第23号
「いばらきの地域と自治」(第23号) (2010・11・20発行)
竜神川をせき止めて昭和54年に完成した竜神ダムを見下ろすようにかかっている竜神大吊橋は、歩行者専用の吊り橋で長さ375m、高さが湖面から約100mと、なかなかの迫力。
- 文化の日 健やかに食 驕らずに
- 冬欅 展(ひら)く過疎地の 空広し
- 息白く 試行錯誤の 老いの日々
- 七十路(ななそじ)の 涯の安らぎ 冬茜
- 淡泊な 食に馴れゆく 冬(ふゆ)籠(ごもり)
作:高島 つよし(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)
高齢者医療「新制度」は より大きな「姥捨て山」
塚本 武(研究所OB会員懇談会 代表世話人)
「平成の姥捨て山」と悪名を付けられた「後期高齢者医療制度」は、民主党が廃止を公約しましたが反故にして、新しい制度をつくるとして10月25日、厚労省が原案を示しました。
その骨子は次の4点です。
①、現在後期高齢者医療制度に加入している約1400万人のうち、サラリーマンとして働いている人またはサラリーマンの扶養家族となっている200万人は、健保組合または協会健保に移し、1200万人は国保に加入させ、かつ75歳で区切って別勘定として都道府県単位で運営する。②、現行制度では、後期高齢者の医療費の約4割を他の健保や共済組合からの支援金で賄っているが、それを増やす。③、保険料を2025年までに75歳以上の国保で3万2千円、健保組合で9万4千円、協会健保で7万2千円、共済組合で1万3千円、市町村国保で3万9千円夫々引き上げる(国保以外は事業主負担を含む)。④、70~74歳の患者負担(窓口負担)を現行1割を2割に引き上げる。
2025年には団塊の世代といわれる人が75歳になる年度ですが、膨大な数の病気になりがちの人々を隔離して別勘定にするわけですから、医療費はますます嵩みます。これを現役世代に被せるということです。現役世代と高齢者を対立させ、高齢者に肩身の狭い思いをさせて、医者にかかりにくくして医療費削減を迫るもので、自・公政権と全く同じ発想で大きな「姥捨て山」にしようとするものです。
資 料
議会改革度
トップは三重、岩手・宮城が続く、茨城は40位!
「地方議会の自主的な改革の動きが大きくなっている。」との現状把握のもとに、日経新聞社が47都道府県議会を対象に、議会改革アンケート調査を実施し、10月18日発刊の日経グローカルに調査結果を発表した。以下、概要を紹介する。
ベスト10のうち9議会が基本条例制定
各設問とも理想的な制度や取り組みを想定して配点したため、全体に得点は低くなりトップの三重県でさえ115.3点にとどまる結果となった。ただ、得点の低さよりも、議会改革度に大きな格差が表れたことが注目される。都道府県議会でも、改革への意識、取り組みに歴然と差があることが分かった。
上位に入ったのは、議会基本条例を制定した議会が中心で、ベスト10のうち9議会が既に制定済み。制定していないのは5位の京都府だけだが、京都府も今年度中の制定を目指している。議会基本条例は、議会が果たすべき役割や責務を体系的に規定し議会活動の規範となる条例。同条例の制定自体に比較的高く配点したが、それよりも制定組は同条例に基づき様々な改革を実践していることが上位に集中した主な理由だ。
「改革派知事]の影響も
また、上位組には「改革派知事」の影響も見逃せない。かつて三重県は北川正恭前知事(早稲田大学大学院教授)、岩手県は増田克也前知事(野村総研顧問、元総務相)、宮城県は浅野史郎前知事がそれぞれ地方分権改革の旗手として活躍。対する議会も、これらの知事との緊張関係の中で変化し議会改革に結びついたと見られる。4位の長野県も田中康夫前知事(新党日本代表)との「脱ダム宣言」などを巡る様々な対立が刺激となったようだ。
現職知事の中でも、例えば、京都府の山田啓二知事は、全国知事会の地方分権推進特別委員長を務めており改革派の1人。6位に入った大阪府の橋下徹知事は、府政でも知事会の場でも、精力的な言動が目立ち、議会も否応なく対応を迫られてきた。9位の神奈川県の松沢成文知事も自身が提案した知事の多選禁止条例などが争点となり、しばしば議会と対立してきた。
こうした改革派あるいは個性派の知事は、水面下での根回しなど議会と馴れ合うことはせず、むしろ対決的な姿勢をとることで、議会の自立や改革に間接的に貢献してきたと言えそうだ。
ただ北川氏や増田氏と同時期に改革派知事として活躍し菅改造内閣で総務相に就任した片山善博氏のいた鳥取県は21位にとどまった。鳥取県議会は片山知事の時代から熱心に議会改革を進めてきたが、議会基本条例の制定を巡って07年に会派間の対立が激化。それ以来、改革も停滞しているようだ。首長のリーダーシップがあれば進む行政改革に比べ、合議制の機関である議会の改革の難しい面が出ている。
三重、基本条例に基づき幅広い改革
トップの三重県議会は2006年12月、都道府県議会では初めて議会基本条例を制定し議会改革で最も先進的な議会として知られる。情報公開の分野では、本会議を始め議会運営委員会を除くすべての委員会、全員協議会をインターネットのホームページ(HP)で同時中継し録画も放映。
