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第177号

第177号

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第177号

2023・09・24更新

alsp処理水差止訴訟

ALSP処理水放出差止訴訟=福島地裁前

福島第1原発に並ぶ処理水タンク





 住民や漁業関係者 処理水放出差し止め求め国と東電を提訴、福島県などの住民や漁業関係者151人が国と東京電力に対して放出差止めなどを求める訴えを福島地方裁判所に起こした。
 訴えによると、原子力規制委員会に対して海洋放出計画の認可などの取り消しを求めるとともに、東京電力に対して放出の差し止めを求めている。2023年9月8日




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LPS処理汚染水差止訴訟の意義

8月21日に、ALPS処理汚染水差止弁護団、共同代表: 弁護士 広田次男、弁護士 河合弘之、弁護士 海渡雄一の名で下記のような声明が発表された。

 ついに漁業関係者が、ALPS処理汚染水を放出させないために、立ち上がりました。福島とその周辺の住民で、彼らの貴重な決断を支え、これを応援する動きを作りたいと思います。原告になってください。
私たちが海洋放出に反対する理由は、主に次の点です。
・ この汚染水は東京電力による福島原発事故とその後の東電と国による地下水の建屋への流入を止めなかった無策によってこれだけ増えてしまいました。これは、東電と国の責任で、汚染物質の発生者が最後まで管理すべきです。
・ 過去に放射性廃棄物を故意に海に放出した例はありません。仮に、薄めても放射性物質の総量は変わりません。処理水にはトリチウムだけでなく、セシウム134,137、ストロンチウム90、ヨウ素129、炭素14等が含まれています。その健康への影響はどこでも評価されておらず、安全性は確認されていないのです。
・ 敷地内や敷地の近くに、7,8号機の建設予定地などタンクをたてる場所はたくさんあります。そして、海洋放出以外にも、大型タンクを増設するとか、汚染水をモルタル固化するなどの有効な代替案が提案されていますが、きちんと検討されていません。
・ デブリの取り出しは、30年以上も先のことです。福島復興のための海洋放出という説明はまやかしです。いますぐにタンクの撤去を行う必要などないのです。
・ 放射性廃棄物の海洋への投棄は、ロンドン条約96年議定書によって全面的に禁止されています。海洋放出はこの議定書に違反する可能性があります。
                 

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今月の俳句

橋脚に大小の渦(うず)震災忌(しんさいき)
   蜻蛉(とんぼ)増ゆ空に淡き昼の月
赤とんぼ西方浄土暮れなづむ
   古民家の土間吹き抜ける初嵐  
曼珠沙華暮れかねてゐる墓の裏


高 島 つよし

本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問

 寄 稿 

茨城の学校給食無償化の運動について

荒木 睦子(新婦人茨城県本部 副会長)

新婦人は、子どもたちの育ちを保障するために、「学校給食は無償に、安心できる食材を」と、いま全県で運動しています。

 昨年11月から、若い世代を対象に「給食アンケート」にとりくみ、22市町村155人から回答を得ました。「コロナ禍前と比べて家計が大変」が47%、「給食費を高いと感じる」が23%、「給食費の一部補助や無償化を望む」は80%。この声は、運動をすすめるにあたり、大きな力になりました!
 「オーガニック給食フォーラム」や「学校給食は無償に、地場産、有機食材を」の全県交流学習会、農民連との「食と農の学習会」を次々と開いて、学んできました。
 「自治体予算の1%で無償化が実現できること」「学校給食法は、給食費を無償にしない理由にはならないこと」「学校給食は、地域経済を豊かにさせ、持続可能な農業・地域づくりにもなること」を学びました。
 支部や班で、また地域の会をつくって、議会請願に取り組んでいます。市長や教育長あてに「要望書」を届けて懇談し、教育委員会やJAとも懇談をすすめました。
 県内で、はじめて牛久支部が出した請願が、6月議会で賛成多数で採択されました!
 給食無償化実現に手ごたえを感じ、現在、市長あての新署名にきりかえて取り組んでいます。
 水戸では、市長が選挙前に「中学校の給食無償化」を宣言して、この4月から実現。新婦人は「小学校も無償にしてほしい」と議会に署名1266人分を提出し、継続審議になっています。土浦でも、市長あての署名1392人分を8月30日に提出してきました。
 石岡班は、4月議会に陳情署名を提出し、否決されてしまいましたが、その後、市長が「今年9月から来年3月までの無償化」を発表。さっそく「来年4月以降も継続を!」と、12月議会にむけて新署名がスタートしています。                     
全県の新婦人は、カラーの「いばらき給食無償化マップ」やタペストリ―で、たくさんの方たちと、学校給食運動を大きく広げていきます。

