第83号
第83号
2015・11・24 更新
常陸秋そばフェステイバル里山フェア=常陸太田市
「常陸秋そば」は、茨城が全国に誇るブランド品種。香り、味わいに優れ、通をも唸らせるほどの逸品です。1978年に旧・金砂郷町(常陸太田市)の在来種から高品質種が選抜され、育成されました。金砂郷のけんちん村まつり 平成27年11月29日(土)常陸太田市・交流センターふじ。
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茨城県「創生総合戦略」/ 人口減抑止へ21施策 60年目標は223万と241万人
地方創生の推進に向け県は10月30日、人口減少対策の5力年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と、人口の将来推計を示す「人口ビジョン」を発表した。県の本部会議で同日決定し、内閣府に提出した。
人口ビジョンは、2060年の県人口の将来見通しを2010年比で74万人減の223万人などとするパターンを示し、総合戦略には人口維持に向けた21項目の重点施策を盛り込んだ。県内では、ほかに13市町村が同日までに総合戦略と人口ビジョンを策定した。
県の人口ビジョンは60年の県人口について、現状のまま何も手を打たないと10年比107万人減の190万人まで減少するとの推計に対し、将来見通しとして合計特殊出生率などの改善を前提に223万人と、さらに施策の理想的な実現を見込んだ241万人(10年比56万人減)の2パターンを示した。総合戦略は、雇用創出や結婚、出産、子育ての希望実現など四つの基本目標の下、計画期間の2019年度までの5年間に取り組む重点施策として、▽最先端科学技術の集積を活用した未来産業の創出 ▽移住・二地域居住希望者などへの支援 ▽若者の雇用の安定と経済的自立の支援
▽県北地域の振興1などを掲げた。
人口ビジョンと総合戦略の関連について、県は「60年の人口を223万人とするパターンに少しでも近づけられるよう、総合戦略に掲げた施策を推進していく」と説明している。一方、県内市町村のうち、10月中に総合戦略などの策定を終えたのは、土浦、石岡、高萩、笠間、取手、つくば、常陸大宮、那珂、稲敷、大洗、東海、阿見、境の各市町村。10月末までの策定は、地方創生先行型交付金の上乗せ支給の要件の一つであり、県や13市町村は対象事業の申請を行っている。
残り31市町村は来年3月末の期限までに順次策定を進めていく予定。ただ、大規模水害に見舞われた常総市は有識者会議などの議論が中断しており、本年度中の策定が見通せない状況となっている。地方版の総合戦略と人口ビジョンは、国が全国の都道府県と市区町村に本年度中の策定を求めている。県や各市町村は、有識者会議や議会の提言、パブリックコメントなどを反映しながら策定作業を進めてきた。
(茨城新聞 10月31日参照)
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なぜ私たちは新・水戸市民会館計画の白紙撤回を求めるのか
―私たちの運動の目的と性格についてー
田中 重博
(茨城大学名誉教授、新・水戸市民会館計画の白紙撤回を求める市民の会・準備会代表)
1 民主主義と住民自治を水戸市民の手に取り戻す運動
今回の新・水戸市民会館計画は、その事業規模や建設場所を含め、高橋市長の恣意的な判断を水戸市民に押し付けるものです。水戸市民は、高橋市長のこのような独断専行を許してはなりません。計画をいったん白紙撤回し、市民の意見を十分聞き、適正な計画に見直し、縮小する必要があります。
高橋市長の民主主義と住民自治を踏みにじるようなやり方に対し、私たちは、水戸市民の手に民主主義と地方自治を取り戻すために、この運動を提起するものです。
2 巨額の市民の税金の浪費・無駄遣いを止めること
高橋市長が進める四大プロジェクト(市役所206億円、ごみ処理施設400億円、東町運動公園80億円、市民会館300億円以上、計約1000億円)は、水戸市の1年の一般会計予算規模に匹敵する巨大な金額です。この四大プロジェクト全体に問題点が多々あり、全体として見直し、縮減すべきであると思われます。
特に、新・水戸市民会館計画は、当初計画(水戸市第6次総合計画、2014年から実施)では、68億円(建物46億円、土地代22億円。旧水戸市民会館程度の大きさ)とされていたものが、その4倍以上の300億円以上に膨れ上がっています。市民の税金の浪費・無駄遣い以外の何物でもありません。
