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第150号

第150号

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第150号

2021・06・24更新

雨引観音

雨引観音=桜川市本木
 県内屈指のあじさいの名所。西洋アジサイや額アジサイなど約100種5,000株のあじさいが境内やその周囲を埋め尽くす。あじさい祭が6月10日から7月20日にかけて開催される。

雨引観音2


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9月県知事選を控えて大井川県政をどう見るか

9月5日(日)、県知事選挙の投開票がおこなわれる。
連合茨城や国民民主党は現職の大井川知事を推薦した。本当に、大井川知事の4年間県政を是認し評価できるのだろうか。
「いのち輝く会」はつぎのように指摘している。

 
 1 新自由主義政策に追随し、大企業のための県政  
(1)「活力があり、県民が日本一幸せな県」を基本理念に掲げ、2018年3月に「茨城県総合計画(2018年~2021年)」を改訂した。計画推進の基本姿勢として、「県は、挑戦する県民の皆さんを応援し、支え、新しい時代をともに切り開いていきます」「スクラップ・アンド・ビルドに不断に取り組むとともに、本県を大きく飛躍させるために必要な事業には重点的に予算を配分するなど、財源の有効活用や『選択と集中』を徹底します」と述べている。まさに、この4年間、大井川知事は「選択と集中」の掛け声の下、稼ぐ経済活動を選び収益の拡大支援に力を入れてきた。また、県庁の機構改革を進め、営業戦略課、産業戦略課など大幅な課名の変更も行って、県民福祉の推進から転換する姿勢を鮮明にしている。
 そもそも、「必要な事業」や「選択と集中」の基準設定に県民の要望を聞き取って生かしていく思考はまったく窺われない。今年の県民の意見を聞く「ネットリサーチ」では、大井川知事は東海第二再稼働に関する項目に「考えていない」と回答。県民サービスの充実や中小企業や小規模事業者、社会的弱者を含む圧倒的多数の県民に対する支援の充実などが「選択と集中」から外されて支援の対象になっていない。
(2)「茨城県総合計画」の企業誘致では、工業団地分譲価格の値下げや本社移転に最大50億円の補助金制度創設などによって、工場立地面積は2年連続で日本一と自賛している。2021年度の当初予算では、新たな大規模工業団地の造成(つくばみらい市内、70 ㌶、総事業費 200 億)が新設された。
 しかし、企業誘致や大規模工業団地の造成によって、大企業支援の成果だけが強調されて、正規社員の雇用がどれだけ増えたか等は明らかにされていない。

2 医師数・看護師数は全国最低水準から脱却できず、医療機関の統廃合を推進 
(1) 大井川県政は、12あった保健所を2019年11月1日から9保健所に再編した。「保健所を再編統合することで、保健所機能の強化を図ります」と言っていたが、台風19号風水害やコロナ感染の拡大などで、保健所の再編・統合が救助の遅れなど問題をより深刻にしてしまった。保健所の増設などの話はまったく出されていない。
(2) 土浦協同病院「なめがた地域医療センター」は入院病床を全て休止する方針を決めた。外来診療に特化し、病院としての機能を終える。元々悪化していた経営環境を新型コロナウイルス感染症が圧迫、傘下6病院の共倒れを防ぐ手立てに踏み切った。現在でも全国最低クラスの鹿行地域5市の医療体制は、さらに弱まることになったが、大井川県政は具体的な支援を行っていない。 
(3) 大井川県政では、医師確保の取り組みを進めているが、具体的な改善になっていない。 現在も、茨城県の医師数・看護師数は全国最低水準を脱却できていない。

3 教育への介入が教育行政を歪めている
(1) 2019年2月に、県教育委員会は10校の中高一貫校の開設を、市町村教育委員会や当該高校に事前の説明や合意を得ずに計画を発表し、強行した。しかも、計画を教育長ではなく、大井川知事が記者発表した。中高一貫校の校長の採用に当たっては、公募制を導入して民間人校長の採用も可能にした。
(2) 友部高校のIT専門科の導入やつくば工科高校の科学技術科クラス増などの新たな「改革実施プラン」を教育長では無く大井川知事が記者発表をしている。
(3) この間、特別支援学校の過大・過密が大きな問題になっているが、大井川知事は過大過密の解消のために新たに特別支援学校を新設しようとせず、特別支援学校の増築によって不足教室の解消だけを問題にしている。特別支援学校の教育条件を改善するためには、特別支援学校の設置基準を策定し、増築では無く特別支援学校の新設が求められている。
(4) 2019年度から、私立高校の経常費補助をそれまでの8割に削減し、2割について配分基準を変更している。その配分基準は医学部や有名大学への進学実績等を査定するもので、中小規模の私学では経常費がカットされ、多くの私学では教育内容が歪められてしまう危険性が高い。
(5) 大井川和彦知事の主導で、つくば市内に新たな通信制・単位制高校「S高校」が、2021年4月に開校した。大井川知事は「(県は)連携を通じてたくさんのことを学べる。教育改革の大きな柱として位置付けていきたい」と述べているが、たくさんの通信制・単位制高校が設置されている茨城県では、本来ならば通信制・単位制高校の競合では無く、高等学校全体の教育条件整備に県として力を入れる必要がある。

4 「儲かる農業」支援だけで、家族農業支援を口にせず
(1) 国連は、「国際家族農業の10年」として、持続可能性が高く、現に農業の大半を担っている小規模家族農業にこそ支援をすべきとしている。大井川県政は、国と同様にこれを無視し、「儲かる農業」をスローガンに、大規模経営や規模拡大する経営などに支援を選択し集中している。
(2) 食料輸送による温室効果ガスを抑制することが国際課題となり、また、コロナ禍で輸出規制する国が相次いだことから、各国が食糧自給率を高めることの重要性が浮き彫りになっている。大井川県政は、国と同様に海外への農産物の輸出に力を入れているが、増えたとしても産出額全体の1%程度に過ぎず、収益性が高いわけではない。
(3) 学生や困窮者への食料支援が進められているが、行政支援は全く進んでいない。コロナ禍による米価暴落を食い止めるためにも、行政が米を買い上げて、学生や困窮者に食 糧支援を進めていくことが喫緊の課題になっているが、大井川県政からそうした取り組 みは全く聞こえて来ない。

5 県民の東海第二原発再稼働反対の声に耳を傾けず
(1) 2020年5月に、「県民投票の会」が8万6703筆の東海第二原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例を求める署名を大井川知事に提出した。大井川知事は、6月議会に条例案を提出する際に添付した意見書で、条例案に対する賛否を明らかにせず、県民から意見を聞く方法につい
て「県民投票を含め様々あり、慎重に検討していく必要がある」と、県民投票に後ろ向きとも取れる姿勢を示した。
(2) 2021年3月18日に水戸地裁で東海第二原発運転の差し止め判決が出された。大井川知事は「司法の判断であり県は当事者でないことから、コメントは差し控えます。東海第二原子力発電所の再稼働の是非については、安全性の検証と実効性ある避難計画の策定に取り組んだうえで県民に情報提供し、県民や避難計画を策定する市町村、県議会の意見を聞きながら判断していきます」という談話を発表した。
 しかし、茨城県は当事者でないという発言のおかしさもさることながら、県民に意見を聞くと言い続けながらいつどのような方法で意見を聞くかを全く明らかにしていない。地裁判決は、県が策定した広域避難計画の実効性を否定し、東海第二原発の運転を禁じたのであって、県は裁判の当事者ではなくても、避難計画の当事者であり、東海第二原発の再稼働に同意するか否かを問われる当事者である。大井川知事は、判決を真摯に受け止め、実効性ある避難計画の策定が不可能であることを認め、東海第二原発の再稼働を認めないことを速やかに表明すべきである。
(3) 福島第一原発の汚染水の海洋放出については、当初大井川知事は反対を表明していたが、現在は容認するような態度に変わってしまっている。その理由を明らかにしていない。

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今月の俳句

大巌の苔鮮やかに滴りけり
   滴りのひかり一筋筑波石  
母の日や遺影の若き母の笑み
  雑草も廃車の山も陽炎へり
下校児の水筒重き簿暑かな
  遮断機が下りて青田の風曲がる
落日が揺らぎ満目大青田


高 島 つよし

本名 高島剛 常総市在住、句歴七十年 元茨城県職員 小貝保育園長、当研究所顧問


寄 稿

ジェンダー平等・多様性を認め合う社会は「日本国憲法」のもとでこそ実現できる

安本真理子(茨城県厚生連労働組合)

