第185号
第185号
第185号
2024・06・24更新
佐竹寺=常陸太田市
佐竹寺、「坂東33ヶ所霊場」の第22番札所。中世に常陸太田城主太田氏の庇護を受ける。歴史的建造物の本堂や山門、二対の仁王像や稲荷堂、佐竹氏歴代の位牌が目を引く。常陸太田市天神林町2404
「消滅可能性自治体」をいうだけで解決するのか?
「人口戦略会議」が発表した消滅可能性自治体の波紋が広がる。農村政策を専門とする明治大学農学部の小田切徳美教授は、次のように提案する(6月8日付 日本農業新聞)
人口減少対策では、少子化に歯止めをかけるような「人口減少緩和策」と、人口減少を前提とし
て、少ない人口でも幸せに住み続けるような仕組み作りを促進する「人口減少適応策」がある。両者のバランスが必要だ。
「緩和策」は国全体の出生、子育て環境の充実など、主に国レベルの仕事だ。
「適応策」は、例えば過疎対策のように国レベルでの格差是正政策と、地域でそれぞれ内発的発展を目指すような地域レベルの対応がある。自治体ができる取り組みは「適応策」の中でも後者だ。例えば、地域運営組織(RMO)の設立支援や活動充実支援、また各種の人材育成などがある。そのような適応策は、「地域づくり」と呼ばれ各地で取り組まれている。「地域づくり」はこの10年間さまざまな点で前進している。
「人口が減少しても、幸せに住み続けること」を地域の力、自治体の力、関係人口などの外部からの力を糾合して、追求し続けてほしい。その先に人口減少への対応が見えてくる。従って従来から各地で取り組んでいる地域づくりをぶれずに進めてほしい。今回の推計にあおられて一喜一憂する必要は全くない。
今月の俳句
夏服を纏ふ陽の渦風の渦
夏服に短かき手足通しけり
老妻の多弁に戻る衣替え
読経の余韻短き夏木立
門川の瀬音高ぶり明易し
高 島 つよし
本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 元小貝保育園長、当研究所顧問
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事務局からのご案内
第50回茨城県自治体問題研究所総会
と き:2024年7月7日(土)午後1時30分から
ところ:茨城自治労連会館(つくば市花畑3-9-10)
電話:029-864-2548
講 話:「全国研の活動状況と地域研の課題」
講師:自治体問題研究所 事務局長 吉川 貴夫 氏
資 料
【声明】中央集権化を進める地方自治法「改正」案に反対する
政府は、地方自治法「改正」案を提出し、国会で審議が続いています。この法案は、「第 11 章 情報システム」と、いわゆる「補充的指示権」などを規定する「第 14 章 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例」を新設するなど、これまでの地方自治法に大きな変更を加えるものです。
まず、法案の最大の問題点は、「補充的指示権」です。それによって、各大臣が、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合に」、自ら「生命等の保護の措置」を講じ、また適切と認める自治体に対し、同措置を講じるよう「必要な指示」ができるようにするものです。しかし、当該指示の要件は抽象度が高く、法定受託事務だけではなく、自治事務にも適用可能なもので、指示の対象事務の範囲は相当広いものになります。その手続をみても、「閣議の決定」を経てとされていて、これでは、指示の政治的性格を強めるだけです。修正によって、事後に「国会に報告」するものとされましたが、権限濫用の歯止めとして十分とはいえません。
また、この指示権は、自治体の事務処理を待たず、そのため事務処理が適法・違法であるを問わず、国が判断し指示することを認めるもので、住民に身近な自治体よりも、国の方が適切な判断を下せるという不適切な前提に立っています。むしろ、指示は、自治体に無用な混乱を招くものになってしまいます。
武力攻撃事態法や国民保護法に定める指示権の発動要件に至らない重大影響事態に適用されることも想定され、「武力攻撃」にかかわって活用されることも排除できず、平和主義との関係でも問題があり、さらに、憲法「改正」ではなく、地方自治法「改正」によって、緊急事態条項を定めるもののように考えられます。
