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「いばらきの地域と自治」(第1号)


作:高島つよし
(高島剛・常総市(旧水海道市)在住、元県職員、小貝保育園長、当研究所顧問)


  投 稿       

                                   

霞ヶ浦導水事業の反対闘争について

自治体問題研究所顧問

本田 忠弘
   
 導水事業とは、霞ヶ浦の水を那珂川へ、那珂川の水を霞ヶ浦へ導水するというものである。

 霞ヶ浦導水事業の現況をみると、昨年勝利した「水戸市全隈の産廃反対闘争」の経験からいえることだが、やはり人格権(快適な生活をする国民の権利)・生存権を守る反公害闘争の様相を示してきていると感じています。勝つても負けても導水事業の闘いは当然に長期の闘いが必要となるでしょう。しかも、この闘いは、国、県、関係市町村長の方針に対する闘いで、その規模は関係の漁協の闘いを中心に全国的規模にまで広がっているということです。、霞ヶ浦導水の「水戸取水口建設工事反対」の署名は、県内外から10万筆を超えるところまできている。
 なぜ反対が広がっているかといえば、すでに公害の発生源となっている霞ヶ浦の水を那珂川へ、那珂川の水を霞ヶ浦へ導水することにより更にそれぞれの水質悪化を促進させるということが明らかになりつつあるからである。

 争われている場は、1つは、「アユ裁判」といわれているもの。アユ裁判は、霞ヶ浦導水が那珂川に決定的な悪影響を与えるとして、漁協が「取水口工事中止の仮処分」を水戸地方裁判所に訴えて審議中のもの。審議の中で、すでに公害の発生源となっている霞ヶ浦の導水は、それ自体が生物多様性条約と生物多様性基本法の違反であるともいわれて、論点の広がりが注目されている。
2つめは、導水が「すでに公害の源凶となっている霞ヶ浦」の「水質浄化」に役立つのか、「更に悪化」させるのか、をめぐる論争で、推進派の国と知事・関係市町村長と県民の生活と健康を守る闘い(人格権・生存権闘争)が始まっている。
 さて、霞ヶ浦総合開発事業の全体事業とその本質と導水事業の位置について、ここで振返ってみよう。
 農工両全を掲げて岩上二郎氏が知事に当選したときの1959年に、奇しくも私が県職員になった。そのときから今日まで(2008年)50年間、霞ヶ浦総合開発をみてきた。結論は、霞ヶ浦総合開発とは「県民がだまされてきた」歴史というようにいうことができる。
  

 霞ヶ浦総合開発事業は、1961年に成立した「水資源再開発促進法」に基づいて「ダムの建設計画」がつくられ工事が現在まで続いている。
 霞ヶ浦総合開発事業の全体は、以下6項目の事業からなる。各事業名と費用と工事期間を記載して「県民がだまされた歴史」に触れてみる。

NO.事業名説    明費用(億円)
1常陸川水門完成1963年逆水門で始まり、10年後水門が閉鎖になる。(閉鎖水域・水ガメ化)不明
2鹿島工業用水の給水開始製鉄業、石油コンビナートの稼動(1969年)不明
3霞が浦開発事業1971~1995年2,864
4霞ヶ浦用水事業県西地域へ送水農業用水、工業用水、都市用水(県西用水事業)2,219
5水源地域整備計画1976~1999年4,109
6霞ヶ浦導水事業1984年工事開始1,900
11,152

     
〈その1〉国・知事の「うそ」

 常陸川水門は「洪水と塩害を防止する目的」から計画されたものというのは「うそ」である。
 この水門は通称「逆水門」といって、1963年に上・下に操作ができるものとしてつくられた。海水が霞ヶ浦に入ったり出たりする操作がしばらく続いていた。堤防もほどほどのものであった。ところが10年後完全に閉鎖された。諫早湾干拓事業の「ギロチン」と同じことが行われ、霞ヶ浦の水ガメ化が実行された。
 俗にいうだましうちである。こののちに、霞ヶ浦の魚介類が死滅し、アオコが発生するのである。

〈その2〉農工両全の「うそ」

 岩上二郎知事は、農業と工業が共に栄えるというスローガンを掲げて鹿行開発を強行した。現実には減反政策とあいまって農業や水産業は壊滅的な打撃を受けて、漁業権は知事にとりあげられた。
 鉄鋼業と石油コンビナートを中心にした鹿島臨海工業地帯ができあがった。
 霞ヶ浦の水は、塩分のない「工業用水」として用意された。

〈その3〉導水は霞ヶ浦の水質をきれいにするとの「うそ」

 国・知事・関係市町村長は、導水は、霞ヶ浦を浄化するといって、「取水口建設」を突破口に事業を進めようとしている。「公害の発生源になってしまった水道水源」である霞ヶ浦の水を那珂川へ導水することにともなう悪影響を無視して浄化効果を強調している。
 この点については、たとえば、川崎健東北大学名誉教授が「霞ヶ浦はすでに公害の発生源」、「死の湖・水道水源として不適」であるとつぎのように指摘している。
 「霞ヶ浦の汚染は深刻であり、例えば、2000年までに75㎏のダイオキシンが堆積している。 水野玲子氏よれば流域では男児出生率が低い。悪性新生物による死亡者数が多く胆道がんの標準死亡比が高い。」 
 さらに、高村義親茨城大学名誉教授も「霞ヶ浦のアオコは、毒素を生産する。その毒素は肝臓障害・肝がんの要因となる。」と記している。


霞ヶ浦導水事業の問題を考えるうえでの書籍等の紹介
 霞ヶ浦研究会報11号(2008年9月28日発行)掲載の下記3氏の論文
 1「那珂川導水による霞ヶ浦の水質悪化の可能性」高村義親茨城大学名誉教授
 2「導水事業・湖岸植生帯が西浦湖流・水質に与える影響(希釈論)」中曽根秀雄 茨城大学教授
 3「霞ヶ浦導水事業の現状と問題(開発水量と那珂川への影響論)」浜田篤信(元茨城県内水面水産試験場長)
   
 その他、各種の「霞ヶ浦導水事業シンポジュウム」の報告を参照されたい。 


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