 5月21日(金)新婦人水戸支部主催で「ジェンダー平等学習会:今知らなきゃいけないLGBT~誰もが自分らしく生きられる社会をめざして~」講師に水戸市議会議員(立憲民主党)、現役の介護福祉士、クラブDJ、NPO法人『REINBOW茨城』初代会長と幅広く活躍されている滑川友理さんを迎え開催されました。奇しくもこの日、ニュースでは自民党が5月20日に行ったLGBT新法をめぐる会合の中で、出席者から「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」などの発言があったと報じられ、ネットではいち早く「自民党LGBT差別発言の撤回謝罪を求める署名」が拡がっていました。(5/31、自民党本部へ94,212筆の署名提出。)LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案が議員立法として提出される見通しでしたが、自民党内での保守派の反発が根強く、自民党は今国会での提出は見送る方針を示しています(6/1現在)。

                

コロナ禍にあっても強行に東京オリンピック開催めざす日本~明らかにオリンピック憲章違反の現状

 オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」の第6項で、「性的指向」などの理由による「いかなる種類の差別も受けることなく」と、こうした差別を明確に禁止しています。東京オリンピック開催を前に超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」が5月14日に合意したLGBT理解増進法案の目的には「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」と書かれており、成立すれば日本で初めて性的指向・性自認について定めた理念法になるはずでしたが、前出の自民党議員の発言によって日本は差別を助長するような発言をしても許される社会であることを再び世界に発信してしまったのではないでしょうか。
 このような発言が何度も繰り返されるのは、安倍政権下で戦争する国づくりを強行に進めてきたことと決して無関係ではありません。以前参加した池内さおり氏(元衆議院議員、2015年衆院予算委員会での初質問がLGBT問題について)を講師に開催したジェンダー平等学習会では、日本社会におけるLGBTに対する偏見や根強い男尊女卑の意識は、財界や政府の「富国強兵」の狙いが根底にあることを学びました。
 1941年(昭和16年)1月22日近衛文麿内閣が「人口政策確定要綱」の閣議決定を行っていますが、これは軍国主義の象徴的な人口政策であったと言えます。当時の朝日新聞が「従来の西欧文明にむしばまれた個人主義、自由主義の都会的性格がいけないのだ」、「自己本位の生活を中心にし、子宝の多いことを避ける都会人の多いことは全く遺憾至極である」、「結婚年齢を10年間で3年早め、引き下げる。男子25歳、女子21歳に引き下げる」、「平均5児以上をもうける」、「(昭和35年には)1億人人口を確保する」と続く記事を掲載しているのをみても、戦時中「正義」の名のもとに人権無視の発言や行為が正当化され、次々と戦場へ兵士を送るために「産めよ、増やせよ国のため」の国策が推し進めてきた様子がうかがえます。
 当時と同じ考え方に固執する議員が今なお政権与党に存在していることが、今回の問題発言にもつながっているのではないでしょうか。
 このままでは、世界80ヶ国以上で制定されているLGBTに関する差別を禁止する法律の整備はますます遠のいてしまい、コロナ禍で様々な差別や偏見が拡がる中、一人ひとりの人権と尊厳が守られる社会を早急に築くことが求められていることにも逆行します。
 あるニュース番組でこの問題を取り上げ、ニュージーランドの議会で2013年、同性婚を認める法案を審議した際に、賛成の議員の「私たちがやろうとしているのは、『愛し合う2人の結婚を認めよう』、ただそれだけです。自分と違う人を好きになれないのは分かります。あすも世界はいつものように回り続けます。だから大騒ぎするのはやめましょう。この法案は、関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人には、ただ今まで通りの人生が続くだけです」というスピーチを紹介していました。
 多様性を認め合う社会は、より多くの人が幸せな人生を送れる社会のはずです。そして、そんな社会を保障しているのが日本国憲法ではないでしょうか。最後に、最初に触れた学習会の内容を紹介します。

LGBTの割合は左利きの人、AB型の人の割合とほぼ同じ

 11人に1人といわれるほど身近な存在であるにもかからず、差別を恐れカミングアウトできないでいる人は8割にものぼります。知らずに知らずのうちに相手を傷つけてしまうことが無いよう、(時には命さえも奪うことに)何がハラスメントに当たるのか、より多くの場面で学ぶことが大切です。

「LGBT」より全ての人にかかわりのある言葉「SOGI」がより望ましい

 LGBTとはLesbian(レズビアン・女性同性愛者)、Gay(ゲイ・男性同性愛者)Bisexual(バイセクシュアル・両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー・出生時に診断された性と自認する性の不一致)の頭文字をとり、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の一部の人々を総称として使われていますが、実際にはこのカテゴリーに分けられないほど多様であることから、LGBTではなく、すべての人が持っている、それぞれの性的指向あるいは性別に対するアイデンティティを意味する「SOGI」ということばが望ましいそうです。(SO:セクシュアルオリエンテーション(性的指向)のこと、好きになる相手の性を指す。GI:ジェンダーアイデンティティで、自分自身を男性と認識するのか女性と認識するのか、あるいはどちらとはっきり決められない、どちらでもないなども含む、いわゆる「心の性」と呼ばれるもの)。

知らずに傷つけないために、SOGIハラスメント(SOGIハラ)を知ろう

 SOGIハラスメントとは、好きになる人の性別や自分がどの性別かという認識に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること。また、望まない性別での学校生活・職場での強制異動、採用拒否や解雇など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ること等、悲惨なハラスメント・出来事全般を表す言葉です。
 例えば、相手を異性愛者と決めつけて「彼氏いるの?」「彼女いるの?」など何気なく聞いたことが相手を傷つけていたり、「男のくせに」「男か女かはっきりしろ」などの発言や宴会時に女装で笑いを取ることもSOGIハラにあたります。
 経済産業省のトランス女性職員の女子トイレ使用問題で、高裁が一審判決を覆し違法性を認めなかったことは差別を容認するものであり、差別をなくすための努力さえも放棄するものではないでしょうか。

今日からできること~他者に対して~

・セクシャリティを理由に初めから否定したり、特別扱いをしない。
・カミングアウトのサインをいつでもキャッチでいるよう、アンテナを高く持つこと。
・いじめや差別する側に回らないためにSOGIハラスメントを意識した言動を心がける。
・異性愛が中心であるという概念を取り払う等々。

 偏見や差別の根本的な原因は、正しい知識を持っていないことにあります。知らないがゆえに相手を傷つけてしまわないよう、自治体主催や学校での講演会なども増えてきました。ぜひみなさんも参加してみてください。今回は触れていませんが、LGBTへの学校、企業での対応や同性婚の問題等々、(同姓パートナーシップ制度は全国104の自治体で導入され(2021.4.26時点)、都道府県としては茨城県が全国で最初に(2019.7)導入)私自身もまだまだ知らないことが多く、原稿を書く立場ではありませんが、一人ひとりの人権が尊重される社会をめざす運動につながれば思い寄稿させていただきました。

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イラスト1


今月の 川柳

逆風に五輪の旗がちぎれそう 
   アスリート夢と希望をのせて駆け
死の土を投げて辺野古の海けがし 
   軍令のように他人の土地監視 
石炭を黒いダイヤと見ま違い 
   トランプがトランプしようと怪気炎 
水入りの議論もできずカラの梅雨 
   チャンネルがなくて日朝ラチ開かず 
化け物がふつうの暮らしぶちこわし
   あじさいの一輪さみし夏の風 
 

 


泉  明 羅

(泉明羅・本名 福田正雄 水戸市在住、句歴 四十二年、所属 元吉田川柳の会)

第14回茨城自治体セミナー中止について

2021年6月3日

第14回茨城自治体セミナー
運営委員長 廣江 良之

 平素より地方自治の発展ため,お力添えをいただき,心より感謝申し上げます。
 さて,6月27日(日)午後1時から、結城市民文化センターにおいて予定しておりました,第14回自治体セミナーを『中止』いたします。
 新型コロナウイルスの感染拡大が依然として治まらない中で,参加いただく皆様の健康を第一に考え,止む無く中止の決断をいたしました。
 なお,本セミナーにつきましては,事態が収束次第,再度,開催目指して協議を進めてまいますので,併せてご連絡いたします。

第4回理事会および総会のご案内

第4回理事会 
日時 : 7月7日(水)午後6時30分 場所 : 水戸市「ミオス」
1 組織拡大期間の取組みについて
2 第14回自治体セミナーについて
3 第63回自治体学校について

第57回総会
日時 : 8月1日(日)午後1時30分 場所 : 茨城自治労連会館
記念講話 :「東海第2原発差し止め裁判の判決について」
講師:弁護士:丸山幸司氏 (水戸翔合同法律事務所)