議案説明資料も議会が開会してからHPに掲載。議事録は本会議と、議会運営委員会(概要)を除く委員会の全文をHPで公開している。採決での議員個人の賛否もすべての議案についてHPで公開している。また、すべての委員会、全員協議会を自由に傍聴できる。
住民参加では、09年1月以降、委員会が重要な案件について広く外部の意見を聞くため利害関係者や有識者を公募して開く「公聴会」を1回開催。委員公が審査のため出席を求めて意見を述べてもらう「参考人」制度は10回活用している。公聴会の開催は47都道府県で三重県だけだった。
運営面では、議員同士が議論して議会としての合意形成を目指す「議員間の自由討議」を議会基本条例で規定しており、委員会で実際に討議を実施、それを議事録に残している。議員聞討議は、重要かつ意見の分かれる案件では議会の意思決定のために不可欠だとされるが、取り入れている議会はまだ少ない。
このほか、通常は年4回の定例議会を08年から年2回制にして会期日数を従来の2倍以上の年約230日に増やし審議を充実させている。09年10月には議会活動を評価する諮問機関を設置し地方自治法が想定していない議会の「付属機関」と位置づけている。
岩手は議会報告会、宮城は反問権を規定
2位の岩手県議会で特筆すべき点は都道府県議会で初めての議会報告会(意見交換会)開催だ。議会報告会は、委員会や会派単位ではなく、議会全体として取り組み、議員が地城に出向いて不特定多数の住民を対象に、議決した予算や条例、その他の議会活動について報告、説明し住民と意見交換するための会合。住民から出された意見は政策立案や執行部への提言に生かす。
岩手県議会は昨年11月に初めて県内4ヵ所で開催し今年4月にも会場を変えて4ヵ所で開いた。今年11月にも予定、年2回の定例開催にしており、議会基本条例で義務付けている。議員間の自由討議も基本条例で規定し委員会で案施し議事録に残している。参考入制度は三重県を上回る22回活用した。すべての議案に対する議員個人の賛否もHPで公開している。
3位の宮城県も同様に議員間討議を規定、実践している。知事、執行部が議長または委員長の許可を得て、質問した議員に反論できる「反問」を認めたのも、同県の基本条例の特色だ。政策の専門知識や情報量で勝る執行部の反論を許すと、議員がやり込められる可能性もあるため、執行側の反問権を本会議と委員会で認めたのは3県しかない。また宮城県議会は議員提案の政策条例の可決件数が全国で最も多く、09年1月以降でも条例2件を可決した。議会事務局の政策法務担当者数は12人と東京都と並んで最多だ。
宮城県も三重県、岩手県と同じく、全議案に対する議員個人の賛否をHPで公開しているが、このベスト3以外で同様の情報公開を行っているのは富山県(総合得点の順位は32位)しかない。各議員の議決責任を示すためにも賛否の公開は必要なはず。公開しない議会の閉鎖性は批判されていい。
費用弁償は長野が実費、大阪は廃止
4位の長野県は、議員が本会議や委員会に出席するたびに支給される費用弁償を02度から実費(交通費)に変更した。費用弁償に対しては、例えば1日1万円といった定額支給だと日当と変わらず、議員報酬との二重払いではないかとの批判がある。議事録は議会運営委員会も含めてすべての会議の全文をHPに掲載し議員間討議も委員会で実施している。
住民参加では「ふれあいミーティング」と題し、正副議長が地域へ出向き、その地域の議員とともに地元の意見を聞く集会を年1回実施している。テーマを決めて地域の代表者が発表し、一般県民は聴衆として参加する仕組み。また、正副議長と議員がブロック単位で市町村長や市町村議会議員と意見交換する「政策タウンテーブル]も年1回開いている。いずれも典型的な議会報告会とは異なる独自の試みだ。
5位の京都府も、議会運営委員会も会めて議事録の全文をHPで公開。参考人制度は18回活用しており、公開・住民参加度では岩手県を上回り、三重県に次いで2位となった。議員間討議も委員会で実施している。
6位の大阪府は、費用弁償を廃止している。
7位の北海道は、07年当時、慶応大学教授だった片山総務相に「ほとんどの議会で八百長と学芸会をやっている。一番ひどいのは北海道」と名指しで批判されたことがあった。これに発奮したためか、09年7月に議会基本条例を制定。議員間討議も規定し、本会議でも実施していると唯一回答した。ただ論点を明確にし傍聴者にもわかりやすくするために質問と答弁を項目ごとに区切って行う「一問一答方式」は導入していないため。どこまで活発な議論が展開されているか疑問は残る。一方で、執行部の反問は認めており、請願・陳情者が希望すれば直接説明する機会も保障している。8位の大分県は、政務調査費の使途をHPで公開している唯一の議会だ。
(編集委員会)
「日経グローカル」(435号発行され休刊した『日経地域情報』の改題)は、日本経済新聞社が、地域創造のための専門情報誌として2004年4月に創刊。「グローカル」には、グローバルな視点から地域(=ローカル)再生の方向を探る、という意味を込めている。