今回の計画は、市街地再開発事業(103億円を計上)の手法により、「伊勢甚」という特定の大資本に何十億円という巨額の税金を供与するものであり、一部特定企業と一部政治家との「利権政治」の産物という批判を免れません。市民の血税を食い物とするような計画は市民の手でストップさせるしかありません。やはり、計画を白紙撤回し、市民の意見を聞き、大幅縮小して、適正規模に見直すべきです。
巨額の起債(借金)の市民への負担増、財政赤字の危険、巨大施設を建設後の修繕費や維持費の増大等の将来負担などを考慮に入れない計画です。全国の多くの地方都市が、今回の計画のような2000人収容の大ホールを作り、その後の維持費や運営に「苦戦」している実態も直視すべきではないでしょうか。このような失敗を繰り返さないためにも、計画を根本的に見直す必要があります。
3 市民参加による公共施設づくり、都市づくりをめざす
高橋市長は、大規模なコンベンションやイベントのための市民会館を作るといっていますが、これは本末転倒と言わざるを得ません。そうではなく、市民の使い勝手のいい、利用しやすい、身の丈に合った、市民のための市民会館を作らなければなりません。コンベンションやイベント呼び込み型・誘致型の市民会館の建設によっては、一過性でない街の活性化や賑わいをもたらすことは決してできないでしょう。住民が気軽にその施設を利用できてこそ、街の活性化や賑わいに寄与することができるのです。そのような市民会館を作るためには、市民参加が不可欠です。
今回の計画決定のプロセスを見ますと、この市民参加ということが、ないがしろにされているといわざるを得ません。今からでも遅くはありません。ただちに当局は、市民の意見や要望を十分聞き、市民参加の施設づくり、街づくりを目指すことを求めます。
また、私たちは、「人口減少時代」「少子高齢化時代」にみあった施設づくりを目指さなければなりません。「巨大箱もの」を作り、「無用の長物」、「お荷物」としてはなりません。バブル期の「大ホール主義」の時代は終わったのです。
市民が使いやすい場所につくるということも大事です。このことに関連して、過大な規模にもかかわらず専用駐車場は300台だけという今回の計画では、利用者は駐車場を探して、右往左往することになりかねません。その意味で、私たちが提案している、旧県庁隣接地での建築は、有力な一つの具体案だと考えます。また、県民文化センターなど他の施設とのすみわけや役割分担などの視点も必要でしょう。そして、気軽に市民が利用できるようにするためには、使用料を安く抑えるということも重要です。
4 水戸市民一人ひとりにとっての重大問題
税金や公共料金、物価の値上げ、低迷する賃金、年金の切り下げなど市民の暮らしは苦しくなる一方です。今回の問題は、私たちの税金の使い方の問題でもあります。市民会館に300億円もの巨額のお金をかけるのなら、その財源を暮らしや福祉の充実に充て、市民生活を豊かにするために税金を有効活用してほしいと、圧倒的多数の市民は願うに違いありません。そのような使い道はいくらでもあります。計画を、身の丈に合ったものに大胆に縮減し、無駄遣いをやめ、浮いた財源を市民の福祉の増進のために使うべきです。
以上述べてきたように、今回の問題は、水戸市民一人ひとりの民主主義と自治と税金の使い方をめぐる問題です。その意味で、市民一人一人の思想信条や政治的立場の違いを超えた水戸市民全体の問題であり、そのことを十分に踏まえて私たちは、水戸市民の皆様に広く訴えていきたいと考えています。
(以上は、去る11月4日に行われた記者会見でのあいさつに若干補筆して文章化したものです。)
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つくば市の住民投票運動が示すもの
山本 千秋
(新しいつくばを創る市民の会代表委員・茨城県自治体問題研究所理事)
読者の皆さんにはすでにご案内の通り、8月2日に、つくば市総合運動公園基本計画の賛否を問う住民投票が実施されました。投票率は47.3%で50%をわずかに切りましたが、「総合運動公園建設の是非を住民投票で問うつくば市民の会(住民投票の会)」が呼びかけた「基本計画に反対」が63,482票で、「賛成」15,101票を大きく上回り、得票率は実に81%でした。