リポート

2020 年度

「公契約に関するアンケート」の結果について

茨城県労働組合総連合

はじめに

 茨城県労働組合総連合(茨城労連)では、毎年県内44 市町村のご協力のもと、各自治体で働く非正規職員の賃金・労働条件、各自治体が発注する公共事業や委託事業のもとで働く労働者の適正な労働条件の確保のために行っている各自治体の取り組み、労働行政の実態等を把握し、それぞれの改善を求める運動の一環として「公契約に関するアンケート」を毎年12 月に実施しています。
 これまで市町村で働いてきた臨時職員、嘱託職員の雇用のルールが見直され、2020 年4月から全ての市町村で会計年度任用職員制度が始まりました。会計年度任用職員制度は「同一労働同一賃金」の流れの中で、非正規職員の労働条件の改善を一つの目的として作られています。
 今回の「公契約に関するアンケート」では、会計年度任用職員の労働条件についての調査をしていますが、市町村によってバラツキが見られました。
 これまで茨城県が行った県政世論調査での「県政への要望」では、第1 位が「地域医療・福祉の充実(医療・福祉人材確保,医療提供体制・地域保健の充実、がん対策等)」、第2 位が「高齢者の保健・福祉・医療・介護サービスの充実」、第3 位が「結婚・出産・子育て支援(幼児教育・保育サービスの充実、子育て環境の整備・虐待防止等)」でした。
 昨年からのコロナ禍の中で、医療体制の充実、高齢者福祉の充実、子育て支援を求める県民からの要望はいっそう切実なものになっており、それらを公務・公共サービスとして提供する市町村の役割はますます重要になってきています。
 公務・公共サービスの充実の観点からも、会計年度任用職員の正規職員への転換、当面時給1,000 円以上への引き上げ、労働条件の改善が強く求められています。

1 会計年度任用職員数と雇用実態

(1)県内44 市町村の職員数(病院・消防を除く)は37,124 人(前年35,815 人)、うち正規職員20,244人(前年20,330)、会計年度任用職員15,635人(前年非正規職員14,383人)で、非正規率は前年より1.9 %増の42.1 %でした。前年に比べると正規職員は86人減少し(前年85 人増)、非正規職員は1,252 人(前年11 人)増えています。
(2)2006 年のアンケート調査開始時の正規職員数は24,119 人で、今回の調査ではこの12年間で3,875 人(前年3,789 人)減少しています。非正規職員である会計年度任用職員が40%を超えている自治体は20自治体で昨年より2自治体増加しています。50%を超えているのは2自治体(牛久市59.5 %、守谷市50.2 %)です。
(3)2006 年のアンケート調査開始時に比べて、正規職員の削減数が最も大きい自治体は取手市の413 人がトップで、筑西市274 人、常陸太田市203 人と200 人を超えています。
 正規職員の前年比は2017 年+ 219、2018 年+ 122、2019 年+ 85 と改善されてきていました。しかし、2020 年4 月から会計年度任用職員制度が導入される中で、非正規職員が1,252 人増加し、正規職員が前年比- 86 人と減少してしまっています。
 今回の調査でも、会計年度任用職員の1.3%に当たる210 人のみがフルタイム雇用で、98.7 %の15,425 人がパートタイム雇用です。原子力災害や台風による自然災害等を考えると全職員の平均40 %を超える会計年度任用職員がパートタイム雇用であるのは問題があると言わざるを得ません。公務・公共サービスを充実させるためにも、全ての市町村で会計年度任用職員のフルタイム化をすすめ、正規職員の削減にストップをかけて、会計年度任用職員の正規化をすすめるべきです。
(4)2006 年の非正規職員の「低い時給額」の平均は744 円でした。今回の調査での会計年度任用職員の時給平均は913 円(前年非正規職員平均868 円)で昨年に比べて45 円引き上がっています。調査開始の2006 年に比べると14 年間で169 円引き上げられたことになります。
 平均額913 円は、2020 年10 月に851 円に引き上げられた茨城県の最低賃金を62 円上回っています。つくば市の1093 円、牛久市の1000 円のように時給が1000 円を超える市町村も出てきていますが、大子町・小美玉市・稲敷市などは昨年の非正規職員の時給より減額になっている市町村もあります。また、時給額が800 円台の自治体も22 あり、最低賃金ぎりぎりの時給しか払われていないことが明らかになっています。
 県は臨時・嘱託非正規職員の時給を2020 年4 月から1134 円に改善していますが、県や市町村が最低賃金に合わせるのではなく、率先して非正規職員の賃金を上げることで最低賃金の引き上げの流れを作り出していくことが求められています。また、公務・民間を問わず人手不足が深刻になっていますが、人手不足の解決には賃金引き上げ等の労働条件の改善が欠かせません。
(5)昨年の調査では、非正規職員に一時金(ボーナス)を支給している自治体は大子町、大洗町、河内町、五霞町の4 町でそれ以外は不支給になっていました。また、退職金はすべての自治体が不支給でした。
 2020 年4 月から導入された会計年度任用職員は、全ての自治体で一時金(ボーナス)が6 月と12 月に年2 回支給され、つくば市ではフルタイムの会計年度任用職員に退職金が支給されます。会計年度任用職員制度になっても、つくば市以外の自治体では退職金が支給されていません。
 2020 年度の会計年度任用職員の一時金は、30 自治体で年間2.6 月支給になっていて、2020 年度は人事院や茨城県人事委員会から正規職員の期末手当0.05 月カットが勧告されたことにより、多くの自治体の会計年度任用職員は正規職員に準拠し、期末手当2.55月支給に引き下げられています。また、会計年度職員制度が運用開始の年ということで、14 自治体は年間2.6 月よりも低い月数での支給になっていて、月数にバラツキがあります。こうした現状は各自治体の財政状況に影響されることが多いので、実態を踏まえた国や県の支援が必要になっています。
(6)会計年度任用職員保育士の時間額は、鹿嶋市の1,396 円を最高に1,000 円以上の自治体が37 自治体(昨年36 自治体)になっています。一般事務に比べて保育士の時給が高くなっているのは、保育師の人手不足解消が深刻な課題になっているためです。しかし、時給が1000 円以上になっても、多くの保育の職場では人手不足は解消されていません。
 こうした点からも、最低賃金を全国一律1500 円にしていく必要があります。
(7)正規職員に占める女性は、正規職員20,244 人のうち女性は8344 人(前年8,296 人)で41.2 %を占めています。再任用者は1,245 人(前年1,102 人)でした。再任用者1.245 人のうち女性の再任用者は343 人(前年294 人)で、平均は27.6 %ですが、女性の再任用者の数は市町村によってかなりバラツキがあります。
(8)一昨年から非正規職員に占める女性の数を調査しています。今年の全県の女性の比率は80.9%で、会計年度任用職員の多くが女性であることが明らかになりました。4 自治体は女性の比率が90 %を超えています。女性活躍といいながら、市町村役場において低賃金の会計年度任用職員を女性が占めるということは、ジェンダー平等の観点からも改善すべき問題です。

2 進まぬ公契約条例の制定

(1)公務・公共サービスの民間委託化・アウトソーシングが進んでいます。今回の調査では、7 自治体(前年7 自治体)が「外部委託予定」と回答しています。自治体の行財政の厳しさを理由に、公務・公共事業の効率化やコストダウンの高まりと相まって、仕事の確保を最優先した外部委託が増加していると考えられます。しかし、その影響が元請け・下請け企業の経営悪化や、そこで働く労働者の賃金・労働条件の低下、ひいては雇用まで悪影響を及ぼしています。
 一方で、全国的には公務・公共サービスの「質」の確保と公契約のもとで働く労働者の賃金・労働条件の改善、地域循環型社会の構築を図る観点から、全国的には「公契約条例」「要綱」を整備する自治体が増えてきています。
(2)残念ながら県内自治体では、「検討する」の回答が寄せられているものの、条例制定には至っていません2019 年度の県民要求茨城共同運動連絡会の要求に対し、県の担当課からは「労働基準法など関係法令を遵守した労使間の自主的な取り決めに委ねることが適当」「国の立法政策によって対応すべきもの」等の回答が寄せられました。各市町村における公契約条例の制定が進まない背景には、県のこうした消極的な姿勢が反映されています。