新設される第 11 章では、デジタル化の最大の目的である「効率化」が目指されています。また、デジタル化では国と協力して情報システムの利用の「最適化」を図ることが求められており、「国と協力」した「最適化」によって、個々の自治体にとっての最適化ではなく、国にとっての最適化が目指される可能性があります。
さらに、第 16 章では、「指定地域共同活動団体」が規定されます。この前提には、市町村が独自に行政サービス・公共サービスを提供するのではなく、他の民間団体と協力してこれらのサービスを提供すれば足りるという考えが前提となっています。市町村が新しく規定される「指定地域共同活動団体」との関係で、委託について随意契約によることや、行政財産を貸し付けることができるといった優遇措置をとれることを規定し、条例の定め方にもよるものの、行政の民間化を一層推進するものになりかねません。
このように、地方自治法「改正」案は、地方自治を充実させるのではなく、反対に、地方分権に逆行し、中央集権化を進めるものになると考えられます。また、自治体行政の民間化を後押しする可能性をもち、平和主義や憲法「改正」にも重大な影響を与える危険性が高いものです。以上のことから、地方自治法「改正」案には到底賛成することはできず、この「改正」案に強く反対します。
2024 年 6 月 1 日自治体問題研究所理事会
今月の 川柳
夢洲にガスがふき出し泣く子かな
天安の門にたたずむ血の時計
ジェノサイドやめてくれよと啼くカラス
減税はたった一度の紙芝居
少子化に産めよふやせよ泡をふき
虎の目の怒る涙に翼生え
政とカネどこに居るのかロビイスト
首都の森こわして残る死の砂漠
リプレイと云って軍拡巻きもどし
夏風にアジサイゆれて行く女
泉 明 羅
(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)
イベント案内
新刊紹介
公園の木はなぜ切られるのか
●市民の拠り所で木が切られ、稼ぐ場所へと変容!
A5判 並製 64頁 定価900円
尾林芳匡・中川勝之著
明治神宮外苑の再開発計画が進んでいます。再開発により、外苑の樹木の大量伐採につながるのではないかと、各方面から批判の声が上がっています。故・坂本龍一を初め、桑田佳祐、村上春樹らも反対意見を表明しています。実は、このように「公園の木が切られる」事態は日本全国で起こっています。
自治体、行政が市民のために公園を維持するよりも、「稼ぐ公園」へとシフトしているのです。そこには「公園PFI」という手法を用いて、民間企業を取り込み、都市公園の民営化、産業化の動きがあります。大阪、埼玉、東京、静岡、長野、兵庫の実例を取り上げて、都市住民の拠り所である公園をどのように守っていけばよいのか、考えます。
目次より
第 1 章 外苑の森が危ない 明治神宮外苑の森が危ない/外苑の森が大きく変わる再開発計画/東京都が旗振り規制緩和/ 第 2 章 全国で広がる公園 PPP/PFI の動きと概観 都市公園はいま/都市公園法のあらまし/公園 PFI(Park-PFI)の導入のいきさつ/2017 年都市公園法改正と「稼ぐ公園」/ 第 3 章 PPP/PFI とは PPP/PFI とは/PPP/PFI が進められてきた背景/自治体民営化を進める制度とその特徴/第 4 章 公園をめぐる全国の事例 大阪市・「木を切る改革」と「稼ぐ公園」/さいたま市・与野中央公園/京都府・北山エリア/東京都・日比谷公園/静岡市・城北公園/長野県須坂市・臥竜公園/
■自治体研究社 〒162-3512新宿区矢来町123矢来ビル4F
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巨大再開発、DX・GX で 東京のまち・自然が破壊される
徹底検証!東京都政
発行:旬報社 定価1700円+税
山本由美・久保木匡介・川上哲・一般社団法人 東京自治問題研究所 編著
第1章 都政は何を進めてきたのか ―国際競争力強化と巨大再開発
第2章 加速する都市再開発と住みにくくなる東京
第3章 DX・民営化による 公教育・保育の変質
第4章 社会保障、医療、公衆衛生、ジェンダー
■東京自治問題研究所 fax03-5976-2573
電話 03-5976-2571
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