第105号
第105号
2017・09・27更新
ひたちなか市・国営ひたち海浜公園
みはらしの丘を真っ赤に染め上げるコキア。丘のふもとでは、コスモスが秋風にそよぎ、コキアと共にひたち海浜公園の秋を彩ります。 夏の暑い日差しの中、元気に生育してきた「みはらしの丘」のコキアですが、 秋の涼しい風を感じる頃には、いよいよ緑色から赤色に変わり始めます。カーニバル:9月16日(土)~10月22日(日)
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「合区」解消の憲法改正は合理性がない!
自民党が検討している憲法改正項目の一つに「合区」解消がある。参院選挙の「合区」の解消に向けて選挙規定の憲法47条を改正すべしというのだ。
隣接県を一つの選挙区に統合する合区は、「投票価値の平等」確保=「一票の格差」是正を目的に、昨年7月の参院選で「鳥取・島根」「徳島・高知」で導入された。「一票の格差」是正のためといいながら、この「合区」を含む定数見直しでもなお最大3倍程度の格差が残って、違憲状態が解消されたわけではない。
全国知事会は「都道府県ごとに集約された意思が国政に届けられなくなるのは非常に問題だ」として、「合区」を早急に解消し、これに関する「憲法改正」についても議論すべきだ、とする旨の決議を採択した(7月29日)。
「合区」解消と「憲法改正」が、どうつながるのか?
最高裁は、参議院選挙区の「一票の格差」を「違憲状態」とした2012年の判決で、「参議院だから投票価値の平等の要請が後退してよいと考えるべき理由はない」、「より適切な民意の反映が可能となるよう、都道府県を選挙区単位とする方式を見直すなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを早急に行うべき」旨、述べていた。
あくまで都道府県単位にこだわって、憲法のどこをどう変えるのか?憲法には、「選挙区」に関しては「法律でこれを定める」(47条)とあるだけで、参議院の選挙区を都道府県単位にするとは、どこにも書いてない。
仮に都道府県単位の選挙区ということが憲法上規定されたとしても、だから「一票の格差」が許容されるということになるわけではない。これを両立させようとすれば、参議院議員の総定数をその都度増やしていくしかないことになる。また、たとえば鳥取選挙区からは2人の議員、東京選挙区からは46人の議員(2015年人口速報では)というように、都道府県間で選出される議員の数に極端な不均衡が生ずることになる。都道府県単位ということを重視する立場と相容れるのか、というような問題が出てくる。
「合区」解消が目的なら、もっと簡単な方法として、全国一区の比例代表にすればいいのである。そうすれば、衆議院の選挙制度との違いも明確になるし、なによりも「地域代表」的な意識を払拭して本当の意味での「全国民の代表」で構成される院として、参議院の存在意義も高まると思う。
その他、検討すべき問題は多い。自民党の議論は余りにも軽く浅薄だ。
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第59回自治体学校in 千葉に参加して
東海村議会議員 大名美恵子
「憲法施行70年 共同を広げ地方自治に輝きを」のスローガンを掲げて「第59回自治体学校in千葉」の案内が届き、「ぜひ参加したい」との思いにかられました。千葉県が近いこともありましたが、何より4年前就任した新村長が真っ先に行った介護保険制度や後期高齢者医療制度における利用者への補助打ち切り、またそれまで東海村の誇りであった“温かくて美味しい”学校給食・保育所給食調理部門の民間委託、学童保育運営の民間委託と次々、国政踏襲の<切り捨て>、<負担増>を推進することへの怒りと私自身の力不足を感じていたことが大きかったです。いのち、くらし支援最優先への転換が急務となっています。
3日間のスケジュールは、大変充実していて満足しました。4点のみ感想を記します。
