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第86号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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第86号

2016・02・24 更新

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満開の梅林から好文亭を望む「偕楽園」=水戸市

偕楽園は、茨城県水戸市にある日本庭園。岡山市の後楽園金沢市の兼六園と並び日本三名園の一つに数えられてきた。本園部分だけでも100種、3000本のウメが植えられ、白い大理石の吐玉泉、修復が終わり綺麗になった好文亭も見所。

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不透明で疑問の多い水戸市土地開発基金

 水戸市民の間では、現在、3.11大震災で使用不能になった水戸市民会館の再建計画に関して、白紙に戻して市民や専門家の参加のもとに納得のいく建設計画を再策定させようという目的で、住民投票条例の制定をめざして有権者の50分の1の署名を集める運動がすすんでいる。
 水戸の繁華街の中心に再開発事業として市民会館を建設する計画だが、都市計画決定(3月末~4月予定)の前で、開発基金を使って地権者の移転を可能とする代替地の先行取得がすすんでいる。
 水戸市の開発基金の額は25億7千万円である。基金の使用決定権は市長のみがもつ。財産事務取扱者および水道総務課長が基金により土地を取得する必要のある場合土地需要計画を市長に提出するが、決定は市長がおこなう。  
 議会の議決が必要な土地取得とは、予定価格2千万円以上、且つ1件5千㎡以上のものに限る。これ以下なら議会への報告もなされない。開発基金による土地の先行取得は不透明である。
 かくして、市民会館建設予定地の民間病院には、病院敷地の4.25倍もの広い代替地を用意し、代替地の売り渡しは時価なのに、水戸市が土地取得に要した費用(開発公社から買い戻し分をふくめ)は該時価の6倍強で持ち出しが余りにも多額である。不当な税金支出といわざるを得ず監査請求にいたった。
 牛久市の開発基金条例をみると、1.土地建物取引等検討委員会(副市長が委員長)の検討・庁議承認、2.土地購入決定後、速やかに議会報告、が規定され、透明化がはかられている。
 水戸市にはかかる手続きもないし、年度末の開発基金収支報告も現金と不動産(土地)評価額で25億7千万の帳尻合わせのみで、どの土地を何のためにいくらで購入したかの記載はない。

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TPP「大筋合意」は国会決議違反これからの運動でとめられる

村田 深(農民運動茨城県連合会(茨城農民連)書記長)
2016年1月21日

史上最悪の輸入自由化

 TPPは農業だけの問題ではないし、貿易だけの問題でもありません。政府やマスコミはTPPをそれらに矮小化しようとしています。しかしその農産物貿易だけをとってみても、今回の「大筋合意」は史上最悪の協定案であり、国内食料生産に壊滅的打撃を与え、国土を壊し、地域経済を壊すものです。
 「大筋合意」は、農林水産物の81%で関税を撤廃するとしています。「聖域」としていたはずの米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物(関税品目数としては586品目)の30%の関税を撤廃し、米の輸入を新たに7万8400トン増やし、牛肉の関税を4分の1に、豚肉の関税を10分の1にするとしています。

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 国会決議は、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」「交渉にあたっては二国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。」としています。「大筋合意」は、これに明白に違反しています。「大筋合意」は撤回し、TPP交渉からただちに撤退するべきです。

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 鈴木宣弘氏の試算では、農畜産物の生産額は全国で1兆円以上減少し、茨城では649億円減少するとしています。
 政府は、米の輸入が増える分だけ国産米の備蓄買い入れを増やすので影響はないといいますが、安い外国産米の流通を増やせば米価に影響することは明らかです。
 政府はまた、TPP対策費3千億円などで国内生産を守るとしていますが、95年のWTO発足後は6兆円の対策費を出しても、産出額は20%減り、農業所得は39%も減りました。「対策」で農業を守れないことは実証済みです。

  農家の経営は、米価暴落などで危機的状況に追い込まれています。JA全中がTPP断固反対の旗を降ろしてしまったことが農村の落胆に拍車をかけています。「機械が壊れたらやめるしかない」などの声が多く聞かれます。「大筋合意」が史上最悪の酷い内容であること、これからの運動でとめられることを知らせて、TPP反対の国民運動を立て直さなければなりません。

