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第175号

第175号

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第175号

2023・07・21更新

下館祇園祭2



下館祇園祭1








下館祇園祭=筑西市

 筑西市の最大の夜祭り・下館衹園まつりが2019年以前の規模で開催。大町の羽黒神社を中心に、4日間に渡って行われる県内屈指の夏祭り。日清戦争の戦勝祝いに造られた大神輿「明治神輿」と、羽黒神社の相殿神・玉依姫の「女子神輿」、平成4年に新調され、日本最大級の「平成神輿」、町内の30数基のこども神輿が市街地を練り歩く。(7月27~30日)




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秋の憲法審で改憲条項の合意成るか?
緊急事態条項の一環として議員任期延長条項に白羽の矢

 衆院憲法審は3月以降、ほぼ毎週開催され、今国会で実質討議を15回積み重ねてきた。特に緊急事態の場合に議員任期を延長する件について、会期末の6月25日衆院憲法審で、与党筆頭幹事の新藤義孝氏は、「緊急事態条項については憲法審の幹事会などで一定の取りまとめの方向性を議論する時期に来ているのではないか」と提案している。改憲賛成五会派が立憲・共産・社民・令和の反対を無視して幹事会で「取りまとめ」―最初の改憲着手案―なるか、今秋の国会が注目される。
 維新・国民民主・有志の会が3月、6月2回も緊急時の議員任期延長に関する改憲条文案を示して自公をけし掛け改憲主導を競っている姿が目を引く。自公の改憲策動への批判をかわし多数派の改憲構図を演出している。
 災害・テロ・感染症・有事など「選挙の適正な実施が困難な場合」「国会機能を維持する」必要から4年任期を更新付きで延長するというもので、憲法45条・46条の衆参議員の任期規定を変更する提案だが、緊急事態条項の本質たる憲法停止・人権制限・内閣独裁の導入に向けた地ならし・枝葉条項を突破口としてる。
 そもそも、衆議院が解散中に大災害が起きた場合は、参議院の緊急集会(憲法54条2項、3項)―参議院が一時的に国会を代替して法律と予算を制定する―制度が用意されている。参議院議員の任期満了時(同時に衆院解散中)でも参院の非改選議員が2分の一おり、議員の定足数3分の一以上なので機能できる。
 国会機能をいうなら政府監視機能の責務を果たしているか、自問自答して欲しい。
 議員任期延長の改憲是非論について、最新の論稿、永井幸寿「議員任期延長のための改憲案のどこが問題化」(世界・2023年6月号掲載)を参照されたい。
                 

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今月の俳句

境内の風の音のみ夏木立
   下校児に水筒重き街(まち)薄暑(はくしょ)
麦の秋余生は薬頼みなる
   紫陽花の彩(いろ)の百態廃校舎  
紫陽花に雨の重たき休耕田


高 島 つよし

本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問

 寄 稿 

新水戸市民会館・住民訴訟

市長(行政)の裁量権(裁判)を一方的に擁護する判決

岩清水 理(新水戸市民会館費用等差止訴訟原告団  「水戸・市民の会」事務局長 )

新水戸市民会館(以下、新会館と略)の事業費(総事業費360億円。うち本訴訟の前提となる2019年9月住民監査請求時の事業費支出264億円余の支出差し止めと再開発組合からの返還請求)を住民訴訟は2019年12月に原告・水戸市民16人が被告・高橋靖水戸市長を相手に提訴して闘われてきた。
今年6月15日、水戸地裁(裁判長 広沢 論、右倍席 吉野内謙志、左倍席 金子恵理)は「原告らの請求をいずれも棄却する」との不当判決を出した。

 この判決は、新会館の事業費について「その敷地、周辺道路整備、駐車場新設などを原告らの主張するとおり一体の事業というべき」としているほかは様々な争点について原告の主張を無理やりそして一方的に否定しているのが特徴である。
 行政(市長)を勝たせ、住民(原告)を負けさせることを前提にした司法の「作文」と言わざるを得ない。新会館が7月2日に開館するのに合わせて行政の「期待」と「要望」に沿った形で開館の半月前までに判決を言い渡すためか、検討・考慮が極めて不十分な内容となっている。

