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第46号

月刊「いばらきの地域と自治」既刊号すべて

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(第46号) (2012・10・20発行)

神栖市・息栖神社

息栖神社(神栖市)

古くから国史にも見え鹿島香取両神宮と共に東国三社の一社として上下の信仰の篤い神社である。現在境内にある芭蕉の句碑「此里は気吹戸主の風寒し」は、神社の祭神との関連を物語っていると思われる。
 息栖神社の所在する息栖の地は、おきすの津(港)と呼ばれて、周辺の陸地との交通上の船着場として、大きな港としての役割を果たしていた。

解散は近くて遠いヤブの中
復興金めくら判してつまみ食い  
帰りたいけれど帰れぬ里の秋
古傷がばれて大臣崖の上

泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)

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整理解雇の4要件で自己防衛しよう!

 ついに、ソニーは、美濃加茂工場を閉鎖し、非正規労働者1920人を来春3月に解雇。正規労働者770人は他の工場へ配置転換で、雇用保障の差別は明白である。労働者に対する「雇用調整」=解雇の今日的特徴は、第1に、労働者側には責任がないのに、投資や財テクの失敗など経営者側の誤りの責任を、一方的に労働者に転嫁して、会社の存続をはかろうとしていることである。大多数の企業で、経営者側の自己責任をあいまいにしたままで、弱い立場の労働者、とくに、非正規労働者、中高年労働者、女性労働者を解雇する方策がとられている。
 第2に、戦後日本の判例の積み重ねによって確立されてきた整理解雇の4要件、すなわち、「人員削減しなければ倒産必至であるという必要性があること」(整理解雇の必要性),「整理解雇は最後の手段であるので回避するあらゆる施策を行わなければならない」(整理解雇の回避努力義務)、「整理解雇の基準も対象者の選定も妥当で合理的でなければならない」(整理解雇の基準および選定の合理性)、「整理解雇をするにあたっては労働者や労働組合に十分説明するなどの手続を踏む必要がある」(手続の合理性)の4つの要件を、多くの経営者側が無視している。
 第3に、形式上、解雇ではなく自已都合退職のかたちに追い込むために、様々な嫌がらせ、いじめをおこなったり、労働者の家庭的条件を無視した転勤命令をおこなうことである。たとえば、人のいない地下室に追い込むようなやり方は、決して稀ではなく、目的のためには手段を選ばない日本の労務管理の体質が現れている。
 民間企業だけでなく地方公共団体でも、弱い立場の労働者に整理解雇の圧力が日々つよまっている。労働組合も、労働者個人も整理解雇に対する防衛策として、整理解雇の4条件について深い学習が必要である。(T.T)
  

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主権者による自治体行財政分析と評価・提言

『つくば市民白書』― 県内各地で同様の取組みを期待

飯田三年  (当研究所副理事長)

 この度、『つくば市民白書2012』が刊行されました。この白書は、「51名のつくば市民が市民の目線で市の行財政と様々な施策を調査、解析し、提言を一冊の本にまとめました」とされています。
 こういう観点から緒方章宏さんは、序章の「地方分権・地域主権とつくば」で、市民が市政と向き合うスタンスを明示しています。 この序章を含め10章で構成され、A4判で200ページにのぼります。白書は、2000年、2008年と過去2回出されていますが、だんだん充実し、分量も大きくなっています。

TX沿線開発の問題点を指摘

 私が最も関心を持ったのは、亀山大二郎さんの第2章「市財政の現状と問題点」と第5章の酒井泉さんの「TX沿線開発14年目の解決策」(「TX沿線開発14年前の提言」を含む。)です。
 土地区画整理事業を核とする沿線開発がTXのアキレス腱であることは、前から指摘されていたことでした。その根本にあるのは甘い人口見通しといえます。
 県や市町村の基本計画には必ず人口予測がありますが、多くは都合のよい増加見通しを立てています。基本計画に掲げられることにより、人口増への主観的な“願望”が科学的な“計画”の装いをさせられているのです。おしなべて「開発=公共事業実施→人口増」の図式を描いているに過ぎません。昔ながらの開発優先、公共事業優先の発想なのです。
 首長や議会の多数派が「公共事業の甘い蜜」に群がる傾向があるとき、当該自治体の企画担当職員が彼らに迎合して根拠の薄い数字を計画に盛り込むことに加担しがちです。住民本位の、地域に根ざした計画の重要性があらためて認識させられます。

