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第80号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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第80号

2015・08・21 更新

天心記念五浦美術館

茨城県天心記念五浦美術館=北茨城市

 岡倉天心や横山大観をはじめとする五浦の作家達の業績を顕彰すると共に優れた作品が鑑賞できる。
 「異界へのいざないー妖怪大集合」展示は大盛況。今夏(~8.30迄)

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第41回茨城県自治体問題研究所総会が開催されました

 7月18日(土)つくば市自治労連会館で研究所第41回の総会が開催されました。
 議事に先立ち挨拶の中で田中理事長は、今年40周年を迎えました。1975年(昭和50年)7月に創立した。この40年間にまちづくり学校や自治体セミナーなど学習交流、いばらきの地域と自治の発行や各自治体の民主的な発展のために茨城に根付いて貢献してきました。これも皆様方の活動と熱意によりもので感謝を申し上げたい。
 近年、会員の減少や各調査研究が充分な活動ができないでいる。40週年をバネにして社会的な要請に応えられるように創りあげて行きたい。
 安倍政権は、戦後70年、戦争する国づくり、平和を壊し憲法を破壊する行為は許せない。
地方創生、自治体消滅論は地域社会をゆり動かしているが、地域の自治体調査、研究により組織として少しでも克服する年にして行きたい、と決意を込めて挨拶があった。
 榊原徹茨城自治労連特別執行委員は、来賓挨拶の中で自治体職員の賃金、職場要求闘争、自治研活動の三つが発揮されることが自治体労働者にとって重要である。茨城で全国自治研集会が来年10月につくば市で開催されるので皆様にお力添えをお願いしたい。
 安倍自公政権は、国民の声を聞かずに突き進もうとしています。住民自治、団体自治はこの国家主義的な動きに対峙することが重要である。自治研活動は、学習が基本であり自らが学習を基礎に自治体労働者として立ち上がる時である。
 叶谷事務局長、岡村次長から提案された経過報告、決算、活動方針、規約の一部改正(会費の値上げ)、予算案を全員で承認をしました。役委員の改選では、榊原徹副理事長が退任され、鯉沼康浩(茨城自治労連委員長)さんが副理事長に選出されました。

理事長  田中重博
副理事長 澁谷敦司・鯉沼康浩・飯田三年
理 事  池羽路一・石橋英司・今泉 正・加藤木正・佐川泰弘・佐藤英一・白石勝巳・高木知子・高畑 孝・長山重道・濱野 真・穂積建三・本田精一・宮田哲雄・山浦五十一・山口由夫・山本千秋
監  事  岩瀬 亮・川並英二
事務局長 叶谷 正 同 次長 岡村瑞比古
顧  問  秋元喜代二・浅野長増・井川二彦・木戸田四郎・田村武夫・高島 剛・小貫雅史・本田忠弘・宇佐神忠捷・川﨑不二男・恵田三郎・飯塚和之

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投 稿

第57回自治体学校に参加して

金剛寺 博(龍ケ崎市議会議員)

