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第93号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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第93号

2016・09・25 更新

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紅葉の名所花貫渓谷=高萩市秋山

 茨城県高萩市にある「花貫渓谷」。海岸線から約12kmほど内陸へ入ったところにある花貫渓谷は汐見滝吊り橋付近が紅葉の見所。川のせせらぎを聞きながら紅葉の絶景を楽しむ。近くにある花貫ダムは日本では珍しい海の見えるダム。

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政府の原発再稼働の根拠=地球温暖化防止はウソ

 「原発が全停止した日本、しかし炭素排出量は増加せず、米政府の調査結果(2016.09.14)」
 こんなタイトルの情報が入ってきた。安倍政権のいう原発再稼働の根拠はアメリカから否定された。日本は福島原発事故以後、2年近くにわたってすべての原発を稼働停止させたが、節電などの効果により炭素排出量は増加しなかった、という調査結果を米国エネルギー省が発表した。
 福島第一原子力発電所でのメルトダウン発生後、日本ではすべての原発の稼働が順次停止された。2015年8月から一部の原発が稼働を再開したが、日本はそれまで、2013年9月以来、2年近くにわたってすべての原発を稼働停止させていた。
 日本が事故前までその電気の4分の1以上を原子力に依存してきたことを考えれば、原発をすべて停止したことで炭素放出量は劇的に増加したと予想されるだろう。しかし、そうはならなかった。
 米国エネルギー省エネルギー部(EIA )がこのほど発表した調査結果によると、日本では石炭の使用量は増加したものの、その増加率は10パーセントを超えていない。徹底した節電により、日本の電気の総使用量は、それまでの水準を下回った。原発事故後の節電努力により、日本の電気使用量はペタワット(1千兆ワット)時を下回った。さらなる努力によって、電気使用量の減少傾向は現在も続いている。
 石油使用量は増加しているが、予想されたほどではない。石炭の使用量の増加は8パーセント、液化天然ガスは9パーセントだ。これらによって、原発事故前に始まっていた「石油使用量の拡大」は減速された(なお、EIAの資料は、2011~14年の間に液化天然ガスの価格は37パーセント、石炭の価格は19パーセント下がったにもかかわらず、日本の電気料金は2パーセントしか下がっていないとも指摘している)

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報 告

第58回自治体学校in神戸に参加して

利根川英雄、鈴木かずみ、遠藤憲(子日本共産党牛久市議団)

日本共産党牛久議員団は、7月30日(土)~8月1日(月)まで神戸芸術センター・神戸外国語大学で開かれた第58回自治体学校in神戸に参加しました。参加者は北は北海道から沖縄まで約1,100名でした。始めに歓迎行事として、太鼓集団輪田鼓の演奏、神戸中華同文学校「舞獅隊」の中国獅子舞演技が披露され、中学生達の勇壮な舞に参加者は惜しみない拍手を送りました。
学校長として八幡一秀中央大学教授が開校にあたって「阪神淡路大震災から21年の神戸市で開催」です。自治体学校は、1964年8月に第1回「島特訓道場」として京都大学の島恭彦先生が学校長を務められ、有馬温泉において参加者87名からスタート、「みんなが先生、みんなが生徒」で3日間自治体学校を盛り上げて下さいと挨拶しました。 

記念講演 日本型人口減少社会と「地域の再生」
―「不安と混迷の時代をどう生きるか」―        

加茂利男(大阪市立大学名誉教授)

 今日の世界は、不安と混迷に満ちていると言っても過言ではない。東日本大震災、熊本地震、集中豪雨や、ゲリラ豪雨、水害や土砂崩れ、イギリスのEU離脱、安倍政権のもと、政治は与党の多数によって押し流され平和憲法も民主主義も言論の自由も地方自治もどんどん壊され「戦争ができる国」への体制整備がなし崩しに進んできた。危機感を共有しながら、希望を持ってそれを実現に変えるためみんなでできることをする。そういう気持ちを持ち合うことが大切ではないか。
 また、人口の減少が、経済や社会の危機を呼び起こすという考え方が急激に強くなっている。人口減少はいろいろ困難な問題を引き起こしており、日本では全国の自治体で人口ビジョンがつくられるくらい、人口問題への関心は国中で高まっており、われわれは人口問題に振り回されているというほかはない。経済が不況で未来への見通しが明るくない時代には、出生率の低下は必ず起こっている。戦後経済が復興したことで、出生率は解消ベビーブームがやってきた。ヨーロッパ諸国では、出生率低下による人口減少を穴埋めするために移民を積極的に受け入れてきた。人口減少は緩和されたが、移民排斥の運動やテロ、イギリスのEU離脱のような別の難しい社会問題が生み出された。OECDは、国際共同研究の結果として、出生率の回復には、子どもを持つ家庭への税控除、児童手当、育児休業、保育所の増設などの家庭政策を国全体で行うことが必要であり、相当な効果を発揮するという見方を打ち出している。人口減少の問題が憲法や、民主主義の問題に合流していく可能性をはらんでいると痛切に感じました。

