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第81号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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第81号

2015・09・21 更新

常総市豪雨災害

鬼怒川の決壊で洪水被災した住宅街=常総市

 2015年9月10日、台風18号の低気圧の影響により、記録的な大雨となった茨城県常総市。 その大雨により常総市の鬼怒川の堤防が決壊し、大きな被害が出た。

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日本を「戦争する国」に変える安全保障関連法案は直ちに廃案にすべき

2015年9月13日
自治体問題研究所理事会

 安倍政権が成立をめざす安全保障関連法案は、アメリカの行う戦争に自衛隊が世界のどこであっても参加することを認めるものであり、「戦争法案」そのものである。
 集団的自衛権の行使を認める同法案が憲法違反であることは、圧倒的多数の憲法学者、元法制局長官、元最高裁長官の見解に照らしても明らかである。憲法の平和主義を根底からくつがえす法案の採決を強行することは、立憲主義の否定であり、憲法改正手続きを経ずに実質的改憲を行うことは、国民主権に真っ向から反するものである。
 第二次世界大戦時の経験が示すように、「戦争する国」への条件整備は、国家による地方自治体の統制と地方自治の破壊につながり、地方自治の平和的、民主的発展の根幹を揺るがすものであり、断じて認めることはできない。
 自治体問題研究所は、日本国憲法による地方自治の実現をめざす研究所として、理事会の総意を持って、違憲の安全保障関連法案に反対するとともに、参議院での採決及び衆議院での再議を行わず、同法案を直ちに廃案にすることを緊急に訴える。

9月13日の自治体問題研究所2015年度第1回理事会にて【緊急声明】を研究所理事会名で決議しました。

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安倍談話主語をさがして目が疲れ
総がかり筆の毛先がピンと立ち  
激しさは怒りのデモと川の水
魂の抜けた奴らが数で押し
橋の下解いたまわしを腰に巻き
  

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

寄 稿

第57回自治体学校in金沢・第3分科会「原子力地域防災と再生エネルギー自立の道」
4年4カ月後福島原発震災地は?
 -福島県議・長谷部淳氏の報告紹介-

本田忠弘(茨城県自治体問題研究所 顧問)

 金沢で開催された第57回自治体学校に参加した。参加目的である「原発問題の最新分析」について把握するということで第3分科会に出席した。
 本分科会では、つぎの4本の報告をめぐって討論が行われた。
①立石雅昭(新潟大学名誉教授)「原子力地域防災と再生可能エネルギー自立への道」、
②杉原秀典(彦根・愛知・犬上「原発のない社会をつくる会」共同代表)「住民の過半数をつなげる運動をー原発のない社会をめざしてー」、
③長谷部淳(福島県議会議員)「5年目に入った原発震災地・福島」、
④山本雅彦(日本科学者会議原子力研究委員)「原発集中立地の自治体の経済と廃炉・再生エネルギーへ転換」。
 いずれも示唆に富むすぐれた報告であった。すべてを紹介する余裕がないので、福島のその後=現状について明快に分析された長谷部淳氏の報告を紹介したい。 


1 報告の冒頭発言

 長谷部議員らは、原発事故前から、原発に頼らない県としてのエネルギー政策を議会でも提起し続けていた。その内容は、こうである。
 原子核エネルギーという単一のエネルギーに頼り、発電所も大型化し、集中立他するような原発中心の電力供給のあり方ではなく、自然界に存在する多様なエネルギーを、小型化した発電所から、分散化して供給するエネルギーの地産地消という訴えである。
 福島県は、いったんは導入を受け入れたプルサーマルを白紙撒回し「原子力発電の健全な維持・発展を図る」という枠内ではあったが、国のエネルギー政策に対し、「いったん立ち止まり、今後のあり方を国民に問うべきだ」という立場をとった時期もあった。
 しかし知事が代わると、こともあろうに、2010年の8月6日という日にプルサーマルを受け入れ、翌9月から第一原発3号機でプルサーマル発電を開始してから、半年後に、3・11を迎えてたという。
 あれから4年4か月以上が過ぎた。福島県民にとっては、時が過ぎただけ、というのが実感のようだ。
 溶け落ちた核燃科のありかはいまだわからない。事故原因の究明もされていない。
 そもそも事故を起こした原子炉には近づけない。汚染水の問題を始め、事故収束すらいまだ見込みが立てられないのが現実だ。