地域への関心を深める「よりよい市政へ 私のひと言」

 白書では、各所にコラム「よりよい市政へ 私のひと言」がそれぞれ1ページを使って挿入されています。このコラムは、固くなりがちなこの種の刊行物としては、読む者に「ひと休み」を与えるとともに、鋭い指摘や「周辺から見るつくば市政」という内容に感じました。自分の住む地域への関心を深め、こういうこともあるのかと思わせるもので、前回同様に大変良い工夫であり、今後も重視してほしいものです。

住民自らが考える地域の過去・現在・未来

 本書には、当研究所田中理事長が推薦のことばを寄せています。そこでも強調されていますが、主権者である住民が自らの自治体について、過去を振り返り、現状を評価し、将来への提言をすることは極めて大切なことです。
 当研究所では、県及び県内市町村でこのような活動を展開することを重視してきましたが、力不足等により十分な実績をあげるに至っておりません。本書の刊行に至る取組み等をみんなで勉強し、つくばに続く白書づくりの道を切り開きたいと考えます。

『つくば市民白書2012』の購入希望者は、茨城県自治体問題研究所に問い合せて下さい。

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新刊紹介

白藤博行・浦田一郎『橋下ポピュリズムと民主主義』自治体研究社 定価1,470円

Ⅰ ディーセント・デモクラシーの事始め 白藤博行
「民主主義」は「感情統治」と喝破し、民主主義を消費していいのか/妬み・嫉みの民主主義でいいのか/「友敵民主主義」を超えて―ディーセント・デモクラシー(まっとうな民主主義)から始めよう―
Ⅱ 憲法が求める民主主義のあり方 小松 浩
ポピュリズムって何?/橋下ポピュリズム登場の背景/橋下ポピュリズムの特徴/対抗戦略―民主主義の立て直し―
Ⅲ 「自治体ポピュリズム」を超える自治体民主主義のあり方 榊原秀訓
ポピュリズムと民主主義/立憲主義と民主主義/自治体民主主義のあり方
Ⅳ 教育と自治体民主主義 市川須美子
政治(民主主義)と教育との原理的緊張関係/橋下“教育改革”の基本的特徴/日の丸・君が代条例/教育行政基本条例・学校活性化条例
Ⅴ 自治体民主主義と職員・労働者 西谷 敏
自治体民主主義と公務員(組合)/行政のトップダウン方式/労働組合攻撃の意味するもの/攻撃の背景と組合運動の課題/憲法・法と「市民」の意識
Ⅵ 橋下市長の「民主主義」的改憲論 浦田一郎
改憲論の素材としての「維新八策」/多様な改憲論―「決定でき、責任を負う民主主義」から―/「九条改憲」論なしの九条改憲論

本多滝夫・榊原秀訓・角田英昭・久保貴裕編著『「地域主権改革」と自治体の課題―行政分野別に考える条例づくり・権限移譲―
自治体研究社、定価1,890 円(税込)

第Ⅰ編、「法律と条例との関係」や「都道府県と市町村との関係の法的な変化とその意味」を明らかにし、「地域の実情」や「最適な住民サービス」の内容を検討するにあたって、自治体が考慮すべき事項、住民が留意すべき事項を解説します。
 第Ⅱ編、各行政分野において「義務付け・枠付けの見直し」と「権限移譲」がどのように行われ、住民の行政サービスを受ける権利や自治体の運営にどのような影響が生じるかなど、現場での問題点と解決の方向性を提示します。

事務局たより
住民と自治』(2012年11月号44頁)掲載のOB懇談会総会報告です。
OB懇談会報告.jpg

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