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第3号

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「いばらきの地域と自治」(第3号)


  • 一病を得たるやすらぎ蓬餅(よもぎもち)
  • 下総の水路を跨ぎ野火逸(はや)る    

    作:高島つよし
    (高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)


介護保険法「改正」と深刻化する現場の実態

特定非営利活動法人 袰の会ケァマネージャー
茨城県自治体問題研究所 常任理事

高木 知子

 2000年4月に発足した介護保険制度は、増大する医療費の削減と、急速に進行する高齢化社会への対策として始まった。極論すればハッキリしていたのは保険料を徴収することだけ。制度としては極めて未完成で「見切り発車」とまで言われ、「走りながら直していく」という状況の中で誕生した。2006年に改正されたが、それは「適正化」と銘打ってのサービスの切捨てに他ならない。細部についてはさまざまな通達により朝令暮改の様相を呈し、介護現場での周知徹底も不十分でいまだに混乱が収まっていない。
 介護を措置制度から保険制度に切り替え保険料を徴収するに当たり、従来の“あてがい扶持”のサービスから、利用者が“主体的にサービスやサービス提供者を選択できる”こと、“社会的に介護力を提供し家族の介護負担を軽減する”ことが特徴とされたが、2006年の改正以降、家族が同居している場合の生活援助(居室の掃除・洗濯・調理等の家事援助)は基本的には認められなくなった。職場から帰宅した家族が行うのが「適正」なのだそうだ。家は別でも同一敷地内に家族が住んでいれば同様となる。一日仕事をして家に帰り、寝たきりの親のオムツを交換して汚れ物を洗濯し、食事の支度をして食べさせ、夜もオチオチ寝られない毎日がどれだけ大変か。“家族の介護負担の軽減”は何処へ行ったのだろうか。介護保険発足以前に介護疲れから自殺や心中、老親を殺害する事件が社会現象となっていたが、いま再び繰り返されている。

 通院の介助も厳しく制限された。当初は、受付に診察券を出す時点から診察が終了し会計を済ませるまで、身体介護としてヘルパーの同行が認められたが改正以降は市町村によって多少の違いはあるものの、病院内での介護・介助は病院の職員が行うことが基本なのでヘルパーは同行できなくなった。
 受診の前に自動血圧計で血圧を測り、検尿のため広い院内をトイレまで歩行するのに介助が必要でも、忙しく立ち働く看護師には声も掛けられない。 
 M市ではヘルパーが受付や歩行の介助、トイレに同行して衣服を整えたりした時間の合計は算定できるが、一緒に待合室に座って待っている時間は算定できないとされている。ヘルパーは診察を待つ間休憩しているのではない。利用者を観察し、声をかけて絶えず気を配るが、実際に介護のために一緒に動いている時間は多く見積もっても十数分に過ぎない。わずか2,000円程度の介護報酬で、2時間も3時間も要する通院介助の時給を払える事業所があるわけはなく、実質的に通院の介助は不可能となる。
 I市ではストレッチャーによる通院の場合はヘルパーの同行介助を認めている。ストレッチャーを利用しなければ移動できない人が通院するだろうか。私なら迷わず訪問診療のプランを立てる。
今まではヘルパーの付き添いで安心して病院に受診できたのに、急に「法律が変わってヘルパーさんは一緒に行かれません」といわれたときの困惑と不安は想像するに余りある。

 病院の受診にはさまざまな困難が伴う。まず、バックから診察券を取り出して機械に入れなければ受付ができない。レントゲン室やトイレ、検査室の場所も覚えていなければならない。保険証を提示し、料金を支払い、処方箋を薬局に持っていく等の手順を踏むことが、視力・聴力の衰えた高齢者にとってどれだけのストレスになるか。病院に行くと具合が悪くなるという笑えない事態が起きている。

 何の為の介護保険制度なのだろう。利用者は、年金から天引きされて否応なく保険料を払っているのに希望通りの援助が受けられない。介護事業所は「あれも不適切・これも不適切」との通達により萎縮してしまい、利用可能なサービスの提供にもためらいがちになる。ケァマネージャーは「介護給費の増大はケァマネージャーが過剰なプランを立てたため」と言われながら「必要な介護サービス」と「提供可能な介護サービス」の狭間をどう埋めようかと試行錯誤を繰り返す。どこの介護現場でも同じような実態ではないだろうか。
 この4月からは3年毎の制度見直しが行われた。桝添大臣は「介護労働者の賃金アップが必要」と力説していたが、今改定で職員の賃金を上げられる事業所がどのくらいあるのだろうか。一方、利用者は認定調査の内容が変更されたことにより、介護度が下がり使えるサービスの減少が予測される等、介護労働者にとっても利用者にとっても問題が多い。詳しくは次回に述べたい。


 投 稿 

公的保育制度こわしを止めさせ
よりよい保育をつくるために

茨城自治労連 保育部会  

川 崎 奈々江    
                   

1 市町村の保育実施義務を解体する「新たな保育の仕組み」が課題に

 2009年2月24日、厚生労働省の諮問機関「社会保障審議会少子化対策特別部会」は、市町村の公的保育制度を解体する「新たな保育の仕組み」(第1次報告書)をまとめました。厚生労働省は、2011年度児童福祉法の改正、2013年度の制度実施をめざしています。
 これによれば、市町村は保育実施義務(児童福祉法第24条)を負うことなく、単に保育の必要性・量の認定と、保育を利用した保護者に補助金を給付する業務を実施することになります。入所は保護者が直接保育所に申し込む直接契約方式を基本とすることになります。現在の介護保険の仕組みがモデルとなっています。
 直接契約方式になれば、保護者が自由に保育所を選んで入所させることが出来るといった厚生労働省の宣伝とは裏腹に、保育士の手がかかる子、保育料の支払いが困難な家庭の子などは、入所を希望しても受け入れを拒否されてしまうかもしれません。受け入れ先が見つからなくても市町村は責任がなくなり、保護者の自己責任となります。入所する保育所が見つからず、保育難民となる恐れがあります。
 