 昨年5月、福井地裁は「福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染である」と判示した。
 今年度の県予算を審議した2月県議会では、知事が冒頭、「福島県を覆う影は、さまざまなところで分断と矛盾を引き起こし、複雑化した課題の解決には極めて多くの時間と労力を要する」と言っている。
 福島県民は、事故を起こした第一原発からの距離で分断され、放射線量で分断され、賠償で分断され、津波被災者とは救済の違いで分断され、その分断が矛賃を広げ、問題を複雑化させ深刻化させ拡がっているのが今である。

2 4年4カ月後の現状

(1) いまだに1000k㎡以上は人が住めない強制避難区域
 政府の指示による避難区域も変遷があったが、10の市町村に渡っていまだに1,000㎢以上は人が往めない強制避難区域である。これは東京都のばぼ半分の面積で、23区に加え、中央部の東大和市・立川市・昭島市・日野市・多摩市・町田市から東側がすっぽり入ってしまう。
 この区域は、例えば東海第2原発でみると、東海村、水戸市、日立市、常陸太田市、ひたちなか市、那珂市6市で1047k㎡である。
 人間が1人も住んでいないのだ。

(2) いまだに11万入超の県民が避難生活
 避難者は、今年6月1日時点でも11万人を超えている。県外には4万6,000入超、県内に6万8,000人弱が自宅を離れて避難生活を強いられたまま。このうち、県独自の把握によると、「自主避難者」は県外約5,000人、県内約2万人である。ただこの自主避難というのは、国から避難の指示を受けていないだけで、原発事故とその収束、放射能汚染に対する不安を払しょくできないから避難しているのであって、当然、権利として保障されるべき選択である。「自主的に勝手に逃げている」ととられるような「自主避難」という言い方はいかがなものかと、思っている。
 子どもの避難者数調べというデータをみると、避難指示が継続している10市町村からが1万5000人余りで、子どもの避難者の約66%だが、南相馬市、川俣町、川内村は避難指示区域が一部で、その区域以外は自主避難ということになる。これに加え、避難指示がない31市町村から避難している子どもたちがいる。現実には子どもたちの避難の4割以上は自主避難ではないかと思う。18識未満の子どもだけが避難する、ということはないから、多くは若いお母さんと避難し、父親とは別居生活という家族が少なくないと思う。
 原発事故によって友だちや先生と引き離され、家族ともバラバラにされた小中学生高校生は、どんな思いで今を暮しているのか、ほんとうに心が痛む。
 原発事故によって役場を移転した9町村の小中学生は、震災前には小学生が4,400人余り、中学生が2,500人余りいた。今は490人ほど、以前の11‰。同じく中学生は350人余り、14%。役場が戻って小・中も帰還した町は2つあるが、小・中学生は以前の2割りから3割の生徒数にすぎない。
 避難した高校は10校あったが、2011年の秋にもどった2校を除いた8校には2,400人ほどの生徒がいた。今では避難先の高校に75O人ほどで避難前の31%で、8校のうち5校は今年度から生徒募集を中止し、在校生かすべて卒業したら休校となる。
 私の娘は、休校になる高校を震災の1年前に卒業したが、原発事故によって母校が消えてなくなる、どんな思いでしょうか。
 県は今年度、おもにこの地域の子たちのための連携型中高一貴校の高校を新設した。
 県として、こうした避難者の意向調査を2013年度から姑めた。今年2月の調査が2度目で、その結果を今年4月に発表している。この調査は避難している世帯全世帯が対象で、いわゆる自主避難世帯も対象に含めている。
 これを見ると、避難している世帯の半数近くがバラバラに避難していて、以前の家族生活が営めていないことがわかる。また、心身の不調を訴えている同居家族がいる世帯は7割近くにのぼる。見た目だけではわからない、いかに苛酷な避難生活を強いられているか、実際に寄り添って聞かなければわからないと思う。

