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第50号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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2013・02・20 更新

大洗町・幕末と明治の博物館



幕末と明治の博物館(大洗町) 

大洗の海に近い、緑の松林に囲まれた高台の自然環境のなかに「大洗町 幕末と明治の博物館」がある。幕末の志士で、のちに宮内大臣になった田中光顕(みつあき)伯爵によって昭和4年に創立され、約80年の歴史をもっている。

宰相は弓を持たずに矢を仕掛け
栄誉賞あの世で綱をしめ直し  
三本の矢が邪魔をする花見酒
寒空に梅はまだかと鳴くすずめ

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

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積年の虚言から居直りへ・・・「国防軍」固執のいいわけ

 安倍晋三首相は2月1日、参院本会議での各党代表質問で、「自衛隊は国内では軍隊と呼ばれていないが、国際法上は軍隊として扱われている。このような矛盾を実態に合わせて解消することが必要だ」とのべ、憲法「改正」に意欲を示した。安倍首相が国会で、国防軍明記の必要性に言及したのは初めてである。
 安部首相の主張には二つのごまかしがある。一つは、1954年自衛隊の発足以来自民党は一貫して「戦力に至らない自衛力が自衛隊」で「自衛力とは専守防衛のための実力で外国と戦争や武力行使をするものではない」「戦力とは外国へ武力進出しうる実力」と曖昧にとりつくろってきた。半世紀経って今度は、諸外国の軍隊と変わらない評価が国際社会で定まったので自衛隊を軍隊=国防軍にするのが素直な態度であると居直った。国際評価を頼みに自衛隊のヴェール(積年の虚言)を脱ぎとろうとしている。欺しつづけて居直る厚顔さにつよい怒りをおぼえる。     
 二つ目は、一国の国家組織は、その国の最高規範である憲法ないしはその具体化法で規律される(国際社会における国家主権の作用)のが国際法の常識で、したがって自衛隊をどのように性格付け、何がなしえて何がなしえないかを定めるのも日本国憲法の役目である。国際社会の評価や法的規制で自衛隊の存在や行動の正当化がもたらされるのではない。
 国際社会がこうだ、国際法がああだといって、国内の違憲問題を棚上げしたり、いいつくろってきたのが歴代自民党政権である。安倍首相はまたも同様な手段で国民をごまかそうとしているといわざるをえない。  
 ごまかしに歯止めの力(司法抑制も国民の反抗も)が弱い伝統をこの国はひきづっているので安倍首相のごまかしについて真剣に深く留意する必要がある。 (T.T) 

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「地方分権」・「地域主権」改革で進む「規制緩和」
~「企業城下町」日立では工場緑地が半分以下に?~

日立市民 長山 重道

1はじめに 
 
 『日立市報』(2012月5月5日)に「工場立地法の届出先が市になりました」との見出しで、「4月1日から工場立地法の届け出窓口が茨城県から日立市に変更になりました。また、市の条例で緑地面積率の基準が緩和されました。届出が必要な事業所は、事前にご相談ください。【届出の対象となる工場(特定工場)】云々」とあった。
 一体、「緑地面積率の基準が緩和された。」とはどういう事なのか?日立市内は大工場だらけだが、適用されるのか、気になりだした。元々彼の大会社は市内に土地を所有していなかった。ご先祖様達は国策のために農地を手放さざるを得なかった。今度はその工場から緑地がなくなって行くのか?灰色の街はゴメンだ! それから市役所や図書館に出かけて、私なりに理解したことを報告したいと思う。

2「地方分権」・「規制緩和」政策の若干の経過

(1)縮小された都道府県の役割とその意味するもの
 私が生まれる少し前の1947年5月3日、日本国憲法と同時に地方自治法(単なる地方行政法ではない)が施行され、首長公選の地方自治制度がスタートした。
 しかし、1955年の朝鮮戦争を機に日本は再軍備、「市町村合併」を開始した。市町村数は1945年の10,520から2010年の1,772と自治権が狭められた。
 2000年4月1日、政府は、21世紀戦略としての「規制緩和」・「行革」を実現するため「地方分権一括法」を施行、475本の法律(日本の法律の約3分の1)を改定した。その中心の地方自治法改定では都道府県の役割を縮小し、それまで同法第2条第6項で規定していた都道府県の処理すべき4業務、すなわち、①広域にわたるもの、②統一的な処理を必要とするもの、③市町村に関する連絡調整に関するもの、④一般の市町村が処理することが不適当であると認められる程度の規模のものの内、②の「統一的な処理を必要とするもの」を削除した。「分権の趣旨にそぐわない」がその理由であった。
 この「統一的な処理を必要とするもの」は同項第2号に次の様に列挙されていた。即ち、①義務教育その他の教育水準の維持 ②文化財の保護及び管理の基準の維持 ③警察の管理及び運営 ④社会福祉事務及び社会保険事業の基準の維持 ⑤医事及び薬事の規制、⑥伝染病の予防その他公衆衛生の水準の維持 ⑦労働争議の調整その他労働組合及び労働関係に関する事務 ⑧職業安定に関する事務 ⑨土地の収用に関する事務 ⑩各種営業の許可その他の規制 ⑪各種生産物の検査その他の取り締まり ⑫各種の試験及び免許に関する事務 ⑬工業、人口動態等主要な統計調査 ⑭国民健康保険組合その他の公共的団体の監督等、である。
 これらが示すように、「統一的な処理を必要とするもの」とは、行政サービスや行政処分(許認可)に関して統一的な処理を必要とするもの、平等性が確保されなければならないもの、であり、機関委任事務であったにせよ、憲法で保障されたナショナルミニマム保障の担保規定でもあった。故に、この規定の削除は行政サービスや行政処分(許認可)の市町村間格差を広げることになった。