3 拡充が進まない市町村労働行政

(1)労働行政の専任の職員がいるのは日立市、常陸大宮市、ひたちなか市、土浦市、八千代町、境町の4 市2 町だけで、その他は兼務です。兼務もいないのが大子町、東海村、行方市、美浦村です。県内44 市町村の労働行政の担当職員総数は、昨年の109 人から14人増えて123 人です。
(2)労働費予算がゼロの自治体は、大子町、東海村、笠間市、城里町、美浦村、河内町の6 市町村です。県内44 市町村の労働費予算額の平均は16,012 円で、昨年の平均13,707円よりも2,305 円増加しています。
 約80 %以上が給与所得者でありながら、そのために使われる労働費予算がゼロであったり、ごくわずかでしかないのは問題です。安定した税収を確保するためにも、労働行政を充実し、若者やすべての労働者の働く場(雇用)の確保や定住の促進を行政が推進していく必要があります。

4 調査結果を運動に生かして

(1)民間職場に限らず、公務の職場も人手不足が深刻化しています。これまでは、国からの「行革」の押しつけのもとで、正規職員の不補充、非正規職員の配置増が強行されてきました。しかし、人手不足の深刻化のもとで、賃金や労働条件の改善をしなければ、公務・公共サービスを保障する雇用の継続・確保はできません。また、非正規労働者の増加の中で、ワーキングプアが1,100 万人を超えてしまっています。最低賃金ぎりぎりで働くワーキングプアの増加は地域経済の発展を阻害しています。コロナ禍が、労働者の困窮に拍車をかけています。
 2020 年4 月から会計年度任用職員制度が全ての自治体で導入されましたが、茨城労連は、茨城自治労連の運動に連帯して、会計年度任用職員の正規化、時給(賃金)の引き上げ、労働条件の向上に取り組んでいきます。
(2)公契約のもとで働く労働者は1,000 万人とも言われています。その多くが低賃金のもとで働いています。公契約条例は、条例が規定する賃金水準や社会保障費用をきちんと確保させることによって、ダンピングや低価格入札を防止します。公契約条例は下請け工賃を安定させ、質の高い公共工事(公務・公共サービス)を確保することにつながります。茨城労連は、引き続き茨城県をはじめとした自治体に公契約条例の制定を働きかけていきます。
(3)茨城県の最低賃金は、昨年10 月から2 円引き上げられて851 円になりましたが、1日8 時間、月22 日間働いても月額149,776 円です。最低賃金は全国平均が902 円で、最高が東京都の1,013 円です。茨城県の県南地区では、高校生や若者が最賃の高い千葉県や東京都に流失しています。私たちは、税や社会保障の減免など中小企業支援の充実を求めながら、8 時間働けば人間らしい生活ができる最低賃金の引き上げと全国一律最低賃金制度の確立を求め、引き続き取り組みを強化していきます。
(4)「働き方改革」関連法が、2019 年4 月から運用されています。そもそも、労働時間の原則は「1 日8 時間、週40 時間」であり、36 協定を結ぶことで時間外労働が認められます。定時出勤・定時退勤を原則としながら、時間外労働の上限規制の原則である「月45 時間、年360 時間」を守らせるとともに、仕事の終了から翌日の仕事の開始まで11時間以上空けるべきだとする「勤務間インターバル規制」を各職場でも具体化すべきです

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第63回自治体学校全体会と分科会について

 今年の自治体学校は、コロナ禍の感染拡大によりすべてオンライインに切り替えます。
 「住民と自治」6月号には修正の印刷が間に合わず原案のままになっていますのでご注意ください。
  
「下記のご案内のリーフレット」の内容で開催いたしますのでご確認ください。

 なお、昨年と同じ形になりなすが、全体会のうち内山節先生の記念講演と岡田知弘理事長の特別講演2本をDVD化してそれを分科会参加者に付録として配布いたします。
 また、分科会は次の日程によりZoom方式で開催しますのでご参加のほどよろしくお願いいたします。

分科会
Zoom開催/2021年7月17日(土)・18日(日)・24日(土)・25日(日)・31日(土)

詳細はパンフレットを参照ください。

案内のリーフレット抜粋

危機を乗り越え、いのちとくらしを支える自治体の役割
in
第63回 自治体学校   DVD +Zoom

                                                

 第63回自治体学校は、新型コロナウイルスの感染状況に鑑み、昨年と同じように全体会として予定した2つの講演をDVDに収めご参加のみなさまにお送りする形をとります。

なお、分科会は下記の日程でZoom開催いたします。
分科会:Zoom開催/2021年7月17日(土)・18日(日)・24日(土)・25日(日)・31日(土)

記念講演 内山 節(哲学者)「コロナから何を学ぶか」(DVD収録)
 私たちはこれから、コロナ下の政治と社会変容によってもたらされた、さまざまな荒廃と向き合わなければならなくなるでしょう。人々の孤立化と分断がすすみ、地域間の分断もこの社会を衰弱させています。ゆえに、コロナと向き合うだけではなく、コロナ下の社会と向き合うことが私たちの課題になったといってもよい。この課題に応えるために、かつてのファシズム下のドイツを振り返りながら危機と政治の関係を考え、同時にこれからの方向性として、地域自治や国と地方、地域の関係のとらえ直しと、これからの社会のあり方を検討します。

特別講演 岡田 知弘(自治問県理事長・京大教授)「地方自治をめぐる情勢と対抗軸」(DVD収録)
 コロナ禍2年目に入り、住民の命と暮らしを守るべき地方自治体の役割が問われています。これに対して、菅政権は第32次地方制度調査会答申に沿った形で、デジタル化や市場化を最優先した制度改革や業務改善、自治体政策を推進しつつあります。現局面における地方自治をめぐる情勢を俯瞰するとともに、住民の福祉の向上を図るための対抗軸と展望を明らかにしたいと思います。

第63回自治体学校実行委員会
事務局 〒162-8512 東京都新宿区矢来町123 矢来ビル4階 自治体問題研究所内

分科会・講座(Zoom)
●今回はコロナ禍を考え、分科会はZoom開催とします。Zoomの参加情報はお申込みされた方のみに後日ご案内します。
●開催日時は、断らない限り「午前」は午前10時~12時、「午後」は午後1時~3時の開講です。分科会。講座・交流会は先着80名受付とさせていただきます。

7月24日仕)午前年後 
●全世代型社会保障と介護保険
助言者:芝田英昭(立教大学教授)
「全世代型」の名のもとで、介護という本来最も人間らしい仕事に対し、効率性や収益性が押し付けられて来ています。

7月18日(日)午前・午後 
●地域医療と公立病院のゆくえ
助言者:太田 正(現地実行委員長・作新学院大学名誉教授)
 新型コロナのもとで住民の命が脅かされるとともに、医療体制の脆弱さが改めて浮き彫りになっています。

7月17日(土)午前 
●コロナ禍、子ども・子育て支援
助言者:増山 均(早稲田大学名誉教授)
 コロナ禍であきらかになった子どもの状況や子育て支援の課題を、子供の権利から考えます。

7月24日仕)午前・午後 
●自治体民営化ー「公共」の変質
助言者:尾林 芳匡(弁護士)
 窓口業務体育施設・公園・図書館・保育・学校プールをはじめとする自治体の民営化、学校や公共施設の続廃合は、住民にとって深刻な問題をはらんでいます。

7月17日仕)13:00~17:00 
●水道広域化と民営化
助言者:武田 かおり(AMネット)
 国は、都道府県主導で広域化を推進し、広域化計画に基礎自治体議会の議決は必要なく、広域水道に住民の声はとどきません。

7月24日(土)午前・午後 
●自治体のデジタル化、公務労働
助言者:黒田兼―(明治大学名誉教授)
 地方行政のデジタル化は自治体業務を変質させ、アウトソーシングを加速させる可能性が大きい。

7月17日(土)午前・午後
■持続可能な循環型経済
助言者:吉田 敬―(駒沢大学名誉教授)
 地域経済をどう立て直すか、その軸になるのは循環型地域経済、地域の資源を生かした地域づくりです。

7月18日(日)午後 
■ 講座 自治体財政の仕組み、
講 師:川瀬 憲子(自治体学校長・静岡大学教授)
 自治体財政の基本的なしくみを解説した上で、国と地方の財政関係、「地方創生」政策、新型コロナ対策による地方財政への影響等について解題します。

7月31日(土)午前・午後 
■地域の公共交通を考える
助言者:西村茂(金沢大学名誉教授)
 感染拡大リスクが高い「鉄道、電車、バス、飛行機」の利用は減少し、「自家用専、自転車」の復権が。

交流会(Zoom)
7月17日(土)午後15:00~1630 
 「わたしのまち、あなたのまちの生活保護を考える」
よびかけ入:横山英昭 (全国公的扶助研究会)・田川英信(全国生活と健康を守る連合会)
 自治体学校参加者なら、どなたも無料で参加いただけます。
 新型コロナ禍で困窮が広がる中、私たちの命と暮らしを守る最後の砦である生活保護制度が使いやすいものになっているでしょうか。保護基準の引き下げは違法との大阪地裁判決の意義をお伝えし各地の取り組みを交流します。

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新刊紹介

<コロナ>と並走する新シリーズ 刊行開始!              

