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第55号

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第55号

2013・07・23 更新

牛久沼


牛久沼(竜ヶ崎市)

龍ケ崎市の西部に位置する牛久沼。ここは水の栄養が豊富で魚がよく捕れ、かつてはうなぎも数多生息していました。
実は「うな丼」の発祥の地が牛久沼だという話があるのです。

万札をかかえて幽霊熱中症
人人人富士山肩で息をつき  
官邸へ声なき声のお中元
マニフェスト誰も云わずに嘘ならべ
オスプレイ富士山見たいと色気だし

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

自民党「日本国憲法改正草案」(2012.4.27)は壊憲だ!

田村武夫氏(茨城大学名誉教授)

2013.7.6茨城県自治体問題研究所総会での講演を講演者ご自身でまとめていただきました。

*「憲法96条改定」から手を付ける!その口実論は「国民の改正権行使の障害是正」。本音は9条改定、が、厳しい賛否対立、国民投票での負けを回避。勝つための条件づくり。

1.硬性憲法は、近現代憲法の本質的特徴

 憲法改正要件を法律制定・改廃要件より厳しくすること(憲法の硬性化)は、人権確保の英知(アメリカ人の功績)。植民地アメリカの対イギリス独立戦争(1775-83)は、英国議会(その制定法)支配の打破であり、議会(法律)も従う最高法規(憲法の優位、違憲法律の排除)の観念の提起という意味をもっていた。英本国の法律による重課税と自由剥奪は、アメリカ人に「神のもとの人間平等」に基礎をおく天賦人権(自由権と財産権)の不可侵性を「法律に優位する憲法」という観念で確立することを実現させた。
 独立宣言直後のフランス大革命(1789)で確認された人権宣言とルソーらにより憲法の位置づけがいっそう精緻なものへ(社会契約論)。国民の自由と財産をまもるための人民と国家との契約が憲法であり、憲法に従う国家権力=立憲主義が公権力の拠って立つ土台となる。
 日本国憲法は、人類の英知である最高法規性・硬性化・社会契約・天賦人権の憲法諸観念を採用し発展させている(平和的生存権・第九条による徹底した人権保障)。

2.自民党「改正草案」は、普遍的な近(現)代憲法観を否定

・「日本国は・・・天皇を戴く国家」「日本国民は、・・・我々の国家を末永く子孫に継承するため、この憲法を制定する」(改正草案「前文」より)。旧大日本帝国憲法にいう「天皇は神聖にして侵すべからず」に限りなく接近・親近。      
・近現代国家についての世界共通理解=社会契約論(国家は人民との契約で成立)、その前提の「天賦人権論」とはまったく関係のない「天壌無窮の天皇制国家」観、これに仕える国民といった発想。

自民党の改憲案を作ってる西田議員は、「そもそも国民に主権があることがおかしい」(原文ママ)と言う。 2012年11月21日 11:32 PM
片山さつき議員は、「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です。国があなたに何をしてくれるか、ではなくて国を維持するには自分に何ができるか、を皆が考えるような前文にしました!」2012年12月7日 12:37 PM

・国民主権とは、国家存在の正当性の源が神ではなく、国民であるという意味であるが、「改正草案」には国民から出発する発想がない。ここに、時代錯誤、グロテスクな「国民と国家との関係」観がみられる。

3.国民の基本的人権を保障し、故に国家権力をしばる「憲法観」の否認例

① 憲法の存在事由の規定である現行97条の削除……憲法観念否定の第一例
・現97条は、憲法が最高法規でかつ硬性(厳しい改変制限)である根拠・理由を示す

 憲法第97条は「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて,これらの権利は,過去幾多の試練に堪へ,現在及び将来の国民に対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」とする。
 この基本的人権の尊重こそが憲法の最高法規性を実質的に裏づけるものであり,この条項に引き続く憲法第98条は「この憲法は,国の最高法規であって」と,憲法の最高法規性を宣言し,憲法第81条で裁判所に違憲立法審査権を与えている。
憲法第96条の改正規定は,これらの条項と一体のものとして,憲法保障の重要な役割を担うものである。」(日弁連、憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書、2013年3月14日を参照せよ)

② 国民が「憲法を尊重擁護する義務」規定を新設 → 憲法が人権規範から義務規範に変質……憲法観念否定の第二例
・国家権力をしばる、歯止めをかけるという近現代憲法観から国民を支配する道具(天皇や政治家が国民を支配する正当化根拠)へという「改正草案」の憲法観から必然的に「国家に対する国民の義務」規定が多数もられる。