原告の主張と証拠をことごとく否定した判決
 判決では「市長の裁量権の逸脱と濫用」について原告の主張を6つの類型に分類し(判決文25頁)、その一つひとつについて「反論」らしきものを記述している。
 第一に、原告が主張していない「移転建て替えの(被告の)判断の誤り」わざわざ取り上げて「原告らの主張は採用できない」としている。
 第二に、「費用が6水総に沿わない」との原告主張について新会館費用を68億円とする。6水総を「水戸市の将来15年間の基本構想、都市づくりの基本方針」としながらそれに大きく沿わない計画でも「裁量権の逸脱・濫用に当たることはない」と強弁。
 第三に、立地決定の期間について、市長は2013年9月に中心市街地の5カ所を候補地とし、10月28日政策会議での議論を経て11月12日の立地場所(泉町1丁目北)の決定をしたと具体的に指摘しながら「原告らの3カ月で本件立地決定がされたとの主張は誤り」とそれこそ誤った「指摘」をしている。さらに、市長が広い市有地を使わなかった問題について「水戸市は全く検討の対象としていなかったわけではなく」と事実に反して被告への擁護を展開している。
 第四に、大規模コンベンションの誘致や2000席の大ホール問題についても「著しく妥当性を欠くことが明らかであるとは認められない」と決めつけている。
 第五に、新会館が周辺住民や事業者の利益を害するとの指摘については「権利者の客観的な権利や利益が不当に侵害されたとは認められない」とし「原告らの主張は採用できない。」と一方的にと断じている。
 第六に、水戸市の財政への悪影響について「類維持団体や全国、茨城県の平均と比べて極端に悪化しているとは認められない」とし「被告の裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用と基礎付けるとまでは認められない」と容認している。
 第七に、新会館の施帯(費用支出)が特定の地権者の利益を図るものとの原告主張についても「伊勢甚が不当な利益を受けていることを認めるに足りる証拠は全くない」としている。
 2003年の再開発準備組合の設立その3年後の伊勢甚による旧京成ビルの購入(17億円)、再開発事業の「遅れ」と東日本大震災(2011年)での市民会館不使用を「奇禍」として泉町1丁目北地区の再開発新会館(市長の決定)老朽化した旧京成ビルへ30億円の「転出補償」と解体費用の組合(水戸市)の金額負担などの経過と事実。証拠をまともに見ない裁判長の姿勢が如実にそして、象徴的に物語っている。「判決」といえる。
 その他「にぎわいの創設・経済波及効果」「駐車場」「交通渋滞」などについても「水戸市が経済的波及効果を全く検討していないとは認められない」などとしている。

「無駄な公共事業を積極的に奨励する判決」―東京高裁へ控訴―

 判決日に原告団と弁護団は「声明」を発表した。そのなかで「本件判決の判断は原告らの主張をまともに受け止めようとしないもので、行政がすすめる公共事業の無駄遣いを司法の立場でチェックしようとせず、むしろ無駄な公共事業を積極的に奨励するものにほかならない」としており「原告らは本件事業の違法性とこれを推進した高橋市長の責任を明らかにするための引き続き闘い続ける」と決意を表明している。
 6月28日に原告16名全員が東京高裁に訴訟を提起し、市民運動は新たなステージとなる」

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イベント紹介

市町村議員研修会 (2)