新型コロナウイルス感染症と自治体の攻防   
- コロナと自治体 1 -

平岡和久・尾関俊紀編著
A5判・並製カバー・172 頁/定価1650 円(10% 税込)

 ゼロコロナをめざす方策を提示。医学的見地からコロナウイルスの特質、変異株のメカニズム、ワクチンの最新の知見を解説し、財政面からは政府の感染対策を批判的に検証し、自治体財政の今後の対応を示す。併せて、東京・世田谷区の社会的検査、広島県の PCR の集中検査、鳥取県の積極的疫学調査ほか、ワクチン接種・練馬区モデルおよび高知県・過疎地域におけるワクチン接種など、自治体独自の先進的な対応を紹介。

目次より

はしがき●本書の意図 尾関俊紀
第Ⅰ部 新型コロナウイルス感染症対策を問う
1 新型コロナウイルスの検査とワクチン 徳田安春感染力をみる防疫目的PCR 検査の最新知見/コロナ対策ではゴール設定が大切/ウィズコロナ政策の副作用/ワクチン開発は国家安全保障/変異コロナウイルスの脅威/変異ウイルスに効くワクチンの製造/Back to the Future 思考で考える大規模検査/世界モデル
と身近な対応から学ぶ対コロナ戦略
2 新型コロナ禍と自治体の対応 平岡和久 災害としての新型コロナ禍/政府の対策と第三次補正予算/政府の新型コロナ対策、何が問題か/地域と自治体の取り組みと公共部門の課題/補論:緊急事態宣言解除後の対策のあり方

シリーズ続刊 2 感染症に備える医療・公衆衛生 長友薫輝編著/3 コロナがあばく社会保障と生活の実態 伊藤周平編著/4 コロナと地域経済 岡田知弘編著/5 「学び」をとめない自治体の教育行政 朝岡幸彦・山本由美編著

準新刊

社会保障法 ――権利としての社会保障の再構築に向けて

伊藤周平著

A5判 定価(本体3200 円+税)

書籍の内容
暮らしのなかから社会保障を考えるために
 社会保障の削減が進む現在、生存権侵害という観点から社会保障のあり方を追究する。章ごとにひとつのテーマ、公的扶助(生活保護)、年金、社会手当、医療保障、労働保険、社会福祉を取り上げ、憲法との関係から現状の不備を検証する。社会保障法の全体像をとらえた最新、最適なテキストにとどまらず、暮らしを社会保障から見直そうする人たち必携の一冊。社会保障法辞典としても使える事項・判例索引完備。

「公共私」・「広域」の連携と自治の課題

榊原秀訓・岡田知弘・白藤博行編著

A5判 定価(本体2300 円+税)

書籍の内容
 コロナ禍への対応を理由として「行政のデジタル化」が最優先で進められている。地方自治制度の抜本的な改変をねらう「自治体戦略2040 構想」とその具体化を諮問された第32 次地制調の答申は、自治体の事務の標準化(統一化)や全国的なクラウド化などのデジタル化具体策とどう関係するのか。また、「組織の枠超えとしての公共私の連携」論や「地域の枠越えとしての広域連携」論は、デジタル化でどう具体化されようとしているのか。
 コロナ禍の下で国が進めている地方自治制度再編の動向を分析し、自律・自治の自治体論を考える。
地域と自治体 第39集

『検証 介護保険施行20年 ―介護保障は達成できたのか』

芝田 英昭(編著), 河合 克義, 服部 万里子, 井口 克郎, 日下部 雅喜, 森 周子:金 滉垣, 鈴木 森夫, 藤原 るか(著)

¥2,420(税込)・発行年月日: 2020/12/15 ページ数: 248ページ ・本のサイズ: A5

介護保険施行20 (2)

書籍の内容
介護の危機をのりこえるために
介護保険が目的とした「社会的入院の解消」「介護の社会化」「介護離職の解消」等は達成できたのか。果たして介護保険は必要とするサービスを提供しているのか、市場化・営利に走る介護現場の深刻な人材不足、保険者である市町村の混乱をどうするのかなど、介護保険が高齢者福祉に与えた影響をとらえつつ考察する。
 また、介護保険の利用当事者として「認知症の人と家族の会」の運動を跡づけ、劣悪な労働環境に置かれる在宅介護の現場を実態報告する。併せて、同様な介護保険制度をもつドイツ、韓国の現状レポートを収録。権利としての社会保障の視点から「介護保障とは何か」を総合的にとらえる。

コロナ禍のなか、自治体はどう予算を編成するのか

新型コロナ対策と自治体財政

平岡和久・森 裕之著
A5判 144頁 定価(本体1500 円+税)

Ⅰ部 新型コロナ対策と自治体財政の動向・課題
 1 新型コロナ対策と自治体財政
   新型コロナ禍の地域経済/ 自然災害としてのコロナ禍と政策のあり方/ 新型コロナ第一波と対策の問題点、教訓/ 自治体財政の仕組みと見方/ 政府のコロナ対策と補正予算/ 地域経済対策の展開と課題/ 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金/ 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金/ 自治体の独自対策と財源確保策/ 政府の対策と財政政策の課題/ 第二波、第三波における自治体の対策と財政運営の課題
 2 都道府県、政令市、中核市の財政担当課へのアンケート調査から見るコロナ対策と自治体財政の課題 アンケート調査の概要/ 各自治体の財政状況と補正予算
 3 自治体財政運営の課題
  今後10 年以上にわたる地方財政の混乱/ 短期的な財政運営/ 中長期的な財政運営/ 国による行財政措置
Ⅱ部 資料 アンケート回答内容
 資料1 コロナ対策と財政に関する都道府県アンケートの回答の整理/ 資料2 コロナ対策と財政に関する政令市アンケートの回答の整理/ 資料3 コロナ対策と財政に関する中核市アンケートの回答の整理/ 資料4 自治体のコロナ対策と補正予算に関する事例

地域の病院は命の砦
― 地域医療をつくる政策と行動 ―

横山壽一・長友薫輝編著

A5判 ・並製カバー・160 頁 定価(本体1300 円+税)

地域の病院がなくなる?!
 病院は、地域で暮らし続けるために欠くことができません。ところが、国は、町や村に1 つしかない病院をふくめて、全国424 の公立・公的病院を名指しし、統合再編を含めた病床削減計画の提出を自治体に求めています。そこには、「地域医療構想」の早期実現という政策があります。
 本書では、地域医療を取り巻く情勢を整理した上で、「地域医療構想」とはなにか、「地域医療構想」が病院再編とどう連動しているか、地域医療を守り発展させるための政策や課題をどう考えていくかなどについて、各地の実践にそいながら紹介します。

主な内容
地域医療を守る 住江憲勇/眞木高之/尾関俊紀
第Ⅰ部 地域医療をとりまく情勢
社会保障改革と地域医療 横山壽一
第Ⅱ部 地域医療をつくる政策と行動
1 地域医療構想と地域づくり 長友薫輝
2 424 病院リストの根拠「診療実績データの分析」のねらいと問題点 塩見 正
第Ⅲ部 地域医療の現場
1 難病医療の拠点・国立徳島病院を守る 井上 純
2 広大・多雪・寒冷な北海道の地域医療を守れ 沢野 天
3 三重県の地域医療構想と公立・公的病院の再編・統合 新家忠文
4 愛知県の実態から考える大都市圏域における地域医療構想の問題点 長尾 実
5 京都の地域医療構想にかかわる諸課題と地域医療実態調査の取り組み 塩見 正

  資料 厚生労働省が再編統合の検討を求めた公立・公的病院424 施設

「競争の時代」の国・地方財政関係論
競争の時代に一般財源は自治体の自由になるのか!

