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第70号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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第70号

2014・10・24 更新

西山荘

西山荘=常陸太田市

 西山荘は、水戸二代藩主徳川光圀が元禄4年(1691年)から元禄13年(1700年)に没するまでの晩年を過ごした隠居所。質素な茅葺屋根の木造平屋建の造りで、書斎の丸窓からは築山と心字の池が眺められる。ここで「大日本史」編さん事業の監修をした。

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輝きを無理につくろい皺がふえ
古新聞載っていました新閣僚  
献金に勤務評定つけ加え
信号機ノーベル賞が光ってる
皆既食化粧したのか赤い月 

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

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「日米防衛協力の指針」改定に解釈改憲の企図をみる!

 10月8日、日米両政府が年内の調印を目指している「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」改定協議の中間報告が発表された。世界規模での米軍支援が明記された。安倍内閣による集団的自衛権行使承認の憲法解釈変更をもとに、これまで合意されてきた日本周辺での米軍支援ー日本が直接攻撃を受けていなくても、「日本周辺における平和と安全に重要な影響をあたえる事態」に限って米軍支援が出来るーを想定した「周辺事態」をなくし、自衛隊が世界どこでも米軍に協力できる枠組みに作り替えられる。有事には至らないが警察権だけでは対応できない「グレーゾーン事態」も集団的自衛権行使も、まさに平時から有事まで切れ目なく米軍を支援・連携することを安倍内閣は確約しようとしている。このほか、弾道ミサイル防衛や情報収集・警戒監視・偵察、非戦闘員保護、宇宙、サイバー空間などでの日米協力も盛り込まれる。間違いなく日本の安全保障政策のあり方を大きく転換させるもので、周辺国からの反発も予想される。
 「日米防衛協力のためのガイドライン」は、日本が他国に攻撃されたときや、周辺国での有事で自衛隊と米軍の具体的な役割分担を定めた文書で、日米安保条約の運用指針(マニュアル)である。下位の運用指針が親(上位)の安保条約の枠組み・制約を離脱して歯止めなき武力行使・戦争に自衛隊員を派兵しようとしているのだ。
 日本の若者の生命をアメリカの戦争の犠牲とするのか。自衛隊員にかならず死傷者が出る。その場合どういう補償をするのか。栄誉を与えるのか、国家としての葬儀をするのか、死者は靖国神社や護国神社に祀るのか、等の問題は避けられない。
 日本国憲法の平和に生きる権利、生命・自由・幸福追求権の保障が真剣に主張されねばならない。(T.T.)

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寄 稿

第二次茨城県広域避難計画(案)についての感想

本田 忠弘  (茨城県自治体問題研究所 顧問)

〈はじめに〉
 平成26年8月18日に平成26年度第1回茨城県地域防災計画改定委員会原子力災害対策検討部会が開かれて、「茨城県広域避難計画(案)の策定について」との議題のもとに権から計画案が提起された。
 話をわかり易くするために平成25年9月から平成26年3月頃まで勉強会で検討していた「たたき台」を第一次案とし今回の平成26年8月提案されたものを第二次案と呼ぶことにします。
〈これまでの検討事項〉
 私が思い出せるのは以下の3点です。
 1 バスで避難できるのは24~25万人。問題あり。(知事の発言)
 2 自家用車では、所定の時間をオーバーする。問題あり。(事務局)
 3 県内の避難先(自治体)の受け入れ能力不足。問題あり。(「勉強会」での多数意見)

〈第二次計画の検討〉

1「地震、津波等によって」の削除
 第二次案「基本的な考え方の(8)」で第一案にあった「地震津波等によって」を削除しています。福島の事故は、地震、津波が同時に発生しました。
 鹿児島の川内原発でも、火山、地震、津波等が同時に発生する複合災害に対応するものになっています。
原子力災害避難計画は、県民の命と生活と安全を守る最大の保証となるものですから火山、地震、津波などと同時に発生する複合災害に対応するものでなければなりません。