以下では、住民投票の会の共同代表として運動に関わってきた立場から、反対票が8割を超えた要因などを検討しながら、この運動が意味するところを探ってみたいと思います。なお、やや詳しい経過等については、別に報告(住民と自治、15-10、p.40-42、2015)しましたので、併せてご覧いただければ幸いです。
優先すべき課題:
圧倒的多数のつくば市民は、国民健康保険税や介護保険料の負担軽減、予定される水道料金値上げの中止、市営のバスや乗合タクシーの増便、雨もりするスポーツ施設の修理等のほか、つくばエクスプレス沿線開発地域では、学校、幼稚園・保育園の建設、公民館の設置など、目前の切実な要望の実現を心待ちしています。年間予算の4割・305億円もかける運動公園の整備が、優先すべき事業になり得ないことは直感的に認識できることでした。
問題山積の計画:
広大なつくば市では、1ヶ所集中の大規模・高規格な施設で、「だれでも、いつでも、どこでもスポーツに親しむ」目標を達成することは不可能です。高齢者や子ども、障害者など交通弱者には、使い勝手が悪すぎます。県レベルで整備、運営されるべきトップアスリートのための施設を、つくば市が単独で整備するのも筋違いです。
また、15,000席の陸上競技場や5,000席の総合体育館などに、市外から大勢の観客を呼び寄せて大会やイベントを開催する目論みですが、駅から8kmというアクセスの悪さは致命的な欠点になります。さらに、事業費の40~50%を国からの補助金で、という財源見通しも全く当てにならず、少子高齢化の時代に子や孫に巨額な借金を残すことになります。こうした問題点を知った市民が、「ハコモノありき」の計画に強い不安をいだくのは当然でした。
非民主的な進め方:
空前の巨大事業である366億円の総合運動公園基本構想は、市民無視で策定され、市議会での審議もありませんでした。昨年3月の市議会では、パブコメの募集中に、66億円の用地購入を1票差で強引に可決しました。
基本構想と基本計画のそれぞれに対しパブコメが実施され、結果は反対ないし大幅見直しを求める市民の声が、いずれも過半数を大きく超えていました。また、政党・会派や市民団体は、署名集めや市民アンケート、市当局への申し入れ、議会での質疑と、さまざまな手立てで構想や計画の抜本的見直し、白紙撤回を求めました。しかし、市長は、これらすべての声を「反対のための反対だ」として切り捨てました。市当局に対する市民の不信は強まるばかりでした。
市長の特異な言説:
市長は、総合運動公園の内容を説明し市民と意見を交換するとして、全市20ヶ所で住民懇談会を開催しました。こうした場で市長は、これほどの巨大事業なのに、「市民の負担は増えない。他の事業に影響は与えない」とくり返しました。直接の増税はなくても、他の事業での負担増や経費の圧縮が起こることは素人にでも分かることで、とうてい市民の共感は得られませんでした。
同様に市長は、そんなお金があるのなら、他に回してほしいという市民の意見に対し、「305億円は運動公園の整備に使うお金なので、他には回せない」と答えるなど、はぐらかし、言い逃れ、ごまかしの答弁に終始しました。市長はまた、「反対運動は、来年の市長選で市長になりたい人の活動と一緒になっている感がある。政争の具にするな」などと、事実無根の言いがかりをつけました。
白紙撤回を正式に表明した9月議会で、結果について問われた市長は、「市民に正確な情報が伝わっていなかった」と答えました。この期に及んでも、内容でなく伝え方の問題だったと言い逃れ、自らの責任に一切触れない、そんな市長の政治姿勢を市民は見抜いていたのです。
一点共闘の妙:
「住民投票の会」は、目的に賛同し活動しようとする人はだれでも参加でき、参加者の自由意思で運営されました。準備段階を経て、最初の会議に集った人たちが世話人となり、その中から代表と事務局員を選出しましたが、世話人会議(毎回10~20人出席)への新規参加や退会は自由で、世話人の名簿も作りませんでした。政党・会派の議員や市民団体の役員も個人として参加しました。世話人会議の民主的な運営と団結が、会に対する市民の信頼につながり、市民の生活実感に共感する会の主張が、説得力を持って受け入れられたと思います。
