第12号
「いばらきの地域と自治」(第12号)
- この家の栄枯見据ゑし冬欅
- 行きずりの人と親しむおでん酒
- 天寿とは人それぞれに実万両
作:高島つよし
(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)
子どもゆめ基金の廃止に反対・・今回の「事業仕分け」に異議有り!
古河市役所 総合相談室
北 田 隆
政府の行政刷新会議が予算削減を目的とした「事業仕分け」をおこなった。この「仕分け」で文部科学省所管の独立行政法人青少年教育振興機構「子どもゆめ基金」が「事業廃止」の判定を受けた。この事業は図書館などで読み聞かせ活動を行う団体への助成と、地域の団体が自然の中でキャンプや科学実験教室などの体験活動を行う際に、草の根運動に助成するのが主なものである。県内で「子どもゆめ基金」の助成を受ける団体数は下記のとおりである。
本県では、子ども体験学習を主宰する団体が多い。青少年の健全育成を目標に、キャンプ、農業体験、自然観察などの学習に取り組んでいる。全国では、2,000の団体が子どもたちに楽しく、有意義な企画を提供するために苦心している。地域の団体はこのゆめ基金で救われている。これを「廃止」するのは大いに疑問である。私の係わる読み聞かせグループの会員は、行事のポスター、チラシの作製、活動に使う紙しばいの選定及び練習に懸命である。図書館には紙しばいやパネルシアターを見に、子どもたちが集まる。
行政刷新会議の子どもゆめ基金の「廃止方針」は、地域の草の根的運動に冷や水を浴びせるものであり絶対に許せるものではない。今回の「事業仕分け」に異議あり。豊かな心をはぐくむ当事業の発展と継続を求めるものである。
【 平成21年度 子ども体験活動 子ども読書活動】 県内採択事業 30団体(19,040千) 3団体(858千円)
投 稿
賠償を免責する地方議会議決の無効判決
― 大阪高裁判決(2009年11月27日)の波紋 ―
茨城県自治体問題研究所顧問
田村 武夫
住民訴訟で自治体の首長側が賠償を命じられても議会が首長への請求を放棄する「免責」議決が各地で相次いでいるなか、大阪高裁(大谷正治裁判長)は11月27日、神戸市の補助金をめぐる住民訴訟の判決で、免責にした市議会の議決を[議決権の乱用で無効」とする判断を示した。
訴えていたのは、市民団体「ミナト神戸を守る会」のメンバー。神戸市が05~06年度、20の外郭団体に派遣した職員の給与分を含む補助金などを支出したのが地方公務員派遣法に違反するとして、矢田立郎市長に約79億円全額の返還を求めていた事案である。大阪高裁は、約45億円の返還請求を命じた1審・神戸地裁判決(08年4月)を変更し、約55億円の返還請求を命じた。そして、1審判決後に市議会が制定した返還請求権放棄の条例については「議決権の乱用。住民訴訟制度を根底から否定するもの」とし、条例を無効とする初判断を示したのである。市側は上告する方針。
今回の訴訟の住民側代理人弁護士で、住民訴訟に詳しい阿部泰隆・中央大教授(行政法)は「首長らへの債権放棄の議決を無効とする司法判断は初めて。各地の行政や議会ヘの警鐘となる」と話している。
判決は、派遣職員の給与支出について「市の職務に従事していない職員に給与を支給できないことは当然。補助金などから支払われることが予定されており、派遣法を逸脱する」と違法性を認定。補助金のうち約55億円を給与分と推認し、返還を求めるよう命じた。
控訴審で市長側は、1審判決が命じた返還請求権を放棄する条例(今年2月成立)を根拠に「請求権は消滅した」と請求棄却を求めた。この条例について、大谷裁判長は「請求権放棄には、公益上の必要性や合理的理由が必要」と指摘。その上で、「放棄する合理的理由はない。住民訴訟を無にしてしまうものだ」と結論付けた。
