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第10号


画像の説明

「いばらきの地域と自治」(第10号)


  • 敗荷や水にいのちの息づかい
  • 水郷の戸毎の小橋小六月
  • 甲斐性なきも身につく木の葉髪

作:高島つよし
(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)



公共事業、業務委託の受注企業に最低賃金の義務づけ
-千葉・野田市が初の条例 ―

 千葉県野田市議会は9月29日、市の公共工事や業務委託を受注する企業に対して一定水準以上の賃金支払いを義務づける、金国初の公契約条例案を全会一致で可決した。来年度の発注分から適用される。
 財政難を背景に公共事業の一般競争入札が広がり、入札価格が低く抑えられるようになった結果、品質の劣化や働き手の賃金低下が深刻になった。「官製ワーキングプア」批判が噴出し、公共サービスの質の低下への懸念も強まっている。野田市の公契約条例に対して、受注企業には戸惑いがある。ある建設会社の幹部は「落札価格を下げて、厳しい競争で受注している。従業員の給与まで行政が決めるのは介入のし過ぎだ」と話す。

 条例によれば、対象は予定価格が1億円以上の発注工事や1千万円以上の業務委託で、下請け企業にも同様の規制が適用される。違反企業には契約解除などのペナルティーが科せられる。同市で1億円以上の公共工事は年平均4件ほど。市は農林水産省と国土交通省が公共工事の積算に使っている労務単価を基準に市長が賃金の最低額を定める予定だ。千葉県内での労務単価は今年度、例えば鉄骨工が8時間1万6700円、配管工が1万8千円。同市は「労務単価の約8割を基本に考えたい」としている。業務委託では、「市の用務員の初任給」を基準に時給829円を想定している。千葉県の今年度の法定最低賃金(728円)よりも100円ほど高くなる。市と業務委託契約する企業は約80社あるが、まずは清掃や設備の運転管理などを行う約20社に限定する。賃金台帳や給与明細の点検に手間がかかるためだという(朝日新聞2009.9.30一部参照)。


  • 資料

野 田 市 公 契 約 条 例

(目的)
第1条 この条例は、公契約に係る業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保することにより、当該業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図り、もって市民が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会を実現することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 公契約 市が発注する工事又は製造その他についての請負の契約
(2) 受注者  第4条に規定する公契約を市と締結した者
(3) 下請負者 下請その他いかなる名義によるかを問わず、市以外の者から第4条に規定する公契約に係る業務の一部について請け負った者
(受け注者の責務)
第3条 受注者は、法令等を遵守することはもとより、公契約を受注した責任を自覚し、公契約に係る業務に従事する者が誇りを持って良質な業務を実施することができるよう、労働者の更なる福祉の向上に努めなければならない。
(公契約の範囲)
第4条 この条例が適用される公契約は、一般競争入札、指名競争入札又は随意契約の方法により締結される契約であって、次に掲げるものとする。
(1) 予定価格が1億円以上の工事又は製造の請負の契約予定価格が1 , 0 0 0 万円以上の工事又は製造以外の請負の契約のうち、市長が別に定めるもの
(労働者の範囲)
第5条 この条例の適用を受ける労働者(以下「適用労働者」という。) は、前条に規定する公契約に係る業務に従事する労働基準法(昭和22年法律第49号) 第9条に規定する労働者であって、次の各号のいずれかに該当するものとする。
(1) 受注者に雇用され、専ら当該公契約に係る業務に従事する者
(2) 下請負者に雇用され、専ら当該公契約に係る業務に従事する者
(3) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「法」という。)の規定に基づき受注者又は下請負者に派遣され、専ら当該公契約に係る業務に従事する者
(適用労働者の賃金)
第6条 受注者、下請負者及び法の規定に基づき受注者又は下請負者に労働者を派遣する者(以下「受注者等」という。)は、適用労働者に対し、市長が別に定める賃金(最低賃金法(昭和34年法律第137号) 第4条第1項に規定する賃金をいう。以下同じ。) の最低額以上の賃金を支払わなければならない。
2 市長は、前項に規定する賃金の最低額を定めるときは、次に掲げる額を勘案して定めるものとする。
(1) 工事又は製造の請負の契約 農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価(基準額)
(2) 工事又は製造以外の請負の契約 野田市一般職の職員の給与に関する条例(昭和26年野田市条例第32号) 別表第1の2の3の項1級の欄に定める額
(適用労働者への周知)
第7条 受注者は、次に掲げる事項を公契約に係る業務が実施される作業場の見やすい場所に掲示し、若しくは備え付け、又は書面を交付することによって適用労働者に周知しなければならない。
(1) 適用労働者の範囲
(2) 前条第1項の規定により市長が定める賃金の最低額
(3) 第9条第1項の申出をする場合の連絡先
(受注者の連帯責任)
第8条 受注者は、下請負者及び法の規定に基づき受注者又は下請負者に労働者を派遣する者《以下「受注関係者」という。) がその雇用する適用労働者に対して支払った賃金の額が第6条第1項の規定により市長が定める賃金の最低額を下回ったときは、その差額分の賃金について、当該受注関係者と連帯して支払う義務を負う。
(報告及び立入検査)
第9条 市長は、適用労働者から受注者等が適用労働者に対して負担すべき義務を履行していないことについての申出があったとき及びこの条例に定める事項の遵守状況を確認するため必要があると認めるときは、受注者等に対して必要な報告を求め、又はその職員に、当該事業所に立ち入り、適用労働者の労働条件が分かる書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
(是正措置)
第10条 市長は、前条第1項の報告及び立入検査の結果、受注者等がこの条例の規定に違反していると認めるときは、受注者の違反については受注者に、受注関係者の違反については受注関係者(第6条第1項の規定に違反しているときは受注者及び受注関係者) に対し、速やかに当該違反を是正するために必要な措置を講ずることを命じなければならない。
2 受注者等は、前項の規定により違反を是正するために必要な措置を講ずることを命じられた場合には、速やかに是正の措置を講じ、市長が定める期日までに、市長に報告しなければならない。
(公契約の解除)
第11条 市長は、受注者等が次の各号のいずれかに該当するときは、市と受注者との公契約を解除することができる。
(1)第9条第1項の報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。
(2)前条第1 項の命令に従わないとき。
(3)前条第2 項の報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
2 前項の規定により公契約を解除した場合において、受注者等に損害が生じても、市長は、その損害を賠償する責任を負わない。
(公表)
第12条 市長は、前条第1 項の規定により公契約の解除をしたときは、市長が別に定めるところにより公表するものとする。
(損害賠償)
第13条 受注者は、第11条第1項の規定による解除によって市に損害が生じたときは、その損害を賠償しなければならない。ただし、市長がやむを得ない事由があると認めるときは、この限りでない。
(総合評価一般競争入札等の措置)
第14条 市長は、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号) 第167条の10の2第3項に規定する総合評価一般競争入札(同令第167条の13で準用する場合を含む。)により落札者の決定をしようとするとき又は地方自治法(昭和22年法律第67号) 第244条の2第3項の規定により公の施設の管理を指定管理者に行わせるため候補者を選定しようとするときは、これらの者に雇用される労働者の賃金を評価するものとする。
(委任)
第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附則
この条例は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。