TPPは“アリ地獄”

 「大筋合意」は、詳細不明な玉虫色の表現が多いために、実際に何が合意されたのかが読み取れないものが多くあります。今後の小委員会、作業部会、二国間交渉などの協議に委ねているものも多く、協定の発効後に際限のない輸入自由化、規制緩和の協議が続けられる内容になっています。とくに日本は他の11か国よりも関税の撤廃率が低いために、他の国から求められれば7年後に関税撤廃時期の繰り上げなどの協議に応じることが義務付けられています。

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食品の安全基準緩和

 政府は「日本の食品の安全が脅かされるようなことはない」としていますが、日米間で「防カビ剤、食品添加物並びにゼラチンおよびコラーゲンに関する取り組みにつき認識の一致をみた」とされています。アメリカでのBSE発生以来輸入禁止してきた牛の骨髄由来のものを解禁するなどの密約をしたのではないでしょうか。
 「大筋合意」は、遺伝子組み換え食品などの規制にも厳密な科学的証拠を求め、予防原則を否定しています。表示制度についても「透明性の確保」として利害関係者の意見を聞くことを求めています。食品の安全基準や表示制度の策定に企業を関与させようとしているのではないでしょうか。
安ければいいのか
 TPPで安いものが輸入できれば消費者にメリットがあるとマスコミは宣伝していますが、消費者は、安ければ安全でなくてもいいと考えているわけではありません。世界で8億人もの人が飢えて、世界の死亡原因の第1位が飢餓・栄養不足であるという現実からも、39%しかない日本の食料自給率を引き上げることは、経済効率よりも優先しなければなりません。国内農業を守ることは、国民の食料を確保する食料安全保障だけでなく、国土と環境、景観などを守ることでもあります。国民経済の土台である第一次産業が打撃を受ければ、関連産業も含めて雇用機会が失われます。
 安ければいい、という考え方の行きつく先は、労賃も安くなるということであり、物価が安くなったとしてもそれを買う国民のふところがそれ以上に冷え込み、以前より買い物ができなくなるというデフレスパイラルに落ち込みます。安ければ外国産でもいいとなれば、国内産業は衰退します。安倍首相は中小企業の海外展開を支援するとしていますが、産業空洞化に拍車をかけるものになりかねません。

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輸出1兆円?農業産出額のたった1%
 政府は、食品輸出を1兆円に増やすから農業にとってもチャンスだといいますが、この半分以上が国内農産物をあまり使わない加工品で、農畜産物は835億円、農業総産出額の1%にすぎません。
 マスコミは、日本の農業は補助金漬けで甘やかされてきたから競争力がないなどといいますが、農業収入に占める補助金の割合は、EU95%に対して日本は16%でしかありません。関税もすでにアメリカに次ぐ世界最低水準になっています。だからこそ日本の食料自給率は低く、若い後継者が育たないのです。

国の主権を損なう ISD条項
 ISD条項は、外国企業などの投資家が国内法改正などで損害が出たときに、国際投資紛争解決センターに訴えることができる制度です。ドイツでは、政策変更で運転停止せざるをえなくなったスウェーデンの原発企業が賠償を求めて提訴しています。国内法よりも外国企業の利益を優先するものであり、国家主権・国民主権を侵害するものです。政府は、「大筋合意」で①異議申立できる②情報公開する③提訴期間を3年半に制限する規定を設けたから大丈夫といいますが、外国企業に損害があれば賠償を求められる基本は変りません。「濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。」とした国会決議に違反していると言わざるをえません。
医療もカネしだい
  ジェネリック医薬品の解禁期間について「大筋合意」は現状維持の5年なのか8年に延長するのかどちらともとれる玉虫色の表現になっており、国によって正反対の受け止めをしているのが現状です。薬価の決定ルールについては日米間で協議することが合意されており、今後、外国企業が薬価の決定に関与し、アメリカなみの高薬価になるおそれがあります。すでに混合診療のなし崩し的解禁につながる患者申出療養制度が導入され、国民皆保険制度が掘りくずされようとしています。金持ちでなければまともな医療が受けられないアメリカのような医療制度になり皆保険制度が崩れれば、保険会社は儲けの機会を拡大することになります。