1点は、初日の特別報告「千葉県いすみ市のめざす地域づくり」についてです。市職員による報告は、「いすみ市の温暖な気候と肥沃な耕地に四季折々の農作物が豊かに実るという特徴を生かして自治の力で地域を元気にしている」取り組みについてでした。市民と農業者や事業者が協働でまとめた「いすみ生物多様性戦略」と、いすみ市の産物をブランド化し、全国に販売して地域の所得向上をめざした「美食の街いすみ・サンセバスチャン化計画」の2つを柱としていますが、取り組みを成功へと導いているのは職員の構想に徹した粘り強い発信と関係者を率いる意気込みにあることが伝わり大変感動しました。
またこれら取り組みの後継者づくりにも繋がる「学校給食米全てを有機米に」し、子どもたちの心身の発達に貢献することで農家への想いを導くという目標も素晴らしい着眼です。本村でも学び生かせる点が十分あると確信しました。
2点は、分科会の「公共施設とまちづくり」についてです。総務省が地方自治体に策定を義務付けた「公共施設等総合管理計画」により、全国で公共施設の再編・統廃合が進められ、その中には学校・幼稚園・保育所も含まれます。本村でも総合管理計画が完成し、現在、個別計画の検討が行われていますが、改めて公共施設とは単なる「ハコモノ」ではなく「地域のコミュニティに溶け込んだ共同生活条件をなすもの」であり、住民に対する無差別・平等の原則にたって利活用されなければならない施設であるとの視点を据えることの重要性を学びました。
特に再編・統合では不利益が生ずる住民が出るため、自治体の公共施設マネジメント計画と住民の自治計画の融合性が成否にかかっているとの考え方も大変貴重で、ありがちな自治体がまとめた計画を住民に説明する方式の改善に寄与できればと感じました。
3点は、2日目のナイター企画3の「わたしのまち、あなたのまちの生活保護を考えてみよう」についてです。東海村の生活保護事業は行っていませんが、県の福祉事務所により利用されている村民から寄せられる制度改善を求める声には答えなければなりません。
人口38,000人で豊かな村と言われる本村でも、利用者は100数十名にのぼり、憲法が保障した基本的人権や個人の尊厳、公共福祉の享受、生存権などが満たされているか、制度のチェック・改善要求と事業実施体制の大幅強化が求められています。
4点は、最終日の特別講演「社会教育・公民館の役割と地方自治をめぐる課題」についてです。日本国憲法施行70年・教育基本法70年にあたっての講演は、行政・教育行政、そして関わる議員の在り方について原点を促される大変貴重な内容でした。初期公民館は新憲法の精神を日常的に具現化するための恒久的施設とのお話には、社会教育と公民館の役割の捉え方が大きく転換させられました。
全体を通じて学校を支える人、著名な諸先生、協力いただいた諸団体の多さから、本学校への信頼と役割の大きさを実感しました。
事務局たより
茨城研究所OB懇2017年度総会
水海道風土博物館「坂野家住宅」及び「特別養護老人ホームよしの荘」の見学
9月7日、茨城研究所の自治体OB会員懇談会(略称OB懇)の研修兼総会が開催され、12人が参加しました。OB懇は、自治体を退職した研究所会員有志の組織で発足して15年になります。今回の研修は欲張って2カ所見学をしました。
一つは、昭和43年に国指定重要文化財に指定された常総市「坂野家住宅」。坂野家は大生郷に土着して500年惣名主的存在の豪農です。坂野家11代の坂野耕雨は、「月波楼」(書院)を近郷の文化人に開放した。また、江戸幕府徳川14代家茂の侍講菊池三渓など幕府や江戸の文化人を招き交流を図った。
坂野家住宅3カ年にわたる保存整備事業により、明治23年の銅版画に描かれた姿が再現され、平成18年「水海道風土博物館」になった。豪壮な主屋と表門、瀟酒な造りの月波楼(書院)、豪農の家の姿をとどめる。蔵や小屋の数々、発堀・復元された庭園、中庭など屋敷き(7000坪)構えとともに、竹林、梅林、雑木林などすばらしい景観を体験することができました。また、ドラマや「武蔵」のロケにも使われました。
ニつ目は、当研究所顧問である常総市の高島剛さんの照会で「特別養護老人ホームよしの荘」と「ケアハウス」を見学しました。
川田副施設長から施設の概要説明がありました。
昭和55年11月に社会福祉法人東雲会を設立。昭和56年4月小貝保育園開設、定員60名。
平成10年4月特別養護老人ホーム50床。ケアハウス15床、ディサービス35人で開設
