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第173号

第173号

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第173号

2023・05・24更新

2023憲法大集会2 (2)

2023 (2)


2023年 憲法大集会=東京・有明防災公園

 「あらたな戦前にさせない!守ろう平和といのちとくらし2023憲法大集会」で護憲を訴える参加者たち=東京都江東区で2023年5月3日(毎日新聞)





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 寄 稿 

 茨城県内市町村の脱炭素転換と地域発展 

歌 川 学(産業技術総合研究所)

 世界で気候危機回避のために脱炭素、温室効果ガスの排出削減が求められている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告によれば、気候危機回避の目安である産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑制するには世界で2030年までに2019年比でCO2をほぼ半減(48%減)、2050年には実質ゼロが必要である。一人当たり排出量の多い先進国は日本も含めてより多くの削減が求められる。
■脱炭素対策は地域発展のチャンス
 脱炭素対策はお金がかかると思われているが逆である。現在多額の光熱費を支払い、一部は燃料業者などの利益としても多くは地域外さらには国外へ流出している。茨城県内の企業・家庭・公的機関の支払う2018年の光熱費は約1.3兆円と推定される。市町村でも水戸市内で約800億円、つくば市で約1000億円などと推定される。脱炭素は環境保全と同時にお金の流れを変え、地域発展・地域の雇用創出・定住人口拡大のチャンスでもある。
■対策は主に省エネと再エネの既存技術普及、投資回収可能
 地域の脱炭素対策の柱は省エネと再生可能エネルギーで、既存技術とその改良技術の普及により大きな削減が可能である。省エネ対策の代表は、更新時に設備機器を省エネ型に更新すること、建替の際に断熱建築を選ぶこと、車の買換時に省エネ型を選び今後は電気自動車に転換するなどである。大半の対策は(電気自動車など比較的新しい技術の普及初期などを除き)設備費増加分を光熱費削減で賄う、つまり「もと」を取ることができる。
 地域の再生可能エネルギー可能性は環境省が市町村ごとに発表している。茨城県全体で年間エネルギー消費量の約3倍の県内発電の可能性がある。各市町村でも水戸市で年間消費電力量の2.3倍、つくば市で2倍の年間発電量の可能性がある。地域で、地域の企業・家庭・自治体など地域主体が中心に、乱開発を防止しながら開発・運営し、収入も地域で得ていく可能性がある。再生可能エネルギーのうち太陽光と風力の発電コストは購入電力価格より安くなり、「もと」を取ることができる。
■地域の排出削減
 地域の2050年までの対策でどの程度の削減ができるだろうか。対策は建物・建築の更新の際の省エネと、再生可能エネルギーの拡大を見込む。茨城県全体では2030年にエネルギー起源CO2排出量を2013年比60%削減可能である(製鉄所の減少がない場合にもこれだけ可能)。2050年には既存技術とその改良技術の普及で95%削減、新技術も一部導入して100%削減になる。水戸市の場合は2030年にエネルギー起源CO2排出量を2013年比60%削減可能である。2050年には既存技術とその改良技術の普及で99%削減可能である。
■地域発展との両立
 対策は地域発展に活かすことができる。まず省エネ・再エネ設備投資の一部、例えば断熱建築施工、省エネ機器の設置や取次などは地元企業受注の可能性がある。次に省エネ光熱費を削減、また再生可能エネルギーの売電収入あるいは自家消費で光熱費を削減し浮いたお金を地域で支出、地元企業が支払い先になる可能性がある。
 対策で茨城県の光熱費は2050年までに7000億円以上、6割削減、水戸市、つくば市でも400億円以上減少、率にして半分になる。設備費と光熱費の合計も削減が続く。毎年の設備費は茨城県で年間3000億円規模、水戸市やつくば市で250〜350億円規模になる。
 対策を地域発展に活かすには、対策を地元で行い、再エネなら地元主体が設置、省エネ工事などを地元企業ができるだけ受注していくことが課題である。自治体が脱炭素対策で総合的な地域計画・地域戦略を組んでいることが課題である。対策で専門的知見の普及のためのエネルギー事務所や建築・機械などの専門家の協力体制も課題である。こうした課題を自治体、地域住民、地域の市民団体や様々な組織、地域企業などで議論し、また自治体問題研究所で議論し地域課題解決とも両立させていくことが望まれる。

ドイツ「原発ゼロ」を実現 福島原発事故受け、G7初

 ドイツは4月15日、福島原発事故を受けて決めた「原発ゼロ」を実現した。稼働中の最後の原発3基が同日夜(日本時間16日朝)送電線から外れて運転を停止し、国内の原子力発電量はゼロとなった。
 同事故後に「原発ゼロ」が実現するのは先進7ヵ国(G7)で初めて。
 当初は2022年末までに「原発ゼロ」を予定していたが、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー供給不安や価格高騰に直面し先送りしていた。政府は22年時点で総発電量の46・3パーセントを占める再生可能エネルギーをさらに拡大し、30年までに80パーセントにするとしている。
 ドイツではこれまで33基の原発が稼働。完全解体を終えたのは3基。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定は進まず、廃炉とともに重い課題が残る。                    