提案理由
市が発注する工事などの請負業務に従事する労働者の適正な賃金を確保するとともに、業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図ることを目的に制定しようとするものである。


投 稿

市町村の税徴収の実態について

                         

茨城県自治体問題研究所常任理事

筑西市収税課長補佐 角田 明規

 先日、研究所の理事会の席で市役所の税金取立が厳しくなってきたとの話がでた。話している方の勢いにおされて、「私も税の徴収業務に携わっています。」とも言えずにその方の話を拝聴しておりました。
 一般的に税の徴収率は、景気の動向と連動するといわれております。景気が後退すると納税者の生活も厳しくなりますが、徴収率を確保するのが困難になり、徴収職員は忙しくなります。
 小泉構造改革で、地方交付税が減らされる一方、税源移譲で地方税額が増えた結果、地方自治体の歳入に占める地方税の割合が高くなりました。自主財源である地方税を確実に集めなければ歳入不足となり、税収の少ない自治体ほど収納率向上が至上命題となってきています。

 さらに、茨城県についていえば特別な事情があります。それは、地方税の徴収率が全都道府県の中で常に40位前後に低迷しているということです。全国に先駆けて県と市町村合同で地方税滞納整理の「茨城租税債権整理機構」を設置しています。また、県内の市町村は、県民税ベースで徴収率90パーセント未達成の場合、県単独補助金カットのペナルティーが科せられますので、滞納額の圧縮に力を注がなくてはなりません。
 私も収税課に異動して3年になりますが、昔の収税課のイメージと現在行っている業務ではまったく様変わりしていると感じております。滞納整理の手法が臨戸訪問(集金)から滞納処分(督促→財産調査→換価→配当=税充当)が主流になってきています。つまり、滞納者に対して、国税徴収法に準じて国税職員と同様の滞納整理ができないと、徴税吏員としての仕事を完結できなくなってきています。滞納処分も昔の不動産や電話債券差押からより換価し易い、預貯金・生命保険の解約返戻金・さらには自動車や押収物件のインターネット公売と多岐な手法が取り入れられています。

 以上、滞納処分の実情を述べましたが、滞納すれば全てが処分ということではありません。やはり、市役所の徴税吏員は住民と一番身近で収納業務を行う職員ですので、特別の事情がある方については、納税の相談にのってくれるはずです。滞納状態に陥りそうな時には、まず自分の街の役所に納付の相談に行かれることをお勧めします。

 最後になりましたが、現在のように非正規労働者や低所得者が増えている時には、広く薄く税負担をさせる現在の課税方式を止め、昔のように所得に対して逆進性を強めるような累進課税方式に戻す税制改正が必要なのではと思っております。徴収強化よりも租税負担の見直しによる税収確保が求められているのではないでしょうか。


          

O B 懇 は 刺 激 の 源 泉 


茨城県自治体問題研究所理事

同研究所自治体OB懇談会世話人代表

恵 田 三 郎

 