中島正博著

A5判・上製カバー・228 頁/定価(本体2500 円+税)

 1980 年代後半からの30 年間の国と地方の財政関係を地方財政計画に基づいて分析する。この30 年間を「地方分権さきがけ
「財政構造改革期」「競争の時代」に分け、地方財政計画が地方の財源保障機能から競争を前提にしたシステムへと変容する様子を追う。そこでは分権と集権のせめぎ合いを観察し、「一般財源」が本当に自治体の自由になっているかを検証する。併せて、地域振興政策として島根県海士町の定住政策、宮崎県西米良村の人口減少対策を紹介する。

序 章 本書の目的と課題 
第1 章 地方財政計画と地方交付税 
第2 章 地方財政の構造変化と計画・決算のかい離 
第3 章 定住政策と地方交付税
第4 章 地方創生と地方交付税
第5 章 地方財政における「自由な財源」とは何か
終 章 「競争の時代」の国・地方財政関係


疾病に苦しむ人が、だれでも、どこでも、いつでも無償で医療が受けられる社会を求めて!
『医療保険「一部負担」の根拠を追うー 厚生労働白書では何が語られたのか』 

芝田英昭著
A5判・並製カバー・180頁 定価(本体1800円+税)

 
 1962 年以降の皆保険体制の下、日本の医療保険は大きく発展してきた。しかし、国庫負担、患者の一部負担は、「厚生労働白書」から読み取れるように、時々の経済情勢、財政的制約から導き出されたものであり、決して人権思想が反映された結果とは言えなかった。今、国民から求められているのは、基本的人権を基軸にした社会保障の構築であり、その基礎にあるのが、人間の尊厳であり人権思想なのである。
 疾病に苦しむ人はたくさんいる。そのだれもが、いつでも、どこでも、無償で医療が受けられる社会の実現に向けて、「権利としての社会保障」の観点から論究する。

プロローグ●健康は自己責任か
第1章●医療保険「一部負担」の意味とは
①医療保険における一部負担の制度的根拠 
②社会保障審議会等の歴史的文書に見る医療保険における一部負担の考え方
第2章●『厚生労働白書』(『厚生白書』)に見る医療保険「一部負担」記述の変遷
1950年代厚生白書/1960年代厚生白書/1970年代厚生白書/1980年代厚生白/1990年代厚生白書
2000年代厚生労働白書/2010年代厚生労働白書
第3章●医療保険一部負担に関する先行研究
①厚生労働白書は医療保険「一部負担」の根拠を示せたか ②モラルハザード、濫用防止は心理的圧力 ③医療サービスは「私的財」なのか
第4章●一部負担の受診抑制と世界のトレンド
①一部負担と受診抑制 ②一部負担増による受診抑制の研究事例 ③一部負担無料化の意義
第5章●医療保険の保険料・一部負担の未来展望
①社会保険に一部負担は必要か ②国保保険料の応益割と保険料上限の廃止 ③健康保険における標準報酬月額の上限を撤廃すべき ④健康保険から排除される被用者と無保険問題
第6章●人権としての社会保障と能力の共同性
①社会保障を考える基本的視点としての尊厳と人権 ②人間の尊厳の要素としての人格 ③日本国憲法に見る社会保障と人権 ④能力の共同生から社会保険料応能負担の根拠を考える

問い直そう税金―消費税増税ではない別の選択肢がある! 
鶴田廣巳・藤永のぶよ編著『税金は何のためにあるの』
              A5判 定価(本体1000 円+税)

 税の目的、仕組みと問題点、改革の方向について入門的に解説し、わが国の税制全体を問い直すことで、消費税増税ではない別の選択肢があることを明らかにします。

本書を推薦します 白藤博行氏(専修大学法学部教授)

 法律の世界では、租税法律主義といって、納税者の権利を守る大原則があります。でも、私たちは、日ごろ税の中身のことをどこまで考えているでしょうか。消費税が上がるといっても、「またか」で終わっていませんか。私たちは、公共サービスを受給する権利がありますが、税を公平に負担する義務もあります。ですから税
の集め方や使い道を、主権者としてしっかりと考えなければなりません。

 私たちは居酒屋でビール1 本の追加を迷っていますが、何百兆円もの「内部留保」がある大企業は、労働者に相応の賃金を払い、まっとうな法人税を納めているのでしょうか。主権者の税への無関心は、悪政を助長します。「税のバイブル」である本書を読んで、賢い主権者・納税者になりましょう。

『公契約条例がひらく地域のしごと・くらし』
働く人の労働条件・事業者の経営環境・地域産業振興を一体で改善するみち

永山利和・中村重美著

A5判/定価(本体2000 円+税)

 公共工事や公共サービスの低価格受注が広がり、疎漏工事や官製ワーキング・プアが問題となってきた。
この課題を解決する公契約条例の意味と実際(世田谷区・野田市など)を紹介する。

世田谷区長・ジャーナリスト 保坂展人とさん推薦
 8年がかりの粘り強い運動により区議会全会一致で成立した世田谷区公契約条例は2014 年に成立後も改善と進化を遂げていく。2019年には労働報酬下限額を1,070 円とする。全国に拡がる公契約条例の基礎から今後の課題等必携の一冊。

『新版 自治体の財政』 
まちの財政のしくみを分かりやすく解説! 自治体財政入門書

初村尤而著(都市行政コンサルタント)
   A5判 定価(本体2000円+税)

 暮らしのなかのお金の流れに注目して、予算書・決算書を読みます。公共サービスのあらましをたどって、歳入・歳出のしくみを解説します。そして、地方交付税、基準財政需要額や財政健全化指標、企業会計など自治体財政に欠かせない用語も分かりやすく説明し、数字に隠れた市民生活や地域の現状へといざないます。
主な内容
第1章 私たちの暮らしと財政
第2章 予算書、決算書を読んでみよう
第3章 歳出(経費)のしくみ
第4章 歳入(財源)のしくみ
第5章 さまざまな自治体財政
第6章 地方公営企業のしくみ
第7章 わがまちの財政健全度を量る指標
第8章 自治体財政のあり方を考える
終 章 財政数値との向き合い方

「自治体戦略2040構想」と地方自治

白藤博行・岡田知弘・平岡和久著 

A5判/定価(本体1000 円+税)

 アベノミクスの失敗で疲弊が続く地方。住民のいのちと暮らしを守る市町村の役割が再認識されている。
 ところが、政府は、連携中枢都市圏(や定住自立圏)のような「圏域」を地方行政の単位として法制化し、住民サービスも自治体間で「標準化」「共通化」「広域化」しAI やロボットそして民間企業に任せ、公務員は半減させるなど、地方自治を骨抜きにすることを狙っている。これらは、「自治体戦略2040 構想」という研究会報告として公表され、法制化への議論とともに、地方財政政策などを通じて具体化も始まった。
 本書では、「自治体戦略2040 構想」とは何か、地方自治の姿をどう変えると予想されるのか、憲法と地方自治法が示す自治の視点から見たときに何が問題となるのかについて、解説する。

「豪雨災害と自治体 防災・減災を考える」

A5判・並製・160 頁/定価(本体1600 円+税)

 豪雨災害はどのように発生し、どう対応すべきか?
 毎年のように豪雨災害が猛威を振るっている。その原因・メカニズムを気象学、被害の拡大を地質学から追究し(寺尾徹、田結庄良昭)、2018 年の豪雨が各地にどのような災害をもたらしたか、現地からの詳細な報告を収める(磯部作、越智秀二、村田武、山藤篤、松岡淳、小淵港、田結庄良昭、池田豊)。そして、このような災害に対して自治体はどう対応すればよいのか、防災と減災の視点から問う(室崎益輝、塩崎賢明、有田洋明)。

「水道の民営化・広域化を考える(改訂版)

尾林芳匡・渡辺卓也編著

A5判・並製カバー184 頁/定価(本体1700 円+税)

 改正水道法成立!「いのちの水」をどうする。2018 年12 月6 日、改正水道法が成立した。多くの庶民の疑問、マスメディアでの反論をものともせず、既定方針のように審議を通した。水道が生き残るには、民営化、広域化しかないのか。すでに、各地で起こっている「水」めぐる民営化と広域化の動きを検証して、「いのちの水」をどう守っていくか多角的に考える。

『人口減少時代の自治体政策 市民共同自治体への展望』

中山 徹(著)

発行年月日:2018/11/15  1,200円+税  A5 112ページ

 人口減少に歯止めがかからず、東京一極集中はさらに進む。自治体そのものを見直そうとする「2040構想」も始動した。こうしたなか、保守と革新の共同による「市民共同自治体」の動きも出始めている。地域が大きく再編されようとしている今、市民と地域を守るためにはどうしたらよいのか。「市民共同自治体」を提唱して、市民のニーズを政策に活かす方法を考える。

目次
はじめに
 1章 新自由主義による国土・地域・コミュニティの再編
  なぜ国土・地域・コミュニティの再編なのか
  再編の具体的内容とそれを進める政策
  自治体再編の方向性
  再編のコンセプトと進め方
 2章 自治体の動向と市民共同自治体への展望
  開発型自治体と削減型自治体
  市民共同自治体の誕生
  市民共同自治体の展望
 3章 市民共同自治体の政策
  政策の基本的な枠組み
  すべての主要施策に格差是正を貫く
  地域のまとまりをどのようにして創り出すのか
  行政責任を明らかにする
  なぜ市民参加が重要なのか

