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第40号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

(第40号) (2012・04・21発行)

4.1さよなら原発大集会.jpg

「4.1さよなら原発大集会inいばらき」笠松運動場

3千人を超える参加者が東海第2原発の再稼働中止・廃炉を求める意思を確認した、脱原発で史上最大の県民集会。

冷え症に追い打ちかける消費税
再稼働電信柱に花が咲き  
九条の風をはらんで泳ぐ鯉
ロケットに民の苦しみみんな詰め

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

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またまた憲法「改正」の大合唱が聞こえる

 自民党は今年3月3日、憲法改正推進本部で「憲法改正原案」を決め、4月上旬に総務会で原案の中間報告をとりまとめると発表。産経新聞社は、憲法起草委員会を社内に立ち上げ、社創立80周年を迎える来年6月に「新憲法案」を提案すると発表。
 いずれも、なんと昨年の東日本大震災および福島第一原発事故の復旧処理の遅れを口実に、「非常事態に対処する規定が不備だ」といって現憲法の「欠陥」を責め立て、「非常事態」(内閣独裁)規定を盛り込む憲法「改正」を主張。
 さらに、「中国が尖閣諸島に触手を伸ばし、北朝鮮の核開発が我が国の安全や主権が脅かされている」のに軍事対応が不十分だとして安全保障の転換=強力な自衛軍の保持、軍事的威嚇の行使を構想している。 
 この動きを誘引しているのが橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」の憲法批判である。「9条は、他人が本当に困っているときに自分は嫌なことはやりませんよという価値観だ。」とけなし、「改正の是非について、2年間の国民的議論を経て国民投票にかける方策を維新八策に盛り込む」と宣言。「大阪維新の会」は、「維新八策」を次期衆院選挙のマニフェストであると公言し、選挙で現憲法の改定に国民の「同意」を獲得しようと狙っている。
 自民党も民主党も公明党も「大阪維新の会」に秋波をよせ、連携を追い求めている現実をみるとき、以上の憲法改定の策動を軽視することは、取り返しのつかない結果をまねくことになる。(T.T)  

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食 料・農 業 守 る 政 策 を

二平 章(茨城大学地域総合研究所客員研究員)

 農林水産省が2011年11月にまとめた「海外食料需給レポート」は、世界の穀物在庫率(年間消費量に対する期末在庫量の割合)が10年以内に危険水準に入ると指摘した。つまり、世界の穀物需要量の伸びに対して生産量が追いつかないとしたのである。FAO(国連食糧農業機関)は、世界で安全な穀物供給保障のための必要最低限の在庫率水準は、穀物全体で17%から18%であるとしている。レポートの予測では、この在庫率が年々低下して2020年度には14.0%にまで低下するというのである。しかも、作柄が平年並みのときの予測で、干ばつや洪水が起こるとさらに低下の恐れもでてくる。
 予測を裏付けるように、穀物の国際価格の上昇が顕著である。2006年に比較して近年、世界の穀物価格は1.5倍から2.6倍にまで高騰した。価格高騰の背景には、異常気象による減収や世界人口の増加、インド・中国などの新興国における食料需要の急増、穀物からバイオエタノールを生産する非食用需要の急増、巨額な投機資金の商品市場への流入があるとみられている。穀物価格の高騰を受け、穀物輸出国では、干ばつに見舞われたロシアをはじめとして、自国産の穀物輸出を禁止したり輸出規制をかける国が増えた。また、フィリピン・パキスタンなど11カ国では、食料危機に起因して暴動も発生した。
 2011年5月に発表された国連の「世界人口推計」によれば、現在70億人の世界人口は2050年には93億人、2083年には100億人を越えると予測されている。人口増加にともなって食料需要は高まるが、温暖化問題もあって耕地面積の増大は期待できず、今後、世界の食料事情は一層厳しさを増すといわざるを得ない。
 このような中、世界の国々の食料危機への備えはどのようになっているだろう。主な先進国の穀物自給率は、2007年統計で、オーストラリア175%、フランス164%、米国150%、ドイツ102%、イギリス92%、イタリア74%である。ちなみに、日本の穀物自給率は28%、世界の177国のうち実に124番目、世界の主要国であるOECD加盟30カ国の中でも27番目である。また、日本を含む人口1億人以上の国、10カ国のうち9カ国が穀物自給率は84%から150%であるのに対して、日本だけが28%と異常に低い。世界では人口規模が大きい国ほど穀物自給率は高いが、日本は人口大国であるにも関わらず食糧危機に対する自国での備えができていない。 
 今年は、「例外なき関税撤廃」を掲げた自由貿易協定TPP(環太平洋連携協定)への参加問題も大きなニュースとなった。農林水産省では関税がゼロとなった場合、米は90%、小麦99%、小豆71%、コンニャクイモ90%、加工用トマト100%、牛乳乳製品56%、牛肉75%、豚肉70%の国内生産量が打撃を受け減少する計算結果を示し、食料自給率(カロリーベース)は現在の40%から13%に低下すると推算した。食料危機に向かう国際情勢下にあっては、食料自給率の向上をめざし、食料・農業を守る政策こそ国の進むべき道である。貿易自由化だけが国際的流れではない。国連人権理事会では新自由主義による貿易の自由化で飢餓が広がったと批判し、各国の食料に対する権利を尊重する「食料主権」の考え方が大切であると報告している。

