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第19号

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「いばらきの地域と自治」(第19号)

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  • 白芙蓉昏れて明るき路地の空
  • 炯々(けいけい)と城の銃眼日の盛り
  • 山一つ載せ大青田日々に濃し
  • 甚平の馴染まぬ齢多喜二読む

作:高島つよし
(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)




                    

民主党の「地域主権」という名の構造改革

田村武夫 (茨城県自治体問題研究所顧問)
 

 菅内閣は、国による「義務付け・枠付け」を可能な限り廃止することを当面の「地方分権改革」の目標とした。国民の一番身近なところでの「構造改革」の推進である。「地方分権」、「地域主権」の言葉には、人びとを酔わせる魔力がある。地方自治と行政サービスが拡充するかのような響きがあるからである。マスコミはなんの疑いを持たず、無批判に推奨している。
 民主党のマニフェストはいう。「地域主権国家の母体は、基礎的自治体(現在の市町村)とし、基礎的自治体が担えない事務事業は広域行政が担い、広域行政が担えない事務事業を国が担うという『補完性の原理』に基づいて改革を進めます」と。
 「補完性の原理」とは、国の仕事を外交・軍事・司法などに限定し、社会保障や福祉などの行政サービスを地方に丸投げし、自立自助の名で住民負担に切り替えながら(水平的所得分配)、自治体を財界・大企業のための開発政策や産業政策の道具に変えてしまおうという財界の「究極の構造改革」=道州制とまさに軌を一にするものだ。
 自公政権の「地方分権改革」と民主党政権の「地域主権国家」構想は、自己責任、地域責任を押し付けることによって福祉国家構想を破壊しようとすることにおいて差はない。新自由主義的「自治体再編」は、政権が変わっても財界の至上命題なのだ。
(後掲の関係資料(新聞記事)を参照)
                 


投 稿

 第12回保健所・公衆衛生を考える全国研究交流集会≪リレートーク≫

生き生きと働ける公衆衛生職場をめざして、皆さんの悩みや実践例を語り合いましょう

茨城県ひたちなか保健所機能縮小案反対の大住民運動

報告者 長山 重道(日立市民)
                      

1 はじめに

「結核等の感染症は激減した、保健所の役割は終わった」等として保健所の統廃合が進められて久しい。現在、全国の保健所数は最高時の6割以下である。しかし、本当に保健所不要が市民の声なのか、そしてまた闘いは都市部でしか起こらないものなのか、以下の事例から考えてみたい。

2 廃止された保健所、残った保健所

 1994年(平成6年)、北関東A県北部のB保健所(管内2市1町、人口約10万人)が廃止されようとしていた時の話だが、職員組合の保健所分会と地域支部とが度々合同会議や業務終了後の全組合員会議を開催して保健所廃止反対の方針を決定、1000枚の往復葉書による市民アンケートを進めていた。炭鉱住宅街やアパート群等にも入り、商店主や市民とも対話、「頑張ってください」との市民の声に励まされたという。戻ってきた葉書は殆ど「保健所を廃止されては困る」であり、保健所とのこれまでの関わりや差出人名を書いたものもあった。
しかしながら、食品衛生協会等関係団体に依頼したアンケートは一括返却される等協力は得られず、保健所当局も「保健所廃止反対の運動を進めては困る。廃止を前提に市と詰めている」と、また、「県職本部は保健所廃止反対とは言っていない、勝手にやっては困る」と圧力をかけてきたという。更に、本部専従役員までが保健所存続闘争会議で運動に水を差す発言をしたため、ついに支部も分会も運動を断念、翌1995年3月には他の3保健所共々廃止されてしまったという。
一方、1999年に廃止提案された茨城県ひたちなか保健所の管内(1市1村、人口約18万人)では住民署名や市民集会等大きな反対運動がおき、保健所は逆に広い敷地に移設存続することになった。

3、残ったひたちなか保健所に「支所化」の危機が

 2007年11月、県は県議会財政再建等調査特別委員会で出先機関の大規模再編を表明、2009年度からひたちなか保健所を含めた3保健所廃止を打ち出した。これに対し2008年5月18日、ひたちなか市内で、「ひたちなか保健所の本所機能の存続を求める会」(発起人代表は同市医師会長等で約40団体で構成)主催の「ひたちなか保健所の本所機能の存続を求める決起集会」が開催され、約350人が参加、県に対し、同保健所支所化案の見直しと現状機能の存続を要望する請願書を決議した。翌19日には同医師会長、ひたちなか市長、東海村長が、同市選出の3県議同席の下、知事と議長へ請願書と103,183人分もの署名を提出した。この署名は2008年2月から同会が街頭や自治会等を通し全市・村的にて集めたもので、知事は「総務課は廃止するが、その他の機能は存続する」と説明したものの、議論は平行線を辿った。1999年の廃止提案時以上の市民主体の保健所存続運動が展開された。