 4月一斉地方選挙で、初当選しました、龍ケ崎市の金剛寺博です。
 自治体学校には初の参加です。金沢と遠距離の場所でしたが、幸い牛久市・土浦市の市議計7人でレンタカーを借りて車での移動となり、長距離でしたが、交代運転で道中も楽しい時間を過ごさせてもらいました。ホテルも先輩議員に予約してもらい何の心配もなく参加することができました。
 1日目の全体会での、「地方自治の危機と再生の道―憲法と沖縄問題を考える」と題した宮本憲一教授の講演は現在地方自治に危機に直面しながらも、新しい住民の主体と動きが現れていることが整理され報告されたと思います。新自由主義・三位一体の改革・市町村合併・地方創生と次々に押し付けられる政治に地方自治は崩壊していくような重圧をいつも感じていましたが、オール沖縄の闘いや、大阪都構想の阻止などを新しい住民運動に着目して、ここに地方自治再生の道があることを学びました。また過去には公害裁判が1970年台の革新自治体を生み出す原動力となったことを知りました。地方自治の原点に触れた感じがします。
 現在、龍ケ崎市でも、市民の意見を聞くことなく、市長が独断で進める「佐貫駅名改称」に住民から、「住民投票」を求める直接請求運動が起こり、署名活動に入っています。龍ケ崎市では住民投票の直接請求は初めてのことです。自主的に参加する市民も巻き込んで、署名数は有権者数の1割に達しています。これは新しい動きと着目をしています。
 1日目のパネルデスカッションでは、岡田友弘教授からは、「地方創生」の真のねらいが、道州制の導入に向けての前段階の位置付けであることを改めて知ることが出来ました。白山市合併検証では10年前の平成の大合併により8つの市町村が合併してできた白山市が、周辺の町村部では、役場が徹退し、さらに予算配分が中心部に重点配分されるなかで、周辺では人口減少が進んでいる実態が報告されました。春の研修では同様に浜松市の大合併の調査研究内容を聞きました。いかに平成の大合併が問題であったかを知ることができました。小さい自治体輝く自治と題して、長野県阿智村前村長の岡庭一雄氏の報告は、それぞれの地域が特色を生かして、定住人口増に取り組んでいることはすばらしい取組であると感心しました。
 2日目の分科会は、地方自治と財政のしくみに参加しました。初めての9月決算議会を迎えるにあたり、少しでも知識を得て置きたいと思った次第です。この中では次の点を一応知ることができました。
 ①地方財政のしくみ、②財政で使用される各名称の意味、③財政の分析の方法。一応マスターしたように聞こえますが、覚えこんだわけでも無く、まだ本を見ないと実際には何も分からない状態です。自治体学校に来て、財政分析に関する書籍も2冊買いました。それでも決算書が出てきたら、またテキストや書籍を見ながらの作業になると思われますが、先輩議員にも指導を受けながら9月議会を乗り越えたいと思います。
 3日目の中村浩二教授による「世界農業遺産、能登の里山里海と地域再生の講演は素晴らしい自然の写真を見ながらで、楽しい内容でした。世界農業遺産というものがあること自体初めて知ることが出来ました。内容では特に里山里海マイスターとして世界的にこれらを守り育てる人材を作られていることに感銘致しました。

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第41回茨城県自治体問題研究所総会「記念講演」(2015.07.18)

安倍政権の「地方創生」戦略を検証し、真の地域再生を

角田 英昭(自治体問題研究所・常任理事)

はじめに

 増田寛也+日本創成会議は、2013年に「中央公論」で「2040年、地方消滅。極点社会が到来する」と題して「自治体消滅」論を展開し、2014年5月には「消滅可能性都市」と称して896の自治体名を名指しで公表しました。宣伝文句は「壊死する地方都市」「消滅する市町村」「すべての町は救えない」という、極めて露骨なものです。
 安倍政権は、「自治体消滅」論とその提言を基礎にして昨年12月に人口減対策としての長期ビジョンとそれを実現する地方創生総合戦略を策定しました。これを受けて、各自治体は2015年度中に人口ビジョンと地方版総合戦略を策定しますが、既存の総合計画との整合性や人材・ノウハウの確保、民間シンクタンクへの丸投げ、地域格差の拡大などが懸念されています。
 いま大事なことは、住民、職員、議員、地元企業、研究者等の参加で地域挙げての計画づくりを進めていくことであり、政府は、こうした自治体の自主的、自律的な取組を支援し、福祉や教育、雇用分野での基盤整備を早急に行うべきです。

人口減少時代の政策課題とは何か

 日本全体で見れば出生率の低下(自然減)、少子化が基本問題であり、地域間で見れば大都市圏、特に東京圏への一極集中と地方の転出超過(社会減)の歯止め、集落維持が課題になります。
 ところが、政府の「長期ビジョン」では明確な施策や展望は示されておらず、今日の少子化、人口減少の原因がどこにあるのか、その総括もされていません。
 日本の出生率の低下は、以前から指摘されていたことであり、フランス(1993年1,66→2010年2,0)やスウェーデン(1999年1,50→2010年1,98)のように、家族給付や出産・育児と就労の両立支援など若い世代の生活の実態に寄り添った措置を講じて計画的、系統的に改善を図ってこなかったのか、その責任が問われます。同時に、人口減少をマイナス面だけで捉えず、それを都市のゆとり、安全性、環境との共生など質的な転換に繋げていくことも重要です。
 実際に首都直下大地震、南海トラフ巨大地震の発生確率は30年以内に70%以上と逼迫しており、災害に強いまちづくりは緊急の課題です。