市内の10地域では自主的に地域世話人会議が組織され、チラシ配布を初めて経験する人など、運動の裾野が大いに広がりました。市議会会派では、反対運動で中心を担った市民ネットワーク3人、共産党3、新社会党1の他に、自民党4,維新の会1、保守会派2の方々が「反市長」の一点共闘で手を結び、反対派が望む投票条例案を1票差で可決し、署名集めやチラシ配布にも協力しました。
住民投票運動の意味:8割の反対票は、以上述べてきた諸要因の積み重ねが結実したものと考えられます。投票結果は、賛成、反対両派だけでなく、多くのメディア関係者にとっても、驚きをもって受けとめられました。
この運動が意味するところは、第一に、おまかせ民主主義から脱皮し、市民一人ひとりが自らの考えで主体的に政策の決定に参画したことです。第二は、市長の傲慢な市政運営に対して、市民がノーを突きつけたことです。これらは、市政運営の本来の主人公が、市長や議会ではなく市民自身であること、市政の民主的な運営がどれほど重要であるかを、体験を通じて会得したということです。第三に、つくば市の市民運動の経験が、多くの自治体の住民運動に参考にしていただく可能性を開きました。そして第四に、市民一人ひとりが主体的にまちづくりに参加することを保障する、自治体の憲法ともいうべき「自治基本条例」の制定に向けて、草の根からの運動の進め方がイメージできたことです。
今後の対応:
9月議会で市長が基本計画の白紙撤回を表明したことにより、住民投票の会の主たる任務は終了しましたが、年内を目途に、住民投票運動の記録集を作成することを予定しています。また、今後のつくば市のスポーツ施設のあり方や、市政に混乱を持ち込んだ市長の責任問題など、残された課題がありますので、当面は会を存続させ、状況に応じて必要な行動をとることとしています。
美らの海を土足で汚す機動隊
硝煙が研究室に忍びより
マイナンバー背中にはって徘徊し
一億を低賃金で雇い上げ
権力が私人に化けて猿芝居
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)
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'お知らせ'
会費の値上げについて(規約改正)
2015年7月総会で茨城県自治体問題研究所規約の一部を次のとおり改正しました。
第30条を次のように改める。※アンダーライン部分が改正箇所
第30条 会費は,次の区分による。
(1) 普通会員 月額 900円(従前の会費850円)
(2) 研究者会員 月額 900円(従前の会費850円)
(3) 団体会員 一口月額1000円(据置き)
(4) 賛助会員 月額1250円(据置き)
付 則
この改正は,2015年7月18日から施行し,2016年1月分会費から適用する。
新刊紹介
岡田知弘・榊原秀訓・永山利和編著『地方消滅論・地方創生政策を問う』(地域と自治体第37集)
自治体研究社 定価(本体2,700円+税)
書籍の内容
地方創生政策は、どのような論理と手法で自治体を再編していくか。地方創生政策の基礎に据えられている地方消滅論の本質的かつ批判的分析を試みるとともに、それに対抗する地域政策を展望する。
目次
第1部 地方消滅論の本質
第1章 「地方消滅」論の本質と「地方創生」・道州制論─岡田 知弘
第2章 地方分権論と自治体間連携─榊原 秀訓
第2部 地方消滅論の源泉―新自由主義が描く国と自治体のかたち―
第3章 社会福祉法制の転換と市町村福祉の危機─伊藤 周平
第4章-1 人口減少社会に向けた農村・都市・国土計画─中山 徹
第4章-2 国土開発計画とグランドデザイン―国土交通省の出先機関の現状―山崎 正人
第5章 二層制地方自治―都道府県の意義と役割―村上 博
第6章-1 全体の奉仕者からの変質―新自由主義改革の推進と公務員制度―鎌田 一
第6章-2 地域の再生へ、公共サービスを担う自治体職員の確保を─久保 貴裕
第3部 地方消滅論と税財政・地域経済
第7章 地方財政と「地方創生」政策─平岡 和久
第8章 日本の税財政とこの国のかたち─鶴田 廣巳
第9章 地域経済 州都 中核と周辺―道州制の下での州都と周辺の産業連関分析による影響試算―入谷 貴夫
第10章 持続可能な地域経済再生の展望と課題―多国籍企業の国際競争拠点から住民本位の地域経済再生への転換―吉田 敬一
第4部 改憲・道州制推進と経済成長戦略
第11章 改憲・道州制推進と経済成長戦略 ―対抗する国民的共同と地方自治の力―永山 利和