 本稿は、 二平 章氏のご厚意により、茨城新聞2011年12月24日掲載「茨城論壇」から転載。 

資料

原発再稼働は「無基準」、 まともな統治能力なし

中祖 寅一

 
 野田政権は、福井県にある関西電力大飯原発3、4号機の再稼働に向け、関西電力が提出した工程表(安全向上計画)について、「(新基準に)おおむね適合」、「安全性はおおむね確認された」(枝野幸男経産相)として、週末にも再稼働の判断に踏み切る構えを見せています。
 野田政権がこれまで示してきた、ストレステスト(耐性試験)の1次評価に基づく再稼働への「政治判断」をあきらめ、「新たな基準」の作成を指示したのが4月3日です。それから3日目の6日に「新基準」が関係閣僚会議で示され、その3日後の9日に関西電力が「新基準」に基づく"安全対策"のための工程表を経産相に提出し、その日のうちに政府が「安全」とお墨付きを出すという異常な「即席」手続き。そんなデタラメな手続きが「可能」なのは、「新基準」自体が、実施済みの小手先対策にプラスして「(今後の)計画」を工程表として出せばよいというもので、要するに何もやらなくてよいという「無基準」だったからです。大手メディアでさえ、関西電力が出した工程表が「対応済みの対策を焼き直したに過ぎず、新たに何もしていないに等しい」(「朝日」4月10日付)と批判しました。
 そもそも原発事故自体が収束していません。3月末には事故を起こした福島第1原発2号機の格納容器内の水位が初めて確かめられましたが、推定の3分の1にも満たない60センチだったことがわかりました。事故から1年1カ月が過ぎましたが、原子炉圧力容器内や燃料の状態はもちろん、地震による損傷実態はほとんど把握されていません。
 政府と国会の事故原因究明はまだ途上で、その十分な専門家の体制もできていません。事故の教訓を受けて原子力の安全を考え直していく根本対策が手つかずです。大飯原発周辺の活断層の評価が不十分だという専門家の指摘も相次いでおり、住民や周辺自治体の不安は当然です。これほどいいかげんな手続きで原発の「再稼働」を強行する野田内閣の姿勢は、もはや政府自らが国民の安全に責任を持つ、まともな統治機能を放棄するものというべきです。
 政府内の原子力安全問題の担当者からも落胆の声が漏れます。「確かに焦って見える。(原発停止のまま)夏を越すと、『原発はなくてもいい』ということになりかねないという焦り。しかし、そっちが先に来ては絶対ダメで、当然、安全を大前提に進めるべきだ。拙速という批判は甘んじて受けざるを得ない」     (しんぶん赤旗4月11日) 