げんぱつ第409号2023.4.25付

                 

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今月の俳句

鐘の音の余韻短かき朧(おぼろ)かな
   農具の柄持てば冷めたし浅桜
鯉浮きて湖面を揺らす夏隣(なつどなり)  
   耳鳴の一日永し五月来る
忖度に縁なき余生風薫る


高 島 つよし

本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問

事務局たより

理事会・総会の案内

第5回理事会    
    
と き : 6月17日(土)午後1時30分
ところ : 茨城県立青少年会館(2階小研修室)

・第49回総会の提出議題
・会費の改定案
・その他

第49回茨城県自治体問題研究所総会

と き:2023年7月9日(日)午後1時30分から4時
ところ:茨城自治労連会館(つくば市花畑3-9-10電話:029-864-2548)

記念講演:「東海第2原発避難計画について」
講  師:佐藤 英一氏 (当研究所 理事)

・22年度活動報告、会計報告、監査報告、23年度活動方針、予算、役員改選 その他。

第4回理事会の報告

叶谷 正(茨城県自治体問題研究所事務局長)

 4月30日(日) 茨城自治労連会館において、理事14名が参加して、第4回理事会が開催された。開会に先立ち、田中理事長が挨拶に立ち、議事については、経過、今後の予定、会員等現況を一括して報告し質疑の後、報告事項、協議事項について、報告・提案され、討議が行われた。
以下、主な発言内容を報告します。
(第3回茨城自治研合同セミナーの報告は、所報第172号(5月号住民と自治に掲載)で詳細を報告しているので割愛する。)

 地域研究所事務局長連絡会議の報告では、自治体問題研究所の魅力拡大へ向けて、会員向けサービスの拡充、有料Webサービスの創設、自治体学校のあり方などについて話し合われた。
 組織拡大推進については、2022年度、個人会員1件、団体会員2件、読者が2件増加したが、目標には達しなかった。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、イベント等の活動が長期にわたって制限されてきたが、他の活動が徐々に再開されてきており、研究所としては、今後、学習会・セミナー等の活動を再開し、併せて会員・読者の拡大に努めて行くことを決めた。
 東海第二原発災害時の避難計画調査検討では、7回の調査検討委員会と4市の巡回調査、2回の学習会(水問題、放射能拡散)を行った中で、課題や問題点が続出している。今後、県関係部署への調査や申し入れ等を行い、広域避難計画を策定した自治体の巡回調査した総括(案)をまとめ上げ、その成果を広く県民に提供できるよう、討議進めて行くことを決定した。

会費の改定については、

【 研究所会費】・【「住民と自治」誌代】の値上げについて
規約改正(案)   <2023.7.9 第49回総会 議案として>

項目名1項目名2
第30条 会費は、次の区分による。
(1) 普通会員    月額 950 円
(2) 研究者会員   月額 950 円
(3) 団体会員一口月額1000円
(4) 賛助会員    月額1250円
第30条 会費は、次の区分による。
(1) 普通会員    月額 1160 円
(2) 研究者会員   月額 1160 円
(3) 団体会員一口月額 1200円
(4) 賛助会員    月額 1250円

付 則 第8回改正:2023年7月9日。  施行日:2023年7月9日。

《改正理由等》
 『住民と自治』の誌代が2023年3月号より、定価590円から800円(本体727円+税)に値上げになったことから、本研究所の経営維持を図るため、会費の引き上げを提案するものである。なお、賛助会員は、据え置きとする。

【誌代】(2023年7月請求から〔2023年7月~2023年12月の6か月請求〕)
・定価800円[半期4800円](現行:590円[半期3540円])

その他
・日立産廃処分場建設撤回を求める署名の取り組み
・大津漁協 雇用調整助成金詐欺事件裁判の取り組み
・ 〃   不当解雇事件の公平な判決を求める署名の取り組み

イラスト1


今月の 川柳

雑草とはどんな草かと見る図鑑 
   大地震あれから百年すぐそこに
AIに脳をとられて骨と皮 
   武器見本殺し殺され死の砂漠 
頂上で核廃絶の民の声 
   マイナンバー俺の命にトゲささり 
子育てに百花繚乱水がもれ 
   世直しにあまたの女ふてくされ 
選択肢ミルクライスかミサイルか
   鯉のぼりウロコ一枚手のひらに  


泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)


