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第99号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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第99号

2017・03・24 更新
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マダラ鬼神祭=桜川市雨引観音

 「マダラ鬼神祭」は二大鬼祭のひとつとされる珍しい祭礼。雨引山で、花火の轟音を合図に、古式ゆかしい裃姿の侍を従えたマダラ鬼神が、鬼達とともに大石段を駈け登る。
 境内の竹矢来の中で、鬼達の踊りや柴燈護摩、僧侶の大太刀の修抜(しゅうばつ)が披露される。
 今年は4月9日に開催される。

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 辛口寸評 

 東海第2原発は、来年十一月二八日に運転四〇年となります。安倍内閣の原発再稼働方針が続くもとで、東海第2原発の「基準適合性審査」は再稼働と二〇年延長を見越した対応にほかなりません。日本原電が周辺一四市町村で行った住民説明会でも、茨城大学が実施した「地域社会と原子力に関するアンケート」でも、老朽化に対する不安の声は多数です。
知事は、今に至っても「国の動向を見て」との態度を崩していませんが、「再稼働」にも「二〇年延長」にも反対の政治決断をすべきです。また、廃炉作業がすすむ旧東海原発の放射性廃棄物L3の素掘り埋め立てに反対すべきです。
 原発事故の複合災害を想定しない、本県の広域避難計画は、周辺  圏内の 万人のうち、県内に 万人、県外(福島、栃木、群馬、埼玉、千葉の5県)に 万人を避難させようというもの。現在、県外避難施設の特定作業とともに、関係十四市町村が避難計画策定を検討しています。しかし、避難手段や避難経路、要援護者対策、行政機能移転、長期化への対応などの課題は多く、一00万人規模の避難は到底不可能です。
 廃炉にすることが一番の安全対策です。

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公共施設の統廃合・再編問題の課題と今後の取り組み

2017年3月 角田英昭(自治体問題研究所)

はじめに
総務省は2014年4月、地方自治体に対して公共施設等の総合的、計画的な管理を推進するため、「公共施設等総合管理計画」を速やかに策定するよう要請しました。その趣旨は「地方公共団体においては厳しい財政状況が続くなか、今後、人口減少等により公共施設等の利用需要が変化していくことが予想され、早急にその全体状況を把握し、長期的な視点をもって更新・統廃合・長寿命化等を計画的に行い、財政負担を軽減、平準化するとともに、公共施設等の最適な配置を実現することが必要となっている」というものです。これを受けて、各自治体は総合管理計画の策定作業を急ピッチで進め、今年度中にはほぼすべての自治体で策定されます。この計画は、これまでのような自治体任せ、個別施設毎の更新、統廃合に止まらず、国主導で公共施設の全体像を総合的に把握し、財政・政策誘導を図って一元的に統廃合・再編を推進していくものです。

 いま、なぜ、公共施設の統廃合・再編か

 このことについては、基本的な要因として次の3点が提起されています。
 1つは、公共施設の老朽化です。自治体の公共施設は、高度経済成長期以降の1970年代から80年代に急速に増えました。通常、公共施設は30年で大規模改修、約60年で廃止されます。そのため現在ある施設の多くは、今後、大規模改修に加え更新(建替え)も必要になり、経費が急増します。
 公共施設でも道路や橋梁、上下水道などのインフラ施設は、廃止は事実上困難であるとして維持管理や更新に向けた効率的方法や財源確保を重点にしていますが、いわゆる“ハコモノ”と言われる庁舎や学校、公営住宅、図書館、公民館、福祉施設などはすべて統廃合・再編の対象です。
 総務省が2013年に実施した自治体の「公共施設等の解体撤去事業に係る調査」によると、解体撤去の対象施設は12,251件、費用は4040億円になり、施設別では、行政庁舎、公営住宅、教育施設、福祉施設が多く、解体撤去理由では廃止が65%、統合が15%、移転が14%となっています。

 2つ目は、自治体財政の悪化です。この間も厳しい財政運営が強いられてきましたが、今日でも自治体は少子高齢化、介護ニーズの増大、貧困化の進展等で社会保障関連費が急増し、財政が逼迫しています。ところが国は積極的な財政支援や制度改善は行わず、逆に地方に更なる行政改革や経費削減を求めており、そのため自治体では単独事業、特に経費が急増する公共施設の改修・更新費が標的になっています。

 3つ目は、人口減少・人口構成等の変容に伴う住民の利用需要の変化です。今後、少子化が更に進み、子育て世代が減少すれば、市区町村の抱える公共施設の約4割は小中学校であり、その統廃合・再編が現実化します。実際に公立小中学校は、2000年代に入って毎年400近くが廃校になっており、今後も文部省が58年ぶりに改訂した「公立小中学校の適正規模・適正配置等に関する手引き」と相俟って廃校に拍車がかかっています。しかし、学校は地域・コミュニティの中で重要な位置を占めており、その本来的な役割に加えて、住民の絆、連帯の基礎にもなっています。安易な統廃合は、そこで住み続ける意味、思い、繋がりを稀薄にし、子育て世代の流出、地域の衰退に繋がりかねません。慎重な対応が求められます。