2023年9月6日
 

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事務局たより

茨城県自治体問題研究所第2回理事会のご案内

日時 : 10月28日(土)午後1時30分
場所 : 水戸市「ミオス・視聴覚室」
 ① 第35回まちづくり学校について
 ② 東海第2原発避難計画調査検討委員会について
 ⓷ 組織拡大推進計画

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 資 料 

(社説)辺野古・沖縄県敗訴 自治を軽視する国策追認だ

9月5日 朝日新聞

辺野古のキャンプ・シュワブ南側

 かさ上げ工事が進む辺野古のキャンプ・シュワブ南側(手前)。上方の大浦湾側には軟弱地盤が見つかっている=2023年4月8日、沖縄県名護市、朝日新聞社機から、嶋田達也撮影

 行政権のチェックという司法の役割を放棄し、憲法に記された地方自治の本旨も軽視して政府の政策を追認した。将来に禍根を残す判決だ。
 沖縄県の米軍普天間基地を名護市辺野古沖に移す計画をめぐり、工事の設計変更申請の不承認を県が貫いていたのに対し、国土交通相が承認するよう「是正指示」した。
 これを取り消すよう県は求めたが、最高裁はきのう、訴えを退けた。海底の軟弱地盤を改良する政府の設計変更を最高裁が事実上容認したのは初めて。8年に及ぶ県と国の訴訟は大きな節目を迎えた。
 判決は、基地建設の是非に対する判断を示しておらず、強引に工事を進めてきた国のやり方がすべて正当化されたと受けとめるわけにはいかない。政府は、普天間の危険性を速やかに取り除くという原点に戻り、代替案を探るべきだ。
 ■役割放棄した司法
 県は不承認の理由として、地盤の調査不足や環境破壊への配慮の欠如、長期の工事への懸念をあげた。住民の安全を守るため、工事の内容を点検するのは知事の当然の仕事だ。公有水面埋立法でも、環境保全や災害防止への配慮は重要な要件だ。だが最高裁はこうした点に触れず、「行政庁の裁決は関係行政庁を拘束する」といった形式論を述べるだけだった。あまりにそっけなく、門前払いに等しい。
 是正指示とともに県が取り消しを求めていた国交相の裁決をめぐる訴えに至っては、最高裁は上告を受理すらしなかった。
 不承認に対しては、事業主体の防衛省沖縄防衛局が「私人」の立場で不服を申し立て、「身内」にあたる国交相が審査庁として判断。県の処分を取り消す裁決を出した。だが裁決後も県が承認せず、国交相が是正指示した。政府内部での審査のキャッチボールには、「国による私人なりすまし」「権利救済制度の濫用(らんよう)だ」と多くの行政法学者が批判の声明文を出している。
 法の趣旨の逸脱になぜ明確に釘を刺さないのか。過去の関連訴訟でも最高裁は入り口論で再三、訴えを退けた。政府から離れた視点で行政をただし、独立した司法の存在を示すべきなのに残念だ。
 ■代執行は対立招く
 防衛省はすでに埋め立ての準備に着手しており、予定海域のサンゴの移植も許可するよう県に迫っている。
 今後の県の方針次第では代執行による工事強行も考えられる。そうなれば対立は決定的となる。いま国に必要なのはなぜこれほど長期化したのか、真摯(しんし)に省みることだ。
 埋め立ての賛否を問う19年の県民投票では有効投票総数の7割以上が反対した。玉城デニー知事は建設阻止を公約にかかげて昨年、再選された。こうした民意に政府は耳を貸そうとしなかった。
 また地盤改良には7万本以上の杭を打ち込む必要があり、当初の申請段階で5年とされた工期は倍近くに延びている。普天間の危険性の早期除去という目標にもはや整合しないことは明らかだ。
 予定地の大浦湾周辺では絶滅危惧種など5300種以上の生物が確認されており、自然への損害も計り知れない。
 18年から始まった埋め立ては浅瀬の広がる南側では陸地化が進むが、軟弱地盤がある大浦湾側の工事は止まっている。決して引き返せないわけではない。岸田首相は自ら対話に乗り出すべきだ。
 不承認という「最後のカード」を否定された玉城知事は難しい選択を迫られる。だが、基地が騒音や事故、土地の利用制限など大きな負担を地元に強いることは、訴訟を通じ改めて示された。県の代表として国を対話に引き出し、同時に裁判以外でも様々な手段を探り、是正を求め続けねばならない。
 ■課題を共有する必要
 一連の裁判は、国と地方の関係をめぐる自治の現状と課題を浮き彫りにした。
 国と自治体が対等な立場で責任を果たす。そんな理念のもと、00年にできた総務省の国地方係争処理委員会に、県は8回も審査の申し立てをした。委員会は当初、対話による決着も求めたが、国がかたくなな姿勢をかえず、調停役の機能は果たされなかった。
 この国の政府には地方の民意を反映させるルートがないのか。そんな声すら聞かれる。目詰まりをただすには第三者機関としての独立性は保たれているのか、委員の選定に問題はないかなど、改善点を洗い出す必要がある。
 国との訴訟が始まってまもない16年、当時の翁長雄志知事は国地方係争処理委で訴えた。「埋め立てを強行するなら、人類共通の財産を地球上から消失させた壮大な愚行として後世に語り継がれる」「かけがえのない自然と生態系への破壊指示で、地方自治の破壊そのものではないか」
 この問題意識は本土の人間も共有すべきものだ。
 安全保障は国の専管事項としても、自治体には住民生活を守る立場で国の政策の問題点を指摘し、改善を求める義務と責任がある。そのことを国は肝に銘じるべきだ。


