第39号
(第39号) (2012・03・21発行)
つくば市「筑波山神社」
男体山頂に伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、女体山頂に伊弉冉尊(いざなみのみこと)を祀る。古来から山岳信仰の霊山。
競争と云っても所詮金しだい
維新の会古い上着を着て暴れ
春なのにあの子もこの娘も浮かぬ顔
社長さん今日も金策靴がへり
被災者を励ますつもりで酔いつぶれ
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 十二年、所属 元吉田川柳の会)
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「地元の意向」は地方自治の正念場
前号につづいて原子力発電所の再稼働問題をとりあげることをお許しいただきたい。この問題は以下のように地方自治の正念場に関係する重要な側面をもっている。
原発の再稼働の認否基準として政府は、ストレス・テストと地元の意向如何を公言している。地元の意向は、法律上の縛りというより、政府の政策で、国民への政治的約束といえる。福島第一原発の過酷事故と被災状況からして道義的にも提示せざるをえなかったわけである。重要なことは、地元の意向の内実である。通例は、原発立地自治体の首長および知事の意向を指し、住民の要求を汲みとった内容が期待されている。
しかし、これまでの経験から、政府の「大丈夫」論、「安全」論を認容するイエスの意向表明でお仕舞いになりかねない。東海村長の意向ははっきりしている。県知事はどうでるか。政府(原子力保安院・安全委員会)の「安全」論を鵜呑みにするのではなく、自前の厳密で総合的な調査結果に基づく判断・確信をもって意向表明するか。茨城県民への説明責任を政府の議論でなく、県行政の総力をあげて得られた、自立した結論をもってはたすかが県知事に問われている。総理が直接説得にくるという。まさに、地方自治の正念場である。
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政府の地方整備局の廃止、地方移譲方針に異論相次ぐ
「地方を守る会」が総会、市町村長447人が会員に
角田英昭(自治労連・研究機構)
3月3日、民主党政権が推進する国の出先機関改革について、全国の市町村長でつくる「地方を守る会」が東京で総会を開催し、基礎自治体の意見を十分反映しないまま拙速に地方整備局等の廃止を進めないよう決議した。
「地方を守る会」の会員は447人に(3月2日現在)
開会の挨拶に立った福島県相馬市の立谷市長は、会員は配布した名簿の443人(別紙参照)に加え、昨日、更に4自治体(青梅市、大町市、太田市、東根市)から参加申込み連絡があり447人になった。また、総会には議会準備で忙しい中、全国から代理出席を含めて87自治体(別紙参照)が参加し、国会議員も9議員、代理16人(民主党14人、自民党9人、公明党2人)が出席していると報告した。なお、内閣府、国交省、経産省に案内を出したが、出席していただけなかったと。
*その後更に横須賀市、会津若松市から参加連絡があり449人になったとのこと。
「今、国が進めている出先機関改革は危うく不安である」
代表世話人の國定市長(新潟県三条市)は、開会挨拶の中で「地方分権、地域主権はぜひ進めていただきたいが、…国が進めている出先機関改革は危うく不安である。関西広域連合や九州知事会で実験的にやろうとしているが、…今の案だと広域連合なるものが国の出先機関を担うが、それだと屋上屋を重ねるようなもので、私たちが考える地方分権とは異なる。広域連合は、いくつもの頭があり、合議制でやる。今よりもスムースな意思決定ができるのか。大規模災害が起きた時に、これまでのようにできるのか」
「(この問題で)政府のヒアリングを受けたが、国、都道府県、市町村間で議論されていない。その場で、政府側は皆さん方の意見もしっかり聞き、法案に反映させたいと言っていたが、それはこの改革を進めるということ、危機的である。今日は国が進めている地域主権改革に異議ありと発信するいい機会である」と述べた。
総会ではまず会則(案)(別紙参照)の承認を行い、その後、役員として、これまで準備を進めてきた國定市長を代表世話人、立谷市長(相馬市)を代表幹事に選出した。
会則では国の出先機関改革だけでなく、「基礎自治体の立場から、安心安全な地域社会をつくり、地域振興を図っていくために、…基礎自治体への権限移譲、自治権の拡充を求めて、改革的な提言を行う」とした。最後に決議(案)の採択を行った。
参加者から政府の出先機関改革に異論相次ぐ
意見発表では2人から発言があった。最初は岩手県宮古市の山本市長で、「今回の大震災でインフラもライフラインも壊滅的な被害を受けた。その時に国の地方整備局などが基幹道路の整備を行い、4日間で内陸と沿岸部を結ぶ「いのち」のルートが確保できた。業務の枠を超え、前線、後方で復旧、支援をしてくれた。国の機関が果たした役割は極めて大きく、重要性が明確になった。これから岩手でも復旧、復興が本格的にスタートする。機能充実を図ることが重要であり、国と地方が連携してやっていくことが大事」と強調した。