特別講演「自然災害からの復興と地域連携」に学ぶ           

西堀喜久夫(愛知大学教授)

 1995年の阪神淡路大震災から21年がたち、4・14には熊本地震が起き、戦後福井地震以来大きな地震災害はなかった日本列島が地震の頻発する「大地動乱」時代に入ったと言われるようになっています。この特別講演では、阪神・淡路大震災からの復興における地域連携、支援を受ける力の重要性、これからの自然災害多発の時代における行政組織のあり方についてなど、現地調査を継続して長期にわたって実践されてきた先生からのお話でした。
 この中で、「受援力」という言葉を始めて聞き、新鮮に感じました。これまでどの自治体でも防災計画を作り、自力で災害を防ぐことを目標にしてきた。とても奇妙な言葉にも聞こえるが、支援を受けることをあらかじめ決めておくことが非常に大事であることが強調されました。モデルチームの研究「大規模災害時における地域連携と広域後方支援に関する政策研究」などはその必要性を実証する者です。静岡県は地震災害が一番確実に起こると予測されており、長年にわたって静岡県、市町はどんな援助が必要か、被災地が必要としていることを明らかにし、レベルの高い支援体制を他の自治体と組んできた。これは、どこにも頼らず、オールマイテイの自治体をつくるということでなく、自らできることと支援を受ける事を明確にしていること、そしてその内容を行政、市民が具体的に認識していること。災害時にどのような支援を必要としているかが明瞭になっている自治体が「受援力」を持っている自律性の高い、自治力のある自治体ということです。
 これまでの防災計画は、すべて自分たちでやることを前提にして、それが不可能になったら県、国に災害救助法にもとづく支援要請をする形になっています。しかし、その場合の基準もあまり明確でないのが現状。そこに、被災自治体が自らの「受援計画」を持っていたならばさらに有効的確な支援ができるというのです。
 牛久市での防災計画のありかたもいろいろな角度から改めて考えてみたいと思いました。
 また、8・5牛久で開かれた牛久市防災アドバイザー山村武彦先生の「熊本地震の教訓」の講演とも重なり、牛久においても「地震災害は起こらない」とされていた熊本での大地震から、「牛久は大丈夫」という考えはもはや持つべきではない。いつ起きてもおかしくないと7日間分を生き抜くための準備を自分自身で行うことなど、真剣に防災問題について考えさせられました。

社会保障解体の「工程表」と地域の運動課題

-特に介護分野の給付削減、負担増-
日下部雅喜氏(大阪社会保障推進協議会)

① 総合事業で介護サービスはどうなる
 2017年4月には全国の自治体で、要支援者サービス見直しの「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)がスタートします。要支援1、2認定者の介護サービスが従来の介護保険給付から市町村事業に移行されます。その結果、各市町村で事業内容を決めることになり、基準、内容、単価、利用料はバラバラになります。自治体任せを進める方向では、自治体間の格差が大きく、結果として必要なサービスが受けられない人が増え、地域で暮らし続けることが難しくなります。
 さらに国では「要支援1・2」に続いて、次のターゲットに「要介護1・2」のサービスも総合事業へ移行し、生活援助サービス、福祉用具、住宅改修などを保険給付や市町村事業からも外して、「自己負担化」(一部補助)の検討さえ始めています。
 全国の市町村担当者は、国のガイドラインを片手にあれこれと事業案を検討し、実施した事業を軌道に乗せるのに四苦八苦しているといいます。一方、介護関係者や住民からは、あまりにも複雑でテンポの速い介護保険の見直しに、「ついていけない」「わけがわからない」といった戸惑いの声が数多く寄せられている状況です。
 しかし、要支援のホームヘルプ、デイサービスが市町村事業に移行されると、住民や介護関係者の手の届くところで、サービス内容や種類、単価などが決められることになります。総合事業が「要支援者サービス切り捨て」にならないよう不当な内容は修正を求めていくなどチェックし、サービスを守り抜く住民運動が求められています。