長期ビジョンの基本認識と政府等の施策の柱

 その基本認識は、①人口減少は経済社会に大きな重荷になり、地方は地域経済社会の維持が重大な局面を迎える、②的確な政策に転換すれば未来は開ける、③2060年に1億人程度の人口を確保し、「人口の安定化」と「生産性の向上」が図られれば、2050年代に実質GDP成長率は1.5~2%程度を維持できるというものです。
 ここには住民の暮らしや文化、生業、地域という視点はなく、人口減対策はまさに労力確保、経済規模・成長率維持のための手段になっています。
 施策の柱では、①国民の希望出生率の実現、②企業の取組への支援(子育て支援、残業割増率の引上げ)、③若年世代の経済基盤の強化(若年・結婚子育て世代500万円モデル、保育所待機児童対策)等となっています。
 しかし、現に政府が進めていることは、雇用の創出と言っても非正規・低賃金労働者の拡大であり、今や2000万人を超えています。また、「生涯ハケン」を押し付ける労働者派遣法の改悪や残業代ゼロ、雇用ルールの切り崩しを画策しており、所得も女性が働くことが前提で、その水準は結婚子育て世代夫婦で年収500万円という低い水準です。こうした法案や方針はすぐに撤回し、改善を図るべきです。

安倍政権のねらいは成長戦略に地方を動員

 ねらいはアベノミクスの「第3の矢」である成長戦略に地方を動員すること、具体的には地方施策での規制緩和、公共部門の効率化(人件費削減と公共施設の縮小再編等)を徹底することです。「骨太方針2014」では「ローカル・アベノミクスを通じて成長戦略の成果を全国津々浦々まで広げる」と述べ、自民党の「政権公約2014」でも「地方創生を規制改革により実現し、新たな発展モデルを構築しようとする『やる気のある、志の高い地方自治体』を、国家戦略特区における『地方創生特区』として早期に指定することにより地域の新規産業・雇用の創出をします」と明記しています。今年6月に成立した国家戦略特区法及び構造改革特区法には、都市公園内での保育所設置解禁、公立学校運営の民間開放も盛り込まれています。事態は既にここまできています。

総合戦略の基本政策と財政措置

 今年1月に総額3.5兆円の経済対策が決定され、地域住民生活緊急支援交付金(総額4200億円)が設けられました。内訳は地域消費喚起生活支援型と地方創生先行型の2種類です。前者は地元商店街で使うプレミア商品券とふるさと名物商品券の発行が基本です。
 こうした単年度補助の交付金が消費税増税等で冷え込んだ地域の消費喚起に繋がるのでしょうか。後者の地方創生先行型は、地方版総合戦略の策定、地域しごと支援や創業支援、小さな拠点づくり等に助成されますが、国の総合戦略に沿った運用が徹底され、重要業績評価指標の設定、効果検証が求められます。
 これは財政誘導に止まらず、自治体間の競争を煽り、公共部門の民間化・効率化の促進、既存計画の政府方針による見直しに連動するなど、看過できない問題が含まれています。これらの交付金はメニュー選択型であり、現場からその使い勝手や効果などに疑問が出ており、抜本的な見直しが必要です。

先進例に学び、真の地域再生を

 岡田知弘氏(京都大学教授)は、自立を選択した小規模自治体には注目すべき地域づくりの実践と成果があり、それに学び、今こそ地域内経済循環、再投資力の強化、実践的住民自治によるまちづくりを全国に広げていくことが重要であると述べています。
 2014年7月に日経産業地域研究所が実施した人口減対策調査によれば、各自治体の重点施策は、子育て支援重視が43%、定住・移住対策重視が45%とほぼ同率です。具体的な施策では、前者は医療費や保育料、教育費の支援、婚活や出産支援等であり、後者は空き家活用、雇用の場確保、住宅・土地の提供、給付金の支給などとなっています。
 現在、各自治体で地方版総合戦略づくりが急ピッチで進められており、10月までの策定予定は都道府県で8割、市町村で4割です。茨城県も10月に策定する予定で、今年6月に第1回会議を開催し、3回の会議でまとめるとしています。全国的にもそうですが、こんな拙速な総合戦略づくりで県民の確信になるものができるのでしょうか。市町村も現在進行中であり、私たちの調査、研究、提言づくりも加速させていくことが必要です。