次に奈良県十津川村の更谷村長は、「台風12号で甚大な被害を受けた。道路が170か所で寸断され、役場と村民の間で10日間も情報が伝わらなかった。職員も6人が死亡、6人が今も行方不明である。まずは村民のいのち、生活を守ることが重要で、こんな混乱した状況の中で地方整備局からすぐに人が来てくれ、機材も送り込んでくれた。こんなに早く直してもらったのは初めて。反対か賛成かの前に移譲によって今まで以上に力が発揮できるのか。今のどこが悪いのか、関西広域連合は受けてどうしようとしているのか、その先のことを何も示していない。今のままでは断固反対である」と述べた。
その後も参加した市町村長から厳しい発言が相次いだ。「地域主権、地方分権に異議はないが、議論がないままに進められることには疑義がある。地方整備局の地方移管は国の責任を曖昧にする。国土を守ることは国の責任である」(宮崎県日南市の谷口市長)、「私たちが要望しているのは地方整備局の廃止ではなく機能強化だ」(栃木県茂木町の古口町長)など。
<感想>
地方整備局など国の出先機関の原則廃止、地方移譲に危惧、不安を抱き、政府方針に異議あり、反対するという「地方を守る会」の活動が急速に広がっている。昨年12月段階では市町村長の会員は120人程度であったが、現在は447人になり、更に増えることが予測される。
それに伴い組織、会則を整備し、役員体制を確立し、目的も国の出先機関改革だけでなく、「基礎自治体への権限移譲、自治権の拡充を求めて、改革的な提言を行う」としたことも前進である。この動きは、政府、財界が進める地域主権改革に反対し、住民自治の発展、自治権の拡大を求める運動を進めていく上で大きなインパクトになる。
しかし、当面の重点は拙速な国の出先機関改革への歯止めであり、今後、今日の地域主権改革の全体構想に対する基本的な立場や見解、「基礎自治体への権限移譲、自治権の拡充」の具体的な中身、内実は何なのか、どう作っていくのかが問われる。それは今のところ不透明である。役員、市町村長の発言でも「地方分権、地域主権(改革)に異議はない、進めるべき」と言う発言(枕言葉)も目立っている。参加自治体も、地方及び大都市周辺の中小規模の市町村が多く、都道府県や大都市との関連、連携も議論になると思われる。
今後、こうしたことも踏まえた丁寧な合意形成、連携、共同が求められる。
なお、國定市長は郵政省・総務省キャリア組(三条市出向)、立谷市長は医師、福島県議。
2012年3月5日
「第37回自治体政策セミナーに参加して」
笠間市議会議員 横倉 きん
1月21~23日 つくば国際会議場で自治体問題研究所主催の「第37回自治体政策セミナーinつくば」に参加しました。この間、市町村議選が続いており地元からの参加が少なかったことは残念でした。
初日の五十嵐仁先生(法政大学)の記念講演「民主党政治の迷走と政治の劣化」では民主党が一定の国民要求を選挙公約に掲げ政権交代を果たしたが公約を次々に投げ捨て自民党政治の後追い政治を続け自民党化し国民との矛盾を一層広げ支持を失っている。
3年で3人の首相が変わるなど短命政権には制度的背景(小選挙区制)と政治的背景(反国民的政策)があることなど国会の現状や選挙制度はどうあるべきか、詳しく解明されました。
2日目は、5つの選科に分かれ選科Ⅲ「子ども子育て」帝京大学教授 村山祐一先生の「新システム保育制度改革案と保育の危機」を受講しました。
「新システム」の一番の問題は児童福祉法第24条、市町村の保育義務をなくし、福祉としての保育を産業化し、儲け優先にするものであり長い歴史をかけ保育を押し上げてきた努力をないがしろにするものであります。市町村の仕事は、保護者の就労時間に応じた保育の認定と補助金の支給に限定され保育所探しは親の責任になります。新保育所運営費や施設整備費はなくなり保育所運営は不安定になり質の低下につながります。
政府は、幼保一体化した「総合こども園」を新設して待機児童の解消を宣伝しています。
しかし、総合こども園には3歳未満児の受け入れを義務付けておらず待機児童の解消にならないのは明らかです。そして新システム法案を今国会に提出することを狙っています。
保育制度の改悪を許さない世論と運動を広げることが喫緊の課題です。
3日目は、「東日本大震災からの復興」と題して、福島大学名誉教授の鈴木浩先生の特別講演がありました。
①経済的低迷 ②政治的混迷 ③社会的不安を抱える我が国の時代的特質のなかで発生した大震災であること。阪神淡路大震災にはなかった津波、原発被害による経済的活動の崩壊と47%の失業という雇用喪失が起っていることなど、復興にむけての前提条件、復興に向けての現状と課題について、国、県、自治体の果たすべき役割が解明されました。