今月の 川柳

国民に背向け尻向け秋の陣 
   埋め立てにジュゴン追われて今どこに
枕元で進軍ラッパなりひびき 
   戦場へ雲が流れるしぐれかな 
処理水も海はいやじゃと駄々をこね 
   デジタルにアナログ追われカヤの外 
AIで月の資源に手をのばし 
   寅さんもあの世で祝う虎優勝 
戦争屋マネーざくざく腹ふくれ
   ひぐらしも鳴かず台風だけあばれ
 

 

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)

イラスト1


新刊紹介

『新型コロナ最前線 自治体職員の証言 2020-2023 』

日本自治体労働組合総連合[自治労連] 編 
黒 田 兼 一(明治大学名誉教授)監修  
定価(本体1500円+税) 大月書店

 北海道から九州まで41人の自治体職員の証言集
 住民のいのちとくらしを支えるため、自らも感染のリスクを抱えながら その最前線に立っていた自治体職員がつづる。 

準新刊

●デジタル化の「落とし穴」に目をつぶってはいけない'

『デジタル化と地方自治自治体 - DXと「新しい資本主義」の虚妄』

岡田知弘・中山徹・本多滝夫・平岡和久著 A5判並製カバー、174頁 定価1870円

 2017年度から21年度までの5年間に、マイナンバー(カード)の紛失・漏洩事案は5 万6000件を超えた。最近でも、マイナンバーカードを活用した行政サービスで、システム上のトラブルが相次いでいる。コンビニで他人の証明書が誤交付され、マイナ保険証や公金受取口座で他人の情報がひも付けされるなど、混乱をきわめている。
 いずれも個人情報が他人に見えてしまう深刻な不具合だ。個人情報の漏洩は人権侵害問題に直結する。また、地域活性化の手段とされる「デジタル田園都市国家構想」はブラックボックスを抱え込んで、市民を置き去りにして、企業中心の事業へと展開する。
 こうして、地方行政のデジタル化はデジタル集権制の性格を強め、地方自治の基盤を揺るがす危険性に満ちている。

目次 第1章●岸田政権の「新しい資本主義」論と経済安全保障・DX=岡田知弘(京都橘大学教授)第2章●デジタル田園都市国家構想の概要と問題点=中山 徹(奈良女子大学教授)第3章●デジタル社会と自治体=本多滝夫(龍谷大学教授)第4章●デジタル化予算と国家財政、自治体財政=平岡和久(立命館大学教授)

デジタルシリーズ いま、何が問題か

『医療DXが社会保障を変える』
● マイナンバー制度を基盤とする情報連携と人権

稲葉―将・松山洋・神田敏史・寺尾正之著
定価1210円 

 国民の個人情報・医療情報・健診情報が連携されるデータプラットフォームづくりのねらい

『デジタル改革とマイナンバー制度』
● 情報連携ネットワークにおける人権と自治の未来

稲葉―将・内田聖子著
定価990円

マイナンバーカードとマイナポータルの仕組み

『保育・教育のDXが子育て、学校、地方自治を変える』
● 子育て・教育の枠を超えて、こどもの個人情報が利活用される

稲葉―将・稲葉多喜生・児美川孝一郎著
定価1100円

『デジタル改革と個人情報保護のゆくえ』
● 「2000個の条例リセット論」を問う

庄村勇人・中村重美著
定価990円

自治体が守つてきた個人情報はデジタル化でどうなるのか

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