2 PAZ(5km圏内約8万人)即時避難区域の屋内退避施設の整備(1カ所2億円)
「屋内退避」はUPZ(5km~30km圏内)で位置づけられています。PAZは即時避難が原則です。ところが、平成26年3月末に国がUPZでなくPAZの病院、社会福祉施設等の屋内退避施設に対し、1カ所2億円の全額補助の支出の方針を示してきました。
(クリックすると拡大)
画像の説明
 国は、平成25年度100カ所で200億円決定し今後2カ年を加えて全体で300カ所600億円を予定しています。
 県内の施設では、9か所18億円を受けて(別表)平成26年8月に着工しています。県全体では30カ所の予算を用意しているとのことです。
 さて、病院・社会福祉施設等の避難開始時が6時間遅れると96万人最後の後発グループになる。
 当然避難道路等が最悪の状態になることはさけられない。
 PAZの「即時避難」の基本方針が貫かれるのでしょうか。今後充分検討する必要があります。
〈別表〉 
 主な工事は、(1)非常用発電装置の設置(2)放射性物質除去フィルターの設置。(3)出入口クリーユニット。

病院・施設病床・定員所  在
病院 3834床日立市 5施設
特養 3190名東海村 4施設
老健 2160名
障害 1100名 

3 県外5県への避難計画が描く茨城県や日立市、福島県の姿。(憲法第22条と地方自治法)

 第二次案はいくつかの特徴があります。

(1)原子力避難計画そのものが憲法違反
 「県外5県への避難計画」は直線距離で100kmを超える広域・長時間避難が特徴です。
 福島の経験からみると危険が多く事故多発が予想されます。避難死を含めて原発関連死が1770名になっていることは重大です。更に5~10年間も避難生活は絶対さけられません。
 憲法では、第22条で「何人も、公共の福祉に反しないかぎり居住、移転及び転業選択の自由を有する。」と規定しています。あえて裏読みをすると、事業者は(政府、知事、市町村長)原発事故で何人も強制的(暴力的)に居住移転(避難)させてはならない。となります。
 原発発電がなければ電力が不足する時代は「公共福祉=原発」だと思います。しかし、現在は原発発電が無くても電力は余っています。「原発の事故」はもはや「公共福祉に反する」ものです。96万人住民(地方自治法第二章)の居住の自由を侵害し強制的に県外、県内に移転させる計画は許されないとみるべきです。
 原子力避難計画そのものが憲法第22条の「居住、移転、職業の選択の自由」侵害の疑いがありという観点で検討してみてはいかがでしょうか。

(2)52万人が県外へ避難すれば茨城の政治、経済、文化、教育の中心地が消滅します
 5県とは群馬、栃木、埼玉、千葉、福島県です。日本一の広域計画です。その中で福島県に日立市、高萩市、常陸太田市、計26万人を避難させることに注目してください。さらに、福島原発事故の避難市民は14万人だということも付け加えておきます。
 この計画のポイントは、30km圏内の避難人口は96万人です。日本一多い。
 その規模は1つの県に相当する。例えば588,700人の鳥取県、996,000人の香川県など日本には8県もあるのです。 そこで強調したい点は、放射性物質に汚染された無人の20km圏は10年間帰還困難な区域で水戸市、日立市、ひたちなか市を中心にした人口74万人の都市郡です。茨城の政治、経済、文化、教育の中心地が消滅してしまうのです。茨城の姿が消えます。
 更に言えば、日立市、常陸太田市、常陸大宮市、高萩市、笠間市、城里町、の自治体が丸ごとスッポリ隣県に移転してしまう。福島県や埼玉県に境界線のない日立市や笠間市が存在できるでしょうか。第二次避難計画の描く「茨城の姿」は、憲法や地方自治の否定の姿です。
 以上が県民の福祉の増進をうたい、地方自治の発展を願い、働いている知事や市町村長の手によって計画し実行されようとしている点に注目したい。

〈資 料〉

原子力災害対策施設整備事業(H25補正)

