第48号
(第48号) (2012・12・21発行)
水戸芸術館(水戸市)
水戸芸術館は、高さ100mの塔をシンボルとし、コンサートホール、劇場、現代美術ギャラリーの3つの専用空間で構成された複合文化施設。街の中心地にあり、芝生の広場をとり囲む形で、東側に、水戸市制百周年(1989年)を記念する高さ100mの塔がある。
十二月八日忘れて霊にわび
首切りの介添人も手が足りず
討ち入りの太鼓をたたく反原連
めでたさや街で妊婦に会いました
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)
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地方公務員の給与削減を拒む自治体、総選挙後はどうなる?
財務省が11月1日、地方公務員の平均給与が国家公務員を上回っているという調査結果を発表した。同日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)後、財務省の柚木道義政務官は、地方自治体に給与引き下げを求めていくと強調した。だが、地方は「国に押しつけられるものではない」として反発しており、これまでも多くの自治体で、給与の引き下けが進んでいない。審議会でやり玉に挙がったのは「今年度の地方公務員の平均給与が9年ぶりに国家公務員を上回る」という財務省試算だ。国家公務員は2月に成立した給与削減法で、2012~13年度の給与が平均7・8%引き下げられる。地方公務員は対象外のため、このままだと地方の公務員が国を約7%上回る見通しという。
国家公務員の給与削減法の付則では、自治体も「法の趣旨を踏まえ、自主的かつ適切に対応する」とされているが、多くの自治体は、自治体が削減しようとしても、地域経済への悪影響を理由に地方議会が反対することもある。茨城県かすみがうら市では、過去2年間で5回条例案が否決された。
財務省によれば、地方が国と同様に給与を削減すれば、年約1・2兆円の人件費が削れるという。
衆議院総選挙で自民党が圧勝し、公務員の権利制限や給与引き下げを高唱する維新の会の国政進出で、財務省が強力な援軍をえて自治体に迫ってくるのは必至。
給与削減にとどまらず、戦後何十年とたたかい取ってきた権利・利益をずるずると奪われていくか正念場。
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TPPでの医療問題
茨城民医連事務局長 中山 弘子
総選挙の結果は民意が薄いとは言え自民党の圧勝に終わりました。国民が自民党政権を望んだというより、民主党の3年間にノーを示した結果なのだと思います。
早々に、TPP交渉参加を実現するよう経団連の米倉会長が自民党に対して要求しました。安倍新政権は経済財政諮問会議を復活させ、内閣に日本経済再生本部を新設すると発表しました。食といのちに直結するTPPの行方が心配です。
オバマ大統領は2014年までに輸出を倍増し、米国の過剰消費・貿易赤字の是正と雇用創出に乗り出すと一般教書演説で表明しました。その中でTPPは日本を中心としたアジア市場の開放、米国製品にとって有利な条件を確保する取り組みと位置づけられています。米国はアメリカンスタンダードをグローバルスタンダードにしたいと狙っているのです。
その戦略は、銀行、保険、医療、電気通信、知的財産権、メディアサービス分野、特に高い国際競争力を持つヘルスケア産業などの輸出が中心です。
TPPへの参加で、医療分野への株式会社の参入、自由診療と公的保険の併用を認める混合診療の導入や、医師や看護師のクロスライセンス、医療ツーリズムが進むことが危惧されます。
日本は法律で営利を目的とした病院、診療所の開設は制限しています。医療法人の利益は医療への再投資に回し、株主への配当は認めていません。すべての診療を公的医療保険でまかなうことが本来の姿だと思いますが、混合診療は一部導入されています。差額ベッド、200床以上の病院の初診・再診、歯科診療のインプラント、安全性・有効性が確認された先進医療などです。混合診療が解禁されると保険診療分(1割から3割負担) と自費負担分を支払うことになります。徐々に保険外診療部分に新しい治療や医薬品が組み入れられて、保険が利かない自費負担分が増えていくことが懸念されます。
2009年の日本の総医療費は36兆67億円、そのうち8.1兆円(22.2%)が調剤・薬品費、2.2兆円(6.2%)が医療機器・材料です。医薬品の世界売り上げ上位100品目中、米国が49品、英国が16品、日本が13品です。医薬品の輸出額は1,600億円、輸入額が2兆8,000億円、医療機器は輸出額4,700億円、輸入額が1兆7,000億円です。人工関節や心臓ペースメーカーなどの高額材料は国内生産が少なく、日本の医療費は外国、特に米国からの医薬品、医療器械、材料などが輸入超過となっています。健康保険制度の下で、薬品、治療材料などの価格は、政府が定める公定価格ですから、いつでもどこでも誰でも同一価格で治療が受けられてます。しかし米国の企業が日本で利益を上げるために、価格を自由に設定し輸入したいと考えれば、国民皆保険制度が障壁となります。
