第13号
「いばらきの地域と自治」(第13号)
- しっぽ振り上手になったと米が褒め
- CO2腹にしまってエゴの顔
- 友愛を金ではぐくむ母の愛
- 滑走路ふとんを敷いて客集め
作:泉 明 羅
(泉 明羅・本名 福田正雄、水戸市在住、句歴十年、所属 元吉田川柳の会)
リポート
大子町の子育て支援
「いばらきの地域と自治」編集委員会
こんな記事を目にしたことがありませんか。
大子町が給食費無料へ・県内初、子育て負担軽減=町内全小中校 10月から
大子町は8月21日、新たな子育て支援策として、同町内の全小中学校の給食費を10月から完全無料化することを決めた。景気悪化を踏まえての子育て世帯の経済的負担を軽減するのが目的で、補正予算案を来月開催の定例議会に提案する。可決されれば県内市町村で初めての実施となる。給食費無料化の対象は、町内8小学校843人と5中学校509人の計13校1352人。同町の給食費は小学校が3,900円、中学校が4,400円(2009.8.22 茨城新聞)。
不景気なご時世で、子育て中の世帯には“ありがたい”施策。そこで、なぜ、どうやって実現したのか、大子町の綿引久男町長にインタビュー(2009.12.14)。
「学校給食無償化」策の実施理由は、子どもの数を増やすために、若い夫婦が子育てしやすい環境を整備する。子育て支援を町政の重点目標にするのは、町の存続がかかっているから。町が支出する学校給食費は年間6千万円。議会からは、「子ども食事は親が責任を持つべき」「モラルが崩れる」との批判はあったようだが、先生の給食費集めの手間が省けた、大子町の議員が他市町村視察に行ったおり評価されるというし、他市町村から問い合わせもあり、また議員が視察に来られる、という。
全国で3自治体しかない「学校給食無償化」、可能にした要因は、税金の徴収率アップと人件費の削減で増収の見通しがついたから。徴収率は、H18年度70%弱、H20年度80%弱、(差押100軒)、H21年度95~6%(差押70軒)と改善し、固定資産税の徴収が飛躍した。さらに人件費の削減(職員の退職減・定数減・現業職の給与体系の見直し)で年1億円減。町職員規模は現在293名だが、将来的には260~250人(事務職200人、現業4~50人)。現業部門を民営化すれば200人体制も可能だそうだ。
* 大子町では平成21年4月現在で、14歳以下の若年者比率が11%。65歳以上の高齢者比率が36.5%。上の表からもわかるように、後者の増加率は急速である。綿引町長のいう「町が存続するか否か」という不安もまんざら誇張ではない。町の財政力指数で、子育て支援に思い切った予算支出をしているのは涙ぐましい。町全体が必死で模索している姿が胸を打つ。
子育て支援は、子育て福祉と、教育の両分野で進めている。子育て福祉は、「社会全体で子育て支援を」というスローガンをもとに、行政と地域社会の双方で創意工夫をこらして、満足のいく環境整備をはかりたいとのこと。
私たちのインタビュー直前、12月9日に、「子育て支援日本一の町」づくり施策の報告書が担当チームから発表された。その広範な内容に驚く。町長は、順次実施していきたいと承認の意向を語った。
① 小中学校の給食費無料化(所要額概算:60,800千円) ※ 平成21年10月から実施済
② 子育て中の民間賃貸住宅入居者への家賃補助(所要額概算:2,800千円):例えば、子どもが1人の家庭には家賃の10%を補助、2人の家庭には15%を補助、3人以上の家庭には20%を補助することが考えられる。(所要額概算はこの場合を想定。)なお、町営住宅入居者については、すでに同様の支援を実施している。
③ 中学校入学祝金の給付(所要額概算:4,500千円):中学校に入学すると急に費用がかかるとの保護者からの意見を踏まえたもの。所要額概算は生徒一人当たり3万円として試算。
④ 子どもの医療費無料化の範囲拡大(所要額概算:21,8000千円):現在は未就学児童について医療費の無料化が実施されている。所要額概算は中学生まで拡大した場合の費用。内訳は小学生13,600千円、中学生8,200千円。
⑤ 妊婦産後健診と生後1ケ月健診の無料化(所要額概算:700千円):妊婦健診と3ケ月以降の乳児健診は無料となっているが、その間に挟まれた妊婦産後検診と生後1ケ月健診は有料のままとなっている。
⑥ インフルエンザ予防接種費用への補助(所要額概算:10.000千円):所要額概算は1~15歳の子どもへの接種を無料とした場合の費用。
【以上の①~⑥は経済的支援 】 【以下の⑦~⑩は環境整備】
⑦ 放課後児童クラブ・放課後子ども教室の拡充:小学校に上がった子どもたちの放課後の居場所を提供してほしいとの保護者の要望は強く、放課後児童クラブの利用希望についてのアンケートを行ったところ、151名が利用を希望した。放課後児童クラブは平成22年度から(仮称)大子ふれあい交流センターで実施される予定となっているが、他地区においても実施を検討していくべきである。