                      
 一昨年のOB懇総会は矢祭町で行った。合併しない町宣言で有名になった根本前町長の講演を聞いた。深く感動した。強い刺激を受けた。昨年は体調不良で欠席してしまったが、今年の笠間の県窯業指導所での総会。「笠間焼の歴史と魅力」を話された安藤先生の講演も新鮮な刺激だった。
 まず根本前町長の話からふり返ってみたい。私心なく、住民のためにいい仕事を積み上げる、そこから信頼関係が生まれ、それが力になってさらに又、大きな仕事が可能になる。好循環が生まれていく姿が目に焼きついた。「もったいない図書館」は象徴的だ。全国から40万以上の善意の図書が送られ、しかもその整理、運営に町民の力が大きくかかわっている。ホラ話でなく坦々と語る根本さん。実績を語ることの大切さを痛感した。
 その影響をモロに受けて昨年、つくば市民白書づくりに参加した。「自慢じゃあるが・・・」ということで豊里町時代の実績を書いた。書きながら、本気になって“住民のために”いい仕事をやろうとすれば、そしてそのために仲間が手を組めば、すごいことができるんだなとしみじみ思った。昨今の状況を対比しながら自治体労働者の役割の大切さを痛感した。
 合併やむなしとなった昭和62年の秋だった。組合の賃上げ闘争には批判的だったTさん。彼は精農家で村の顔役でもあるのだが、彼が真顔で云った。「農政課の職員は月給2倍でもいいな」、「農政課だけ合併しないというわけにはいかないのけ?」・・・と。「住民本位は貫けたな」と実感した、と白書の原稿をしめくくった。
 年が明けてからの合評会では、辛口評論で定評の出版会社社長Tさんから「恵田さん!ホンのうわっつらしか書いてないな。書きにくいところを書かないとダメだよ。」との批判をもらった。
 たしかにそうだ。“実績”のウラにはいろいろな苦労がある。トップとの軋轢、同僚の足をひっぱる、部下の抵抗・・・etc 。そのことを書けば迫力が出てくる。ドラマになる。しかし、リアルに書くと傷つく人が必ず出てくる。なかなか書けない。だが、何らかの方法で残す必要はあるなと、その時思った。

 今年の笠間での総会。陶研究家の安藤先生の話は特別な刺激となった。「うつわを味わって下さい」という意味の言葉が特に心に残った。考えてみると、今まで日常生活の中でうつわを味わうなどの余裕はあまりなかった。
 2、3年前、木工作家のGENさん(彼は実は下戸なのだ)が「風呂上がりに庭の木を眺めながらブランデー仕込みの梅酒を傾けるのはまさに至福の刻だね」と言ったことがある。そのせりふを思い出して、今年はブランデー梅酒もやってみたいのだが・・・。
 うつわを味わう(・・・・・・・)ことから、もうそろそろできた頃だなと気付いて床下から出してみた。はじめての梅ブラン、見事な琥珀色が現れた。安藤先生の話を思い出しながら、笠間焼ならぬ札幌びいどろ水色グラスに、ごく内輪に注いで軽く口に含んだ。いい香りだ。うまかった。野放し状のわが家の木々。そこに集まる小鳥や蝶たちを眺めながら至福の刻を味わった。
 そして、総会の学習会での刺激もさることながら、OB懇の多彩な顔ぶれこそは刺激の源泉。顔を合わせるのは時々だけど飲みながらのダベリング。そのときが楽しみなのだ。大げさじゃなく、生きる力なのだ。
 その多彩な顔ぶれには次号あたりからリレー随想として登場してもらえればありがたい。


あとがき/ 

 9月の新聞から本紙の月間自治ニュースに掲載する記事を拾っていたら、野田市の公契約条例が目にとまった。財政難で国や地方自治体が価格切り下げをしたしわ寄せが、入札した企業の働き手の賃金低下につながり、「官製ワーキングプア」だと批判が噴出。 公共サービスの質の低下への懸念も強まっていると。働き手に目配りした公共事業・業務委託の発注を条例で制度化した英断に拍手をおくりたい。
 東京都国分寺市は07年に決めた調達の基本方針で「適正な労働条件と賃金水準の確保に努めること」を盛り込み、北海道旭川市は08年、「長期的な雇用や労働条件の向上」をうたった「公契約に関する方針」を策定したが、いずれも理念や努力義務にとどまり、具体的な賃金水準に踏み込んだ例はなかったという。
国の最低賃金法との関係や、財政支出増加の懸念が背景にあると考える。
 兵庫県尼崎市議会では今年5月、賃金の最低額を市が定めるとした議員提出の条例案が否決された。市側が「法令違反の疑いがある」と反発したためだ。条例推進派の市議は「市は財政負担のアップも気にしたのでは」と見ている。
 いずれにしても、公共団体が民間と事業契約を結ぶにともなって民間の当該事業に介入することは、公共の責任として当然である。事業の働き手のみならず、事業によって不利益を被る部外の第三者(多くは地域住民)にも発注者としての公共団体は責任を負っているというような観念がこれから重要であろう。


                           

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