主要国のエネルギー開発費 - 日本の「偏重」突出

 原発を持つ主要国のエネルギー研究開発予算を比較すると、日本の突出した「原子力偏重」が鮮明になる。
 国際エネルギー機関(IEA、28カ国加盟)の統計によると、日本は10年度、エネルギー研究開発に総額3550億円(10年平均レートで米ドルから円に換算、以下同)を計上した。うち69%にあたる2481億円は原子力関連が占める。大半は文部科学省所管の高速増殖原型炉「もんじゅ」や核燃料サイクル関連に投じられ、残りは経済産業省が新型原子炉開発の補助金などに支出している。
 一方、総額4200億円で日本とほぼ同規模の米国では10年度、原子力は18%(782億円)に過ぎない。最も多いのは省エネルギーの1226億円(29%)で、再生可能エネルギーが1153億円(27%)と続く。電力の75%を原発でまかなうフランスは09年度、534億円を原子力開発に投じたが、それでも全体の44%だ。
 予算額全体に占める原子力の割合の推移をみても、多くの国では70〜80年代に比べ大幅に減少している。一方、日本は75年度56%、85年度77%、95年度75%、05年度65%と、ほぼ横ばい。米国が10年度に再生可能エネルギーへの支出を大幅に増やすなど、年によって予算配分を変える国が多い中、日本は予算の硬直性も際立っている。
 日本の原子力研究開発予算の原資のほとんどは、電気料金に上乗せして徴収する電源開発促進税だ。原子力に偏重した予算配分が長年続いてきた原因について、昨年11月に衆院で行われた「国会版事業仕分け」で、参考人の元経産官僚、古賀茂明氏は「原子力を何が何でも造るというのが自民党の政策だった。その政策に公益法人や関連企業、役所と族議員による利権構造がくっつき、一度できると壊せない」と述べている。

原発交付金制度を廃止すべきだ
清水 修二  福島大副学長

清水福島大学副学長.jpg

しみず・しゅうじ
1948年生まれ。京都大大学院博士課程満期退学。福島大副学長。専門は地方財政論。電源3法と原発立地自治体の関係を長年研究してきた。著書に「原発になお地域の未来を託せるか」(自治体研究社)など。

清水修二氏は、水戸市の千波湖畔での「5.3憲法フェスティバル」で、記念講演「福島の悲しみを共有するために」を行います。

 原発が立地するのは、いずれも過疎地域だ。高度経済成長期に電力需要の増大を見込んだ国と、高度成長に取り残されたくない弱小自治体の切迫した思いが一致した形で、原発の建設は進んだ。
 自治体側は産業の集積や都市化が進むことを期待した。しかし、建設業を中心に一定の経済効果はあったものの、一過性のものでしかなかった。電力は送電線で遠くに運べるため、一般企業が原発近くに工場を設置するメリットは少ない。原発関連産業の多くは特殊な分野で、地元の中小企業が担うのは難しい。一方で、原発労働者の給料は地元企業の水準より高いため、労働力の多くは原発に吸収される。その結果、地域の産業構造は原発だけに依存したいびつなものとなってしまう。
 一方、電源3法交付金と固定資産税によって急に裕福になった自治体は、財政規律がどうしても緩みがちになる。当初、交付金の使途が「ハコモノ」やインフラに限定されていたのは、効果を目に見えるようにしたいと国が考えたからだろう。市町村の首長にとっても、実績を形に残せるから好都合だった。創意工夫が必要なソフト事業よりハード事業のほうが楽なのだ。そうして道路など公共施設に多額の支出がなされた。
 しかし、交付金や固定資産税収が減っていく一方で、公共施設の維持管理コストは増大する。原発に新たな設備投資がなければ、収入を維持することができない構造だ。原発の増設を望む自治体があるのは、こうした理由からだ。
 原発の誘致による「発展」は、あたかもコマが外から力を加えられて回っているようなもので、コマは自力で回転しているわけではない。
 それでも中都市並みの所得と豊かな財政を得られる原発は、過疎地域の自治体には魅力的に映る。福島の事故後の統一地方選でも、原発立地自治体で推進派が多く当選する大勢に変化はなかった。
 電源3法交付金は都市に造れないものを過疎地に造るための「迷惑料」にほかならない。国の原子力委員会が定めた「原子炉立地審査指針」は、事故に備えて原子炉は人口希薄な地域に設置するよう義務づけている。仮に自治体が望むように、原発のおかげで周辺人口が増えて地域が都市化したとしたら、原子炉立地審査指針に反する事態になってしまうという決定的な矛盾がある。
 原発の存在には地域格差が前提なのだ。まるで貧しい人の前にごちそうを並べて手を出すのを待つような交付金の仕組みは、倫理的にも許されない。交付金制度は段階的に廃止すべきだと考える。
 地域とは「人らしく生きられる場所」でなければならない。今回の惨事を目の当たりにしてもなお、原発に地域の未来を託せるのか。原発を地方自治の問題として考え直す必要があると思う。

(毎日新聞 2011年08月19日)

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