日本よりも公的カバー割合は少ないのですが、同じような医療保険制度を持つ韓国では、米韓FTAを結んだ後、製薬会社、医療機器メーカーが大きく関わった「独立的再審機構」が設立され、薬価決定が民営化されました。
自民党も社会保障と税の一体改革・社会保障制度改革推進法の中で、医療費の総枠は変えないとしていますから、薬剤や医療材料の価格が高くなり総医療費を圧迫すると、混合診療の枠が広がることは容易に予想できます。
TPPの導入でなし崩し的に国民皆保険制度が崩壊し、医療の所得・地域格差が拡大します。アメリカ映画「シッコ」が描いているように、「民間保険に入っていないと病院にかかれない。病院にいっても保険の種別で医療内容が変わる。」という事態が起きる心配があるのです。
私たちは原発を危険だと思いながら「安全神話」を信じてしまいました。TPPもいのちの問題です。「平成の開国」「第三の開国」という言葉にだまされず、真実を見て行動したいと思います。
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イベント
第12回茨城自治体セミナー
『地域医療の再生と中核病院』
と き:2月2日(土)13:00開会
ところ:「筑西市立中央図書館」視聴覚室
筑西市岡崎1丁目11番地1 0296-24-3530
主催 : 茨城県自治体問題研究所・茨城県自治体労働組合連合・筑西市職員組合
後援 : 筑西市
講 演:八田 英之氏(千葉県自治体問題研究所副理事長)
「地域医療の問題点と将来方向」
- 地域からの報告と交流:16:30まで
1 筑西・下妻医療圏の医療供給体制の現状
筑西地域共同運動連絡会会長 白石勝巳氏
2 茨城県の医療水準と地域医療充実の課題
茨城県民医連事務局長 中山弘子氏
3 筑西市民病院の現状と新中核病院建設計画の経過
筑西市職員組合筑西市民病院支部長 鈴木千功氏
筑西・下妻保健医療圏における医師不足解消を図り、特に救急と出産に対応する地域医療を充実させることは、大きな課題となっています。しかし、筑西市民病院と県西総合病院の再編統合による中核病院建設が頓挫し、公設民営の動きが強まっています。
このセミナーでは、圏域の地域医療再生を住民本位の立場で実現できないか、問題点と課題を明らかにし、将来展望を探ります。
医療政策の第一人者である八田先生のお話を伺うとともに、地域からの報告を受け交流をします。
自治体職員のみなさん、議員のみなさん、住民のみなさん、どなたでも参加できます。参加費:無 料。
※お車でお越しの方は市役所の駐車場をご利用ください。
新刊紹介
『地域の未来とTPP』中島 信
自治体研究社1400円+税
主な内容
TPPは、地域の生活や産業、医療や保険制度の将来を左右する身近で重要な問題です。TPP参加阻止をめざして、TPP問題の基礎知識、浮上してきた背景、最新の情勢とこれからの論点を解説し、地域づくり・国づくりの対抗軸を示す。
目 次: はじめに-「国益」を論議する作法-
- 第1章 TPPと国民の暮らし-世界システム再編のせめぎ合い
- 第2章 「地域のかたち」を描く-だからTPP参加を阻止する
- 第3章 アジアの新秩序と日本の役割-憲法9条を持つ国の使命
- まとめ 未来に向けた地域づくり
中嶋信プロフィール 徳島大学名誉教授。自治体問題研究所前副理事長。 1946年、北海道生まれ。北海道大学大学院農学研究科博士課程修了(農学博士)。 2012年3月まで徳島大学教授。専門は、日本経済論、地域経済論。 主な著書に、『自治体農政の新展開』(自治体研究社、2011年、共著)、『新しい「公共」をつくる-参加型地域づくりの可能性-』(自治体研究社、2007年)ほか。
橋下維新が地域の福祉・医療をこわす
大阪市政改革プランによって進む地域福祉・地域医療の解体・再編は「大阪都構想」推進への地ならし
• 中山徹・宮下砂生(編)
• 自治体研究社1,260円(税込)
事務局たより
第3回理事会兼新年会のご案内
下記により理事会および新年会を行いますので関係者の皆さまご出席願います。
《理事会》
1 日時 2013年1月11日(金)午後3時から5時まで
2 場所 『吐玉荘』水戸市白梅3-10-8℡ 029-221-3333
3 議題 - 第12回自治体セミナーについて
- 組織拡大・財政・その他について
会議終了後、新年会を行います。