平成18年7月ユニット型特別養護老人ホーム30床開設。特養合計80床。
よしの荘の運営方針は、利用者のニーズを的確に捉え、よしの荘理念を基本に「人間愛」「人間尊重」を基調にサービスの質の向上を図ります。よしの荘の理念は、人権尊重を基本にご利用樣の要望にこたえ、最高のサービスを追求し、真心と誠実さをもって地域に貢献するというものです。
現在の特養ホームの入所者は79名、平均年齢86歳。ケアハウスは12名。ディサービスセンターの利用者数63名。居宅介護支援事業の利用者数 104名。職員は総数94名。
重点目標として
近年の自然災害や昨年の相模原市の殺傷事件をうけて、施設の安全・安心を基本に事業を展開する。
1 非常災害対策計画の策定と避難訓練など災害対策の充実
2 支援職員のたんの吸引研修など職員研修の充実と資質の向上
3 情報開示と情報発信の充実
当面の課題として、①人材の確保 ②ベット稼働率の引き上げ ③新規利用者の確保 ④施設・設備の老朽化対策
⑤法人組織の体制強化などを挙げていました。
説明を受けたのち、施設の見学にはいり、厨房も自前で賄っているのは頼もしかったです。また、すぐ近くに大きな釣り堀がありビックリしました。
私たちOB会員は70~80歳代が大半です。特別老人ホームの入所者と年齢的には余り変わらないですが、いずれお世話になる時が来るかもしれません。今日は、大変貴重な勉強をさせていただきました。
総会では、本体組織と同様に会員の減少によりその打開策が論議されました。また、予算にあった研修会を行うよう要望がありました。なお、役員の交替では世話人の川﨑不二男さんが退任して新しく浅野長増さんが就任しました。(文責、OB懇事務局担当岡村)
ポスト安倍声も出なくて秋うつろ
怖いのはマダニとヒアリ独裁者
問題児日本の空で煙はき
宰相のマントがゆれる北の風
芝の上蝉のなきがら又ひとつ
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)
新刊紹介
減りつづける人口。日本のまちのあり方とは?
人口減少と大規模開発 コンパクトとインバウンドの暴走
中山 徹 著
国家戦略特区をはじめ新たな公共事業政策、リニア中央新幹線、長崎・北陸新幹線の沿線整備、MICEによる国際会議・展示会の誘致、立地適正化計画による都心開発など、大規模開発計画が乱立している。この現状を分析して、人口減少時代にふさわしいまちづくりとは何かを考察する。
わたしたちにもつとも近い法律の話し
地方自治法への招待
白藤 博行 著
明日に向かう地方自治法と対話しよう!
地方自治は、憲法が保障する民主主義への道のひとつです。そして地方自治法は、憲法が保障する基本的人権を具体化する法律。近くの人権だけでなく、遠くの人権保障へのまなざしを忘ねず、憲法で地方自治法を、地方自治法で憲法を考えましょう。
高齢期社会保障改革を読み解く
編者 社会保障政策研究会
著者 芝田英昭・潰畑芳和・荻原康一・鶴田禎人・柴崎祐美・曽我千春・密田逸郎・村田隆史・小川栄二・本田 宏
安倍政権下の社会保障政策の本質は、予算削減や自己負担増だけではなく社会保障の市場化・産業化にある。それは、とりわけ高齢期社会保障政策において顕著にみられる。
本書は、第2次安倍政権発足以降の中期の視点で高齢期社会保障改革を分析し、改革の基本視点を提起することに努めた。また、高齢者の生活実像を踏まえた市民による改革運動の姿を提起した。
わたしたちの生活はどうデザインされているのか
社会保障のしくみと法
伊藤周平著
社会保障判例を踏まえ、生活保護、年金、社会手当、医療保障、社会福祉、労働保険の法制度を概観し、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(日本国憲法25条1項)のあり方を問う。ひるがえって財源問題を中心に社会保障全般にわたる課題と現状の社会保障法理論の問題点を検討する。
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加茂利男著『地方自治の再発見ー不安と混迷の時代に』(2017/06/05)
自治体研究社 定価(本体2,200円十税)