2 蝕まれ続けている公的保育制度

 公的保育制度はこの10年間大きく後退させられてきています。
 1998年4月に児童福祉法一部が改正され、「措置制度」が「利用制度」にかわりました。
 さらに2000年には、保育所への企業参入が認められ、以来、市場化が急速に進み、① 民間営利企業の参入の自由化 ② サービス提供者と利用者との直接契約制度の導入 ③ 保育料の応益負担方式とバウチャー制度(※)などが実施されています。 ②や③は認定こども園制度(※)や東京認証保育所制度(※)などで導入されています。
 2008年10月31日、保育所・学童保育などの経営を行っていた「ハッピースマイル」(株式会社エム・ケイグループ)が経営破綻し、29施設が閉鎖、職員200名以上解雇と園児約400名の行き場がなくなるという事態が発生しました。保育の市場化の行き着く先を見せられた思いがしました。
 公的保育制度の後退は予算面からも大々的に行われています。公立保育所においては、保育所運営費は2004年に、施設設備費は2006年に国庫負担制度が廃止され一般財源化され、地方交付税の削減とあいまって公立保育所の廃止・民営化に拍車をかけています(民間の認可保育所には委託料として交付されている)。
 
3 深刻な子育て環境で、ますます求められる保育の質と専門性

 見知らぬ人から子どもが傷つけられる事件も後を絶たず、地域で安心して子育てができない状況が広がっています。親も子も交流の場が少なくなり、子育ての仕方などを伝え合うことも難しくなっています。
 大不況下、ただでさえ苦しい生活なのに、非正規やパート労働が多い一人親の家庭はさらに深刻です。2つ3つと仕事を掛け持ちせざるを得ないため、経済的にも時間的にも余裕のないなかで子育てを強いられている実情があります。保護者の所得により子どもが、命や健康のみならず住まいや生活水準、教育に至るまで格差を押しつけられているといわざるをえません。
 このようなときだからこそ、豊かなよりよい保育を行う保育の専門性が一層求められています。障害児も含めた全ての子どもたちが安心して通うことができ、子どもの成長発達を保障するためにも、現行保育制度のもとでの保育所の増設などによる待機児童解消や保育現場の充実が大切です。ところが現実は、自治体の保育所運営費の削減と非正規・派遣職員の増大など、保育水準の引き下げと保育の質の低下がもたらされています。今後さらに、最低基準の廃止や見直しや保育士資格の要件緩和など制度を根底から崩す検討がされています。

 この動きを許してしまうのか否か、子育てに責任を持つ自治体は、税金の使い方を含めそのあり方が問われています。

4 公的保育制度をいかし、よりよい保育を行うために

 現行の公的保育制度は、このように後退させられてきていますが、現場の保育士や保育関係者が長年積み重ねてきた成果が多く含まれた、たいへん優れた制度です。厚生労働省の「新たな保育の仕組み」では、子どもの育ちは守れません。世界に誇る現行保育制度の拡充こそが必要です。
 そのため私たち現場の保育士は毎年、自治労連や全国保育団体連絡会などと共同して、「現行保育制度の堅持・拡充を求める国会請願署名」に取り組んできています。今年は、茨城自治労連として、10,000筆(2009年1月23日現在実績10,387筆、カンパ9,000円)を目標に掲げて取組み、国会請願や厚労省交渉に参加してきました。署名の協力依頼では、いろんな労働組合を訪ね、また県内の保育仲間などに直接会いに行き懇談をし、たくさん協力をいただきました。国会でも請願署名が衆参両院で3年続けて全会一致で採択されました。国民の世論と運動が国会を動かしています。
 また、保育部会として初めて取り組んだ「現行保育制度の拡充と保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額を求める意見書」を県内の自治体の議会に提出し、請願書としては、潮来市・下妻市で、陳情書としては、日立市・茨城町・龍ヶ崎市・坂東市・常総市で採択されました。粘り強く運動することで、光が見えてくる、一歩前に踏み出さなければ何も変わらないと、痛感した行動でした。
 これからも、大きな輪の中心に子ども・子育てをすえて、現場の保育士、保護者、地域の方々と心を重ね合わせて、豊かな保育づくりに、向かって行きたいと考えています。


解 説
 
バウチャー制度
 保護者が保育所に直接入所を行なう「直接入所方式」において、サービスの違いによって保育量が異なることを前提に、商品券や回数券のように保護者に直接一定額の公費補助を行う方式。公的責任の後退と企業参入の促進につながるもの。

認定こども園制度
 「就学前教育保育法」に基づいて2006年度からスタートした新しい制度です。保育所と幼稚園の両方の機能を備え、子育て支援事業を行う施設とされています。茨城県での施設一覧は県ホームページなどを参照ください。
東京認証保育所制度
 東京都独自で2003年にスタート。認証保育所は児童福祉法にもとづいて設置される認可保育所よりも設置基準が緩和された東京都独自の制度。

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