自治体が広がっています。SaaSは住民等のデータ収集を前提としています。保育園を事例にSaaSの仕組みと、個人情報保護対策を考えます。
【事例報告】健康医療情報の収集と実際――マイME‐BYOカルテ」と電子母子手帳
報告 神奈川自治労連 神田敏史
神奈川県がすすめている「マイMEおYOカルテ」による医療情報収集の実際(電子母子手帳との連携もふくめ)とセンシティブ情報といわれる個人情報をめぐる自治体の役割や課題を紹介します。
参考書;本多滝夫・稲葉一将ほか著『公共サービスのSaaS化と自治体』(10月刊)予価1500円
本多滝夫ほか著『デジタル化と地方自治』税込特価1700円
本多滝夫ほか著『地域と自治体第40集』(本多「情報システムの『最適化』と地方自治」)税込特価2300円
企画:自治体問題研究所 主催:自治体研究社
申し込み方法;FAX、メール、ホームページから申し込みください
FAX o3-3235-5933 メール;info@jichiken.jp
HP; https://www.jichiken.jp/
以上、「月刊いばらきの地域と自治」第188号から転載
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