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第5号

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「いばらきの地域と自治」(第5号)


  • 今日あるも余生のうちや花は葉に
  • ツバメくる棚田漏れなく水湛へ
  • コンテナに写楽の役者夏きざす

作:高島つよし
(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)


深刻化する中小業者の経営と生活
徴税攻勢・下請け切りに苦しむ中小・零細業者

茨城県商工団体連合会会長
 

松澤 博

  • 国税特別徴収官

 県西で鉄筋加工を営むAさん宅に国税特別徴収官が訪れた。これまでの滞納督促である。強引に納付誓約書を書くように強要され,売掛金の差し押さえや,従業員の給料まで差し押さえる等のおどしに負けて,月50万円を納付する誓約書にサインをさせられてしまう。現在の経済状況でそんな大金を納付していくことは極めて困難である。
 Iさんは昨年の3月から20万から30万円を毎月納付し,誓約を履行してきたが今年3月になると,「この納付状況では,全額納付に時間がかかりすぎるお金を借りてでも支払え,もしくは,毎月80万円支払いの納付誓約書を書け」と強要してきた。いきすぎた取立て行為にIさんは追い詰められていく。幾度となく「自ら命をたつ」覚悟をするが,脳梗塞で肢体不自由の奥さんや従業員のことを考え生きる道を求めて民商へ相談にきた。(民商は中小業者の駆け込み寺)

 民商の事務局員や役員・税理士と税務署交渉に行く前にテレビ局に電話して,もしものことがあったら税務署の過酷な取立てを報道してくれと連絡して税務署交渉に臨みやっとの思いで「納税猶予」の申請書を受け付けさせた。
 このような強権的な取立ては県内でも後を立たない。民商にたどり着けた人はまだいいほうである。多くの事業者が強権的な税金の取立てで,商工ローンやヤミ金に手を出し,やがて,多重債務者へ,そして自己破産へ追い込まれていく。年間3万人を超える自殺者の多くがこのような税金の強制的な取立てが初期原因になっているといっても過言ではない。

  • 下請け殺し

 県央の製造業のHさんは全日空の貨物用ベルトコンベアーの製造を4次下請けで受注した。製品は完成納品したのだが,製品に瑕疵があったという理由で代金の支払いをストップされてしまう。製品は現在,成田空港で稼動しているのだが支払いは実行されない。何度も国土交通省へ陳情にいき,行政の指導を強めてもらったが発注元も1次下請けも,2次下請けも製造代金の支払いには応じてはこない。Hさんは仕方なく金融機関からの緊急借入れで当座をしのぎながら経営を続けている。

 「不況の時こそ,贅肉をそぎ落とすチャンス」経営の神様と崇められている松下幸之助氏の言葉だが,贅肉にされる下請け業者はたまったものでない。バブル崩壊後20年もの長い不況で体力の衰えた中小下請け業者にそぎ落とす贅肉など残ってはいない。貸し剥がし・下請け単価の切り下げ・仕事ストップあとは家・屋敷・工場・店舗などを売る以外に余剰資産などあるはずがない。後は自らの骨を切るしかない。莫大な金額を内部留保し,国からの公的資金の導入や税制面でも手厚く保護されている輸出大企業の贅肉落としの犠牲になる中小零細業者の姿は地獄にひとしい状況になっている。「派遣切り」などと同一線上にある問題である。

  • 自営業者の6割以上が所得250万円以下

 これは昨年度の埼玉県川越市の職業別所得調査の内容である。茨城県の職業別所得は自治体別の調査内容は目にしていないが,同じような内容であることは明らかである。それでも「所得をださないと金が借りられないから粉飾してあるんだよ。」「まともに経費を計上したら赤字だ」という悲鳴にもにた声が聞こえる。多くの自営業者が生活保護水準以下での生活を余儀なくされている。      
 しかし,税金は容赦なくかかってくる。国保税・住民税・介護保険・等など少しの家屋敷でもあると年間数十万円の税負担である。「税金を払ったら生活ができなくなる」滞納が増えて当然のような生活実態がここにある。
 生活費非課税・基本的生存権の保障(憲法25条)この基本的な原則はどこへいってしまうのだろうか?「市場競争に負けたものは消えてもらう」(竹中元財務大臣)競争原理だけではたして社会はなりたっていくのだろうか。「自助努力」「経営者の創意工夫」が強調されるが,いわゆる自己責任論で片付けられる問題ではないだろう。
(つづく)


 投 稿

地方分権改革と道州制、
茨城県行財政改革大綱(09~11年度)の関係

1― 

茨城県自治体問題研究所・理事
  

佐藤 英一

 第29次地方制度調査会答申が6月にある。
 今夏秋には、任期が来年春までの地方分権改革推進委員会の第3次勧告が、年度末には道州制ビジョン懇談会の最終報告が予想される。投稿第1回では、各会の役割と相互関係、動向につい整理し、次号で問題点の幾つかを検討する。

 3つの会が所与の前提とし、相互に連携しつつ異なる角度から推進している道州制とは、制度上は府県を廃止し、全国を10程度に分割して道又は州という広域自治体に置き換え、同時に国および市町村の形や役割を一変させる(=国の形をかえる)ものである。
 第29次地方制度調査会(会長 中村邦夫パナソニック会長)は、第28次勧告が道州制導入を勧告し道州制論議の本格化させた後を受けて、市町村合併をふくむ小規模町村など基礎自治体の取扱い、監査のあり方などに焦点を絞り検討している。

 地方分権改革推進委員会(会長 丹羽宇一郎)は、地方自治体重視を掲げ ①国の自治体への関与縮小②国事務・権限の自治体への移譲③国出先機関統廃合④府県の事務・権限の市町村移譲などを扱っている。しかし、見直しの過程で新自由主義構造改革の視点から、必要な規制や基準設定を廃止し、ナショナルミニマムの放棄や民間化・市場化を進めている。以上2つの会の答申・勧告は新地方分権一括法案として‘10年国会にかけられる予定である。

 道州制ビジョン懇談会(会長 江口克彦)は、道州制そのものを正面から検討している。国の役割を外交・通商、防衛、通貨、資源エネルギー政策などに限定し、国民生活にかかわることは受益と負担の原則のもと地方自治体が担うことを盛込んだ中間報告を出し、10年後の道州制導入を目指している。(注:自民党や日本経団連等の動きもあるが、省く。) 

 3つの会の動向は下表のとおりである。         

内閣第29次地方制度調査会地方分権改革推進委員会道州制ビジョン懇談会
07安倍7月第29次会諮問(市町村合併、基礎自治体あり方等)4月地方分権改革推進委員会設置1月道州制ビジョン懇談会設置(安倍政権公約)
07~08福田-5月第1次勧告(権限市町村移譲等)6月政府地方分権改革推進要綱(第1次)12月第2次勧告(義務付け見直し、国出先機関再編等)3月中間報告
08~09麻生6月第29次答申(予定)3月政府地方分権改革推進本部?月第3次勧告(義務見直し具体措置、地方税財政改革)秋:出先機関地方分権推進計画決定最終報告
10新地方分権一括法案道州制基本法案

   

・・・・2018年 道州制完全実施

(以下次号)


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