(3) 仮設住宅退去の強制
 住居に対する要望では、「応急仮設住宅の入居期間の延長」が、前年は40.4‰だったのが48.7%に8ポイント以上増えている。
 「住まいは人権」と言われるように、住まいはあらゆる暮らしの前提であるから、避難者の住まいに対する要望には全面的に応えるのが国や行政の最低限の責務のはず。が、そうはなっていない。
 この調査を実施した県自身が、いわゆる自主避難者に対する仮設・借り上げ住宅の無償提供を再来年2017年3月で打ち切ってしまうことを決めている。県内住宅への移転費用を今年度から補助するなど県独自の支援策は実施されているが、具体的メニユーは検討中で、いまだに先が見通そない現実。
 
 東海第2原発で見ると東海村など6市の住民のうち70万人が避難生活を続けることになる。
 東海第2原発の30km圏内にはおおよそ大学が4校、高校が45校以上ある。

(4) 震災関連死は1,919人
 こうしたなか、震災関連死も深刻で、震災翌年の2012年11月には地震・津波などによる直接死1,603入を超え、2015年5月には1,919入に達した。
 この時点では請求件数は2,4554件、継続審査も71件(不支給498件)あるから、まだ増えるでしょう。

(5) 自殺者・孤独死(震災関連)126人
 また、震災関連自殺者は2015年5月までに69入に達し、宮城の40入、岩手の33入からも突出しており、原発事故の影響ははかりしれない。裁判によって、原発事故と自殺との因果関係を認めて東電に賠償命令を出した判決も昨年8月と今年6月に2件ある。
 仮設住宅での孤独死も57入にのぼっている。
 原発事故は、5年目に入っても人の命を奪っている、ということです。
 
(6) 甲状腺検査「手術」88人
 健康に関わって県は、全県民を対象に長期にわたる「県民健康調査」、震災時に0歳から18歳だった子に加え、3・11後の1年間に生まれた子を対象にした甲状腺検査、こころの健康度・生活習慣に関する調査や妊産婦に関する調査を実施している。
 このうち子どもの甲状腺検査では、約38万人を対象に、2011年度から13年度の先行検査と、14年度からの本格検査とが行なわれ、先行検査では約29万8,000人が受診し、悪性ないし悪性疑いが1100人、うち手術87人、本格調査では結果判定が7万5000人余りで、悪性疑いが8人、手術実施が1人となっている。
 県の専門委員会の評価としては、総じて被ばく線量が低いこと、影響を受けやすい0歳から5歳に疑い例などが出ていないこと、悪性ないし悪性疑いの発生率に地域差がないことから、現特点において放射線による影響については考えにくい、としている。
 原因論争はやめて検査の継続実施を求めている。