4、そして12保健所は全部残った

 翌2009年4月1日、県出先の大統廃合がなされた。地方総合事務所、地域農業改良普及センター、土地改良事務所、県税事務所、土木事務所が夫々再編統廃合された中、保健所だけは12か所全部が残ったのである。鳥インフルエンザや中国の餃子事件が有ったとはいえ、市民の反対運動が大きく影響したと言える。しかしながら、県当局は財政悪化を理由に保健所総務課の旅費事務、地域保健推進室の人口動態及び介護保険施設指導監査等事務を5か所の「特定保健所」へ集中してしまった。

5、まとめ

保健所廃止反対、公衆衛生・保健所充実強化の運動は主に都市部で労働組合や市民団体等によって取り組まれてきた。今日では全国で4割もの保健所が廃止されてしまっている。市民のセーフティネットの一つが次々消えてゆくことは、実に由々しき事態であるが、本当に保健所はその役目を終えつつあるのか、いや決してそうではない。このことを、ひたちなか保健所管内の市民は強烈にアッピールしたと言えるのではないか。ひたちなか保健所支所化反対の運動・署名活動は、保健所の職員が依頼して回ったのではない。地元医師会や公衆衛生関係団体、そして自治会連合会等市民が自主的に行ったもので、市民が市内各所に立つ等して署名を訴え集めたのである。ひたちなか市と東海村は元々は農業と漁業そして大電気産業の町だったが、今日では原子力産業や国際港湾都市でもある。1997年の動燃火災爆発事故や1999年のJCO臨界事故等にも遭遇している。この地域で保健所は実に大きな根を下ろしていたといえるのだ。が、これはここだけの話ではないだろう。公衆衛生を守る地道な仕事そのものが日本中で市民に評価され、根付いていると言えるのではないか。保健所という名を知らない市民はまずいまい。このことを私達はしっかり受け止め、市民の要求に応えられる公衆衛生活動を市民とともに更に展開すべきと思う。2008年5月の保健所存続を求める決起集会で、地元選出の保守系県議が「保健所の本所機能の存続に私は政治生命をかける」、「最後の最後まであきらめない。最後は15万人がむしろ旗を立ててここに来る」とまで発言したのは実にその象徴ではなかろうか。

資 料

民主党の「地域主権」構想に対する問題指摘

地域主権大綱 一括交付金 国が関与 自治体の自由度後退

 菅内閣の地域主権戦略会議は6月21日、向こう2~3年の取り組みを定めた地域主権戦略大綱をまとめた。民主党が昨年の衆院選マニフェストの柱に掲げた「ひもつき補助金の一括交付金化」は来年度からの実施を明記。ただ、原案にあった「地域が自己決定できる財源」との記述が削られ、国の関与の余地を大幅に残した。6月22日に閣議決定される。
 菅直人首相は21日の戦略会議で「地域主権の確立は私の内閣でも政権の重要課題であることに変わりはない」と強調した。突然の首相交代で参院選前の大綱の閣議決定は困難とみられていたが、首相サイドの強い意向で週末に各省との調整に乗り出していた。
 大綱は、地域主権改革を「明治以来の中央集権体質から脱却し、この国のあり方を大きく転換する改革」と位置づける。中でも目玉は、政府が使い道を決めて配る補助金を、自治体が自由に使える財源に改める一括交付金化だ。公共事業など投資関連の補助金は来年度から、毎年決まって支出する経常費関連の補助金は2012年度から段階的に一括交付金化することを盛り込んだ。もうひとつの目玉である国の出先機関改革では、「原則廃止」を明示した。各府省が所管する機関について、自治体に移せる事業を洗い出す「自己仕分け」を8月までに実施。年内をめどに「アクションプラン」をつくり工程を示す。来年の通常国会への法案提出も含む速やかな実施をうたった。(朝日新聞 2010.6.22)