原発再稼働と自治体
―民意が動かす「3つの検証」― 新潟県はその出口を探す先頭に立っている
立石雅昭・にいがた自治体研究所編

A5判 定価(本体1200 円+税)

 福島原発事故から7 年半。控えられていた原発の再稼働が復活してきているが、それでも再稼働はスムーズに進んでいるとは言いがたい。それは、国民の過半数が原発再稼働に懐疑的であり、反原発・脱原発の世論が強く根を張っているためである。世界最大の柏崎刈羽原発を有する新潟県は「3 つの検証」―事故原因の検証、健康と生活に及ぼす影響の検証、安全な避難方法の検証―を掲げて福島原発事故の検証を行っている。その活動の意味を問う。

序 原発立地自治体・地元自治体に問われていること 池内 了
1 新潟県検証委員会の活動の意味 大矢健吉
2 技術委員会の検証―明らかにしてきたことと引き続く課題 立石雅昭
3 原発事故による避難(新潟県内避難者)生活の現状と課題 松井克浩
4 原子力災害がもたらした避難(福島県相双地区)生活の実態  丹波史紀
5 避難計画をめぐって 佐々木寛
6 柏崎刈羽原発をめぐる原子力安全協定とその法的性質 石崎誠也
7 原発立地都市・柏崎市の地域と経済 保母武彦

どこを目指す !! 自治体戦略2040構想
― 研究会報告の概要と問題点、課題 ―

A5版・24頁  定価250円(地域研卸単価200円)

地域研の皆様へ
 地域研の皆様には日頃から大変お世話になっています。
 さて、自治体戦略2040構想研究会の最終報告が7月に公表されました。構想研は「2040年頃をターゲットに人口構造の変化に対応した自治体行政のあり方を検討する」として2017年10月に設置された総務省の有識者研究会です。
 その趣旨は「高齢化がピークを迎え、若い勤労者が激減する2040年頃の姿から自治体の課題を逆算する形で整理し、今の半数の職員でも対応できる仕組みを構築」するというもので、それは今日の地方自治、自治体のあり方を抜本的に見直し再編していくものです。 
 これを受けて、同月に第32次地方制度調査会が設置され、この内容が諮問されました。
 地制調に諮問したということは、その結果を踏まえて法制度改革を行うということです。
 私たちも地制調での議論を見極め、内容を検証し、対置政策を示して世論を喚起していくことが必要です。そのため研究所ではまず構想研報告の内容を知らせ、問題点、課題を明らかにしていくことが急務と考え、今回、職場や地域等での学習会向けに標記ブックレットを緊急に発行しましたので1冊送付(贈呈)します。また、皆様には割引単価を設けましたので、普及(490部)にもご協力をお願いします。
 なお、ブックレットの表題、目次、報告表題の「自治体戦略2040年構想」は誤記で、正しくは「自治体戦略2040構想」ですので正誤表を入れてあります。

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    はじめに  岡田 知弘
    自治体戦略2040構想研究会報告の概要と問題点、課題- 角田英昭 
    1.構想研報告の概要 
    2.構想研報告の問題点、課題

既刊ブックレットもお手元に!      
どこを目指す、自治体戦略2040構想(A5 ・ 24頁) 200円   
原発災害避難自治体の現況と復興、自治の課題(A5 ・ 40頁)300円   
どこを目指す、公共施設等総合管理計画(A5 ・ 40頁)300円   

「いのちの水」をどう守っていくのか!

水道の民営化・広域化を考える
尾林芳匡・渡辺卓也編著

A5判・並製カバー180 頁/定価(本体1700 円+税)

 老朽化、料金6 割上昇、人口減に維持困難……、これらは水道について語られる危機だ。国は水道法改正を視野に入れ、民営化と広域化を推し進め、この危機を乗り越えようとしている。しかし、こ
の方向は正しいのか。すでに、各地で始まっている民営化と広域化の動きを検証して、「いのちの水」をどう守っていくのか多角的に考える。
目次から
プロローグ●水をめぐるウソ・ホント 解説● 2018 年水道法改正とは
Ⅰ 水をめぐる広域化と民営化の現場
イントロダクション ●各地で具体化する広域化・民営化の動き/ 香川県●県主導の水道広域化の矛盾/ 宮城県●水道事業へのコンセッション導入の問題点/ 浜松市●下水道処理場のコンセッシ ョン化問題/ 京都府●簡易水道と上水道の統合/ 奈良県●奈良市中山間地域の上下水道のコンセッション計画/ 埼玉県●秩父郡小鹿野町民の水源・浄水場を守る運動/ 大阪市●市民が止めた水 道民営化/滋賀県●大津市のガス事業コンセッション
Ⅱ 水をめぐる広域化・民営化の論点
上水道インフラの更新における広域性と効率性/水道の民営化・広域化を考える

川瀬 光義『基地と財政 ー 沖縄に基地を押しつける「醜い」財政政策』

A5 133頁 1600円+税

本書のねらいは、このあまりにも不条理な基地新設の「同意」を得ることを目的として日本政府が講じてきた 財政政策が、いかに醜いものであるかを示すところにあります。名護市をはじめとする沖縄本島北部地域自治体への特別な財政政策を最初に提示した当時の首相は、橋本龍太郎氏でした。そのとき、これは基地新設の見返り
かという旨の問いかけに対して橋本氏は、強く否定しました。その姿勢からは、沖縄の人々に対する後ろめたさ'を少しは感じることができました。しかしその後ろめたさ'は次第に後退し、第4章で紹介した米軍再編交付金及び再編特別補助金に至っては、政治的意見の相違によつて公的資金の配分を差別することを合法化するという、醜さの極致と言ってよいなものとなつてしまいました。

 本書を通じて、こうした醜い政策でしか維持できないような日米安全保障体制とは何なのかにつぃて、読者の皆さんが考える糸口になれば、筆者としてこれにまさる喜びはありません。

『Dr.本田の社会保障切り捨て日本への処方せん』
         

本田宏著 (医師・NPO法人医療制度研究会副理事長)

A5判110頁 定価(本体1100円+税)

主な内容
 日本の医療はどなってしまうのか。日本の社会保障はどうなっているのか。外科医として36年間、医療の最前線に立ち続けてきた著書が、医療・社会保障崩壊の実態を体験とデータに基づいて究明する。そして、日本のどこが問題で何を変えれば医療や社会保障が充実するのかを、政治、社会、教育、デモクラシーのあり方まで俎上に載せて検討する。

Excelを駆使して自治体の財政を分析する!
データベースで読み解く自治体財政 地方財政状況調査DB の活用

武田公子 著 金沢大学経済学経営学系教授

B 5 判94 頁 定価(本体 1600円+税)

 総務省は市町村の財政状況を表わす「地方財政状況調査DB(データベース)」をウェブサイトで公開しています。そのサイトへのアクセスから、様々なデータファイルのダウンロードと整理ファイルを使った分析手法までを、図表を駆使して分かりやすく解説します。自治体財政の全般的な動向を捉える基本的な分析方法を初め、公営企業や国民健康保険会計、公立病院事業に対する繰出金の分析、合併特例債の終了期を迎える合併自治体の財政状況の検証、そして復旧・復興に関わる被災自治体の財政分析などを実例に即して展開します。
第1章 自治体財政の制度概要と全般的動向
 地方財政の基本的な枠組み/地方財政に関する全国的動向
第2章 地方財政状況調査データベースの利用方法
 地方財政状況調査データベースの所在と意味/地方財政状況調査DB 利用の実際――歳入内訳の分析/データの整理/性質別経費の分析/目的別経費の分析
第3章 グラフの読み取りとさらなる分析方法
 グラフの作成/全国自治体に共通した動向/普通建設事業費の内訳とその財源/民生費と扶助費の関係/ 地方債の分析/積立金の動向/人件費と物件費の動向
第4章 一般会計と他会計との関係
 財政健全化判断比率と財政状況資料集/繰出金の分析/国民健康保険会計の分析/公営企業会計への繰出の詳細を調べる――病院の例
第5章 合併自治体の財政分析
 合併自治体の分析目的とデータのダウンロード/データ整理の手順/歳入グラフの読み取り/歳出グラフの読み取りと詳細データ/地方債の分析
第6章 被災自治体の財政分析
 国による財政措置/復旧・復興事業分歳入の分析/歳出の分析/災害復旧事業と普通建設事業/復旧・復興事業                            

