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第174号

第174号

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第174号

2023・06・24更新

大津港全景 (2)
70%,大津港 (2)





大津港=北茨城市

 茨城県北茨城市の大津港は、古くから地域の漁業を支え、現在でもまき網漁などで年間数万トンの漁獲量を誇る。港内の海産物直売所・「大津港ようそろー物産館」は連日大入り満員である。




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岸田政権の安全保障戦略は根本的に間違っている 

 憲法を守って国が守れるのか、と自民党幹部は言うが、憲法を守らずに国を守れるのか、憲法を守らないで守る「国」とはいったい何なのか、が問われなければならない。
 さらには主権国家が自国の憲法の制約を自ら無視して、遠く離れた軍事超大国(米国)との軍事同盟の一体化を際限なく進めることで、本当に国民を守れるのか。
 日本の安全保障政策が守るべきは、日本国民の生命、自由および幸福追求の権利であり、日米同盟でもなければ、アメリカの東アジアにおける覇権でも権益でもない。アメリカが自国の権益を守る安全保障政策の手段のひとつとして日米同盟を選んでいるように、日本もまた日本国民の生命、自由および幸福追求の権利を守ることをその安全保障政策の目的として最優先するのが当然であり、 日米同盟一辺倒の自衛隊へと変質させるのはそもそも本末転倒であるだけでなく、喧伝される日本防衛の「抑止」の強化にさえ繋がらないことを直視せねばならない。
 軍事超大国であるアメリカは、自国の国民や領域を守るためではなく、他国を戦場に自国の権益を守るために戦争をする国である。他方、日本が戦争をするとしたら、憲法の制約上、 それは本来自国の国民や領域を守る時だけに限られている。しかし集団的自衛権の行使を容認してしまったことで、日本は今やアメリカが他国で行う戦争に巻き込まれるリスクを抱えている。当然のことだが、アメリカが同盟を結んだり、集団的自衛権を行使したりするのはアメリカの政治イデオロギーや経済的権益のためであって、同盟国の国民を守りぬく目的ではなく、このため、ひとたび戦場になった国の国民の犠牲は避けられない。
 
( 以上の考えを詳述しているのが、市民連合の『現況における安全保障政策についての基本的な考え方』である )

                 

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今月の俳句

通院に慣れ六月の風重し
   父の日の傘立にある父の杖
濃紫陽花(こあじさい)城址といふも石一つ  
   息災の日々に慣れゆく更衣(ころもがえ)
通院の右も左も麦の秋


高 島 つよし

本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問

 寄 稿 

何故、最低賃金全国一律1500円なのか

岡野 一男(茨城労連 事務局長 )

 
 茨城県の最低賃金は、前年よりも32円引き上げられて2022年10月から911円になった。最近の物価高対策として、茨城労連は2023年1月31日に茨城労働局に「最低賃金の再改訂の諮問を求める要請書」を茨城労連の各組織から集めて15通提出した。
 茨城労働局の回答は、再改訂の諮問はできないが、要請書が届いたことは厚生労働省と茨城地方最低賃金審議会委員に伝える、だった。全国的に取り組まれた要請行動の結果か、厚生労働省は最低賃金の引き上げの目安額を示す都道府県の区分について現行の4ランクから3ランクに削減した。Bランクの中間層を増やすことで、全体の水準の底上げや地域間格差の是正につなげることを考えた結果と報じられたが、全国一律1500円を実現しなければ具体的には何も変わらない。
 最低賃金を1500円にしようという世論は以前から比べれば大きくなっているが、「1500円は高すぎないか」という声があるのも事実である。しかし、時給1500円は月収25万円、年収300万円なので、それほど高い金額ではない。現在の最低賃金が低すぎるということを問題にしないと1500円は高い金額なってしまう。
 非正規労働者が全労働者の4割を占める中で、非正規労働者は最低賃金ぎりぎりの低賃金(最低賃金近傍)で働いている。茨城労連が調査した昨年12月の全市町村対象の公契約アンケートでは、5市で昨年10月の会計年度任用職員(非正規職員)の時給が911円以下だった。茨城の会計年度任用職員の最賃割れは、茨城自治労連などのとりくみによって、県からの指導が入って時給額が変わり、差額分も後日支給された。
 最低賃金近傍で働く労働者が4割を占めるようになって、若者の購買意欲の低下にもつながり、結果的に地域経済に悪影響を及ぼしている。私が教員になった1980年代は、高校生は高校を卒業すると親から新車を買ってもらっていた。当時の高校生は中古車に乗っていた私に対して「先生しけた車乗っているね。俺たち新車だよ」と誇らしげに語っていた。しかし、退職する2010年代になると親にお金を出してもらえず、教習所に通えない高校生がかなりの数になっていた。
 大学や専門学校の授業料もかなり高額になり、大学に進学するために貸与型奨学金を借りて、就職したら奨学金返済生活に入る若者がかなりの数になっている。最低賃金を1500円にして、消費意欲を持った税金の払える若者を作り出し、健全な社会をつくっていく必要がある。
 最低賃金の2つめの問題は、全国一律でないので都道府県によって最低賃金額に格差があることだ。県境の取手市などでは看護師や介護士、保育士などのケア労働者が千葉や東京で働き、取手市に就職する若者が激減している。私は、20年以上前に取手市の取手松陽高校に勤務していたが、「何で取手でアルバイトしないの」と聞いた私に彼らは「最低賃金が違うから給料が全く違うんだ。先生はそんなことも知らないの」と言われた。最低賃金が全国一律でないため、ケア労働者や若い労働者が他県で働くことは健全な地域経済を考えても改善されなければならない。
 しかし、一方で東京は生活費が高いから最低賃金が高くても仕方ないという考え方をする人もいる。茨城労連が2020年に実施した最低生計費試算調査では、水戸市在住の25歳単身男性の最低生計費は25万2087円で、時給に直すと1687円だった。この金額は一年前に実施された東京の北区よりも高い金額だった。全国20数県で実施された最低生計費試算調査では、東京など都市部は住宅費は高いが茨城など地方は車の維持費など交通費が高く、最低生計費はほとんど同じという結果が出ている。
 最低賃金の3つめの問題は、中小企業支援が非常に不充分だということである。2021年に茨城労連が市町村議会に提出した最低賃金の引き上げと中小企業支援の充実を求める請願書に賛成していただいた土浦市議会のある市議さんは「私は長年中小企業を経営してきた。しかし、社会保険料の事業主負担が大変で給料を上げられなかった。しかし、給料を上げないと優秀な社員が雇えなかった。最低賃金を上げても中小企業がやってけるように支援を充実すべきという茨城労連の請願に賛成だ」と賛成の声を上げてくださった。
 「最低賃金を上げたらやっていけない」ではなく、最低賃金を上げてもやっていける中小企業支援を充実し、最低賃金を上げて全ての労働者の賃上げを国が先頭に立って実現していく必要がある。茨城労連は、引き続き最低賃金全国一律1500円をめざし、とりくみを強化する。