民主党政権は、社会保障と税の一体改革の中で比例定数を80削減、消費税増税を強引に通そうとヤッキになっています。復興を一層遅らせ、くらしも経済も財政も壊すものであり野田民主党政権の暴走を許すわけにはいきません。
タイムリーなテーマであり内容も吟味されており充実した3日間でした。
報告
「第31回まちづくり学校」が開催されました。
研究所事務局
「震災からの復興をめざす」と題して、第31回まちづくり学校が3月3日、千葉県香取市の「開花亭」で開催された。参加者は地元住民や自治体職員など183人に上った。
鈴木秀幸実行委員長、田中重博学校長のあいさつで開会し、潮来市の柗田千春市長が東日本大震災からの復興をテーマに記念講演を行った。その後、液状化で被災した千葉県浦安市の職員の報告があり、午後からのまちづくりシンポジウムでは、「ライフラインの復興」「観光産業・農業の振興」「原発問題・エネルギー政策」の3つの分野で6名の報告があり質疑や意見交換が行われた。また、日の出地区の現地見学会も同時に行われ26名が参加した。今回のまちづくり学校は、分科会をやめてシンポジウムの形式をとった新しい試みのもとに実施された。以下、主たる催しの概要を紹介する。
◇講演(柗田潮来市長)
柗田市長は、液状化被害を受けた近隣自治体とともに震災後すぐに政府へ要望を行い、昨年5月の液状化被害認定基準見直しにつなげたことを語り、「世の中に不備なものはたくさんある。国が決めたものだからといって、その尺度で住民に当てはめてはいけない。おかしいものはおかしいと、しっかり国に物を言えるようになってほしい」と呼び掛けた。
また、震災を発端とする放射能問題で、県が昨年11月に「シイタケ原木」に関して誤った発表を行い、潮来市のシイタケに風評被害が起きたことについても触れ、「行政が誤った時、住民への影響が大きいことをぜひ肝に銘じてほしい」と訴えた。
◇特別報告(柳沢広司氏 浦安市職員組合)
浦安市職員は、液状化被害の出た地区がかつては海面で、埋め立てにより市域が4倍になったことを紹介し、旧町地区ではほとんど被害がなかったことを指摘した。また、液状化の象徴的な事例として度々取り上げられた地上に飛び出したマンホールを、被災のシンボルとして残すことになった旨を報告された。
◇まちづくりシンポジウウム
ライフラインの復興・復旧(吉川秀樹氏・佐藤正美氏 潮来市職員)
・道路、下水道、電気、道路、ガスの被害調査。応急復旧と本復旧など国の補助金による災害復旧。液状対策で管の埋め戻し作業などスピードが求められた。
・管理施設のパトロール及び緊急処置。職員体制の強化。国への支援要請。
・日の出市民、各種団体、ボランティア等の協力のもと噴砂の撤去作業。
・被害個所300カ所以上。業者に発注し応急工事をした。
・日の出地区(200ha)は道路・下水道・ 水道・ガス施設に甚大な被害がでた。
・ライフライン復旧を最優先に日の出地区へ集中した。
・潮来市液状化対策検討委員会を設置して液状化対策事業計画を策定し「災害に強いまち づくり」と「住んでみたいまちづくり」をみんなで考え作り上げることを提唱した。
農業の振興(村田 深氏 県農民連)
・震災・原発事故からの農業復興に向けて取り組んでいる。
・地震・津波による農業基盤への被害は、水田で1040haそのうち水利施設の被害が900ha、液状化が350haなど霞ヶ浦用水の災害リスクが大きい。
・原発事故は、農業の基盤を破壊し、農民の誇りを踏みにじった。
・震災・原発の被害が全て報われてこそ復興の土台になり完全賠償、原発はいらない。
・農産物の検査の徹底、除染対策。
・被災地での農業復興は被災農家の願いに沿って地域の総力で。
・自然エネルギーへの転換で、農村復興の起爆剤に。
・TPP参加は新たな大災害。
原発問題について(本木雄蔵氏 放射能NOネットワーク取手)
・取手市は、県内で最も高い放射能汚染を受けているので住民でネットワークを組織して放射能の測定を行ってきた。
・連続フォーラムの開催。11月、12月、3月と3回の放射能NO!連続フォーラムを開催した。
・取手市への申し入れ、懇談を3回行い市の回答があった。
1月20日の市との懇談会で国の重点調査地域の指定を受けたので「取手市放射性物質除染実施計画基本方針」が出され意見交換がなされた。
・放射能の測定、汚染物質の仮置き場、食品検査、こどもの健康調査、ホールボデイカウンター等問題は山積しているが今後さらに要求していくことを確認した。
市民風車の取り組みについて(遠藤道章氏NPO波崎未来エネルギー理事)
・茨城県神栖市で海岸清掃や青少年育成事業など地域活性化活動を行ってきたNPO法人波崎未来フォーラムが中心になって設立した風力発電事業を行う非営利法人です。
・地域の資源である「風工ネルギー」を地域で生活する市民自らが風力発電事業として有効活用し,市民レベルでの地球湯暖化防止対策に取り組むとともに、事業による収益を地域
に還元して地域振興と環境保全の両立による地域の活性化に首献しています.