「地方創生」は公共施設再編、合併問題とも連動している

 現在、総務省は各自治体に公共施設等総合管理計画の策定を要請し、公共施設の縮小・廃止、集約化を進めています。
 茨城県内でも既に4市が策定済みです。自治体も財政悪化等が絡み積極的ですが、公共施設は地域社会やコミュニティの核をなすものであり、その改廃は住民の福祉や地域の将来に重大な影響を及ぼし、慎重な対応が求められます。特に小学校は文科省の規模適正化基準の見直しと相まって大きな問題になっています。
 「地方創生」の基本戦略は「選択と集中、ネットワーク化」であり、公共施設の集約化は重点であり、市町村域を超えて実施される可能性があります。
 次に合併との関連です。現在、合併自治体には10年間は交付税を上乗せする特例措置(合併算定替、9304億円)がされていますが、11年目から段階的に減額され、16年目以降は廃止、一本算定に移行します。その影響額は大きく、それが地域再生意欲の喪失や再合併の誘因、あるいはそれを理由にした公共施設の廃止や統合、人件費削減も進められています。茨城県内でも常陸大宮市や常陸太田市等は今年度から減額期に入っています。そのため総務省は、合併後の新たな姿に対応した支援措置(約6700億円)を講じており、これらも踏まえた的確な対応が必要です。

最後に

 今日、グローバリズムの中で「経済性」と「人間性」の対立が広がり、国のあり方、施策の内実が問い直されています。住民のいのちを守り、人間らしい暮らしを築き、持続可能な地域を再生していくことは急務です。地域の未来、自治体のあり方を決めるのは、主権者としての住民自身であり、ともに学び、力量を高め、情勢を攻勢的に切り拓いていきましょう。
 なお、詳しくは「『自治体消滅』論、『地方創生』戦略に対抗し、真の地域再生を」(自治体問題研究所・300円)をお読みください。

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事務局からのおしらせ

  • 規約改正について
    茨城県自治体問題研究所規約の一部を次のとおり改正する。
    第30条を次のように改める。青字部分が改正箇所

第30条 会費は,次の区分による。
(1) 普通会員    月額 900
(2) 研究者会員   月額 900
(3) 団体会員  一口月額1000円
(4) 賛助会員    月額1250円
付 則
 この改正は,2015年7月18日から施行し,2016年1月分会費から適用する。

イベント 

  •  自治体OB会員懇談会2015年度 研修会&総会のご案内

日時と集合:9月8日(火)午後1時30分:下の記念館入場口集合

  • 研修会(視察):予科連平和記念館(阿見町大字廻戸(はさまど)5番地)☎029-891-3344
  • 総 会:午後3時30分
    『リバーサイドホテルゑびすや』土浦市富士崎町1-18-16
    ☎029―821―0360
    研 修:『住民が主人公の市政を取り戻すために!つくば市住民投票の経験』
    講師は山本千秋氏(総合運動公園建設の是非を住民投票で問うつくば市民の会代表)
    研修の後、総会・懇親会
    参加費 : 10,000円(1泊2食)

● 第33回市町村議会議員研修会in横浜
 8月24日(月)・25日(火)(横浜)関内新井ホール
 
 9月議会を前に、鍛えよう「政策力」~どうする地方創生総合戦略
 策定を迫られる「地方創生総合戦略」、10月スタートのマイナンバー制度、9月決算議会に向け予算書・決算書の読み方などを解説する。

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新刊紹介

平成合併を検証する ~ 白山ろくの自治・産業・くらし

横山壽一・武田公子・武味能成・市原あかね・西村 茂・岡田知弘・いしかわ自治体問題研究所=編

定価(本体1852円+税)自治体研究社 サイズ:21cm/185p

「平成の大合併」によって、石川県の1市2町5村が合併して白山市が誕生した。財政、行政サービス、自治機能など、白山市の誕生がもたらした変化と問題点を、住民生活の視点から明らかにする。

『自治・平和・環境』

宮本 憲一 著

定価 A5判 1,111円+税

構成: 1. 転換期に立つ日本社会 2.憲法と地方自治ー戦後史の教訓、 3.自治・平和・環境をもとめて、4.足下から維持可能な社会を
概要:戦後70年、安倍政権は「戦争立法」、辺野古新基地、原発再稼働と政治経済の全面改革を強行している。自治研活動や革新自治体の教訓など戦後史に学びつつ、日本の民主主義再生と維持可能な社会へのみちを語る。

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