第25号
「いばらきの地域と自治」(第25号) (2011・01・20発行)
一言主神社(ひとことぬしじんじゃ)(常総市、旧水海道)常総・古河の地域では最も有名な神社の一つ。
創立809年。
- 寒明くる露地に陽の渦風の渦
- 水温む橋脚が曳く水脈(みお)と渦
- 身に着かぬ養生訓や冴え返る
- 春浅き波打際の貝眩し
作:高島 つよし(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)
新年のごあいさつ
茨城県自治体問題研究所理事長 田中重博
新年あけましておめでとうございます。年頭にあたり一言ごあいさつ申し上げます。
政権交代からわずか1年半しか経過していませんが、国民の多数が民主党政権に失望感を深めています。
何よりも景気や雇用は依然として深刻な状況にあり、格差と貧困は拡大を続けています。そのことは、例えば、民間企業に勤める人が2009年の1年間に得た平均給与が、前年比23万7000円減(5.5%減)の405万9000円となり、過去最大の下げ幅を記録し、平均給与が最も高かった97年(467万3000円)以来ほぼ毎年減少し続けている(2010年9月、国税庁)ことです。また、年収200万円以下のワーキングプア(働く貧困層)が2009年に前年比32万4000人増加して1099万人に上り(国税庁「民間給与実態統計調査」2010年9月)、民間労働者の4人に1人となり、中間層の貧困化と低所得者層の増加が進みました。
一方、全雇用者のうち非正規社員は58万人増で1743万人に達し、正社員は、81万人減の3339万人となっています(総務省、2010年8月発表)。このような正社員の非正規雇用への置き換えは、所得格差を拡大させるとともに、非正社員は大企業の雇用の「調節弁」として不安定な労働条件の下に使い捨てられていることは周知のところです。
次に、2009年平均の完全失業率は5.1%の高水準となり、前年度4.0%からの悪化幅1.1ポイントは過去最大です(総務省「労働力調査」2010年5月)。さらに、全国で生活保護を受給している人が2010年6月時点で190万7000人余りに上ることが、厚生労働省の集計で明らかになりました。受給者が190万人を超えたのは1955年以来のことです。また受給世帯数は137万7900余でした。生活保護の受給者数はバブル崩壊後の95年度の88万人を底に増加に転じ、06年度には150万人台になり、08年度後半からは半年に10万人のペースで増え続けています。
また、2009年1年間に全国で自殺した人は前年比1%増の3万2845人で、12年連続で3万人を上回っています(警察庁、2010年5月発表)。失業、生活苦が原因の自殺が増え、不況が暗い影を落としているといえます。
さらに、今春卒業予定の大学生の就職内定率(2010年10月1日時点)は、過去最低の57.6%にまで落ち込みました。「氷河期」といわれた2003年前後の60%台も割り込み、「新氷河期」に突入する様相を見せています。
以上に挙げたいくつかの経済的、社会的な指標からも、地域社会において多くの勤労者と住民が様々な生活上の困難を抱え、未来への展望が見えない「閉塞状況」に陥っていることが分かります。
一方、自民党政権の「地方分権改革」を引き継いだ形で民主党政権による「地域主権改革」が進められています。それは、たとえば、国の「義務付け・枠付け」を廃止し規制緩和によって「地方の自由度を高める」と称して保育所、介護施設、障害者施設などの人員配置や設備の最低基準を切り下げることによって、憲法に基づくナショナルミニマムの保障を危うくし、福祉の劣悪化と切り捨て、国の補助金削減と責任回避を進めるだけでなく、住民の福祉と暮らしを守る自治体の役割を変質させるものである、といわなければなりません。また、地方分権の名を借りて新しい中央集権と財界の要望に沿って大規模な産業基盤向けインフラ整備を狙う「道州制」に向けた動きも積極的になっています。そして、「市場原理主義」に基づいて学校給食、保育所、公立病院などの民間委託や民営化が各地で進められ、自治体の公的責任を放棄し、住民サービスを切り捨てる動きが目立っています。
他方で、このような政策動向に抵抗し、住民の暮らしと地方自治を守り、地域経済を再生させるための動きも各地で広がりつつあります。
以上述べたような状況の下で、茨城県自治体問題研究所の果たすべき役割も一層高まっているといえます。当研究所はそのことを自覚し、一人一人の会員、読者の皆様の力に依拠しながら、学習交流活動、調査研究活動、組織の拡大強化等に決意を新たに取り組んでまいりたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
事務局だより
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
・ ご覧のように、今号から体裁がB5判に変わりました。『住民と自治』誌の大きさに合わせることで、各会員への郵送のコストや荷造りの手間が省けることがわかり、変更を決断しました。これにより、1頁あたりの字数が1割ほど減少するため、多彩な紙面作りには月間自治ニュースの項目(記事)を減らし、空いた紙面に皆さんからの投稿原稿や資料などを掲載していくつもりです。
・ 各地の動き、地方自治にかかわる政策転換、会員からの提言などを率先して掲載していきますので原稿を寄せてくださいますようよろしくお願いいたします。
・ 1月7日に第3回理事会および新年会が開かれ、さまざまの話題をめぐって議論が交わされました。とくに参加者の関心が集まったのは、理事・役員の高齢化にともなう研究所の維持困難を打開するために、20代~30代の若手をいかにして迎え入れるか、という点でした。
自治体で働く若手職員の意識・考え・関心事・傾向などについてきちんと把握し、共有度合いを深める接触機会を追求していくことを確認しました。卯年にふさわしく飛躍できるように頑張ってまいります。