第53号
第53号
2013・05・25 更新
県立八郷フラワーパーク(石岡市)
茨城県が管理している約30ヘクタールに及ぶ広大な花と緑の公園。自然いっぱいの森の中には、展望塔や休憩所、アスレチックがある。650品種・3万株の薔薇は春と秋みごとである。
英霊は迷惑そうに尻を向け
マイナンバーつけて自分の名を忘れ
靖国へ沈没しそうな船に乗り
原発を大名旅行で売り歩き
いさり火を消してスルメを焼く漁師
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)
参議院選挙はこの国の命運をきめる!
7月の参議院議員選挙は、結果次第で、その後の2年以内に憲法改正国民投票が実施されかねない重大な意味をもっている。
政権党および同調政党は、憲法96条の改定をめざすことを選挙公約に明記すると公言している。憲法改正の厳格要件を緩和する96条改定の後に、昨年4月27日発表の自民党憲法改正草案にもられた多数の条項の改定がうちだされるのであろう。自民党の改正草案には、近現代憲法の基本を蔑ろにした看過できない問題点が多く含まれている。一言でいえば、以下の4点に整理することができる。
① 立憲主義から非立憲主義へ
② 平和主義から戦争をする国へ
③ 天皇の元首化と国民主権の後退
④ 権利拡大には後ろ向き、義務拡大には前のめり
現行憲法97条「この憲法が永久に、不可侵のものとして現在および将来の国民に基本的人権を保障する」の規定を削除している点に象徴される自民憲法草案は、人権の保障度を下げ、数多くの義務規定を盛り込むことで、立憲主義と決別している点が最も注目すべき特徴である。
国民が憲法擁護義務を負うと明記する自民憲法草案には、国防義務(草案前文3段)、日の丸・君が代尊重義務(草案3 条)、領土・資源確保義務(草案9 条の3)、公益及び公の秩序服従義務(草案12条)、個人情報不当取得等禁止義務(草案19条の2)、家族助け合い義務(草案24 条)、環境保全義務(草案25 条の2)、地方自治負担分担義務(草案92 条2 項)、緊急事態指示服従義務(草案99 条3 項)、そして憲法尊重擁護義務(草案102 条1項)など、新たに多くの義務規定を盛り込み、国による権力の行使を容易にし、国民を支配しやすくする。
人権保障から義務・負担強要の憲法典に転換することは、人類史の歯車を逆転するもので、世界から孤立する(相手にされない)のは目に見えている。とりあえず、護憲候補者の当選に全力をあげるべきであろう。
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資料
憲法改正論議が高まる中で迎えた憲法記念日に当たっての会長談話
日本弁護士連合会 会長 山岸憲司
本日、日本国憲法が施行されてから66年目の憲法記念日を迎えた。
日本国憲法の改正手続に関する法律が3年前に施行され、衆参両院に設置された憲法審査会は、毎週のように憲法改正のための議論を進めており、来る7月の参議院選挙の争点の一つになるものと言われている。
しかし、最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかるための憲法を、国民の間で改正への気運の高まりのないまま、変えようとすることには大きな疑問がある。
とりわけ、現在の改憲論議の焦点が国会における改憲発議要件の緩和に重点が置かれていることは看過できないところである。憲法改正の発議に衆参両院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成を要件とする憲法第96条の趣旨は、国会で十分な論議を尽くした上で、大多数の支持によって発議されることを確保するためのものであり、世界各国の例を見ても決して重きにすぎるものではなく、当連合会はそれを過半数へ緩和することに強く反対する旨の意見を本年3月19日に表明した。
しかも、この発議要件の緩和の狙いは憲法第9条の改正にあるとも言われているところ、改正の前にこれまでの政府解釈の変更や、立法によって集団的自衛権の行使を容認する動きも政権内では強まっており、当連合会はその点についても本年3月19日に強く反対する旨の意見を表明した。
ところで、先日、全国各地の高等裁判所は、2012年12月に行われた衆議院議員総選挙について一票の価値の不公平さを放置している国会の怠慢を厳しく問いただし、全てが違憲ないし違憲状態とした上、さらには無効であると判決したものすらあった。国会はこのような違憲状態の解消こそ最優先で取り組むべきものである。そして、この解消は弥縫策によることなく、一票の価値の平等を真に実現するよう、抜本的な措置を直ちに講ずる必要がある。
また、東日本大震災から既に2年以上が経過したが、今なお大勢の被災者が憲法の定める基本的人権が十分に保障されているとは全く言い難い状況に置かれていることは問題である。そして、東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応も放射能汚染水の処理を含めて全く不十分なままであり、そのことから周辺住民の生存権は保障されていないと言うほかない。
