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第7号

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「いばらきの地域と自治」(第7号)


  • 細々と生きて強か梅を干す
  • 存えて被爆体験聴く晩夏
  • 今日生きて流汗淋漓農の裔

作:高島つよし
(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)


深刻化する中小業者の経営と生活

(その3)

ー小業者支援を経済政策の最重要課題にー

茨城県商工団体連合会会長

松澤 博

 「人生はあまり長いものではない。人間本性は早急な結果を欲している。手っ取り早い金儲けには特別の楽しみがあり、遠い将来の利得は、普通の人は、これは極めて高い率で割り引くものである」ーケインズ「一般理論より」

 現在おきている事象をわかりやすい言葉で解説するのが特徴で時々思い出したり、読み直したりすることがあるが、投機資本主義・カジノ経済のありようを見ていると、実感させられる一文である。
 弱肉強食の新自由主義を放置したままでは、ますます中小業者の未来は立ちいかなくなるのは自明である。国・地方自治体の長期的視野での政策的支援が必要になっているのではないだろうか。

 EUでは、2000年に「欧州小企業憲章」を制定した。この中で、小企業はヨーロッパ経済の背骨であり、雇用の主要な源泉・ビジネスアイデアを生み育てる大地であると、その存在の重要性を高らかにうたい、「Think Small First」=小企業を政策課題の最優先に、と政策の方向性を示しています。この憲章は08年12月さらにもう一歩すすみ、加盟各国にたいして法的拘束力をもつ「欧州小企業議定書」へと発見している。その結果、欧州各国は自営業者層をこの30年間で2割から8割も増やしているのに日本では4割近い減少になっている。この間、日本ではどのような中小業者政策がなされてきたのでしょうか。

  1. 中小企業基本法を改悪し、大企業と中小企業の「格差是正」策を投げ捨てる。
  2. 大店法を廃止し、大型店と地域商店街との「商業調整」をなくす。
  3. 中小企業の資金繰りを支えてきた地域金融機関を破綻に追い込み。
  4. 「自己資本規制」で赤字の中小企業には資金を貸せない仕組みをつくる。
  5. 家父長制の残滓である「所得税法56条」には手をつけず、業者婦人や後継者である業者青年の働き分を認めようとしない。

 など、中小企業・零細企業の存続基盤を掘り崩す一方の政策が採られてきたことに主要な原因があるといわざるをえない状況である。

 業者運動をリードする民商・全商連の政策提言

 昨年9月のリーマンショック以来・つるべ落とし・のような景気の悪化が続いている。政府・日銀は景気の底入れ感触を伝えているが、末端の下請け業者など中小業者は「仕事がない。モノが売れない。金が回らない」など塗炭の苦しみに喘いでいる。末端の業者の実態は政府の経済統計には反映されていないのが実態である。
 いまこそ、1現下の危機を乗り越える緊急対策と2将来展望を切り開けるよう抜本対策を、合わせて講じることが切実にかつ緊急に求められている時はないだろう。

 民商・全商連はいま「日本経済の主役」にふさわしい支援を、ということで次のような支援策・対策を求めて運動を広げている。

1 緊急金融対策

  • 緊急保証を全業種対象にすべき
  • 部分保証制度を廃止しる・・・全ての中小業者が使える 一般保証は保証割合8割の部分保証。2割分は保証がつかないため融資が返済されない場合金融機関のリスクになる。
  • 地方自治体による金融支援・・・国の対策と合わせて地方自治体の取り組みも重要になっている。・利子補給・保証料補給・預託をつうじて行う制度融資などの拡充・・が求められている。

2 下請取引の適正化

  • 「下請け駆け込み寺」などの権限を拡充し、「下請適正取引などの推進のためのガイドライン」を強化して、罰則規定をもうける。
  • 下請け代金法の執行をおこなう下請け代金検査官を大幅に増員し、実効性のある下請けいじめ根絶策を講じる。

3 新分野への挑戦支援

  • 農工商連携・地域資源活用、地域力連携拠点の整備など・・・「新事業促進法」「農商工連携促進法」「地域資源活用促進法」などの法整備が進められてきたが、09年度から「新事業活動促進支援補助金」(60.2億円)に一本化された。を本当に地域業者・中小業者に利用しやすい制度をつくりだす。