事務局たより

第49回茨城県自治体問題研究所総会のご案内

と き:2023年7月9日(日)午後1時30分から4時
ところ:茨城自治労連会館
       (つくば市花畑3-9-10電話:029-864-2548)

記念講演 東海第二原発避難計画と再稼働
   講 師 : 佐 藤 英 一 氏 (当研究所 理事)

* 22年度活動報告・会計報告・監査報告・23年度活動方針・予算・役員改選

23年度議案の概要はコチラ‘23年茨城自治研活動方針

イラスト1


今月の 川柳

軍拡の百鬼夜行の宴かな 
   同じ事語って心をかすめとり
お祓いもせずに首脳の核談義 
   物価高しり目に株があばれ出し 
廃絶は虹の彼方へまわし蹴り 
   豪雨にはAIさえもお手を上げ 
入管法シンドラーが泣いてます 
   どうするの葵の花が凛として 
マイナカード他人の顔がのぞきこみ
   ツユ空に枇杷ひとつぶがこぼれ落ち  


泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)


新刊紹介

●デジタル化の「落とし穴」に目をつぶってはいけない'

『デジタル化と地方自治自治体 - DXと「新しい資本主義」の虚妄』

岡田知弘・中山徹・本多滝夫・平岡和久著 A5判並製カバー、174頁 定価1870円

 2017年度から21年度までの5年間に、マイナンバー(カード)の紛失・漏洩事案は5 万6000件を超えた。最近でも、マイナンバーカードを活用した行政サービスで、システム上のトラブルが相次いでいる。コンビニで他人の証明書が誤交付され、マイナ保険証や公金受取口座で他人の情報がひも付けされるなど、混乱をきわめている。
 いずれも個人情報が他人に見えてしまう深刻な不具合だ。個人情報の漏洩は人権侵害問題に直結する。また、地域活性化の手段とされる「デジタル田園都市国家構想」はブラックボックスを抱え込んで、市民を置き去りにして、企業中心の事業へと展開する。
 こうして、地方行政のデジタル化はデジタル集権制の性格を強め、地方自治の基盤を揺るがす危険性に満ちている。

目次 第1章●岸田政権の「新しい資本主義」論と経済安全保障・DX=岡田知弘(京都橘大学教授)第2章●デジタル田園都市国家構想の概要と問題点=中山 徹(奈良女子大学教授)第3章●デジタル社会と自治体=本多滝夫(龍谷大学教授)第4章●デジタル化予算と国家財政、自治体財政=平岡和久(立命館大学教授)

準新刊

デジタルシリーズ いま、何が問題か

『医療DXが社会保障を変える』
● マイナンバー制度を基盤とする情報連携と人権

稲葉―将・松山洋・神田敏史・寺尾正之著
定価1210円 

 国民の個人情報・医療情報・健診情報が連携されるデータプラットフォームづくりのねらい

『デジタル改革とマイナンバー制度』
● 情報連携ネットワークにおける人権と自治の未来

稲葉―将・内田聖子著
定価990円

マイナンバーカードとマイナポータルの仕組み

『保育・教育のDXが子育て、学校、地方自治を変える』
● 子育て・教育の枠を超えて、こどもの個人情報が利活用される

稲葉―将・稲葉多喜生・児美川孝一郎著
定価1100円

『デジタル改革と個人情報保護のゆくえ』
● 「2000個の条例リセット論」を問う

庄村勇人・中村重美著
定価990円

自治体が守つてきた個人情報はデジタル化でどうなるのか

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