 地域主権大綱 「政治主導」はどうした 

 「分権とは明治以来百数十年、特に戦後強化された集権システムと、それを支える政官業の『鉄のトラヤアングル』を突き崩そうとするもの……」「地方の時代」を唱えた神奈川県の長洲一二知事(当時)が本紙「論壇」にこう書いたのは1994年、政府の地方分権大綱ができたときだ。あれから16年。菅内閣が地域主権戦略大綱を決めた。「地方分権」から「地域主権」に表題を変えたが、その冒頭にも「明治以来の中央集権体質からの脱却」をめざすとある。なんとも歩みののろい改革なのだ。
今回の大綱も「国の出先機関の原則廃止」の方針が盛り込まれたことは評価できるが、まだ抽象論の域を出ていない。より具体的な内容に目を向けると、自治体の仕事のやり方を法律でしばる「義務づけ」の廃止などは、いかにも物足りない。自治体側の要望が大きい改革の核心部分だけに、たいへん残念な内容だ。
 改革に対する民主党政権の意気込みを、私たちは3月の社説で大風呂敷を歓迎する」と評したが、あの頃の意欲はしぼんでしまったように見える。とくに、民主党の目玉政策の「一括交付金化」は原点から揺らいだ。各省が差配する補助金が国と地方の省庁縦割りの上下関係を固定化させてきた。だから補助金をやめて、住民が使い道を考えられる交付金にする。「省庁の枠を超えた」「地域が自己決定できる財源」にするはずだった。
 原ロ一博総務相はこの考え方を全面支持しつつ、大網の内容を決めるのは首相と一部閣僚、学者、知事らによる地域主権戦略会議だ」と言い続けてきた。確実に予想された各省の抵抗を首相らの政治判断で突破するという宣言である。傍らで菅直人首相も仙谷由人官房長官もうなずいていた。それなのに「戦略会議でいったん了承した一括交付金化」の内容が土壇場で、国が深く関与するものに変質した。自治体の裁量枠が大きくなれば、各省は権限も影響力も失う。それを恐れた役所側の巻き返しを認めてしまった格好だ。これでは霞が関と二人三脚だった自民党政権時代の分権改革と変わらない。
 地域主権改革は日に日に各省のぺースになりつつある。副大臣や政務官らが各省の省益をそのまま代弁するような光景が増えている。まるで官僚に振り付けされた、官僚のいいなりの「政治主導」を見せられているようだ。大綱を決めた戦略会議で、菅首相は「分権改革のさきがけ」である政治学者の松下圭一氏の名を挙げて、改革への意欲を語った。そして最後には「もしかしたら、これからが本勝負になるのかな」と締めくくった。本来の政治主導にかじを戻す覚悟の言葉なら、実行あるのみだ。  (朝日新聞 010.6.25)

民主党政権の「地域主権改革」案 公共サービス住民の責任に

 民主党政権が策定をめざす「地域主権戦略大綱」の骨子案が出され、今月中のとりまとめに向けて作業が進められています。骨子案から見えてくる「地域主権改革」とはー。
骨子案は、国は「国家としての存立にかかわる事務を重点的に担う」とする一方、自治体は「行政を自主的かつ総合的に実施する」「自主性、自立性を高めていく」として、公共サービスは自治体が「自主・自立」して担うよう求めています。
しかし、国と自治体には、憲法にもとついてすべての国民にナショナルミニマム(国民生活の最低限保障)を保障する責任がともにあります。骨子案は、国の役割を防衛などに限定し、あとは地方自治体任せにしていく方向です。しかも「地域主権改革を進めれば、地方自治体間で行政サービスに差異が生じる。首長や議会を選ぶ住民の判断と責任は重大」と述べています。国の責任を投げ捨て、責任も住民に負わせようとする姿勢です。

 補助金を廃止

公共サービスに対する国の財源保障である補助金をなくし、使途を定めない「一括交付金」をつくるとしています。民主党のマニフェスト(政権公約)では、社会保障・義務教育関係の補助金は一括交付金の対象外としていました。ところが、骨子案は、社会保障・義務教育関係も、「全国画一的な保険・現金給付」は対象にするとしています。補助金のほとんどは社会保障や教育のための義務的経費であり、これがなくなれば福祉や教育などの        最低水準を確保することも難しくなり、地域格差を広げることになります。
小泉内閣の「三位一体改革」でも補助金を減らし、使途自由の「一般財源化が行われました。しかし、一部の税源が地方に移されたものの補助金と地方交付税が削減され、3年間で6・8兆円も国の負担が削減されました。公立保育所では運営費と施設整備費が廃止され使途自由の一般財源となりましたが、逆に保育所の民営化や保育士の非正規職員化が進みました。

 合併すすめる

さらに骨子案では、基礎自治体が「自主的・総合的に行政を実施できるように」と求めています。これは合併など自治体の規模拡大を市町村に迫るもので、自治体行政を住民から遠ざけ、地方自治を破壊する「道州制」につながるものです。原口一博総務相は、規模の小さな自治体では「地域主権改革」の受け皿にならないとし、「地域が自ら選択した道州制を視野に考えていきたい」と語っています。骨子案では、地方自治法を見直して「地方政府基本法」の制定を提起。「首長と議会の対立により行政運営に支障が出ないようにする」として、議員が行政の構成員となることや、議会の役割を「事後の調査・検査」に限定することなどを打ち出しています。行政を監視する議会を弱体化させるもので、地方自治を形がい化させるものです。     (しんぶん赤旗2010.6.10)

 参考文献;『地方分権改革の嘘(うそ)と実(マコト)―福祉を後退させる「地域主権国家」構想批判』  東京自治問題研究所  ¥ 2,600

          

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