4 大店立地法13条を廃止し、「大店・まちづくりアセスメント」を義務づける

  • 大規模集客施設の立地が抑制される用途地域に準工業地域を追加する。
  • 規制対象となる大規模集客施設の規模用件を1万平米から3千平米超に引き下げる。
  • 書店街活性化などの予算を大幅に引き上げ、中小サービス業に対する支援策を講じる。

 などである。

 いま、これらの施策や提言は不況に苦しむ全国の中小・零細業者に明るさと将来展望を示す内容になっているし、業者内での民商運動への期待と地位を高めていっているものといえるのではないだろうか。
 もちろん、経済政策を外需依存から内需主導に切り替える抜本的な体質改善こそが中小零細業者が生き延び、経営基盤を安定させていく上で不可欠なのはいうまでもないことである。

 3回にわたって寄稿させていただき感謝いたします。政策を個別に説明していると長くなってしまいますのでコレで締めさせていただきます。今後とも民商運動へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。


 投 稿 

地方分権改革と道州制

茨城県行財政改革大綱(09~11年度)の関係 

(その2完)

茨城県自治体問題研究所 理事
 

佐藤 英一

   
 全国知事会が政党公約に「国家像」と「4年間で実行する7つの具体策」の記載を求め、タレント知事が「分権」発言でマスコミを賑わすなど、本題は俄かに国民の耳目をひきはじめた。

 さて前回(5月号)は、第29次地方制度調査会(6月16日答申) 、地方分権改革推進委員会及び道州制ビジョン懇談会の役割と相互の関係、活動の動向について触れた。
 今回は自民党道州制推進本部や日本経団連提言も視野に、どんな問題が内蔵されているのか話題に供したい。(民主党分権調査会は4月に「霞が関の解体・再編と地域主権の確立」を発表。個別の国補助金を全廃し一括交付金化、当面は道州制よりも府県制を維持し府県合併や府県連合を指向、府県事務の2/3を基礎自治体に移譲等の特徴もあるが、大枠において上記諸会提言の亜種とみることも可能である。また、「最終的には基礎自治体数を300程度にする」構想を取下げるなど、提言の基本がぶれている。)

1 地方分権改革と道州制実施で何が行われるのかについて、諸提言の問題意識が概ね共通しているので、以下一括大雑把に要約する。

(1)地方分権は、権限移譲要求に応え地方自治の充実を図ることを目的としているが、道州制の前提条件整備というネライも併せ持っている。権限移譲は基礎自治体(合併市が念頭)優先の原則で推進される。分権の概要は、

① 先ず、府県の64法律359事務権限を市(一部は町村) に移譲する。  

② 府県には、国の事務権限見直しと地方支分部局統廃合によ り74事項を移譲する。また国職員23,000人を移管する(職員削減総数は35,000人)。なお、移譲出来ない業務を集約して地方振興局および地方工務局(という大きな組織)を新設する。

③ (2000年地方分権一括法の第1次分権改革では未解決だった)自治事務に対する国の義務付け・枠付け関与10,057条項を見直して、うち4,076条項を廃止又は自治体条例に委任乃至条例による補正(条例による上書き)を可能とする。

④ 国補助で設置した施設の転用・譲渡を弾力化(10年経過財産の処分では国庫納入不要)。

(2)道州制は分権改革の総仕上げ=国のかたちの大改造である。国と自治体の関係はそれぞれの役割を明確に分担し、自治体は国に依存することなく自主・自立・自己責任の運営となる。

(3)国の役割は外交・軍事・通貨・皇室などに限定する。まず地方支分部局を廃止する。次に例えば内政関係の厚労省、文科省、経産省、国交省、農水省を解体し、基本計画分野を内閣府や新設内務省に吸収するほかは、一切の業務を道州に移譲する。

