第43号
(第43号) (2012・07・20発行)
美浦村文化財センター(稲敷郡美浦村)
国指定史跡 陸平貝塚(おかだいらかいづか)1998年に国史跡指定された、日本でも屈指の規模を誇る縄文時代の貝塚。貝塚入り口にある文化財センターでは、土器や貝塚等の資料が展示されている。
オスプレイ日本の青空黒くそめ
再稼働くらげのダンスでしかめ面
総裁は裸の総理にタオルかけ
雨音に夏の匂いをかぐ女房
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)
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日経新聞に何が起きたのか?
6月3日付け日本経済新聞に、「数字で読む政治」と題して、1867億円 突出して高い負担額 在日米軍への「思いやり予算」、の見出しが大書されていた。日経新聞が国民に民主党政権への批判を巻き起こす意図で記事にしたのかどうか。「思いやり予算」が自民党単独政権の時にはじまり、自公政権で拡大していった過程については無言である。
それでも、日経新聞の記事は「思いやり予算」の内容および不条理さについて大胆に明らかにしている。「米軍基地内で働く従業員の労務費、米軍兵士や家族の光熱水料費、基地内住宅を補修・維持する提供施設整備費などが主な費目」で2012年度1867億円計上。1999年度の2755億円をピークに減少傾向にあると指摘しつつも、米軍1人当たりの支援額は、「米国防省の資料によると02時点で日本は10万5976ドル、韓国は2万1772ドル、
ドイツも2万1720ドルと日本の5分の1にすぎない。」と言及し、「現行の日米特別協定は2016年3月末で期限を迎える。その後は新たな特別協定に基づき思いやり予算を組むため、15年初めに始まる日米間の交渉」について防衛省幹部の談話という形で、『最もシビアな交渉』になるだろうと予測。
民主党政府のお手並み拝見といったところか。が、日経新聞もここまで書かねばならないほど、野田内閣の対米卑屈が気になるのか。はたまた、日経新聞がナショナリズムにいっそう右旋回したのか。(T.T)
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資料
生活保護費3.7兆円の半分は医療費
医療制度の歪みが生む長期入院の見直しこそ急務
お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたという報道をきっかけに、受給者全体に厳しい目が向けられている。リーマンショックによる雇用の悪化、東日本大震災の影響などもあって、生活保護の受給者数はここ数年で一気に増加。今年3月の生活保護受給者は210万人を突破し、今年度の総支給額は約3.7兆円になると見込まれている。たしかに一部には、資産を隠したり、偽装離婚で母子家庭を装ったりして、生活保護を騙し取る不正受給があるのは事実だ。また、「生活保護費でギャンブルに興じている」「まだ若くて元気なのに働こうとしない」といった無駄遣いや受給者の甘えの問題もある。
生活保護は、預貯金や持ち家などの資産、働く能力などをすべて活用しても、自力では生活できない人に対する国の支援で、その費用は全額税金で賄われる。不正受給は許されるものではないし、無駄遣いや受給者の甘えに対して納税者である国民が納得いかない感情を抱くのもわからないではない。
しかし、不正受給や無駄遣いが生活保護費を押し上げる原因というステレオタイプの決めつけは、ちょっと違うのではないかと思う。
生活保護の不正受給は全体の0.4% もっとも大きな部分を占めるのは医療費
不正受給の金額は、2005年度に1万2535件(約72億円)だったものが、2010年度に2万5355件(約128億円)になっている。この数字だけ見れば、「倍増」という表現もあながち間違いではない。
一方で、支給総額も2005年度の147万5838人(約2.6兆円)から2010年度には195万2063人(3.3兆円)に増えている。率にしてみれば、この間の不正受給は0.3~0.4%ほどで非常に低い水準だ。
他に比較する対象が示されず、不正受給や無駄遣いの事例ばかりを抽出して見せられれば、何も知らない人は「生活保護のほとんどが不正受給によるもの」といったイメージをもってしまうのも無理はないだろう。
だが、それよりも問題なのは「医療扶助」と呼ばれる医療費で、2010年度の生活保護費の総額3兆3296億円のうち、47%の1兆5701億円が医療費で占められているのだ。
医療扶助は、生活保護の受給者が受けられる医療サービスで、健康保険が適用されている治療なら、病院や診療所での窓口負担なしで必要な診察、検査、手術などを受けることができる。