国防義務(草案前文3段)、日の丸・君が代尊重義務(草案3 条)、領土・資源確保義務(草案9 条の3)、公益及び公の秩序服従義務(草案12条)、個人情報不当取得等禁止義務(草案19の2)、家族助け合い義 務(草案24 条)、環境保全義務(草案25 条の2)、地方自治負担分担義務(草案92 条2 項)、緊急事態指示服従義務(草案99 条3 項)、そして憲法尊重擁護義務(草案102 条1項)など、
自民党憲法改正草案は、「人権の保障度を下げ、数多くの義務規定を盛り込むことで、立憲主義と決別している点が最も注目すべき特徴である。」(伊藤真)

③ 以上から自民党改憲草案は、「国家と国民との関係を根本的に変えようとしている」。これは現行憲法の破壊(壊憲)であり、国際社会の常識的な国家観・憲法観から逸脱するもの。
・現行憲法の前文に明確に書かれているのは、社会契約である。すなわち、個々人が自らの自由を確保するために一定の合意をして国家を形成した。だから国家は決して所与のものではなく、また人為的なものでもない。戦争に対する反対意思も述べられており、その文脈で平和的生存権の記述もある。そして、これらの事柄は「人類普遍の原理」である。これに対し、「改正草案」の前文は、社会契約の論理がどこにも出てこない。日本固有の歴史・伝統・国土が強調され、憲法が対国家的なものであるはずの理屈が出てこない。そこに出てくるのはむしろ国と郷土を守る国民、規律を重んじる国民。国家が国民を縛る仕組みを定めようとしている姿勢が表れている。「麗しの共同体」「赤子の臣民」「滅私奉公」・・・なつかしさの再生!

④「個人の尊重」から「人の尊重」への変更 ~ 現行13条の改変の意味
「個人」という言葉が消え「人」と改正することの危険性。個性を抜き去った「人=国家の望ましい人像」は、個性を持ったその人しかいない「個人」と大きく異なる。個人の尊重とは、人は生まれながらにして自由平等であり、だれであっても人権は国家によっても不当に奪うことは出来ないという近代の人間観を採用しない、と自民党自身が語るように、日本という「国」・日本の歴史や伝統・文化を嫌う国民は「個人」として認めない、という理屈。
          ↓
 現行憲法下においても、日本は個人よりも共同体を優先させる国であり、周りに同調せよという雰囲気の息苦しい社会である。こういう社会において「もっと個人であることを大事にしなさい」と言ってくれる13条は非常に大事。そう簡単に13条を変えてはいけない。

⑤ 「公益・公の秩序」による広範な人権制限

 現行憲法は、「公共の福祉」による人権制約が存することを定める(12条後段、13条後段、22条1項、 29条2項)。この「公共の福祉」というのは、公のために個人は我慢しろ、ということではない。公共の福祉は、人々のそれぞれの人権同士の衝突を「調整する原理」と理解されている。つまり、基本的人権というのはもともと他人の人権を侵害しないという中身になっていること。これを、憲法学では人権の「内在的制約」という。もともと、人権の中にある制約と言うこと。

 これに対し、「改正草案」は、「公共の福祉」をいずれも「公益及び公の秩序」に置き換える。)。「公共の福祉」とは異なり、曖昧で伸縮自在な概念を根拠に、国や公共の利益、安寧秩序に反しない範囲内に人権を制限することが許されることになり、明治憲法下の「法律の留保」(国民は法律が許容した範囲内でしか権利が認められない)と同じ結果となりかねない。

改憲草案12条に「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し」という文言がある。人権の性質を全く理解していない常套句。権利と義務はバーターではない。人権は人間である以上先天的に備わっているもの、何かと引き替えにお上から与えてもらう賜物ではない。この文言からは「納税や勤労の義務を果たせないホームレスや生活保護受給者に人権などない」という昨今の生活保護制度改悪の考えに容易に行き着く。

⑥ 人権停止・憲法停止をもたらす緊急事態制 ~ 究極の人権破壊
・ 国家緊急権とは、戦争、内乱、恐慌ないし大規模な自然災害など平時の統治機構では対処できない緊急事態において、国家権力が国家の存立を維持するために、憲法、具体的には人権の保障と権力の分立システムを一時停止して非常措置をとる権限。その特徴は、緊急時において憲法を停止し、平常時とは異なる権力の内閣(総理大臣)への集中と国民の人権の制限を可能とする点にあり、政府が法律に代わる命令を発する立法権を掌握し、人権に対して平常時では到底許されない強い制限を加えることが可能となるということ。
・ そもそも憲法にとって自殺行為にもなりかねないこの強権について、いかにその発動要件を厳格に憲法に記したとしても、過去の経験からして決して歯止めとはならず、濫用の可能性の方が極めて高いので、現行憲法の許すぎりぎりの枠内で法律を整備し、事態に対処すべきだというのが学会・日弁連の立場。
・憲法停止・人権制約をしけなければ3・11事態に対処できなかったか。よく今回の事態は憲法の想定外であったと言われるが、全く逆で、憲法の起草に際し、地震等の大災害で緊急の立法措置を講ずる必要が生じた場合に備えて、憲法54条に参議院の緊急集会、同73条に政令への罰則の委任の規定が書き込まれた経緯からして、今回の事態は憲法の想定内であったと解すべきだ。