3 福島県民の直面している問題

(1) 福島復興指針改定による「福島切り捨て加速化」
 さて、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂が6月12日に閣議決定された。いわゆる「福島復興指針改定」である。5月29日の自民・公明による「復興加速化のための第5次提言」を受けてのもの。
 結論から言うと、帰還困難区域以外の避難指示区域について、2年後の2017年3月に避難指示を解除し、その区域の営業損害は2017年2月までの分の一括払いで打ち切り、精神的損害についてはその1年後の2018年3月で打ち切る、というものである。      
 5次提言が出され、指針改定が決定される直前、福島県は6月7日に県原子力損害対策協議会全体会を開催した。この協議会は、県内206団体・自治体で構成されており、県労連や民医連、保団連、農民連、民商なども加わった文字通りの「オ-ル福島」協議会である。その日の全体会には政府関係省庁や東電も来て、その日までに県内各団体から出された要望・意見をまとめた文書も出された。
 森林組合は「林業生産活動の目途さえ立っていない中で、賠償の期限が議論されることは、とうてい容認てきない」、漁協は「本格操業に至るまで現在の賠償を堅持すること」、中小企業団体中央会は「風評被害に対す営業損害賠償は福島第一原発が更地になるまで続けるべきである」、旅館ホテル組合は「今後原発処理作業等の事故による風評被害再発等も懸念されることもあり、一括払いは安易に受け入れることはできない」、医師会は「今後何十年と与え続けるであろう損害に対しても完全に賠償することを求める」、病院協会は「病院は地域密着型てあって遠方に移転するごとにできず、賠償が打ち切られれば経営はただちに行き詰ってしまう。当該地域か復興することによって初めて病院の営業損害を回復てきる条件が揃うのであって、それが達せられる遥か以前の現段階で影響損害が打ち切られてしまえば、地域の病院が存続することは不可能である]、また富岡町は「当町は復興がこれからという扶態で解除時期だけが先行するのは理解しがたい」などなどであった。
 この5日後に指針改定が閣議決定された。県協議会の全体会で出された疑問や批判や要望や意見などの声をまともに検討した形跡けまつたく感じられず、避難指示一律解除を軸にして、あらゆる分野で「福島切り捨て」を進める「福島切り捨て加速化方針」として今後、進められるのではないか、と大いなる危惧をいだかざるを得ない。

(2) 原発再稼働は福島切り捨ての象徴
 この福島切り捨て方針と全国の原発再稼働は、表裏一体のものと受け止めている。原発再稼働はまさに福島切り捨ての象徴だと思う。原発事故の原因すらわからず、事故収束の見込みすら立たず、事故収束にこそ国は全力を投人すべきところ、国が前面に立ってしようとしていることは、原発再稼働である。
 福島県では、少なくとも県内原発全基廃炉は「オ一ル福島」の声であり願いである。原発をなくさない限り、福島の再生・復興はあり得ない。ここでも国、東電は福島の声をまともに聞こうとしない。
 第一原発の全6基の廃炉は決定したが、第二原発4基については廃炉にしようとしない。国や東電を呼んだ福島県議会の場でも、あるいは直接東京交渉や省庁交渉の場でも、廃炉を決断するように求めても、東電は「国のエネルギー政策を無視できない」とのらりくらりとして答えようとせず、国は「事業者が決めること」とまったく無責任きわまりない態度である。廃炉を明言しない以上、再稼働の対象として考えているとしか思えない。
 国の政策でいえば、2030年の原発による電源構成比率を20~22%として、30基半ばの原発を稼働させようとしている。 2030年に稼働40年以内は20基、建設中3基を人れても33基です。第二原発4基はすべて2030年には40年を超えるが、いずれにせよ、40年を超える原発をあと10基ぼどは再稼働させるというわけである。このこと自体、福島原発事故の教訓をまったく頗みない態度と言わなければならない。もう一度福島の事態を招来する意図かと、怒りを覚える。