新人議員におくる、地方議会議員の基礎が身に付く、ふたつの講義 

          
一般の方や、新人ではない議員の方も受講いただけます

1日目
第1講義 2023年8月23日(水) 13:30〜15:30
入門 地方自治のしくみと法 岡田正則 早稲田大学教授

 地方議会議員にとって、地方自治法の全体像と要点を理解しておくことは必須です。この講義では、地方自治の理念と歴史を概観した後、地方自治法の条文に沿って主要な論点を解説します。1999年の地方分権改革によって国と地方の対等化が図られましたし、この間“地方創生”の取り組みもなされてきましたが、他方で、平成の大合併による市町村数の半減や、軍事・感染症対策などでの国への集権化、あるいは個人情報保護に関する自治体施策の否定など、地方自治が縮小している面もみられます。地方自治法の視点から日本の地方自治が直面している問題をリアルに把握するとともに、今後のあり方をともに考えていただければと思います。

テキスト『地方自治のしくみと法〈現代自治選書〉』  岡田正則・榊原秀訓・大田直史・豊島明子(著) (税込特価2,100円)

2日目 
第2講義 2023年8月24日(木) 13:30〜15:30
議会力・議員力の向上めざす議会改革─新人議員のみなさんに期待すること
寺島 渉 長野県飯綱町議会元議長・地域政策塾21 代表・地域住民大学運営委員

 地方自治のしくみと議会の使命、議員の職責などの基本的なことをふまえた上で、議会力・議員力を向上させるために議会改革の実践について、具体的、実践的な話を経験から伝えます。その柱は3つです。第1の柱―追認機関から脱し、議会の権限と役割の発揮、責任を果たす。第2の柱―「チーム議会」の政策提言活動を重視、「政策サポーター制度」を新設。第3の柱―開かれた議会、議会への住民参加を広げ、議会・議員活動の「見える化」。そして地方議会のさらなる前進のために何が必要か、議員の資質をいっそう高めるために、自治法が認めている権限の積極的活用、専門的知見の活用にも触れます。また、一般質問の準備と議論のすすめ方、『議員必携』の使い方もお話します。
テキスト 『地方議会改革の10 年』寺島 渉(著) (税込特価1,500円)

■受講料 
第1講義=8,000円(個人会員:7,000円)
第2講義=8,000円(個人会員:7,000円)
全2講義受講の場合は、受講料15,000円(個人会員:13,000円)

※ お申し込みの締め切りは、8月17日(木)です。
お問い合わせ先
ご不明な点は「自治体研究社 議員研修会係」までお問い合わせください。
     *メール:event@jichiken.jp
 * 電話:03-3235-5941(平日 10:00-17:00)

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事務局たより

「住民と自治」誌代、「会費」の改正のお知らせ

 諸物価高により住民と自治』の誌代が2023年3月号(2月発行)より、定価590円から800円(本体727円+税)に値上げになったことから、本研究所の経営維持を図るため、2023年7月9日開催の総会において、会費等の引き上げをすることになりました。
 なお、賛助会員は、据え置きといたします。
 何とぞご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

(1) 普通会員月額 1,160 円(6カ月 6960円)2023年7月から
(2) 研究者会員月額 1,160 円(6カ月 6960円)2023年7月から
(3) 団体会員一口月額 1,200円(6カ月 7200円)2023年7月から
(4) 賛助会員月額 1,250円(6カ月 7500円)据え置き
(5)誌代(住民と自治月額800円(6カ月 4800円)2023年7月から

(参考資料)                         

2023年1月31日

地域自治体問題研究所事務局長 各位

                                 自治体問題研究所 

                               理事長 中山 徹

''『住民と自治』の価格改定に伴う地域研究所への
卸価格の改定に伴うお知らせ''