原子力安全対策課

1 目的

 東海第2発電所のPAZ(概ね5km)内の病院や社会福祉施設のうち、即時避難が困難な入院患者や入所者がおり、かつ、放射線防護対策工事の実施が可能な施設に補助金を交付し、屋内退避時の被ばくの低減を図る。

2 背景

 緊急時においてPAZ内の住民は、原則として放射能物質が環境に放出される前に即時避難をすることとしているが、病院や社会福祉施設等では、災害時要援護者が避難先や搬送手段の確保が困難等の理由で、即時避難ができない場合、避難できる体制が整うまでの間、当該施設においてお屋内退避をせざるを得ない。
 このため、国は平成25年度の補正予算で、災害時要援護者の屋内退避施設等の放射線防護対策に要する費用への補助金として、200億円を計上した。(1カ所2億円、県負担0円)

3 事業概要

① 予算額    :18億円(9か所)
② 対象施設   :病院や社会福祉施設等(東海第二発電所のPAZ内)
③ 対象事業   :放射線防護対策の強化に係わる事業(窓やドア等の気密性の向上
         建物の陽圧化・放射性物質除去フィルターの設置、非常用発電装置の設置等
④ 補助率(100%): 定額(上限2億円) 
※設計費用、施工管理、工事費など一式を含む
⑤ 事業スキーム : 県が、病院や社会福祉施設等への間接補助

上のリポートについて、自治体問題研究所の紹介により、新潟大学名誉教授 立石雅昭先生にご意見をあおぎましたところ、次のようなコメントをいただきました。

2014年10月21日

茨城自治体問題研究所 顧問
社会福祉法人小川会    本田 忠弘 様
                      
         

立石 雅昭 

                 
 自治体問題研究所ならびににいがた自治体研究所から転送頂きました、先生作成の「第二次茨城県広域避難計画(案)についての感想」について、若干コメントさせて頂きます。ただし、当方は本来、地質学を専門とする者で、放射能の拡散シミュレーションや緊急時の交通システムなどについて検討した経験があるわけではありませんので、そうした意味で言えば門外漢ですので、誤って認識していることが多々あろうかと思います。その点はあらかじめご了解ください。

 私は柏崎刈羽原発を抱える新潟県の「原発の安全管理に関する技術委員会」委員として、原発再稼働に関わって、専門分野から見ての問題だけでなく、住民の命を守る立場で何が問題かを考える中で、防災・避難計画を自治体に丸投げして、政府も原子力規制委員会も責任を放棄している状況に大きな問題を感じてきたので、発信させて頂いています。原発事故時における課題として、何より重要な点は住民の被ばくを許さないという視点で、住民を含めた様々な方々が、いろいろな側面から防災・避難計画について意見を交換をし、何が問題かを明らかにして、政府・規制委への申し入れとともに、防災・避難計画作成に当たっている自治体関係者と協議を進めることだと思っています。

 以下、お送り頂いた、先生のご見解に沿って、思いつくままで恐縮ですが、2・3コメントします。

1.「地震・津波等によって」の削除
 ご指摘の通りだと思います。なぜ、二次案で複合災害という視点を削除するに至ったのか分かりませんが、特に地震による周辺道路事情などを考慮すると、避難計画が成り立たないとの判断ではないでしょうか。なぜ、避難計画に、地震時の道路の壊滅状況を考慮しないのか、明らかにさせる必要があると思います。
 柏崎刈羽原発の場合、2007年7月に発生した中越沖地震で、敷地とその周辺が大きな地震動に見舞われ、随所で亀裂や液状化が発生し、道路が波打ったりしました。
 そのために、外部からの消防車が原子力発電所構内に容易に入構できず、建屋外付けの変圧器の火災を消すことができなかった、という事実があります。こういう事実が、知事をはじめ、県の原子力安全対策課、そして、住民の間にも広く知られ、地震による原発事故発生の際には、机上のシミュレーションによる避難計画に対する器具や不安が強いのです。ただ、道路のどこがどのように破壊されるかをあらかじめ予測することは困難ですので、もし、地震で周辺道路が破壊された際には、どの程度、避難に要する時間に影響が発生しうるかはあらかじめ、検討しておく必要があり、それに対応する全体的な避難計画でなければ、意味がないでしょう。
 東海原発の場合は、2011年の東北地方太平洋沖地震で道路が寸断され、避難する方向がかなり限定されて、大渋滞を引き起こしたという実態があるのですから、計画にそうした点を考慮しないのはなぜなのか、真剣に考えていないとしか言えないと思います。