(4)地方自治体は、道州(広域自治体)と基礎自治体としての市(町村)の2層制を維持する。 府県は廃止して、全国を10程度に分割し道又は州を設置する。自民党案によれば、茨城・栃木・群馬・新潟(又は埼玉)を合体し北関東州(人口は950万又は1400万人)を置く。道州の役割は、基礎自治体を超える広域業務や広域公共事業等の実施である。

(5)基礎自治体は住民生活に最も身近な行政全分野を分担する。引き続き広域合併を指向し行財政能力を高めるとともに、権限等を国・県から大幅委譲して総合的行政の形を整える。

(6)今後の工程は、2010年に新地方分権一括法を成立させ数年で権限・業務移譲を完了させる。道州制は2010年に基本理念・移行スケジュール等を盛った道州制基本法を制定し、以後、道州制実施法、道州設立準備会設置、道州制法、道州制移行事務局設置等の手順を踏み、2015~18年頃には道州制完成となる。(尤も、現実は政治波乱で視界ゼロである。)

2 分権改革・道州制の問題点について、紙幅の関係で数点にしぼり紹介する。

(1)分権改革は、基礎自治体の業務権限を大きくするが、次の危険性を併せ持っている。

① 自治事務に対する国の義務付け・枠付けの見直しは、自治体の裁量権の拡大をもたらすが、同時に経済効率や民間化・市場開放を優先する小泉構造改革の「小さな政府」「国から地方へ、官から民へ」の視点で行われているため、くらしづくり分野(幼保・子ども、教育、医療・医療保険、生活保護)や地域づくり分野(開発・保全)などの公的責任が、新たなニーズへの対応とか自由度の拡大といった屁理屈によって形骸化される危険がある。行政サービスの提供主体は、コストの安い営利企業,NPO、ボランティに取って代わられ、市役所は単なる地域のマネージセンター化の道を歩むことになる。

② 自治体は分担する役割を自らの裁量と責任で遂行すると定められるから、行政サービスの向上は当該地域の自己負担=受益者負担制となる。国がナショナルミニマムに責任を負わなくなるから、次第に地域格差が拡がり住民の「棄民化」が進むことになる。

(2)道州制は、財界の国際競争力強化(と軍事、但しここでは説明略)にむけた国家改造が目的であり、究極の構造改革である。

① 道州制は、少子高齢化のなか中央集権体制を続けていては日本が国際競争に打ち勝てず全国的に活性化できないので、完全な地方政府を創る必要があるという名目で導入される。地域は、道州政府の「選択と集中」で効果的な投資が行われ蘇るとのことである。しかし地方自治体の困難は工場や支店の利益が東京本社に移転してしまうことや、第1次産業の衰退や働く場の崩壊から生まれているのにも拘わらずその事実を無視して、府県を廃止し住民自治の届かない道州になると、なぜ地域が活性化するのか、不可解である。

② 省の再編、道州設置、基礎自治体の市場化を通じて、一説では国・地方公務員170万人を45万人に削減し単年度15兆円を捻出する(別に経団連は、府県職員削減で1.5兆円、農業分野公共投資削減で4.3兆円の合計5.8兆円削減できると試算)。これをグローバル競争に勝ち抜く産業基盤づくりに集中投資しようとするのだから、道州制が財界流に国の形を変える「究極の構造改革」であるといわれる所以である。

3 第5次茨城県行財政改革大綱(09~11年度)における分権改革
 
 この大綱は、新地方分権一括法に先んじて、今年度から3年間で県事務704事務を市町村に移譲する計画である。過去長年かけて移譲してきた実績710事務に比べていかに急激であることか。受け手の市町村では、人手不足や職員の労働過重等の事態がおきないかと懸念される。 自治体の現場で県改革大綱や分権改革、道州制を批判的に検証し、内容を住民に明らかにして行く作業が急がれる。

参考書籍・資料
加茂利男ほか「幻想の道州制」自治体研究社 2009年
角田英昭「今日の地方分権改革と道州制、自治体の変容を検証する」
連絡先:自治労連・地方自治問題研究機構2009年   
岡田知弘 道州制で日本の未来は開けるのか 自治体研究社 2008年 
茨城県  第5次茨城県行財政改革大綱 平成21年2月 


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