(2)都道府県条例に基づく個別市町村への権限移譲の増加
 2000年4月の改正地方自治法にはもう一つ注目すべき点がある。それは同法第11章第4節「条例による事務処理の特例」であり、「都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる」(自治法第252条の17の2)、「前項の条例を制定・改廃する場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、当該市町村長に協議しなければならない」旨(自治法第252条の17の2第2項)の規定である。都道府県知事の権限に属する事務の一部が特定の市町村でも執行される体制が存続、整備された。
 2000年4月、茨城県は「茨城県知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例」を施行、今日、県内の「受任」市町村では「自治事務」、「法定受託事務」に加え、県知事の権限に属する法律68本、県条例22本、併せて90本もの事務を処理している。

(3)地域主権改革一括法に基づく市町村への大量の権限移譲
 その後、民主党政権は「地方分権改革」を「地域主権改革」と名を変え、東日本大震災と東京電力㈱福島第一原発の爆発で国民が未曽有の困難に陥っていた2011年5月、「第一次地域主権改革一括法」を公布した。これは関係42法律を整備し、「義務付け・枠付け(註1)の見直し」と「条例制定権の拡大(41法律)」を図ったものである。さらに、同年8月には「第二次地域主権改革一括法」を公布した。これは関係188法律を整備し、「基礎自治体への権限移行(都道府県の権限の市町村への移譲・47法律)」並びに「義務付け・枠付け」の見直しと条例制定権の拡大(160法律)」を図ったものであった。
 これにより行政サービスや行政処分(許認可)の権限、並びにそれらに係る基準設定の権限までもが市町村へ下ろされた。果たしてこの結果は市民にとってどうなのか、次に第二次地域主権改革一括法で改定した「工場立地法」から見てみたい。併せて「東日本震災復興特別区域法」についても見てみたい。

(註1)義務付け・枠付け=法令による事務処理の基準の自治体に対する義務付け。
 
3 工場立地法、東日本大震災復興特別区域法への日立市の対応

(1)工場立地法と日立市の対応 
 昭和34年、工場立地法が公布・施行された。目的は「工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行われる」ためであった(同法第1条)。
 しかし、高度経済成長政策で公害問題が一大社会問題化したことを背景に、昭和45年第64回国会(「公害国会」)は14本もの公害対策諸法を成立させ、ばい煙、粉じん、汚水、騒音、悪臭、廃棄物等の公害規制を抜本的に強化した。工場立地法も度々改定され、「特定工場」にあっては「工場立地に関する準則」により、「生産施設」、「緑地」並びに「環境施設」それぞれに対する面積率での規制も導入された。2012年3月時点で見ると、「特定工場」(敷地面積9千㎡以上又は建築面積3千平米以上の工場等)の届出先は都道府県知事、「生産施設の面積の敷地面積に対する割合」は、業種によって異なるが、30%以下から75%以下、「緑地面積の敷地面積に対する割合」(緑地面積率)は20%以上、「環境施設面積の敷地面積に対する割合」(環境施設面積率)は25%以上となっている。
 2011年8月の第二次地域主権改革一括法施行で、「特定工場」新設の届出受理、変更命令等の権限及び「工場立地に関する準則」に代えて適用する基準の設定権限が市に下ろされた。このため、2012年3月、早々と日立市議会は日立市工場立地法準則条例を議決、同年4月1日施行した。「対象区域」は都市計画法に定める工業地域及び工業専用地域、都市計画区域以外の区域又は市街化調整区域では2万㎡以上の一団の区域。「緑地及び環境施設の面積の敷地面積に対する割合」は「緑地面積率」にあっては10%以上、「環境施設面積率」にあっては15%以上。その他、「太陽光発電施設・屋上緑化施設等の緑地面積率への算入」ができるとされた。