この日の高裁判決は、議決の法的効力を検討。請求権放棄に伴う市財政への影響の大きさや、市が市長らの資力を検討していない点などを挙げて「議決に合理的な理由はない」と指摘した。さらに、議決を「市長の違法行為を放置し、是正の機会を放棄するに等しく、住民訴訟制度を根底から否定するもの」と厳しく批判。「議決権の乱用」と断じ、控訴した市側の「議決で請求権は消滅した」との主張を全面的に退けた。
住民「画期的」 神戸市「越権」
「同種の訴訟ではかつてない決定だ。他の自治体でも同じような判断が続くのでは」。市民団体「ミナト神戸を守る会」代表で原告の東條健司さん(69)は記者会見で、そう期待を込めた。
原告団長の井上香子さん(61)も「債権放棄には合理的理由が必要、という画期的判決」と歓迎した。「違法性があれば、議会が決めたことでも覆せるという住民訴訟の趣旨の通り。ありがたいというか、当たり前の判決と思う」と顔をほころばせた。
不満をあらわにしたのは市側だ。記者会見した神戸市の小村正俊・人事課長は「判決の根拠が分からない」と困惑した。「法律や条例にのっとって判断したわけで、権利乱用にはあたらない」と述べた。市幹部は「司法の越権行為だ。憤りを感じる」と判決を厳しく批判した。
市議会も同様だ。自民党市議団幹部は「市長個人で払えるわけがない。万引きで死刑判決を下すようなものだ」と声を荒らげた。
矢田立郎市長は「判決は極めて意外で大変驚いている。地方自治法の定めに従い、適法に行われた議会の議決を否定するものであり、判決内容を精査したうえで上告する方向で検討したい」とのコメントを発表した。
係争の他自治体困惑----賠償帳消し議決無効判決
首長が自治体に損害を与えたという住民の訴えを受けて裁判所が賠償を命じると、議会がそれを免責にする「骨抜き」議決は、各地で相次いできた。それを「議決権の乱用」と断じた11月27日の大阪高裁判決。同種の訴訟を抱えている自治体に波紋が広がっている。
浄水場用地の取得費用を巡り、住民訴訟が係争中の栃木県の旧氏家町(現さくら市)。市議会の「救済」議決を受けだ控訴審判決が12月24日に東京高裁で予定されている。訴えられているのは、旧町長で前市長。一審・宇都宮地裁は昨年12月、前市長に1億2千万円余りを請求して返還を受けるよう市に命じていた。
議会側の権利放棄の理由は、「(前市長は)町の合併以来、新市の発展に尽力した」。市総務課は、今回の大阪高裁の判決について「東京高裁の判断を待つしかない。一概に同じ判断になるとは思わない」と話した。
請求権の放棄をきっかけにした住民側の敗訴は、山梨県旧玉穂町(現中央市)や千葉県鋸南町、埼玉県久喜市などで相次いできた。大阪府大東市の担当者は大阪高裁の判決について「厳しい判断。地裁、高裁でいろいろな判決が出ており、最高裁による統一的な見解を待つしかない」と受け止める。
大東市でも、非常勤職員への退職慰労金支給をめぐる住民訴訟があり、大阪地裁では市長らが敗訴。270万円の賠償が命じられた。しかし、市議会が賠償請求権を放棄する議決をすると、大阪高裁の別の裁判長は今年3月、「放棄の可否は議会の良識ある判断に委ねられ、賠償請求権は消滅した」と今回の判決とは逆の判断を示し、住民側の請求を棄却していた。
この訴訟の原告、市民オンブズマン代表で市議の光城敏雄さん(52)は「司法の主体的な判断が示されなかった大東市の高裁判決と違い、画期的だ。私の訴訟の上告審にも期待がもてる」と歓迎した。 (11月28日付朝日・毎日・読売参照)
住民訴訟:
自治体の首長らが公金の違法支出などで自治体に損害を与えた場合、監査請求を経たうえで、被害回復を求めて住民が提訴できる制度。以前は首長らを直接訴えることができたが、02年の地方自治法の見直しにより、自治体を被告として首長らに賠償や返還を請求するよう間接的に求める仕組みに改められた。日本弁護士連合会は「住民訴訟の目的や趣旨を制限するものだ」と反対していた。
資料2009年11月19日しんぶん赤旗
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