 おわりに-平和的生存権の国際的な制度設計

 国連人権理事会における「平和に対する人民の権利」の宣言草案がすでに起草され、47理事国の内32国が促進決議に賛成。日本は、アメリカ、EU諸国、韓国などと、平和への権利の国連人権理事会決議に反対している。
 平和憲法を持たない多くの国、紛争の絶えない地域にとっても、国連で平和への権利が人権として認められるのは心強いでしょう。将来、国際人権条約になれば、裁判で訴えることも可能になる。日本でも、米軍基地や自衛隊の増強、東北アジアの軍事的緊張関係など平和へ逆行する動きがある。平和への権利はこのような動きを転換していく大きなきっかけになる。
 各国の態度、 日本政府の態度 ; 国連人権理事会の47カ国中32カ国が促進決議に賛成している。しかし、日本政府は、アメリカ、EU諸国、韓国などとともに、平和への権利の国連人権理事会決議に一貫して反対している。アメリカ政府は、平和は安全保障理事会のテーマだということで、人権理事会で討議されるのを避けようとしている。日本は憲法に平和的生存権を明記した国です。平和への権利の国際人権宣言化に向けて、積極的な役割を果たすべきではないでしょうか。

 平和への権利・宣言草案の内容、現在のところ、・人間の安全保障の権利、・軍縮の権利・良心的兵役拒否の権利、・抵抗の権利、・監視機構、など14カ条が宣言案として発表されている。

参考文献;
世界 2013年6月号、特集「『96条からの改憲』に抗する」
条文ごとの詳細考察は<自民党憲法改正草案に反対する意見書(自由法曹団)>参照    http://www.jlaf.jp/menu/pdf/2012/120823_01.pdf

2013年度総会

・・・『つくば白書』に学ぶ取組みに期待   

副理事長 飯田三年

 当研究所の第39回総会は、7月6日、つくば市の自治労連会館で開催され、26人が出席しました。梅雨明けとなった猛暑の中、おいしいスイカの差し入れもありました。
 議事は、常総市役所の戸塚さんを議長にスムーズな進行が図られました。
 恒例となっている記念講話は、「安倍改憲の行方―自民党憲法改正草案を基に―」と題し、田村武夫茨城大学名誉教授(当研究所前理事長)からお話をいただきました。特に、多くの人権関係諸条約の批准をサボってきた自民党政権が、改憲の中で「公の秩序」優先による人権制限を図ろうとしているとの指摘は印象的でした。

 討論の中では『つくば市民白書2012』を学ぶ活動が提起されながら、実施できていないので、引き続き勉強会に取り組むことを確認しました。また、会員と『住民と自治』購読者の減少が続いており、増勢に転じる努力が求められています。13年度には、事務所移転問題や茨城研究所創立40周年事業を検討することになりました。
 まちづくり学校は、来年2月を目途に常総市で開催する方向となったほか、12年度活動報告・決算報告、13年度活動方針・予算はいずれも原案どおり承認されました。

田中理事長ほかを再任

 役員改選では、田中重博理事長、飯塚和之、渋谷敦司、榊原徹、飯田三年の各副理事長が再任され、理事・監事は若干の異動がありました。事務局長は総会後の第1回理事会で飯田副理事長が引き続き代行することになり、また、岡村事務局次長は留任となりました。
 なお、田中理事長は、新役員挨拶の中で、9月の県知事選挙に出馬することになった旨を表明し、会員個人としての協力を訴えました。

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新刊紹介

 『東海自治体問題研究所40周年記念誌』 
編集 東海自治体問題研究所 『大都市圏の構造変化 東海からの発信』 発行:自治体研究社 A5判 1,619 円+税

パートⅠ 東海圏の構造変化
パートⅡ 東海圏の地域課題

 『お母さん町長奮闘記 京都・与謝野町 共生と循環のまちづくり』 
 
京都府与謝野町長 太田貴美 ・ 京都大学教授 岡田知弘 編著 自治体研究社   A5判  1,600 円

「困ったら住民の中へ!」がモットーのお母さん町長は、もとスチュワーデスで、童謡「森の熊さん」の作詞者!地域 の宝物を再発見し、人とお金がグルグルめぐる町づくり。

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