本田宏著『Dr.本田の社会保障切り捨て日本への処方せん』
医師・NPO法人医療制度研究会副理事長

A5判110頁 定価(本体1,100円)

 日本の医療はどなってしまうのか。日本の社会保障はどうなっているのか。外科医として36年間、医療の最前線に立ち続けてきた著者が、医療・社会保障崩壊の実態を体験とデータに基づいて糾弾します。そして、日本のどこが問題で何を変えれば医療や社会保障が充実するのかを、政治、社会、教育、デモクラシーのあり方にまで俎上に載せて追究します。

第1章 外科医引退、市民運動ヘ
私が医師になつたきつかけ/想像を絶した地方勤務医の生活/先進国最少の医師数、そして「精も根も尽き果てるような働き」/医療再生の機運は高まつたものの/外科医引退、市民運動ヘ

第2章 諦めずに明らめるために
群盲象をなでるはダメ、全体像を把握せよ/Follow the money、ショック・ドクトリンに編されるな/温故知新、歴史に学べ/グローバルスタンダードと比較する

第3章 報道の自由度とメディア・リテラシー
報道の自由度とメディア・リテラシー/情報操作の実態/なぜ正論が通らないのか?/考えさせない日本の教育

第4章 日本の社会保障が充実しない理由
不平等が前提?「世界の多様性」に見る日本の特殊性/社会保障充実を阻む? 日本人の国民性/社会保障充実のためにどうする

第5章 社会保障財源獲得は可能か
日本の社会保障と公共事業予算/止まらない大型公共事業の実態/社会保障財源獲得のために

改訂新版『地域再生と町内会・自治会』

著者 中田実・山崎丈夫・小木曽洋司

   
私たちの景観保護運動、私たちの自治のあり方
国立景観裁判・ドキュメント17年
 私は「上原公子」

上原公子・小川ひろみ・窪田之喜・田中隆 編

 国立景観裁判とはなんだったのか。市民自治による景観保護運動の始まりから企業・司法との闘い至るまでの17年間を跡づけます。付度して判断しない司法の実態に切り込み、元市長個人に賠償金を求めるという理不尽な裁定を全国的な募金運動によって完済していきます。 この市民を中心にした支援運動が大きな共感を勝ち得ていく過程は、今後の景観運動と市民自治のあり方を示しています。
≪目次より≫
 第1章 国立の景観を守り・育てた市民自治の歴史がまちの誇り   上原公子
 第2章 憲法、地方自治と国立景観裁判 ●自治の姿をみる  
 窪田之喜
 第3章 国立景観求償訴訟 ●問われたもの、裁けなかったもの
 田中 隆
 第4章 「上原景観基金1万人」運動 ●4556万2926円完全返済への道のり
 小川ひろみ
 第5章 国立景観裁判と「私」 保坂展人ほか
 年 表 国立の市民自治・明和マンション問題
 くにたち上原景観基金1万人の会

地域と自治体 第38集『TPP・FTAと公共政策の変質―』

岡田知弘・自治体問題研究所編

A5判 216ページ 本体2300円+税

 政府は、TPP11ヵ国、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、日本とEU との間での日EU・EPA など、メガFTAをめぐる交渉を、国民には情報を公表しないまま進めている。いずれも「TPP プラスα」の内実となっており、交渉の結果は、国民の暮らし、地域経済、国や地方自治体の公共サービス・公共政策を大きく変質させる危険性をもつ。
 本書では、日本の先をゆく米韓FTA の現実をはじめとする世界のFTA の実際とその政治経済を読み解き、TPP協定をはじめFTA の中に組み込まれている“投資家の自由度を最優先で保障する仕組み”が、国民主権や地方自治にいかなる問題を引き起こすのか、とりわけ国有(公有)企業や生命保険・共済・食品安全・健康・労働のあり方の変質を分析。

減りつづける人口。日本のまちのあり方とは?

人口減少と大規模開発 コンパクトとインバウンドの暴走

中山 徹

 国家戦略特区をはじめ新たな公共事業政策、リニア中央新幹線、長崎・北陸新幹線の沿線整備、MICEによる国際会議・展示会の誘致、立地適正化計画による都心開発など、大規模開発計画が乱立している。この現状を分析して、人口減少時代にふさわしいまちづくりとは何かを考察する。

わたしたちにもつとも近い法律の話し

地方自治法への招待

白藤 博行

 明日に向かう地方自治法と対話しよう!
 地方自治は、憲法が保障する民主主義への道のひとつです。そして地方自治法は、憲法が保障する基本的人権を具体化する法律。近くの人権だけでなく、遠くの人権保障へのまなざしを忘ねず、憲法で地方自治法を、地方自治法で憲法を考えましょう。

高齢期社会保障改革を読み解く

編者 社会保障政策研究会

著者 芝田英昭・潰畑芳和・荻原康一・鶴田禎人・柴崎祐美・曽我千春・密田逸郎・村田隆史・小川栄二・本田 宏

 安倍政権下の社会保障政策の本質は、予算削減や自己負担増だけではなく社会保障の市場化・産業化にある。それは、とりわけ高齢期社会保障政策において顕著にみられる。
 本書は、第2次安倍政権発足以降の中期の視点で高齢期社会保障改革を分析し、改革の基本視点を提起することに努めた。また、高齢者の生活実像を踏まえた市民による改革運動の姿を提起した。

わたしたちの生活はどうデザインされているのか

社会保障のしくみと法

伊藤周平

 社会保障判例を踏まえ、生活保護、年金、社会手当、医療保障、社会福祉、労働保険の法制度を概観し、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(日本国憲法25条1項)のあり方を問う。ひるがえって財源問題を中心に社会保障全般にわたる課題と現状の社会保障法理論の問題点を検討する。

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加茂利男著『地方自治の再発見ー不安と混迷の時代に』(2017/06/05)                 

自治体研究社  定価(本体2,200円十税)

 何が起こるかわからない時代、地域から世界をながめ、世界から自治を再発見する。
 戦争の危機、グローバル資本主義の混迷、人口減少社会 ー 激流のなかに地方自治の新しい可能性を発見する。

内 容 
序 章 「何が起こるかわからない時代」の始まり
第1章 混迷する世界と資本主義のゆくえ
第2章 地方自治の再発見
第3章 「平成の大合併」の検証
第4章 「日本型人口減少社会」と地方自治
終 章 21世紀を生きる
補 遺 講演・地方自治と私

中田 実著『新版 地域分権時代の町内会・自治会』(2017/05/20)

自治体研究社  定価2000円(本体1,852円十税)

 人口減少と高齢化のなかで町内会・自治会の役割は何か。活動内容の改善・充実とともに、分権時代に住民の声をすくい上げ、行政に反映する町内会の底力が求められている。政府から負担を強いられる地域の担い手として、まわりの組織やNPOとも協働する町内会の可能性を多角的に分析する。
内 容 
第1章 町内会とはどういう組織か
第2章 町内会をどう見るか─立ち位置によって見え方が違う町内会
第3章 町内会における自治の二側面─住民自治の諸相
第4章 地域での共同の暮らしの組織─機能の包括性の意味
第5章 町内会と自治体行政との関係
第6章 地域生活の変化と住民組織の主体性
第7章 地域課題の拡大とコミュニティづくり
第8章 町内会の下部組織と上部組織
第9章 町内会とNPOの協働
第10章 町内会・自治会脱退の自由の意味
第11章 町内会の運営の刷新
第12章 町内会の活動の刷新
第13章 行政からの自立と協働
第14章 地域内分権と住民代表性─地域自治区を考える
第15章 地縁型住民組織の可能性

                    
『習うより慣れろの市町村財政分析』(4訂版) 
「地方財政状況調査票」に基づいて大幅改定。分析表を充実させた4訂版!  

B5判 168 ページ 定価(本体2500 円+税)

財政デザイン研究所代表理事  大和田一紘
財政デザイン研究所主任研究員 石山 雄貴 著

●基礎からステップアップまで
 決算カードと決算統計、予算説明書などを使って、歳入、歳出、決算収支、財政指標を分析する方法を分かりやすく紹介する基礎編と、類似団体との比較、特別会計や補助金の分析、合併自治体の財政分析などを紹介するステップアップ編の53講で財政分析の手法がわかる。
●主な内容
 財政を学ぶ心構え・分析方法
 赤字か黒字かをみる「決算収支」: 赤字団体?黒字団体?
 自治体の収入はどれくらい?(歳入をみる): 四大財源/一般財源と特定財源/経常と臨時/地方税/地方交付税のしくみ/財政力指数 ほか
 どこにおカネを使って

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