医療扶助増加の原因としてよく言われるのが、自己負担なしで受診できる制度への批判で、「医療費がタダだから、頻繁に受診したり、薬が過剰に投与されている」というもの。昨年行われた行政刷新会議の「提言型政策仕分け」でも、生活保護の医療費を削減するために窓口での一部負担金を検討するといったことが提言されたが、これで本当に大幅な削減ができるのかは疑問だ。
そもそも生活保護を受けている人は、病気やケガをして働けなくなったり、障害があるために仕事につけず、他に頼れるものが何もない中で受給に至っている人が多い。保護世帯の33%が障害者・傷病者世帯だということを考えれば、一般的な家庭に比べて頻繁に受診して医療費がかかるのは仕方がないことのように思う。
根本的な解決を図るなら、メスを入れるべきは医療扶助の6割を占める入院に関する費用だろう。中でも多いのが精神疾患による長期入院で、入院全体の約4割となっている。背景にあるのは、生活保護受給者の特色というよりも、精神科医療の構造的な問題だ。
精神科医療の見直しが生活保護費削減のポイント
そもそも、日本の精神科医療は、諸外国に比べて入院期間が飛び抜けて長い。
精神障害のある患者は、入院が長引くほど自分で生きようとする力を失い、地域社会で生活するのが難しくなる。諸外国では精神疾患の治療はできるだけ入院させずに、通院しながら地域の中で改善を図るのが主流となっている。
ところが、日本では長い間、精神疾患は病院に収容するという政策がとられてきた。その影響で、地域に精神障害のある患者を受け入れる社会的資源が少なく、いまだに入院中心の医療が行われている。
それは、精神科の平均的な入院日数が、OECD諸国が18.1日なのに対して、日本は298.4日という驚くほどの差があることからも明らかだ(OECD Health Data 2008「2005年診断分類別精神及び行動の障害」、厚生労働省平成17年「患者調査」より)。
精神科への入院は、認知症を患っている単身高齢者も多い。医療は必要ないけれど、地域や家に帰っても面倒を見てくれる人がいないために、病院がその受け皿となっている社会的入院だ。
医療扶助を押し上げる大きな原因は、こうした精神疾患や単身高齢者の長期入院だが、生活保護受給者に限った傾向ではなく、日本の医療制度の歪みが生活保護を通じて浮き彫りとなっていると考えるべきだろう。
本来なら地域や社会が受け入れるべき患者が入院を余儀なくされているのは、国の財源もさることながら、なにより本人の尊厳にもかかわる問題だ。
国は、医療扶助を適正化するために、医療費の請求の点検の強化、生活保護の指定医療機関への適正な指導、ジェネリック医薬品の利用促進、向精神薬の投与の適正化などを打ち出している。
だが、本気で医療扶助を削減したいのなら、日本の医療制度にまで踏み込んだ改革をしなければ、根本的な解決は図れないだろう。
とはいえ、現状では精神障害がある患者を地域で受け入れる社会的資源が足りない状態だ。受け入れ態勢を整えないままに、ただ生活保護費を削減したり、医療扶助に自己負担金を導入したりすれば、行き場を失った受給者たちが、より悲惨な目に遭わないとも限らない。
生活保護の「適正化」を約束するなら「漏給」も同時になくす必要がある
今回、お笑い芸人の母親の生活保護受給問題を追及した片山さつき議員が所属する自民党は、次期選挙に向けた政策の中で、生活保護費の給付水準1割カットや医療扶助の適正化を打ち出している。これに対して、小宮山洋子厚労大臣は「自民党の提起も踏まえて、どう引き下げていくのか議論したい」と発言し、同調する姿勢を見せている。
生活保護費が年々上昇しているのは事実だ。しかし、国民全体の利用率は1.6%に過ぎず、ドイツの9.7%、イギリスの9.7%、フランスの5.7%に比べても非常に低い水準だ。
さらに、本当は生活保護を利用しなければならいほど生活が困窮しているのに、我慢をして申請していない「漏給」者は現状の2~3倍はいると言われている。
生活保護は憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」という条文を具現化するもので、国家が国民に果たすべき約束だ。「適正化」を謳うのであれば、これまで捕捉されていなかった困窮者も掘り起し、困っている人すべてに生活保護を届ける必要があるのではないだろうか。
『大都市自治の新展開 名古屋からの発信』
編集 ; 東海自治体問題研究所
発行 ; 自治体研究社1,619円+税
「分権改革」の中で、なぜ極端な首長主導改革が生まれているのか?そのめざすものは何か? 河村市政分析をとおして明らかにし、新たな自治の展開、市民主導の改革の展望を示す。
三上禮次『市場論 ー研究・雑話ー』
自治体研究社 1600円+税