(3) 賠償問題と集団訴訟
 賠償に関していうと、国や東電の姿勢ははっきりしている。被害者の数をできるだけ少なくする、被害もできるだけ小さく見せる、賠償金はできるだけ低くする、声か上がらないところでは被害はないことにする、多くの人に対する打ち切り、切り捨で、ということである。
 だいたい、原発事故は、加害者と被害者が入れ替わりようのない、加害者は一方的に加害者であり、被害者は一方的に被害者である。
 被害は、加害者が決めるはずのものではなく、被害者自身が知っているもの。海や農地、土壌が汚染された、故郷を失った、自分や子どもへの放射紳による健康被害ヘの不安が消えない、仕事がなくなった、収入が威った、家族がバラバラになった、これらはすべて被害である。避難指示を受けようが受けまいが、加害者はこれらをあるがままに受け止めて、被害者に寄り添って、真摯に、誠実に賠償すべきなのに、そうではない。
 ちなみに、今年4月までの福島県の賠償請求額は、一般会計、ならびに下水道・工業用水・病院の特別会計をあわせて215億円余りに対し、支払い額は140億円弱で65%、福島県内の市町村では、59市町村のうち56市町村が賠償請求しており、一部事務組合を合めると賠償請求総額は約600億円にのぼる。支払額は87億円に満たず、114%である。
 ともかく東電の姿勢は、それまでの生活を丸ごと奪われた強制避難者の被害実態には目を背け、強制避難区域以外の人たちが、低線量被ばくの健康に対する不安を抱きながらの暮らしを強いられる声をまったく聞かないといえる。
 そこで、全国各地に散った県民がやむなく集団で裁判に立ちあがった。全国の20の地裁・支部で25件、原告は9,000人を大きく上回っていて、1万人を超えるのは確実だ、ということ。
 その皮切りになったのが、長谷部議員か往むいわき市で、2012年12月に福島地裁いわき支部へ提訴した「元の生活をかえせ・原発事故被害いわき訴訟」である。
 強制避難地域であろうとそうでなかろうと、これまでの賠償の枠組みでは考えられない被害が広がっていること、にもかかわらず賠償打ち切りがすでに始まっていることから、これからもこうした集団訴訟は広がるのではないだろうか。

(4) 中間貯蔵施設の問題
 除染に伴って発生した放射性物質を含む土壌や廃棄物などを集中的に管理・保管する、環境省の責任で設置することになっている中間貯蔵施設の問題も深刻である。この施設は、福島第一原発周囲の大熊町に約11㎢、双葉町に約5㎢、あわせて約16㎢の予定で、県内43市町村から最大2、200万㎥の除染廃棄物が搬入される。
 4kmx4kmが16㎢と言ってもなかなかわかりにくいですが、東京でいうと中野区がすっぽり入る面積で、 2,200万㎥も東京ドーム18杯分に相当する。
 建設予定地には地権者が2,365人いて、うち1,210人は連絡先が把握できているというが、連絡先が把握できない地権者がぼぼ半数の約1,160人、うち死亡者が約800人、連絡しても返答がないのが360人とのことである。

 長谷部議員の言うには、地権者から話を間く機会があって、彼らはこの施設の必要性を承知しているものの、環境省の「上から目線」的対応にほとほと参っていた。地権者にとっては、先祖伝来の用他なのだが、、価格がゼロになった用地を事故前の半額で買ってあげるのだから、何が下満なのか、と言われたそうだ。
 これでは、地権者の気持ちに寄り添った交渉とはとても言えない。用地交渉が難航し、施設完成のめどが立たないのが実態のようだ。
 このめどが立たない施設に廃棄物を持ち込めないために、各市町村は仮置場を設置したりして5年目に入っているが、仮置場自体が住民の合意を得られないために決まらなず、自宅の庭や学校や公園などの現場保管せざるを得ない現実だ。仮置場は今年3月末で791か所だが、現場保管は10万か所を超えている。
 市町村としては一刻も早く中間貯蔵施設を完成させて、除染も進めたいし、除染廃棄物も搬出したいわけだが、そのめどさえ立っていないとのこと。