「合意」内容を全面公開せよ
 TPP協定の正文言語に日本語がないことが異常です。「大筋合意」の邦訳もまだ本文しか公表されておらず、その何倍もある付属書等の邦訳は公表されていません。国民に知らせたくない内容だということを告白しているに等しいと言わざるをえません。
「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること」とした国会決議にも違反しています。
 農民連を含めて各団体で協力して翻訳・分析作業をすすめています。TPPは、多国籍企業の利益にはなっても国民の利益にはなりません。むしろいのちとくらしを壊すものです。「大筋合意」の内容を全面的に明らかにすることで、TPPの本質が浮き彫りになってくるでしょう。
まだ何も決まっていない
 政府は「大筋合意」によってTPPがすでに決着済みであるかのように言っていますが、とんでもありません。妥結できない点がいくつもあるからこそ「大筋」でしか合意できなかったのです。これから協定の最終文書を作って各国が調印することができるのかは予断を許しません。「大筋合意」で、アメリカか日本かどちらか一国でも批准しなければ発効しないという規定が盛り込まれました。アメリカでは、北米自由貿易協定の経験から自由貿易協定は国内の雇用をこわすことが国民の常識になっており、大統領選挙や日本でいう衆参ダブル選挙を前にTPP推進はできないだろうとも言われています。これだけ明白な国会決議違反の協定ですから、日本の国会でも絶対に批准してはならないものです。WTO協定は、明白な国会決議違反だったにもかかわらず批准されてしまいました。国会で承認させないためには、参議院選挙を前に、TPP反対の世論をもっと大きくしなければなりません。

(図表は、農民運動全国連合会発行の雑誌『農民』№72より転載しました。)

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口きいて金が貰えるいい商売
消費税今日もとられて泣く赤子  
長い椅子患者は皆んな待ち疲れ
大臣は国語辞典を持ち歩き
鬼怒川に福豆まいて鬼払い

  

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

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国のすすめる地域包括ケアのねらい

中山弘子 茨城保健生活協同組合 企画育成部長

 
 政府は「日本がかつて経験をしたことのない高齢社会を乗り切るため」として、2025年に向けて、地域包括ケアを推進しようとしています。地域包括ケアは「住み慣れた地域(徒歩圏内、中学校区)で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供されるシステム」と定義されています。この定義をそのまま読めば、安心した暮らしが得られるように思えます。しかし国が地域包括ケアに込めた本当の狙いは、高齢化に伴い増大する医療費・介護給付費を徹底的に削減し、足りない分は家族の力や地域の助け合いと、自費で民間サービスを購入して暮らすしくみをつくることです。
 具体的には、高度急性期病床を頂点に医療機能別に病床を再編し、介護は介護施設と在宅サービス、介護から外れた部分は地域包括ケアのたすけあい。介護と地域包括ケアは公的保障の度合いを薄くし、保険外サービスに委ねます。「入院から在宅へ」「医療から介護へ」、さらに「介護から市場・ボランティアへ」と誘導し、安上がりで効率的な医療介護提供体制をつくります。病床機能の再編を「川上」、地域包括ケアの実現を「川下」と表現し、「住み慣れた地域で最後まで」という国民の願いを逆手にとり、あたかも水が流れるように「在宅へ、在宅へ」と患者を押し流そうとしています。

 2000年に「介護の社会化」を掲げて介護保険ははじまりました。必要な時に必要な介護が受けられる安心した制度になることを国民は期待しました。しかし度重なる介護保険料の値上げ、利用料の負担増や軽度者の介護保険はずしが進められ、昨年4月からは①要支援1.2の方の訪問介護、デイサービスを市町村の総合事業へ ②特別養護老人ホームの入居対象者を原則要介護3以上とし、要介護1・2の方は対象外に ③一定所得以上の利用者負担が1割から2割に ④低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に預貯金の申告が必要となるなど、当初の理念が果たされないまま、給付の制限が始まっています。
 川下の地域包括ケアは「自助・互助・共助・公助」の役割分担が強調されています。まずは本人・家族の責任で対応し(自助)、何かあったらボランティアや住民の助け合いでまかない(互助)、それでも足りない場合は介護保険に代表される共助で、どうしてもダメなら最後に生活保護などの公助でと説明されています。