 計画の策定・推進に向けた政府の対応

 総務省は、計画策定を促進するため、各自治体に計画策定費として2014年度から3年間、特別交付税を措置し、計画の内容では、①所有する公共施設等の現況及び将来の見通し、②総人口や年代別人口推移を踏まえた今後の見通し、③公共施設等の維持管理、修繕、更新等に係る中長期的な経費及びこれらの経費に充当可能な財源の見込みを明らかにすること、④計画の進捗状況に応じて順次計画をバージョンアップすることを求めています。
 そのため政府は、①公共施設等の除去(解体撤去・原状回復)費~地方債の特例措置、2014年度から実施、事業費への充当率は75%、②公共施設の集約化・複合化(延床面積減少)に係る地方財政措置(公共施設等最適化事業債)~2017年度まで実施、充当率90%、交付税参入率50%、③公共施設の転用事業に係る地方債措置(地域活性化事業債の拡充)~2017年度まで実施、充当率90%、交付税参入率30%等の財政措置を講じ、推進を図っています。

 暮らし、地域、自治の根幹に関わる問題

 実際の計画内容を見ると、これは文字通り公共施設の統廃合・縮小再編計画であり、多くの自治体は削減目標を設定し、財政誘導を絡めた政府の方針に沿って具体化しています。総務省も各地の「先進事例」を紹介、周知しながら自治体に実施を迫っています。
 今日の地域、自治体を取り巻くさまざまな状況を勘案すれば、公共施設の見直しは必要であり、政策的な対応が求められます。問題はその中身、進め方です。公共施設は、地域社会やコミュニティの核をなすもので、住民のライフサイクル全体を通して福祉の増進を図り、社会・経済活動を営む基盤をつくるもので、自治体の仕事の根幹をなすものです。一律的な総量規制、統廃合・再編ありきでなく、住民の暮らしや地域の実態、将来をよく見据え、まちづくりの一環として住民の参加・参画、合意形成を図って進めるべきです。自治体の財政が厳しく、管理経費が大幅に増えることは事実ですが、何に予算を使うのか、自治体の本来的な役割は何か、事務事業の見直し、政策選択も含めて考えるべきです。
 森裕之氏(立命館大学)は「公共施設は本来的には住民の共有財産であり、社会経済状況に合わせてそれをどのように活用するかは最終的には住民の判断に委ねられるべき事柄」と指摘し、その先進例として飯田市(長野県)の「地域ごとの下からの(自治)計画づくり」を紹介しています。内容は、公共施設を全市的施設と地域施設に分類し、地域施設には地域別検討会議を設置し、そこに市は「公共施設のデータを提供し、市民が主体的にそれらの利用方途を検討する」ものです。実際の検討結果を見ると、民営化や統廃合、地域管理、複合化・集約化・多機能化が多く、住民、地域には厳しい選択を迫られています。具体化に向けては市の責任、役割の積極的な発揮が求められます。

 この問題にどう取り組むー政策と運動の課題

 今後、公共施設の統廃合・再編問題は、基本計画づくりから実行段階に入り、具体的な行動計画が提起されます。ここでは当面する政策と運動の課題について考えてみたいと思います。
 まず、政策の課題です。基本計画の内容をみると、どの自治体も①施設の総量を規制する、②新規施設は原則つくらない、③複合化、集約化を図る、④予防保全・長寿命化を推進する、⑤PPP/PFIを活用する、⑥受益と負担の適正化を行う、⑦未利用資産の活用を柱にしています。具体的には、大規模改修・更新の必要性・時期、長寿命化、施設の統廃合・複合化・集約化、削減目標、機能転換、住民サービスの確保、財政効率化、施設利用料、跡地利用等が課題になります。