(2)東日本大震災復興特別区域法で、さらなる規制緩和
 2012年12月26日、日立市議会は日立市復興産業集積区域緑地面積率等条例を議決、同日施行した。この条例は、東日本大震災復興特別区域法(2011年12月公布)第28条第1項に基づき、工場立地法第4条第1項により公表された準則及び日立市工場立地法準則条例で定める準則に代えて適用されるものである。その内容は、「対象区域」(復興産業集積区域16か所)(大工場群)において、「緑地面積率」を「5%以上」に、「環境施設面積率」を「10%以上」に、そして、「太陽光発電施設・屋上緑化施設等の緑地面積率への算入」ができるとされたものである。よって、2012年3月時点と比較すると、「緑地面積率」は「20%以上」から「5%(正味(註2)2.5%)以上」になった。

註2;「正味」とは、緑地面積率の50%まで「太陽光発電施設・屋外緑化施設等」の面積をあてて良いこととされたため。

(3)まとめ

①「地方分権改革」、「地域主権改革」での、更には「東日本大震災復興」での自治体における「規制緩和」が一層進行している。「規制」は大企業や政治権力の横暴を抑えるために、憲法や法律によりなされているとの認識に立てば、「規制緩和」とは庶民の暮らしを破壊し、戦後の憲法体制を変えるための戦略の一つともとらえられる。
② 市は、工場緑地の削減は産業活性化に寄与する、と認識したのであろうが、昭和45年の公害国会で公害対策基本法(現、環境基本法)から「経済の健全な発展との調和」条項を削除した経緯を踏まえれば適切な対応とは思えない。
③ 工場立地法は、国会審議や産業構造審議会の議を経て成立、執行されてきた。しかし、日立市には相当の審議会はなく、主管課を含め4課で条例案を作成し議会に提案。議会では委員会・本会議共に質問ゼロで議決されている。市民の声の集約、議会審議の活性化が課題である。
④ 市議会議事録は、次の定例会(約3カ月後)の直前まで公開されていない。本会議議事録は冊子で公開されているが、委員会議事録は情報公開請求の手続きが必要である。速やかな議事録の公開が必要である。因みに国会議事録は本会議・委員会とも速やかに公開されている。水戸市等では委員会議事録もホームページで公開している。  
⑤ 日立は戦前からの企業城下町である。2012年7月には㈱東京ガス「日立港工場」も着工した。これらを市が規制できるのだろうか。工場立地法の様な規制法を市が担ったとたん、規制は極端に後退した。身近な仕事でも県や国が直接担った方が適切な業務は多々ある。
⑥「地方分権改革」は「住民に身近なサービスを市町村で行う」ためとされるが、これら「改革」の進行で、行政サービスや規制が自治体ごとにバラバラになり、かつ後退し始めた。ナショナルミニマムも危惧される。憲法第25条が危機にある。

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イベント

「東海村から日本の未来を考える」

Big対談

村上達也村長 と 小森陽一さん(東大教授・九条の会事務局長)

 東海村から日本の未来を考える~いのちを守るために~と題して、脱原発の姿勢を鮮明にして奮闘している村上村長と、東大教授で全国「九条の会」事務局長である小森陽一さんとの2時間に及ぶ対談が下記の要領でおこなわれます。
 原子力施設の設置や事故、とくにJCO臨界事故の際に国および県といかに切り結び、どれだけ村という地方自治体の存在感を示してきたか、この国における地方自治=民主主義の実相を推し量る最良の問題が原子力政策であるという村上村長。一方、憲法のめざす平和で人権保障に尽力する日本国の樹立、そのために徹底した民主主義の国家権力をつくっていくことに心神を傾注している小森陽一さん。
 きっと、この国の進むべき方向について熱い対談がおこなわれるものとおもいます。

2013年3月30日(土)14:00~16:30

東海文化センター(JR常磐線東海駅下車、徒歩15分)

入場料 500円 

主催: 3.30Big対談実行委員会

代表 田村 武夫
呼びかけ人:加倉井豊邦(JA茨城中央会会長)齋藤浩(茨城県医師会長)佐藤洋一(茨城県生協連合会会長) 長田満江(茨城県母親大会連絡会会長)相沢一正(東海村議)村上孝(東海村議)大名美恵子(東海村議)
HP:http://talk330.jimdo.com/
E-mail: mk-330taidan@hotmail.co.jp

事務局から
「全国研募金」ご協力のお願い

 来月、自治体問題研究所=全国研は、創立50周年を迎えます。
 全国研は、『新しい時代の地方自治像』の研究・提言などを記念事業として行うこととし、2500万円募金を進めてきました。茨城研究所は、75万円の自主目標を掲げ、皆様のご協力によりこれを達成したところです。
 全国段階では、現在、約1600万円ということであり、もうひとまわりの努力が必要になっています。当研究所としては、このことを踏まえて次のような方針で臨むこととしました。

今回のお願い1人 3000~5000円
 まだ募金をされていない方、すでに募金をされている方、会員以外の方を含めて、ご協力をお願いいたします。
 また、団体会員についても、同様に相応のご協力をお願いいたします。
  
※ 振込み用紙は、「住民と自治」3月号(通巻599号)の最終ページに折り込んでありますのでご利用ください。

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