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 政府は植木鉢に例えて地域包括ケアのイメージ(図参照)を示しました。
 一見するとバランス良く見えますが、実際は「医療・看護」「介護・リハ」「保健・予防」は効率化・重点化で公費削減、「生活支援サービス」はボランティアや民間企業で対応、「すまい」は住宅市場で自己調達、「マネジメント」は公的制度を使わせない「自立」支援が基本です。さらに、土台(皿)に「本人・家族の選択と心構え」を据え、「孤独死を当然視した死に際の覚悟」を求めています。

 安倍政権は2015年の骨太の方針で、2020年度の基礎的財政収支黒字化を謳い、「経済再生なくして財政再建なし」の掛け声のもとで、社会保障費の削減を標的にしています。「国家財政が赤字なのだから、医療・介護の徹底した給付抑制は仕方がない。」そして削った分は「戦略的市場創造プラン」に位置づけて市場の拡大を図る。「国民のいのちや健康は大切だけれど、国にお金がないのだから、社会保障の給付が少なくなっても我慢。みなさん病気に、そして寝たきりにならないよう頑張ってください」と言っているのです。
 憲法13条、25条に沿った「その人らしい文化的な生活」と「人として尊厳あるケアを受ける権利」、そして「地域コミュニティーの中で社会参加ができる」 本来あるべき地域包括ケアの姿が実現されることを望みます。そのためには所得再分配機能を発揮した社会保障のシステムが必要であると考えます。

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新刊紹介

森 裕之著 『公共施設の再編を問う ー 「地方創生」下の統廃合・再配置』

自治体研究社  本体1200円+税

小中学校をはじめ公共施設の統合・廃止など大規模な再編がすすんでいる。そもそも公共施設とはなにか、なぜいま公共施設の再編なのか、先行する自治体の計画や再編の実際はどうなっているかなど、「地方創生」政策の下ですすむ公共施設再編を解析する。

はじめに―いまなぜ公共施設の再編・統廃合なのか―
 第1章 公共施設とは何か
 共同資産としての公共施設/公共施設とコミュニティ
 第2章 地方創生と公共施設
 地方創生における「選択と集中」/「人口減少社会」と地域・公共施設再編/地方創生と公共施設
 第3章 公共施設と地方財政改革
 公共施設等総合管理計画の概要/管理計画と地方財政措置/地方財政制度改革と公共施設
 第4章 公共施設の再編・統廃合―先行事例から学ぶ―
 公共施設の全体マネジメント―相模原市・さいたま市・秦野市―/個別施設マネジメントによる公共施設の廃止―浜松市―/公共施設の住民自治計画―飯田市―/公共施設と住民自治
 終 章 賢い縮小(スマート・シュリンク)へ向かって 縮小(シュリンク)する社会/スマート・シュリンク(賢い縮小)

西川榮一著 『リニア中央新幹線に未来はあるか 鉄道の高速化を考える』 

自治体研究社 本体1204 円+税

500km/h というスピードが“売り”のリニア中央新幹線。超電導という技術高速化と経済、高速化と安全問題・環境問題など、鉄道高速化の技術と高速化がもたらす問題を解説する。

1 リニア中央新幹線計画の概要
2 リニア中央新幹線の技術と輸送コスト―高速化の技術― 
  技術的特徴/輸送エネルギー性能/カルマン・ガブリエリ線図をみる/輸送コストは在来型新幹線の3~4 倍!?
3 500km/h と旅客需要予測―高速化の経済―
  旅客の移動コストと機会損失モデル/JR 東海の需要予測/「小委員会」(国交省)の需要予測
4 環境問題・安全問題
  1 環境・安全面から見たリニア中央新幹線計画の問題点
   移動コスト重視で評価したこと/「小委員会」における環境問題の審議/技術の開発・利用のあり方の問題/リニア中央新幹線計画の二重性格がもたらす問題
  2 さまざまな環境問題
   建設計画に関わる問題/建設工事に伴う問題/運行に伴う問題/開発側主導の環境アセスメント
  3 リニア中央新幹線運行によるCO2 排出量予測と温暖化問題
  4 リニア中央新幹線は地震に耐えられるのか
  5 スピードの価値再考 ― 高速化の社会学 ―

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