② 利用者負担2割への引き上げ検討か
 さらなる大改悪の一つが介護保険サービス利用者の負担を2割に引き上げる検討です。
 骨太の方針2015では利用者負担のあり方を検討し、「医療保険、介護保険ともマイナンバーを利用することで金融資産の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みを検討すること」を明記しました。
 医療では、かつて70歳以上の患者負担は1割でしたが、2014年4月2日以降、順次70歳になった人から74歳まで2割負担にしました。これに続き、75歳以上の後期高齢者医療の負担を現行の1割を2割に引き上げようというのです。介護保険も所得要件を外し、65歳から74歳までを2割負担にする、「医療との均衡」が口実です。 
 さらに、2016年1月にスタートしたマイナンバー制度を活用し、将来的には国民の預貯金を把握し、負担増の手段にしようと考えています。たとえ、所得がなくても、一定の預貯金があれば、利用者負担、患者負担が大幅に引き上げられかねません。
 「経済・財政計画改革工程表」には、これら改悪の内容がすべて盛り込まれており、2016年末までに「結論」をだし、2017年の通常国会に「法案提出」となっています。
 安倍政権は、昨年秋に打ち出した「一億総活躍社会」の一環として「介護離職ゼロ」を掲げ、いくつかの施策を打ち出していますが、介護保険改革の全体の方向は、まったく修正されることなく実行にむけた準備や検討が進められています。
 牛久市では、2015年6月から県内でも比較的早い時期に移行作業に入りました。要支援1・2認定者は更新のタイミングで移行し、今年にはすべて市の総合事業への移行が済みました。
 「要支援1,2」と「要介護1,2」を合わせると要介護、要支援認定を受けた人全体の65%を超えるといいます。40歳以上から介護保険料を強制徴収しながら、65%を超える認定者を保険給付から外す。要支援、要介護状態になっても納めた介護保険が使えず「自費負担」を迫られる「国家的保険詐欺」です。多くの人は、このような内容を知りません。自治体学校で学んだことを議会質問などで生かし、サービスを守る運動を広げていきます。 

辺野古への新基地建設をめぐって争う国と沖縄県

パネルディスカッション:憲法・地方自治から見ると、何が見えてくるのか

 パネルディスカッションでは「辺野古への新基地建設をめぐって争う国と沖縄県ー憲法・地方自治から見ると、何が見えてくるのか」。コーディネイターは、榊原秀訓南山大学教授、パネラーは、伊芸佑得(うるま市島ぐるみ会議)、上里清美(沖縄県新日本婦人の会)島袋良太(琉球新報編集局政治部(基地問題担当)記者)でした。
 榊原教授から、今沖縄問題では政治的争いと法的争いが同時進行している。法的争いは、埋め立て承認に政治的支持がないことは各種選挙であきらかになっているとしました。また、翁長知事の説明を引用し沖縄県の現状を「国土の0.6%に米軍専用施設総面積73.8%が集中している。米軍関係者による犯罪を含め、基地は沖縄経済最大の阻害要因」さらに「国庫支出金や地方交付税が基地の存在により優遇されているという誤解がある」としています。
 各パネラーからは、辺野古基地建設をめぐる運動や、報道機関からの報告がありました。
 私たちも身近な問題としてとらえる必要性を強く感じました。

 2日間にわたる盛りだくさんの自治体学校は、毎年必ず参加して学んでいます。地元の議会活動を進める上で大いに参考になり、住民要求の実現につなげて行きたいと考えています。

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剥がされてみればか細いわが年金
蜩(ひぐらし)も鳴かずに夏は遠ざかり  
竹槍とナギナタで見た焼け野原
忘れては嫌やと遥かなキノコ雲
パラ五輪旗ひるがえるリオの風

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

新刊紹介

公民館はだれのもの ー 住民の学びを通して自治を築く公共空間
著者 長澤成次(千葉大学大学院教授)・自治体研究社 A5判 1800円+税
   
第1章 公民館にとって教育委員会制度とは何かー2007年地方教育行政法「改正」に焦点をあてて
第2章 2014年地方教育行政法「改正」と公民館再編
第3章 公民館の首長部局移管問題で問われたものー岡山を事例にー
第4章 公民館への指定管理者制度導入の問題点
第5章 公共施設再生計画と公民館の再編・統廃合
第6章 市町村合併と公民館再編問題

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