当連合会は、憲法が最高法規として国家権力を制限する立憲主義の意義をあらためて確認し、全ての人々が個人として尊重され、人権が十分に保障されることを目指すものである。
2013年(平成25年)5月3日
憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書
2013年3月14日
日本弁護士連合会
- 意見の趣旨
当連合会は憲法改正を容易にするために憲法第96条を改正して発議要件を緩和することに強く反対する。
- 意見の理由
1 憲法第96条を改正しようとする最近の動き
日本国憲法第96条は,「この憲法の改正は,各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において,その過半数の賛成を必要とする。」と定める。
自由民主党(以下「自民党」という。)は,2012年4月27日,日本国憲法改正草案を発表し,第96条の改正規定を,衆参各院の総議員の過半数で発議するように変更しようとしている。日本維新の会も憲法改正を主張し,第96条の憲法改正発議要件を各議院の3分の2以上から過半数に緩和することを提案している。
2012年12月16日に行われた衆議院議員総選挙の結果,自民党と日本維新の会,みんなの党が合計366議席となり,衆議院において憲法改正の発議要件である総議員の3分の2以上を憲法改正を主張する三党が占め,自民党単独でも約6割の294議席を確保した。そして,安倍晋三首相は,本年1月30日の国会答弁で,「党派ごとに異なる意見があるため,まずは多くの党派が主張している憲法第96条の改正に取り組む」旨を明言した。
憲法第96条の発議要件を緩和しようとするのは,まず改正規定を緩和して憲法改正をやりやすくし,その後,憲法第9条や人権規定,統治機構の条文等を改正しようとの意図を有している。
2 日本国憲法で国会の発議要件が総議員の3分の2以上とされた理由
憲法は,基本的人権を守るために,国家権力の組織を定め,たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても権力が濫用されるおそれがあるので,その濫用を防止するために国家権力に縛りをかける国の基本法である(立憲主義)。
すなわち,憲法第11条は「この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与へられる。」とし,憲法第97条は「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて,これらの権利は,過去幾多の試練に堪へ,現在及び将来の国民に対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」とする。この基本的人権の尊重こそが憲法の最高法規性を実質的に裏付けるものであり,この条項に引き続く憲法第98条は「この憲法は,国の最高法規であって」と,憲法の最高法規性を宣言し,憲法第81条で裁判所に違憲立法審査権を与えている。憲法第96条の改正規定は,これらの条項と一体のものとして,憲法保障の重要な役割を担うものである。
憲法学説においても,憲法改正規定の改正は,憲法改正の限界を超えるものとして許されないとする考え方が多数説である(芦部信喜著「憲法第五版」(岩波書店)385ページ以下など)。
このように,日本国憲法は国の基本的な在り方を定める最高法規であるから,憲法が改正される場合には,国会での審議においても,国民投票における国民相互間の議論においても,いずれも充実した十分慎重な議論が尽くされた上で改正がなされるべきことが求められ,法律制定よりも厳しい憲法改正の要件が定められたのである。
もし,充実した十分慎重な議論が尽くされないままに簡単に憲法が改正されるとすれば,国の基本法が安易に変更され,基本的人権の保障が形骸化されるおそれがある。国の基本法である憲法をその時々の支配層の便宜などのために安易に改正することは,それが国民の基本的人権保障や我が国の統治体制に関わるだけに,絶対に避けなければならない。
現在の選挙制度の下では,たとえある政党が過半数の議席を得たとしても,小選挙区制の弊害によって大量の死票が発生するため,その得票率は5割には到底及ばない場合がありうる。現に2012年12月16日の衆議院議員総選挙では,多数の政党が乱立して票が分散したため,自民党は約6割の294議席を占めたが,有権者全体から見た得票率は3割にも満たないものであった。したがって,議員の過半数の賛成で憲法改正が発議できるとすれば,国民の多数の支持を得ていない憲法改正案が発議されるおそれが強い。その後に国民投票が行われるとしても,国会での発議要件を緩和することは,国民の多数の支持を受けていない憲法改正案の発議を容認することとなってしまうおそれがある。
このように発議要件を3分の2以上から過半数に改正すると,憲法改正発議はきわめて容易となる。議会の過半数を握った政権与党は,立憲主義の観点からは縛りをかけられている立場にあるにもかかわらず,その縛りを解くために簡単に憲法改正案を発議することができる。これでは,立憲主義が大きく後退してしまうこととなる。現在,衆議院と参議院の「ねじれ現象」が続いているが,たまたまある選挙で「ねじれ」が解消されれば,多数党は簡単に憲法改正案を発議できることになる。これでは,憲法の最高規範性は大きく低下して,憲法の安定性を損なうこととなる。