(1)総量規制では多くの自治体は、削減目標として20~30%を掲げています。これは財政、人口減少面からの試算であり、それで住民の暮らしや地域、行政サービスがどうなるかは検証されていません。相模原市(神奈川県)の公共施設白書は、「施設の床面積で80%まで削減することは、市内の全ての行政系施設と市民文化施設、生涯学習施設、スポーツ・レク施設を廃止することに相当する」と述べており、目標数値の持つ意味、内容を踏まえて検討すべきです。
(2)人口減少面からの試算では、基礎数字として国立社会保障・人口問題研究所の推測値を使うのか、各自治体の目標人口を使うのかで、大きく変わります。例えば相模原市は、国立社人研の推計人口(2060年)は54万人であり、市が総合戦略の成果を踏まえて目指す目標人口は67万人です。これだけ違います。市の目標人口に合わせて公共施設の整備を行うのが基本ですが、実際には国立社人研の推計人口を使って削減幅を大きくしている自治体もあり、精査が必要です。実質が伴わなければ、人口流出に歯止めがかかりません。
(3)合併自治体では、施設保有量の多さが指摘され、人口に見合った削減が提起されています。現実的には合併された周辺部が標的になります。一律ではなく、その地域での暮らしの質、実態を踏まえた対策を講じるべきです。基礎的な公共施設は、日常生活圏内に整備することが基本です。地域施設は当該地域の住民、地域組織等との協議が不可欠であり、飯田市のような地域別住民検討会の設置も検討すべきです。
(4)施設の維持管理では長寿命化が基本であり、計画的な修繕、耐震化など予防保全を充実・強化すべきです。実施に当たっては、地元中小業者への優先発注、施設の維持管理能力・技術力の向上、育成を図り、地域経済の活性化に繋げていくことが重要です。
(5)収入確保では、施設利用の有料化・値上げは、設置目的や性格、活動内容を踏まえ、利用者の意向を十分把握した上で行うべきです。公民館や生涯学習施設等は無料又は低廉が原則で、仮に有料化しても自治会、町内会など地域組織や教育・福祉団体等の自主的活動には減免規定を設け、活動の維持・発展を図るべきです。未利用資産の活用では、高齢化社会対応や地域振興など将来ニーズに備えて、適切な場所に政策用地を確保し、資産を売却した場合は、その収益は将来の施設整備に向けた基金の設置や積立等に充当すべきです。
(6)大規模施設の整備では、国は人口20万以上の自治体に対してPPP/PFI優先的検討規定の策定を要請しており、各自治体も優先規定の策定(改定)を進めています。これまでの導入事例を見ると、PFIは大企業本位、高規格・高負担、施設の維持管理・運営面でも課題が多く、破綻事例もかなり見られ、住民・利用者の意見や要望も反映しにくい。専門家の協力も得て、導入是非の検討、的確なチェック、歯止めをかけていくことが必要です。

 次は運動の課題です。何よりも公共施設の統廃合・再編問題は、利用者、住民に十分周知されておらず、今回の総合管理計画の狙い、目的、内容を急いで知らせ学習していくことが必要です。

 その上で、①住民の暮らしや地域の実態、人口動態、公共施設の配置状況、利用実態、満足度、施設機能、管理・運営のあり方等について、住民自らが調査、分析、検証し、問題点、課題を明らかにしていくこと。②利用者・住民、職員、町内会・自治会、議員、専門家等も交えて検討する場を早急に設け、改善要求・提案を作成し、それをパブリックコメントや地域から対案づくりに活かし、議会・市当局にも提出し改善を図っていくこと。③実行計画の具体化に向けては、検討会への住民参加、住民・利用者アンケートの実施、地域毎の説明会、対象地域での住民ワークショップの実施、住民・利用者の合意形成を図って進めさせていくこと。④議会対応も重視し、特別委員会の設置、計画段階・実施段階での議会報告・審議を行い、必要な修正、改善を図っていくこと。⑤各地の先進事例を調査し、団体・会派間の情報交換、政策検討、活動交流を進め、その地域、自治体に合った形での提案を共同で出していくことなどが急務です。また、公共施設の統廃合・再編問題は、既に「地方創生」戦略や市町村合併、指定管理者制度の中で先行的に行われており、それらの施策との関連もよく見極め、一体的に検討していくことが必要です。 

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ファーストに軍拡路線の落とし穴
春風に朕(ちん)は誰かと聞く園児  
蜜月を売りに出したが買い手なく
弱者にはウインウインが空々しい
啓蟄(けいちつ)の土を吹き出すモグラかな

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

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事務局通信

◎ 第3回理事会の開催について    
 1 日時 4月25日(火)午後6時30分から
 2 場所「ミオス」2階 第1小研修室 
   〒311-4141 水戸市赤塚1-1
   ☎029-309-5001

連絡先 茨城県自治体問題研究所 Tel & Fax. 029(252)5440

新刊紹介

角田英明『公共施設の統廃合・再編問題にどう取り組む-計画づくりから本格実施へ-』
A5版・32頁 一般普及300円(地域研・自治労連割引単価200円)

 全国の自治体では、現在、公共施設等総合管理計画づくりが急ピッチで進められています。
 既に2015年度末までに全国30道府県、15指定都市、396市区町村でつくられ、今年度末にはほぼ全自治体で策定されます。これはこれまでのような個別施設の更新、統廃合に止まらず、公共施設全体を中長期的な視野に立って全面的に見直し、再編していくものです。そのため国は、公共施設等の解体撤去や公共施設の集約化・複合化、転用等に係る財政措置を講じて各自治体に計画の策定と実施を迫っています。同時に、この計画は「地方創生」戦略や市町村合併、指定管理者制度などと一体的に進められています。
 本書では、こうした状況を踏まえ、政府施策や各自治体の計画内容、今後の取組みの課題、方向を検討しました。皆さん方の活動に活用していただければ幸いです。

はじめに 
 1.いま、なぜ、公共施設の統廃合・再編か 
 2.計画の策定・推進に向けた政府の対応 
 3.各自治体の計画づくりと実施方針(秦野市 さいたま市 相模原市)
 4.今後の取り組みの留意点と課題 
 5.「地方創生」総合戦略と一体的に推進 
 6.市町村合併の中で進む公共施設の統廃合・再編 
 7.指定管理者制度における公共施設の再編問題 
おわりに

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