何が起こるかわからない時代、地域から世界をながめ、世界から自治を再発見する。
戦争の危機、グローバル資本主義の混迷、人口減少社会 ー 激流のなかに地方自治の新しい可能性を発見する。
内 容
序 章 「何が起こるかわからない時代」の始まり
第1章 混迷する世界と資本主義のゆくえ
第2章 地方自治の再発見
第3章 「平成の大合併」の検証
第4章 「日本型人口減少社会」と地方自治
終 章 21世紀を生きる
補 遺 講演・地方自治と私
中田 実著『新版 地域分権時代の町内会・自治会』(2017/05/20)
自治体研究社 定価2000円(本体1,852円十税)
人口減少と高齢化のなかで町内会・自治会の役割は何か。活動内容の改善・充実とともに、分権時代に住民の声をすくい上げ、行政に反映する町内会の底力が求められている。政府から負担を強いられる地域の担い手として、まわりの組織やNPOとも協働する町内会の可能性を多角的に分析する。
内 容
第1章 町内会とはどういう組織か
第2章 町内会をどう見るか─立ち位置によって見え方が違う町内会
第3章 町内会における自治の二側面─住民自治の諸相
第4章 地域での共同の暮らしの組織─機能の包括性の意味
第5章 町内会と自治体行政との関係
第6章 地域生活の変化と住民組織の主体性
第7章 地域課題の拡大とコミュニティづくり
第8章 町内会の下部組織と上部組織
第9章 町内会とNPOの協働
第10章 町内会・自治会脱退の自由の意味
第11章 町内会の運営の刷新
第12章 町内会の活動の刷新
第13章 行政からの自立と協働
第14章 地域内分権と住民代表性─地域自治区を考える
第15章 地縁型住民組織の可能性
『習うより慣れろの市町村財政分析』(4訂版)
「地方財政状況調査票」に基づいて大幅改定。分析表を充実させた4訂版!
B5判 168 ページ 定価(本体2500 円+税)
財政デザイン研究所代表理事 大和田一紘
財政デザイン研究所主任研究員 石山 雄貴 著
●基礎からステップアップまで
決算カードと決算統計、予算説明書などを使って、歳入、歳出、決算収支、財政指標を分析する方法を分かりやすく紹介する基礎編と、類似団体との比較、特別会計や補助金の分析、合併自治体の財政分析などを紹介するステップアップ編の53講で財政分析の手法がわかる。
●主な内容
財政を学ぶ心構え・分析方法
赤字か黒字かをみる「決算収支」: 赤字団体?黒字団体?
自治体の収入はどれくらい?(歳入をみる): 四大財源/一般財源と特定財源/経常と臨時/地方税/地方交付税のしくみ/財政力指数 ほか
どこにおカネを使っているの?(歳出のしくみ): 目的別と性質別/「充当一般財源等」
『公共施設の統廃合・再編問題にどう取り組む-計画づくりから本格実施へ-』
角田英明
A5版・32頁 一般普及300円(地域研・自治労連割引単価200円)
全国の自治体では、現在、公共施設等総合管理計画づくりが急ピッチで進められています。
既に2015年度末までに全国30道府県、15指定都市、396市区町村でつくられ、今年度末にはほぼ全自治体で策定されます。これはこれまでのような個別施設の更新、統廃合に止まらず、公共施設全体を中長期的な視野に立って全面的に見直し、再編していくものです。そのため国は、公共施設等の解体撤去や公共施設の集約化・複合化、転用等に係る財政措置を講じて各自治体に計画の策定と実施を迫っています。同時に、この計画は「地方創生」戦略や市町村合併、指定管理者制度などと一体的に進められています。
本書では、こうした状況を踏まえ、政府施策や各自治体の計画内容、今後の取組みの課題、方向を検討しました。皆さん方の活動に活用していただければ幸いです。
はじめに
1.いま、なぜ、公共施設の統廃合・再編か
2.計画の策定・推進に向けた政府の対応
3.各自治体の計画づくりと実施方針(秦野市 さいたま市 相模原市)
4.今後の取り組みの留意点と課題
5.「地方創生」総合戦略と一体的に推進
6.市町村合併の中で進む公共施設の統廃合・再編
7.指定管理者制度における公共施設の再編問題
おわりに
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