「風の力で、未来をつくる市民の力で風をエネルギーに! 」
日の出地区現地見学会
現地見学会に参加した方の感想
・現地に行って震災の甚大さに心が痛みました。このような大惨事が二度と生じないよう大震災による被害の大きさを実感できた。
・震災からもうすぐ1年になろうとしているが、まだまだ復旧、復興には時間がかかるのではと思いました。
・百聞は一見しかず」という諺がありますが新聞・テレビ等の報道では、だいたい了解はしていました。しかし、これ程ひどいものとは思っていませんでした。今後もこの甚大な被害を教訓にして「防災への備え」を徹底化していきたいと思います。
シンポジウムのまとめ
田中コーデネーターが今回のまちづくり学校について、大震災の復興復旧の問題を取り上げたことはタイムリーであると評価し、以下の3つのことを強調した。
1 この震災では、正に自治体職員の出番であり住民自治を定着させる時である。
2 放射能の測定や除染との闘いは、長い時間がかかり継続して取り組む必要性がある。
3 自治体と地域が共同して取り組むことの重要である。
参加者はさまざまな角度から震災復興のまちづくりについて、理解を深めることができたのではないかと思う。
アンケート自由記述の内容
1 講演
・ 災害発生とその動向がよく分析された説明であった。
・ 災害復興に対する国政との対応が適切であった。
・ 地域の動向を良く見て市民、区域の諸団体 などの組織活動がよく連携されていた。
・ 住民の目線にたって奮闘しているのが伝わってきた。
・ 国に現場の声を伝えて制度を変えたことはすごいと思う。
・ 「国にモノが言える職員になって欲しい。そのためには日頃から住民と対話をしなくてはいけない。」という言葉は正にその通りだと思った。
・ 震災対策を考える中で彼の真剣な姿勢がそこに至ったものと感動を覚えた。
・ 昨年に発生した地震を経験するまでは他の地方で発生した地震の様子を通じてもどこか「対岸の火事」としてとらえる自分がありました。市長の講演を通じて震災からの復興に取り組み等今さらながら知ることになりました。自分が経験をしたことを復興に向けてお手伝いが少しでもできればと感じました。
・ スライドを通じて具体的な説明はよく分かりました。
・ 復興計画の策定にあたって市民と関わって作成したのか、その経過等を聞きたかった。
・ 市長のパーフォマンスが目立ち過ぎたと思う。
・ 国会議員等とのやり取りは、政治家の本質が垣間見られた。
・ 市長の政治力、やる気は分かるが働く職員をもう少し評価してやれないものか。
・ もっと時間は短くてよかった。笑いをとるつもりで松本議員の話をしたかったのだと思うが、笑えない話である。講演の内容は悪い話ではないと思うが話方が余り上手でないのだろうか、胸に響いてこなかった。
・ 今後の話をもっと話して欲しかった。今後の対策を考えるうえで、国、自衛隊に頼る前提で考えるのは良くないと考えるのは大切だと思った。
・ すぐ動ける現場職員を適切な配置と人数を望みます。人は力なり。
・ もっと時間を守って説明して欲しかった。休憩時間も必要だと思う。
・ 上が決めたことだからと従うことに疑問を持つことの必要性を改めて感じました。
2 特別報告
・ 震災時から現在に至るまで各関係者のご努力があったことを思い知らされました。
・ 職場アンケートから見えてきたものを詳細に聞きたかった。
・ 災害事例の分析が不十分であった。
・ 時間がなくなってきていたようで消化不良な気がした。
・ もう少しきちんとした話を伺いたかった。
・ わざわざ浦安からお出でいただきありがとうございました。
・ レジメが余りにもお粗末だと思う。
・ もっと時間が長い方がよかったと思う。液状化被害を受けた自治体の話は潮来市との比較があればもっとよかったと思う。もっと具体的な数字を例としてあげて。
・ 状況は潮来と変わらないはず、特に違うところを抽出して欲しい。潮来で取り組めなくて浦安で出来ることなどを知りたかった。