(5) 多重下請け、使い捨て同然の原発労働者の問題
 原発の事故収束、廃炉へ向けた作業、とりわけ汚染水対策が急務になっていて、事故原発現場に入って作業する労働者は今では一日7,000人にのぼっている。彼ら労働者が意欲をもち、将来の見通しも立てられる労働条件のもとで作業にあたり、事故収束ヘ向かうことは、福島の再生と福島県民の事故前の環境をとり戻す願いの大前提である。
 ところが現実は、事故前から必要な時だけ作業員を集めるための多重下請けや偽装請負のもとで、賃金のピンハネの横行と危険手当すら届かない現実が作業員から訴えられている。
 しかも、被ばく線量が高くなると辞めさせられるから、使い捨てである。
 それなので、危険手当不支給や、汚染水による被ばく賠償を訴えた原発労働者による訴訟もたたかわれている現実で、熟練労働者が激減しているもと、労働条件の抜本的改善が大きな課題になっている。

(6) 県民の健康保障
 原発事故後の福島の実情、現実は、最初に言ったように、時が経つにつれ、県民の分断策が図られ、課題が広がり、深刻化し、複雑化し、まだまだ言い足りず、きりがない。
 なお、防災に関して、長谷部議員は2012年12月議会で、「自助・共助・公助」が成り立たないことについて質問されたとのこと。つまり、地域防災計画について、「自助・共助」が、行政によるまちづくり政策・ 
都市政策の失敗や社会システムのひずみの結果を地域住民に押しつけているだけだ、と指摘した。これに対し県は、「公助を基本にしつつ、自助・共助の機運の醸成に努めたい」と答えたという。防災に関しては「公助が基本」と答弁させたことは重要なことだと思っている。
 社会保障を含め、暮らしの基本にかかわることで、憲法上の基本的人権の保障を国と行政の「公助」とする認識をただすことは、大きな課題だと思う。
 こうしたことを含め、原発震災の現実を突きつけられた県として、エネルギー政策面では、県内原発10基全基廃炉、原子力に依存しない社会づくり、再生可能エネルギー先駆けの地となる選択をしたのである。

(7) 再生可能エネルギー先駆けの地ヘ
 2011年8月に策定した「福島県復興ビジョン」では、復興へ向けた「基本理念」に、「原子力に依存しない社会をめざす」と明記した。
 2O11年9月には、福島県議会が全基廃炉の請願を出席者全員の全会一致で採択した。この議会が、原発事故で任期がのびた議会の最後の議会となった。
 2011年11月には7ヶ月延期になった県議会議員選挙が行なわれ、11月29日に12月議会へ向けた各会派の知事申入れがあって、翌日の11月30日、知事は県内の原発10基すべての廃炉を求めることを表明した。
  2012年3月には、1年前の震災直前に策定していた「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」を改定し、「2040年頃を目途に、県内エネルギー需要量の100%以上に相当する量のエネルギーを再生可能エネルギーで生み出す」ということが掲げられた。
 2012年7月には国によって固定価格買取制度が姑まったた。
 2013年2月に県は、推進ビジョンで掲げた目標への歩みを着実に進め、福島県を名実ともに再生可能エネルギーの先駆けの地とするため、「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン」を策定し、2015年までの行動計画を明らかにした。
 このアクションプランでは、3つの柱として、「県民参加と地域主導」「産業集積と雇用創出」「震災・原発事故からの復興の牽引」を掲げている。
 2012年7月に固定価格買収制度が始まってから今年2015年3月末までに2年9か月が経過した。この期間に、経産省によって、福島県内で自然エネルギー設備認定を受けたのは、新たに4万1522件、505万キロワットで、認定を受けた容量は全国1位になっている。ただ件数は18位、太陽光の新規認定容量のうち2,000kw以上が162件と100件以上は福島県だけで、突出して全国1位で、太陽光認定容量は固定価格買収制度導入前の67倍に及んでいるものの、いわゆるメガ・ソーラーが大きく寄与しているのである。地産地消が本質の再生可能エネルギー供給のあり方を構築すべきところ、大型・集中型の大手企業中心のエネルギー供給基地になるのでは、「再生可能エネルギー先駆けの地」としての内実が問われることになる。
 やはり県自身が往として掲げた「県民参加と地域主導」による普及とこれを推進する政策・制度が今後のカギだとのべて、報告を終えた。

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