2.PAZ(5km圏内約8万人)即時避難区域の屋内待避施設の整備(1カ所2億円)
 PAZ圏内とUPZ圏内の病院・社会福祉施設等に、屋内待避施設を建造・整備すること自体は必要だと思います。先生ご指摘のように、PAZ圏内即時避難の原則は、病院や福祉施設では現実的には無理です。即時避難と言っても、どうしても病院や福祉施設では対応が遅れることは避けられないと思います。その時、一時的にせよ、屋内待避は必要だと思います。一時的な待避の後、それをできるだけ短時間で終わらせ、体制をとって、避難誘導していくことが必要ですが、問題はそうした箱物を造っておけばよいと言うことではなく、その利用の仕方をソフト面でどれだけ有用なものとして生かすシステムを作るかにあろうかと思います。
 これは避難準備区域でも同じです。そこにとどまっている(閉じ込めておく!)のは何時間か、その後どのように避難していくのかが、それぞれの区域ごとに明示される必要があります。いったん、放射能の放出が始まれば、PAZ圏内はもとより、UPZ圏内でも汚染は長期に、場合によれば、数年、数ヶ月にわたることが予想されます。
 避難先の確保の問題はまだ、検討が始まったばかりでしょうが、避難先でも、特に、病院や福祉施設の受け入れ体制の確保は困難を極めるでしょう。ここを綿密に、ソフト面でのシステムまで含めて事前に検討しておくことが必須だと思います。それがなければ、命を守ることにならないからです。

関連してのコメントです。

1.避難開始はいつ始まるのかという問題です。

 新潟での県技術委員会での検討例から言えば、避難が始まるのはどういう時点か、ということがいまだに曖昧です。敷地境界で事故による放射能の拡散が確認されてからでは遅いので、全電源喪失、いわゆる15条通報、とともに避難開始とされているのですが、通報は電力事業者が国や自治体になされますが、避難指示自体は総理大臣が出すことになっています。福島の場合はここで数時間を費やしているのです。この官邸の危機管理体制の問題について、まともな検証もなく、どのように改善されたのかが全く見えません。通報があれば、即、避難指示が出るのかどうか、依然として明らかではありません。電力事業者は通報までは責任を負いますが、その後は、国や自治体の対応に任されるのです。

2.避難訓練の問題です。

 福島事故後、避難訓練は以前よりはかなり改善されました。しかし、それでも、なお、放射能拡散という緊急事態に対する甘さが随所で見られます。それぞれの地域での避難訓練のどこに欠陥があるか、これはそれぞれの地域での訓練を住民が監視し、その問題を具体的に指摘し、改善を求める運動が必要です。避難訓練の問題を再稼働前提などと批判して、実質何もしないグループや個人もいるのですが、私から言わせれば、これは、現実に存在する原子力施設の恐ろしさに目をつぶり、稼働させなければ大丈夫といった誤った認識に立つものです。
 もちろん、稼働している場合と、稼働していない場合の事故の確率はある意味全く異なることは事実ですが、稼働していなくても、地震で事故に至る可能性は消せません。事故が起こったとき、住民を被ばくから守るためにどうするか、事故の想定に応じた、放射能の拡散予測と避難誘導に必要な体制と設備、こうした面できっちりチェックすることが必要です。動いていなくても、事故はあり得る、これがそれこそ福島の教訓だと思います。

 以上、不十分は承知です。いろいろな視点からの意見交換こそ必要だと思っています。
 新潟では11月中旬にこうしたテーマを中心に学習会を開催する予定です。ご意見などありましたら、お寄せ頂ければ、幸いです。

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