なお,大日本帝国憲法第73条は,議員の3分の2以上の出席の下,出席議員の3分の2以上の賛成で憲法改正がなされると定められていた。
3 諸外国の憲法との比較
憲法第96条の改正提案は,発議要件を緩和して,憲法改正をやりやすくしようとするものである。しかし,各国の憲法と比較すると,日本国憲法の改正要件はそれほど厳しいとはいえない。
各国憲法の改正手続について国会図書館がまとめた対比表(「憲法改正手続の類型」硬性憲法としての改正手続に関する基礎的資料(衆憲資第24号)最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会(2003年4月3日の参考資料))によると,各国とも,様々な改正手続がとられている。法律と同じ要件で改正できる憲法はきわめて少数で,ほとんどの国が法律制定よりも厳しい憲法改正要件を定めている。
例えば,日本国憲法第96条と同じように,議会の3分の2以上の議決と必要的国民投票を要求している国としては,ルーマニア,韓国,アルバニア等がある。ベラルーシでは,議会の3分の2以上の議決を2回必要とし,さらに国民投票を要するという制度である。フィリピンでは,議会の4分の3以上の議決と必要的国民投票を要求している。日本国憲法よりもさらに一層厳しい要件である。
国民投票を要しない場合にも,再度の議決が要求されるものや,連邦制で支邦の同意が要求されるものなど,様々な憲法改正手続を定める憲法が存在する。例えば,イタリアでは同一構成の議会が一定期間を据え置いて再度の議決を行い,2回目が3分の2未満のときには国民投票が任意的に行われる。アメリカでは連邦議会の3分の2以上の議決と州による承認が必要とされている。なお,ドイツでは議会の3分の2以上の議決によって憲法が改正され,フランスでは国民投票又は政府提案について議会の議決と両院合同会議による再度の5分の3以上の議決によって憲法が改正される。
このように,世界中には様々な憲法改正規定が存在し,日本国憲法よりも改正要件が厳しい憲法も多数存在する。諸外国の憲法改正規定を根拠として,発議要件の緩和を正当化させることはできない。
4 憲法改正手続法における国民投票の問題点
憲法は,国の基本的な在り方を定め,人権保障のために国家権力を縛るものであるから,その改正に際しては国会での審議においても国民投票における論議においても,充実した十分慎重な議論の場が必要である。
ところが,2007年5月18日に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」という。)には,当連合会がかねてより指摘してきた重大な問題点が数多く存在する(2005年2月18日付け,2006年8月22日付け,2006年12月1日付け,2009年11月18日付け各意見書)。例えば,国民投票における最低投票率の規定がなく,国会による発議から国民投票までに十分な議論を行う期間が確保されておらず(長谷部恭男東京大学教授は,国会による改正の発議から国民投票まで,少なくとも2年以上の期間を置くべきだとする。「続・憲法改正問題」日本評論社8ページ以下),憲法改正に賛成する意見と反対する意見とが国民に平等に情報提供されないおそれがあり,公務員と教育者の国民投票運動に一定の制限が加えられているため,国民の間で十分な情報交換と意見交換ができる条件が整っているわけではない。このような状況で憲法改正案の発議がなされ,国民の間で充実した十分慎重な議論もできないままに国民投票が行われれば,この国の進路を大きく誤らせるおそれがある。そのため,憲法改正手続法を可決した参議院特別委員会は,これらの重大な問題点に関し18項目にわたる検討を求める附帯決議を行った。
ところが,憲法改正手続法の問題点には全く手がつけられないまま,現在,国会の発議要件の緩和の提案だけがなされているのは,本末転倒と言わざるを得ない。
国会においては,発議要件を緩和するなどという立憲主義に反した方向での議論をするのではなく,国民投票において十分な情報交換と意見交換ができるように,まずは憲法改正手続法を見直す議論こそなされるべきである。
また,国会の責務という点について付言するならば、2012年12月16日の衆議院議員総選挙は最高裁判所が違憲状態であるとした選挙区割のままなされたものであり,選出された国会議員が果たして適法に国民を代表するものであるのか疑問があるところである。国会はこの違憲状態を黙過することなく,直ちに解消するのが先決である。
5 結論
以上のとおり,日本国憲法第96条について提案されている改正案は,いずれも国の基本的な在り方を不安定にし,立憲主義と基本的人権尊重の立場に反するものとしてきわめて問題であり,許されないものと言わなければならない。
当連合会は,憲法改正の発議要件を緩和しようとする憲法第96条改正提案には強く反対するものである。
以上
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