 なにかとお世話になります。長引くコロナ禍と昨年夏からの諸物価高騰もあって自治体問題研究所・自治体研究社の経営が急速に悪化し、存続さえ難しい事態に至りました。
 この危機に対して、地域研究所のみなさまには、今月末を期限としました「1000万円カンパ」へのお願いに対して積極的にお応えくださり、目標を超える額をお寄せいただき、ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
 さて、『住民と自治』2023年2月号でお知らせしたように、3月号より本誌の定価を800円(本体727円+税)とすることを、昨年12月の理事会で決定いたしました。それに伴い多くの地域研究所に対する本誌の卸価格を 623 円とさせていただくことをご了解ください。
 このことに関しましては、昨年9月、12月の「事務局長連絡会議」でご検討いただき、全体の流れとしてはご了承いただけたかと存じます。
 また、実際のご請求につきましては、それぞれの地域研究所が総会を開いて会費改定を決定し、さらに会費請求のサイクル等によって会費の引き上げが実現するまで、2023年12月を期限として、みなさまに値上がり分の2分の1の納入をお願いすることとしました。個々の地域研究所の状況を個別に考慮させていただきます。

 どうか状況をご理解いただき、ご協力をよろしくお願いいたします。


今月の 川柳

AIでコロナ悪魔を吹きとばし 
   軍拡の狂騒曲で耳が腫れ
株狂乱戦争特需と云うのかな 
   麦秋のカラス啼いてるウクライナ 
戦場へ見切り発車の抑止論 
   フル稼働クーラー疲れて熱を出し 
ガタコトと音が響く永田町 
   物価高米ひとつぶに想い馳せ 
汚染水うそと誠のだまし合い
   アジサイが枯れて雷雲さわぎ出し  

 

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)

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新刊紹介

●デジタル化の「落とし穴」に目をつぶってはいけない'

『デジタル化と地方自治自治体 - DXと「新しい資本主義」の虚妄』

岡田知弘・中山徹・本多滝夫・平岡和久著 A5判並製カバー、174頁 定価1870円

 2017年度から21年度までの5年間に、マイナンバー(カード)の紛失・漏洩事案は5 万6000件を超えた。最近でも、マイナンバーカードを活用した行政サービスで、システム上のトラブルが相次いでいる。コンビニで他人の証明書が誤交付され、マイナ保険証や公金受取口座で他人の情報がひも付けされるなど、混乱をきわめている。
 いずれも個人情報が他人に見えてしまう深刻な不具合だ。個人情報の漏洩は人権侵害問題に直結する。また、地域活性化の手段とされる「デジタル田園都市国家構想」はブラックボックスを抱え込んで、市民を置き去りにして、企業中心の事業へと展開する。
 こうして、地方行政のデジタル化はデジタル集権制の性格を強め、地方自治の基盤を揺るがす危険性に満ちている。

目次 第1章●岸田政権の「新しい資本主義」論と経済安全保障・DX=岡田知弘(京都橘大学教授)第2章●デジタル田園都市国家構想の概要と問題点=中山 徹(奈良女子大学教授)第3章●デジタル社会と自治体=本多滝夫(龍谷大学教授)第4章●デジタル化予算と国家財政、自治体財政=平岡和久(立命館大学教授)

準新刊

デジタルシリーズ いま、何が問題か

『医療DXが社会保障を変える』
● マイナンバー制度を基盤とする情報連携と人権

稲葉―将・松山洋・神田敏史・寺尾正之著
定価1210円 

 国民の個人情報・医療情報・健診情報が連携されるデータプラットフォームづくりのねらい

『デジタル改革とマイナンバー制度』
● 情報連携ネットワークにおける人権と自治の未来

稲葉―将・内田聖子著
定価990円

マイナンバーカードとマイナポータルの仕組み

『保育・教育のDXが子育て、学校、地方自治を変える』
● 子育て・教育の枠を超えて、こどもの個人情報が利活用される

稲葉―将・稲葉多喜生・児美川孝一郎著
定価1100円

『デジタル改革と個人情報保護のゆくえ』
● 「2000個の条例リセット論」を問う

庄村勇人・中村重美著
定価990円

自治体が守つてきた個人情報はデジタル化でどうなるのか

以上、自治体研究社 〒162-8512東京都新宿区矢来町123矢来ビル4F
TEL 03-3235-5941 FAX(03-3235-5933  

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