⑧ 児童公園の整備:町内に子どもを安心して遊ばせられる児童公園がないとの指摘がある。例えば湯の里公園に遊具を整備するなど、既存施設を生かして公園の整備に取り組んではどうだろうか。
⑨ フォレスパ大子利用料の町民割引:フォレスパ大子のプールは特に夏季の遊び場として人気があるが、料金設定が高いとの意見もあり、子育て支援の観点から、町内の子ども・親子連れに限って割引するなどの優待を実施してもいいのではないか。
⑩ 子育て関係情報の広報の充実:町がどのような子育て支援施策を実施しているのかを知らない保護者も多く、広報の充実が望まれる。町では子育て応援情報誌『げんき』を作成し配布しているが、更なる情報発信に努めることが必要である。
⑪ 小児科専門医の確保:町内には多くの医療機関があるが、小児科の専門医がおらす、通常は内科医など他の
専門医が子どもを診察している。イ呆護者の中には小児科専門医の診察を望み、常陸大宮市や水戸市、福島県の病院まで行っている方もいる。町としても、小児科専門医の町内での確保に努力すべきである。
⑫ 子育て支援センターの機能強化:現在はだいご保育園内で委託実施中であるが、平成22年度からは町社会福祉協議会に委託して(仮称)大子ふれあい交流センター内で実施する予定となっている。この機会に、母親同士のコミュニケーションの活発化など更なる機能強化を図るとともに、他の地区でも子育て支援センターの設置を検討していくべきである。
上に記されていない子育て支援施策で、医師+看護士による病児保育制度(H19年度から、県内では3箇所のみ)と、子育て世代向けの町営住宅建設(住宅デザインは公募で子育て経験主婦20人が審査、H20年度9戸、H21年度15戸、H22年度10戸建設予定で、全戸デザインが違う、70坪敷地に建屋24~27坪)+家賃減額制度という二つが優れものという印象をもった。私たちもできるところで支援していきたい。 (文責 田村)
投 稿
季語のいろいろ
高 島 剛
元県職員、小貝保園長、当研究所顧問
〇 仕舞湯(しまいゆ)に女声する虎(とら)が雨 (夏) つよし
鎌倉幕府を開いた源頼朝は、1193年富士の裾野で大がかりな巻狩りを開催した。その巻狩りの中で曽我十郎、五郎の兄弟は18年にわたる苦労の末に、父の敵、工藤祐経を討ち果たしたが、十郎はその場で命を落とし、五郎は捕らえられた。それが陰暦5月28日(新暦では6月下旬)の晩のことだった。
十郎には「虎御前」という愛人がおり、十郎の死を悲しんだ彼女の涙が雨となって降ったという伝説から生まれたのが“虎が雨”という季語である。折から梅雨の真最中で、この頃のしとしと降る雨の形容として好んで使われている。
〇 ラフカデオ・ハーンの霊屋(たまや)蚯蚓(みみず)鳴く (秋) つよし
秋の夜の淋しさを募らせるジージーと低く鳴く音を昔の人は蚯蚓(みみず)が鳴くのだと思っていた。じつは土の中で螻蛄(けら)が鳴いているのである。「亀鳴く」「田螺(たにし)鳴く」(春の季語)、「地虫鳴く」「蓑虫(みのむし)鳴く」(秋の季語)などと同じように空想的な季題として俳人たちに面白がられ今も使われている。
日本の神秘的なものに興味を持ち、「怪談」などの物語を書いた小泉八雲(英国名、ラフカディオ・ハーン=日本に帰化)の霊屋―霊魂を祀っているところーに参拝したら、まわりから蚯蚓(みみず)の鳴く淋しい音色が聞こえ、秋の深まりを感じたという句である。写生という俳句の本道をはずれ頭の中(想像)で作った異端の句である。
〇 江戸遠し絵踏(ゑぶみ)も隠れ念仏も (春) つよし
絵踏が春の季語で、江戸時代、長崎や五島などで行なわれていた旧暦1月の行事のこと。
すべての人がキリシタン信者でない証拠に、奉行所などでキリストを抱く聖マリヤの絵像を跣の足で踏ませられた。踏まなかった者はキリシタンとして処罰され多くの殉教者が出た。
九州の薩摩藩と人吉藩では一向宗(浄土真宗)が禁じられ、信者たちは洞窟の奥に阿弥陀如来像を安置し、多くの人が夜集まって念仏を唱えた。本山である京都の本願寺とはつながりをもち、命がけで志納金を納めるなどし、この信仰は三百年もつづけられた。これが「隠し念仏」である。
また、岩手県を中心に「隠し念仏」という信仰組織があった。これは藩からも、本願寺や本山の末寺とも関係を絶ち、まったくの秘密結社的民衆の組織であったといわれている。「江戸遠し」は時間的(時代)にも、平面的(距離)にも遠ひという意味で使用した。
〇 湖(うみ)よりも雲が眩しく山笑ふ (春) つよし
四季の山を擬人法で言い表した季語として次のように使われている。「山笑ふ」(春)、「山滴る」(夏)、「山粧ふ」(秋)、「山眠る」(冬)。これは中国・北宋の画家、郭煕の詩が出典となっている。
- 春山憺治(たんや)にして笑ふが如し
- 夏山蒼翠(そうすい)にして滴るが如し
- 秋山明浄(めいじょう)にして粧ふが如し
- 冬山惨淡として眠るが如し
具体的には次のような句が詠まれている。
- 耳成(みみなし)も滴る山となりにけり 川崎展宏
- 三山のことに羽黒の粧へり 角川照子
- 安房上総山が眠れば海が吠え 鈴木真砂女