新刊紹介

デジタルシリーズ いま、何が問題か

『医療DXが社会保障を変える』
● マイナンバー制度を基盤とする情報連携と人権

稲葉―将・松山洋・神田敏史・寺尾正之著
定価1210円 

 国民の個人情報・医療情報・健診情報が連携されるデータプラットフォームづくりのねらい

『デジタル改革とマイナンバー制度』
● 情報連携ネットワークにおける人権と自治の未来

稲葉―将・内田聖子著
定価990円

マイナンバーカードとマイナポータルの仕組み

『保育・教育のDXが子育て、学校、地方自治を変える』
● 子育て・教育の枠を超えて、こどもの個人情報が利活用される

稲葉―将・稲葉多喜生・児美川孝一郎著
定価1100円

『デジタル改革と個人情報保護のゆくえ』
● 「2000個の条例リセット論」を問う

庄村勇人・中村重美著
定価990円

自治体が守つてきた個人情報はデジタル化でどうなるのか

以上、自治体研究社 〒162-8512東京都新宿区矢来町123矢来ビル4F
TEL 03-3235-5941 FAX(03-3235-5933  

準新刊

住民の学習と自治を発展させる実践を紹介

地方自治の 未来をひらく 社会教育

社会教育・生涯学習研究所 監修 辻 浩・細山俊男・石井山竜平
A5判・150頁/定価1870円 自治体研究社

 地域づくり、ひとづくり、歴史を知る会、おしゃべり会、保育園、デイサービス、子育て広場、 子ども食堂、フードパントリー等の運営、これらはすべて社会教育に関わる実践。社会教育は人びとの自発的な学びを支援することを通して、一人ひとりの可能性を拓き、人生を豊かにするも のである。
 本書では、各執筆陣がそれぞれに力を入れている社会教育の取り組みを紹介するとともに、そのための適正な労働のあり方も考える。住民とともに自治をつくる姿がここにある。

学生・市民のための画期的なテキスト!

入門 地方財政  地域から考える自治と共同社会

平岡和久・川瀬憲子・桒田但馬・霜田博史 編著 
A5判並製カバー、416 頁 定価 2970 円

【推薦のことば】 
 地方財政は民主主義の基礎である地方自治の顔です。「ヨーロッパ地方 自治憲章」のように、日本も分権改革をしましたが、肝心の財政改革は未完に終わっています。しかし東京一極集中を是正し、温暖化や地震による大災害を防止するためには、 地方自治体の力、特に財政の自立・自治が必要です。この本は地方財政の歴史、制度の 具体的な解説と評価、さらに地域経済やコミュニティの政策をわかりやすく説明した市民のための必須の教科書です。
 
宮本憲一(大阪市立大学名誉教授・滋賀大学元学長)
 私たちの生活に密接に関わる地方財政を、理論・制度、個別テーマ・分析、改革・展望の観点から解説します。地域で起っている具体的な問題や優れた地方自治の実践例も紹 介する画期的なテキストです。大学での教科書、地域での勉強会に最適です

デジタル化シリーズ(既刊)

デジタル改革とマイナンバー制度
―情報連携ネットワークにおける人権と自治の未来―

稲葉―将・内田聖子著 定価990円

概要;マイナンバー制度の3つの仕組みとは何か、マイナポータルを通じた情報連携で公共サービスはどう変わるかを解説する。さらに、EUなど海外の事例に学び、日本のデジタル化政策の在り方を問い直す。

自治体の財政は、こんなにも分かりやすく、おもしろくて、大切なことです

自治体財政を診断する
―『財政状況資料集』の使い方―

森 裕之 著
A5判、150頁 定価1870円 自治体研究社

 『財政状況資料集_の「経常経費分析表」「歳出決算分析表」「健全化判断比率」などをページごとに解説して、データが示す多面的な情報を読み解きます.そこから浮き彫りになる自治体のさまざまな政策課題をとらえます]自治体の財政が分りやすく、大切であることを示して、市民や議員が財政にアクセスするための必携の一冊です。

生まれる前から、子育て・教育の枠を超え「子どものデータ」が収集・利活用される ‼

『保育・教育のDXが子育て、学校、地方自治を変える』

稲葉 一將, 稲葉 多喜生, 児美川 孝一郎 著

A5判 98頁 定価1100円(税込み)  2022年 11月10日発行

概 要
 デジタル改革によって、子どもの個人情報が大量に収集、集積、利活用される仕組みが準備されている。
 本書では、Ⅰこども家庭庁の設置を前に、複数の行政組織や自治体の部局を超えて「こどものデータ」が連携・集積される構図とその意味すること、Ⅱ保護者と保育園をつなぐ保育支援システムによってこどものビッグデータがテック企業に集積される仕組みとその意味すること、 ⅢGIGAスクール構想の先ですすむ「教育DX」政策が公教育にもたらすものを整理する。「こどものデータ」の収集と利活用は、子ども像を変えるだけでなく、子育て・教育に携わる専門職の存在や自治体行政の姿を変えることにつながる。

主な内容
Ⅰ 子どものデータ連携と行政組織における調整の強化―こども家庭庁新設の地方自治への影響……稲葉一将
 国家によって形成される「デジタル社会」の特徴/子どもと行政に及ぶ「デジタル化」/転形期の子どもと行政
Ⅱ 保育業務のSaaS化とテック企業のデータ寡占―保育と一体で行われる子どもデータの収集……稲葉多喜生
SaaS で行われる保育データ収集の意味すること/企業任せとなっている個人情報収集/便利さの背後で進む、テック企業のデータ寡占化/子どものデータ連携で変わる保育
Ⅲ 教育DXが学びと学校を変える……児美川孝一郎
「Society 5.0 型教育改革」の構想―EdTech を通じた教育 DX の実現へ/GIGA スクール構想とコロナ禍の教育政策/教育 DX は学びと学校をどう変えるか

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